これから寒さが本格化してくる季節、登山の食事に暖かい鍋料理はいかがでしょうか。ソロはもちろん、グループ登山の際にパーティーメンバーで集まり、冷たく澄んだ夜空の下でこれまでの、そしてこれからの山行を語り合いながら鍋を囲む時間は、何物にも代え難い体験となります。

今回はソロからグループでの使用を想定し、鍋をはじめとした暖かい料理を楽しむためのクッカーセット選びについて、想定人数から素材やコーティングまで解説し、おすすめの商品をいくつかご紹介させていただきます。
クッカーセットとは?
一般的な登山で持ち運ばれるクッカーは軽量化が重要なため、必要最小限の大きさと組み合わせになっております。 今回ここで紹介させていただくクッカーセットの定義はソロはもちろん、複数人でいくつかの調理を想定した軽量・コンパクトな調理器具のセットとなります。一般的に鍋(ポット)、フライパンまたは蓋などが組み合わされて販売されており、スタッキングできる設計になっているため持ち運びに便利です。また取っ手が脱着式となっているモデルも多くあります。
クッカーセットは鍋料理やご飯を炊く、お湯を沸かすなど、山での食事シーンに必要な調理が1セットでこなせるため、グループ登山やキャンプでは便利なアイテムです。
クッカーセットを選ぶ際の3つのポイント
1.想定人数で容量を決める
クッカー選びで最も重要なのが容量です。人数によって必要な容量は大きく変わってきます。
2人のグループ
推奨容量:約1.0〜2L
→コンパクトで持ち運びやすく、個人で使用されているクッカーよりも少し大きいモデルとなります。
2〜3人のパーティー
推奨容量:1.5〜2.5L
→中型のクッカーセットとなり普段使用されているクッカーよりも大きく感じると思います。メンバーで分担して運ぶことも選択肢としてお勧めです。
3〜4人のグループ
推奨容量:2.5〜3.5L
→大きめの鍋料理も余裕を持って調理可能なサイズです。
ポイントとして鍋料理の場合、適正容量(汁・具材・吹きこぼれ防止を考慮した量)は想定人数×約700ml程度を最低限の目安にすると失敗しません。
2.素材
クッカーに使われる金属素材には、大きく3つの種類があります。それぞれの特徴を知ることで、パーティーシーンに最適なクッカー選びが可能になります。
アルミニウム製
メリット
- 熱伝導率が非常に高く、素早く均一に加熱できる
- 比較的リーズナブルな価格設定
- 食材に均一に熱が伝わり、焦げ付きにくい
デメリット
- チタンに比べて耐久性がやや劣り、衝撃でへこみやすい
- 熱伝導率が高いため冷めやすく、保温性は低い
- 取っ手や飲み口が熱くなりやすい
チタン製
メリット
- 超軽量で長距離の山行に最適(強度が高いため薄く作れる)
- 錆びにくく、長期間使用可能
- 金属臭がほとんどなく、食材の風味を損ねない
デメリット
- 価格が高い(アルミの2倍以上することもある)
- 熱伝導率が低く、加熱ムラが出やすい
- 焦げ付きやすく、炊飯や炒め物には向かない
3.コーティングの種類
クッカーの表面には様々なコーティングがされており、重量はわずかに増しますが焦げ付きを防ぐことができます。
フッ素樹脂加工(テフロン加工)
最も一般的なコーティングで、食材がこびりつきにくく、後片付けが楽です。炒め物から煮込み料理まで幅広く対応できます。ただし、金属製の調理器具を使うとコーティングが剥がれやすいため、木製やシリコン製のツールを使用するのがおすすめです。
セラミックコーティング
耐熱性が高く、高温調理にも対応可能。フッ素樹脂加工より丈夫で長持ちします。汚れも落ちやすく、お手入れが簡単なのが魅力です。
ハードアルマイト加工(ハードアナダイズド加工)
アルミ表面を酸化皮膜で覆う加工方法。傷がつきにくく、耐食性に優れています。コーティングが剥がれる心配が少なく、ハードに扱え長期間の山行にもお勧めです。
おすすめのクッカーセット
実際に使い勝手の良いクッカーセットを、人数別に紹介します。
1〜2人向け:SOTO ナビゲータークックシステム SOD-501

