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夏の四国旅行 / 剣山

夏の四国旅行 / 剣山

1. 地元という土地

初心者向けの山だが激しい鎖場があると聞いていた。四国にある百名山の石鎚山は、よくよく考えればなかなかいかつい名前をしている。
山をやっている人間として「一生のうちにいつかは踏破できたらいいな〜」くらいにゆるく捉えている百名山完登。そのために四国にある2つ、石鎚山と剣山に登るのは人生において必須のことだった。
昨年夏の利尻島旅行から1年、先日は家族旅行で佐渡ヶ島に行った。最近彼氏と話していた「出身地が変わった場所であればあるほどその人のアイデンティティとして濃くなる」という話。東京出身の彼からすると、山梨でも利尻島でも、等しくコンプレックスを感じる田舎たちなのであろう。
私は故郷である寄居町をいつまで経っても愛することができず、出身を聞かれて「秩父です〜」と嘘をついているというのに。そりゃそうだ、誰だって地元にラビュー通っててほしいだろ、あんな黄色くて窓が大きな電車。
私の美容師さんが先日我が故郷寄居町で撮影をしたらしいが、恵比寿出身のスペイン人のハーフモデルに「いや〜ここの駐車場最高にチルっすわ」と言われていたらしい。私が中学時代自転車で片道30分かけて行ってた青春のマックを、勝手に東京モンのチルな場所にするんじゃねぇ。

お盆休み1日だけ帰省した。中学の同級生が15名ほど集まるちょっとした同窓会があったからだ。同窓会と言っても私の中学は学年170名いるし、主催の子を中心とした交友関係のみの小さな集まりだけど。
集合する前、リノベがやっと終わって2ヶ月前から住めるようになったという中学時代の親友の家に遊びに行った。そこはまるでカフェのようなゲストハウスのようなセンスだだ溢れのお家で、風邪で微熱を出した子供が列車のおもちゃの中に座っていた。私はこの子供と誕生日が一緒である。
人見知りが爆発している年齢らしく、全ての挨拶を薄ら笑いで無視される。あと1時間一緒にいたら仲良くなれるもん。あんた私と占いの結果全部共有することになるんだからね。
旦那さんに送ってもらって家を出る時、「車はどこ?」と言われた。寄居に住む者たるや全員車がないと移動ができないと子供ながら認識していることがちょっと笑える。
親友と参加した地元の飲み会は2次会の果て(寄居に三次会をやる場所はない)までいてみたが、当時のヒエラルキーの名残のようなものを感じて少し気持ちが悪かった。誰が悪いとかじゃないし、もしかしたら全然私が悪いのかもしれない。まだ私の中で地元は愛すべき場所に昇華できていない。きっと私側の視座の問題だ。

翌日母と少し話すと、「それでも地元で子供を産んで育ててるあの子もあの子も大人になったなぁと思うよ。あなたは自分のことだけ考えていればいいでしょう。」と言われて、そう言われるのはちょっときついよ、と思った。私は自分の中で育てたものさしですくすくと成長して、だいぶ生きるのが楽しくなってきたよ。もしもそのものさしが歪んでいるのなら、そこを作り上げてきた家庭の責任もあるでしょう。
以前職場で出会った他者肯定の塊みたいな女の子に、自分の思慮が浅いという悩みを打ち明けたことがある。その時「ある事象が起きた時、深く考える人もそうじゃない人もいる。もしあなたがそうじゃない側だったとしても、それはそう感じる必要がないような人生を送ってきたというだけのことだから、すごいとかすごくないとかの話じゃないの。傷つかないでいられるなら、その方がずっといいんだから。」と言われて驚愕した。
私が何を感じ取るかというのは自分の頭の良さとか考えられる器の広さではなく、そこまでの人生から得られた価値観そのものなんだってこと。そこに悪とか善はないんだってこと。年下の子にこんなこと言われると思っていなかった。この子は高校時代、親の干渉に苦しんでいる。
だから私が何を感じるかはここまでの私の生きてきたそのものであって、子供がいるから大人とか子供とか、そう言われると普段必死に生きている子供がいない側の私は報われないよ、と思った。まあでも、子供はいつかほしい。子供ができた時、この時のこと振り返って全て言い訳だったなとかは思う想像はしてる。