出典:SOTO
- 容量:大1.8L、小1.2L
- 素材:アルミニウム(ハードアナダイズド加工)
- 重量:約710g(セット総重量)
SOTOが山岳用クッカーに本格参入した意欲作。広口の浅型クッカーで、1.3Lの小鍋でも袋ラーメンを折らずに調理できるサイズです。ハードアナダイズド加工により、一般的なアルマイト加工よりも厚い被膜が施され、耐衝撃性・耐摩耗性・耐蝕性に優れています。
保温用のコジーが付属しており、加熱中のクッカーも素手で扱えるのが便利。取っ手はトングとしても使える多機能設計です。鍋底は指が届きやすい深さと曲面形状で、洗浄がしやすいのもポイント。2人でのテント泊や小パーティーに最適なシステムクッカーです。
1〜2人向け:trangia ツンドラ3ミニ ブラックバージョン TR-TUNDRA3MN-BK

出典:イワタニプリムス
- 容量:ソースパン1.0L×2、フライパンΦ15cm
- 素材:アルミニウム(ノンスティック加工)
- 重量:364g
- 収納サイズ:Φ15×H8.7cm
1〜2人分の調理に適した、トランギアの小型クッキングセット。2つのソースパンとフライパンがセットになっており、ノンスティック加工で焦げ付きにくく、洗浄も楽々です。
1.0Lのソースパンには0.6Lケトル(TR-325・別売)を収納可能。専用ゴトクにセットしたアルコールバーナーも収納できる設計です。フライパンの底部には放射線状にノンスリップ加工が施されており、ゴトクの上で滑りにくくなっています。
コンパクトで軽量ながら、炊飯は約1.8合まで対応。北欧スウェーデン製の高品質なクッカーです。
別売りアクセサリー
0.6Lケトル(TR-325):ソースパン内に収納可能
マルチディスク18cm(TR-MD27):ソースパンの蓋やまな板として使用できます。またワンサイズ大きいツンドラ3の20cmフライパンの内側にはピッタリ収めることができます。
1〜2人向け:スノーピーク ヤエン クッカー 1500 SCS-201

出典:スノーピーク
- 容量:ポット1.9L、フライパンΦ206mm
- 素材:アルミニウム(ハードアナダイズド・フッ素樹脂加工)
- 重量:520g
- 収納サイズ:115mm(高さ)
2015年グッドデザイン賞を受賞した、スノーピークの浅型システムクッカー。キャンプ用でありながら登山でも持ち運べる重量が特徴。ポット内側には目盛りがあり、分量を測るのに便利。注ぎ口も付いているため、スープを分ける際やパスタの湯ぎりもスムーズです。フタのツマミはシリコンゴム製で熱くなりにくくなっています。
取っ手は着脱式で、ポットとフライパンに共用可能。250缶のガスカートリッジ2個とストーブをスタッキングできる機能的なデザインです。
1〜2人向け:EVERNEW チタンクッカーセット M セラミック ECA412

出典:エバニュー
- 容量: 大1.3L、小0.9L(目盛り付き)
素材: 純チタン(セラミック樹脂コーティング・日本製)
重量: 310g
サイズ: 大 径150×深さ77mm、小 径136×深さ64mm
0.4mm厚の純チタン材にセラミックコーティングを施した、エバニューの高品質クッカーセット。チタンの軽量性と耐久性に、セラミックコーティングの焦げ付きにくさを融合させた逸品です。
チタン製ながらセラミックコーティングにより、チタンの弱点である熱ムラや焦げ付きを大幅に軽減。耐熱性・耐久性も向上しており、長期間の使用に耐えます。取っ手部分にはシリコンチューブが付いているため、熱くなりにくく安全です。
2つのクッカーは入れ子式に収納でき、わずか310gという驚異的な軽さ。テント泊や小規模パーティーでの使用に適しています。国内製造の純チタンを使用した日本製の信頼性の高さも魅力です。
2〜3人向け:trangia ツンドラ3 ブラックバージョン TR-TUNDRA3-BK