そういうことで、今日も犬が変だし猫は身勝手だし楽しい帰省ではあったけど、ほんのりと苦味を得て東京に帰ってきたのだった。でも気にしないでほしい。帰りの東武東上線で食べたモチドメロン味の甘味で全然上塗りできる程度の苦さだ。

2. 誰かの故郷へ渡る

今回は誰かの故郷である四国。その誰かとは明確に顔が浮かんでいる。昨年お友達になった漫画家のありちゃんだ。ありちゃんといえば、私が尊敬するお友達の1人。とにかく優しくて暖かくて可愛らしい人。
旅の目的は百名山を2つマークするのだという淡白なものだけど、四国という大きな島の香りを感じながら4県全てを回る、大変情緒的な旅だ。

剣山には本当は三嶺から縦走で訪れたかったが、全体の予定を見てここは断念。またこれメインで来たいねとジュンと話した。新幹線で岡山まで行って、そこから電車で瀬戸大橋を渡る。本州と四国をつなぐ大きな橋は、立派すぎて逆に橋を渡っている感覚が薄くなったし、やたらと窓が汚かった。
ここを通ることで本州から脱却するんだ、という興奮は情勢しずらい。時間があればフェリーで小豆島に行きたかった。わがまま言ってないでさっさと車掌に特急券を渡しなさい。

人生の中で四国のことを考えている時間ってほとんどなかったように思う。なんか本州の下にあるな、というくらいの認識だったかもしれない。
中学の時の社会科の先生がセクハラオヤジだったせいで、そもそも社会科の教科関連全般への苦手意識が強く興味も薄い。自分の教養の浅さをいまだに10代の頃のせいにしてるのは流石にダサいが仕方ない。
私の四国の認識は、香川うどん、高知カツオ、徳島阿波踊り、愛媛みかん、瀬戸内海、坂本龍馬、そして真ん中に百名山が2個だ。2個とか言ってんのやばい。
こんな感じの教養レベルなので、それぞれの県で名物に触れられるだけで最高な気持ちになれるし、ここ以外のスポットは全て「まだ見ぬ四国」となるので全部嬉しい。旅行の期待値が低いという意味ではいいのかもしれない。
ちょうど阿波踊りのシーズンなので、最新アップされてた阿波踊りの動画を調べて真似して踊ってころころ笑った。阿波踊りかっこいい。

3. 1日目うどん

ということで丸亀ではうどんを食べる。
私はかなり長い間「好きな食べ物は丸亀製麺です」と言っていたくらい讃岐うどん好きなので、めちゃくちゃ嬉しい。
街に讃岐富士を発見して「これ丸亀製麺の壁に貼ってある山だ!」と興奮して言った。丸亀製麺オタクみたいになってて恥ずかしい。いつかイタリアで「ヴィーナスの誕生」見た時に「サイゼリヤの壁の絵だ!」とか言い出さないか自分が心配である。
ちなみに丸亀市に丸亀製麺は存在しなかった。今治市にはあったので、丸亀市の味を丸亀市以外に届ける店、それが丸亀製麺なのだと知った。

レンタカー屋のおっちゃんが、「チェーン店でも全然美味しいよ」と言っていたのでセルフうどんの「こがね製麺所」なるところに行った。本当は有名店にひとしきり連絡してみたが、お盆の今日はほとんどお休みか、すでに玉切れ。玉切れってなんかいいな。
私は歴史に興味がない分、旅をしてその土地で生活する人の暮らしを想像するのが好きなので、地元のチェーン店とか行けるのはむしろ嬉しい。
そしてこのこがね製麺所は、丸亀製麺レベル100みたいなところでめちゃくちゃ楽しかった。全てのうどん屋の基準が丸亀製麺な乏しい尺度ではあります。
まず、人が生きてれば思いつきそうな種類のうどんは全てある。そしてよその店で美味しそうと感じたもの全て揚げてます、ってくらい天ぷらの種類も多い。値段は少し安め。揚げ玉とわかめとネギが取り放題だが、揚げ玉は少し味がついていて美味しい。麺ももちもちふわふわしていて明らかに美味しい。
とまあ全てが丸亀製麺の上位互換のようなところだったので、私がこれから「好きな食べ物は丸亀製麺です」と言ったら完全に嘘になってしまうことになってしまった。困ったもんだ。

ということでのっけからめちゃくちゃご機嫌になってしまったので、腹ごなしで金比羅神社への階段を700段歩いて御神籤を引いた。私は神社に行くとすぐに御神籤を引くし、彼氏ができるとすぐに同棲する。
大吉だったので概ね良かったが、一部分だけ嫌なことが書いてあったので御神籤は結んで帰ることにした。どこが嫌だったのかは内緒です。

山に登った後、父母ヶ浜という海でカニを追いかけた。初日にしてはなかなか充実した行程を辿れているのではないか。エモい系の場所を想像していたら意外と横ノリ系だったのでびっくりはしたが。
海は苦手だ。しょっぱいし、いる人たちが日焼けしすぎている。足をつけるだけならちょうどいい。

お盆休みの宿は取りづらいだろう、と私が宿の手配をしたのは6月。ただこの時点で楽天トラベルではもうすでに手頃な価格の場所は埋まりかけていた。私は寝つきが良すぎてどうせ宿の記憶がほとんどないから旅先で宿にお金をかけたくない派なので、値段と最低限のレビューを参考に選んでいる。
今回は翌日剣山に行きやすいところで選んでいたが、結果的に今まで泊まった史上一番わけわからない宿だった。
廃校になった小学校を改装した宿ということらしいのだけど、行ってみると小学校テイストの宿ではなく、泊まれるようにしたただの小学校だった。めちゃくちゃ山奥にありすぎて夜ご飯を買うためのコンビニまで通り過ぎてしまった。腹ペコの状態で教室を畳にしただけの3年生の部屋で布団を敷く。マジで大人になって立派な仕事についてんのに今何やってんのかわけがわからない。
トイレに行くには廊下を渡って音楽室の前を通らないといけないし、その前の掲示物に妖怪伝説が描かれている。勘弁してくれ。
ほとんど宿の写真を撮っていなかった。示し合わせてないものの何かしらの写り込みを恐れていたのは言うまでもないだろう。部屋の時計は3時間進んでいて、着いた時には1時になっていた。怖すぎるだろ。
山の中で明るすぎる校舎の窓に張り付く、大中小様々な虫たちの裏側を丁寧に観察できる。
早く寝よう。

4. 2日目剣山

翌朝起きると気持ちよく晴れていて、昨日谷底かと思うくらい真っ暗だった駐車場の奥は美しい緑の山だった。昔の人は今以上に朝日が好きだっただろうな。朝になれば猗窩座も逃げるし。

昨日の道を通るのは危ないよーと言われたので、山の逆側に向かって降りる。剣山までは車で1時間半だ。
ずっと川の脇を通るコースで、心地いいのなんのって。下りてきてから時間があったら川に入ろう。
お盆に水辺はダメ、と言うが、こんな綺麗な川が人に危害を加える訳がない。という慢心がよくないんですよね黙ります。

剣山はリフトで登れると聞いて興奮していたが、リフト乗り場に到着するとそのリフトは1人乗りで、なおも興奮した。おもちゃみたいなリフトに運ばれて1人ずつで山頂付近まで。
なかなか長いし1人なので大体みんなスマホを見ていた。グミはここで食べ終わってしまった。