出典:イワタニプリムス
- 容量:1.5L・1.75L、フライパンΦ20cm
- 素材:アルミニウム(ノンスティック加工)
- 重量:566g
- 収納サイズ:Φ20×H8.8cm
2〜3人分の調理に対応する、トランギアの中型クッキングセット。2サイズのソースパンとフライパンがセットになっており、様々な料理に対応できます。
ソースパン、フライパンの内側にはノンスティック加工を施してあり、調理後のふき取りや洗浄が非常に楽です。底部には放射線状にノンスリップ加工が施されており、ゴトクの上で安定します。
他のトランギア製品とのスタッキングも可能。別売りのケトルやアクセサリーを追加することで、さらに使い勝手が向上します。北欧ブランドならではの洗練されたデザインも魅力です。
3〜4人向け:DUG 焚火缶 3点セット DG-0103

出典:DUG
- 容量:S サイズ約1.2L、Mサイズ約2L、Lサイズ約3L
- 素材:アルミニウム(アルマイト加工)
- 重量:S本体117g/蓋71g、M本体150g/蓋78g、L本体203g/蓋103g
- 収納サイズ:S Φ127×103mm、M Φ153×110mm、L Φ180×122mm
焚火での調理に特化した、DUGの代表的なクッカーセット。S・M・Lの3サイズがスタッキングでき、用途や人数に応じて使い分けができます。本体は吊り下げて焚火の上で調理ができ、蓋はフライパンや食器としても使用できる設計です。リーズナブルな価格なので焚火にガンガン入れて使える気軽さと、使いこむ程に煤で味わい深い表情に変化することも魅力的です。焚火を楽しむグループ登山やキャンプに最適なクッカーセットです。
その他のポイント
スタッキング
元々持っているクッカーも含め、複数のクッカーや調理器具を一つに纏められるかは重要です。バックパックのスペースを有効活用でき、パッキングも楽になります。
ハンドルの仕様
基本的に折りたたみと脱着式の2種類になります。特に着脱式のハンドルは、重量を抑え、収納性を高めるとともに限られたスペースでの使用の際には転倒のリスクも軽減できます。
蓋の機能性
蓋が食器やフライパンやまな板としても使えるタイプは、荷物を減らすことができます。
湯切り・注ぎ口の有無
湯切り穴があるとパスタやラーメンを調理する際に重宝します。注ぎ口はパーティーメンバーにスープなど小分けする際に溢れにくく便利です。
付属品
収納袋やコーティングを保護するための緩衝材など、メーカーによって様々な付属があります。
まとめ
寒い時期のパーティーで暖かい鍋料理を楽しむには、人数に合った容量や特徴を理解したクッカー選びが大切です。
これから何人のパーティーで行くことが多いか?コーティングが剥がれてしまう可能性がある程、ハードに使用するシーンが多いか?など想定して選ぶと良いでしょう。また、クッカーセットが大きく重い場合には、事前にメンバーで分け合って運ぶ事も話し合っておくと良いかもしれません。
- 1〜2人なら1.0〜1.8Lモデル
- 2〜3人なら1.5〜2.5Lモデル
- 3〜4人なら2.5〜3.5Lモデル
アルミ製は熱伝導が良く調理効率に優れ、チタン製は軽量で保温性に優れています。用途に合わせて最適な素材を選び、フッ素樹脂加工やセラミックコーティング、ハードアルマイト加工などのコーティングされたモデルなら焦げ付きの心配も少なく、快適な調理が可能です。
今回ご紹介させていただいたクッカーセットは、それぞれ特徴を持つ優れた製品です。人数や用途に合わせて、お気に入りのクッカーセットを見つけて、グループで暖かい鍋を囲み、特別な時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。