若干曇っているので涼しくていい感じ。自分の足で登る道もあっという間に終わって、広い広い山頂に出た。ジュンは奥のジロウキュウまで行きたそうだったが、私が面倒くさくなって断念。
剣山なんて険しい名前だけど、山頂は歩きやすくて伊吹山みたいだ。ここは標高1,950m。
ガスっているので海が見えない。

持ってきたご飯を山頂で調理して食べて、ぐうたらした。
私はせっかく買ったカトラリーを自室で紛失中なので、いつも家で使っているスプーンを持ってきたら雰囲気がないとジュンに怒られた。ジェットボイルを購入してもう1年半経つのにいまだに火をつけるのが怖い。

剣山を後にし、降りれる川を探すと「かずら橋」なるところがあったので行ってみることにした。あんまり調べずに行ったけど、先日四国旅行してた先輩も行ってた場所だったので、有名なところだったのかもしれないな。
今までの吊り橋史上一番揺れるしちゃんと怖い、ドンキーコングの橋みたいで非常に興奮した。川の流れも綺麗。
多くの人がドキドキしながら渡るであろうこの橋の上で私はなぜか注意力散漫になってしまい、3回滑って太ももに引っ掻き傷を作ることになった。しかも二重。痛い。

怖い橋、渡れてない人いた

川に降りて、膝下までドボンした。ここまで気持ちのいい川はなかなか降りられない。水の音が心地よくて、文字通り心が洗われていく。
いろんなことの上部が削ぎ落とされて、岩の上で足を水につけ座る私の頭の中に何が残るのか、これが今の私の核みたいなものなんだと思ってる。いられるなら何時間でもここにいたいと思うが、実際何時間いてもいいよと言われたらどのくらいいられるのだろう。
川の流れが時の流れよりも激しいせいで、時間の感覚もなくなるな。

川遊びが済んだので、高知市街に移動する。
3日間の中で唯一駅前の繁華街に宿をとったので、この日の宿が一番高いゲストハウスだった。とはいえ1人6000円。
高知市の駅前は路面電車が走っていた。配色が可愛い。歩いて行ける範囲に飲み屋がいっぱいあって、カラオケも5件くらいあった。えー渋谷じゃーん(アホ)

有名なひろめ市場に行く。中は混みすぎてて人酔いしそうだったが、外のカウンターが空いていたので無事着席。手当たり次第にめぼしいものを取っていったらお腹いっぱいになって、食べたかったラーメンまで行きつかなかった。
ビール2杯で一番気持ちいいテンションに。私は普通に酒が弱い。

徘徊したくなって隣の商店街を端から端まで歩いたら、コンビニにミレービスケットが大量に売られていて嬉しくなった。ミレービスケットは高知で作られているらしい。
あとで絶対買うぞと意気込んで元の場所に戻る。ここ好きだ。また来たい。

夜カラオケ行こーと言っていたけど、風呂に入ったら夜22時だったので聡明な大人として寝ることにした。
明日はメインの石鎚山で、4時半起きだ。平日は体調によるが4時間寝れれば元気に動けるんだけど、旅行先だといつも疲れて熟睡してしまう。
新卒の時先輩2人に連れていってもらった福島の日帰り旅行。先輩が運転する後部座席で全ての移動爆睡してしまったことがあった。あのときは目的地に着いたら起こされ本当にチェックポイントを回るだけのクソ後輩ムーブをかましたが、旅は眠くなるんだ私は。
あと古典の授業。高校の時あんまり仲良くない友達に「ナルコレプシーって知ってる?」って真剣に聞かれたこともある。
ナルコレプシーを疑われたことのある身として、旅先のベッドで寝ようと思った瞬間就寝することなんて余裕である。たとえそれが、プライベートスペースの最小なゲストハウスだったとしても。

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