登山ウェアを選ぶうえで知っておくと役立つのが素材の特徴です。今回は例として「Polartec(ポーラテック)のフリース素材の進化」 について解説します。

かつて存在した代表的な素材 「サーマルプロ」 を起点に、そこから派生して今の登山ウェアで定番となっているパワーグリッド や パワーストレッチ がどんな成り立ちで、どんな特徴を持つのかをわかりやすく解説します。
本質を理解できると、"素材からウェアを選ぶ" ことができるようになり、ウェア選びの精度が一気に上がります。
サーマルプロとは何だったのか
まずは、今回のキーポイントであるポーラテック「サーマルプロ」 から説明します。
サーマルプロは、当時のポーラテックの中でも 「軽さと暖かさのバランスに優れたフリース」として展開され、いまのように素材カテゴリーが細分化される前の"中心的な存在"でした。

このサーマルプロにはバリエーションが多く、
- 毛足の長いボア調
- ウールライク
- 硬い表情のハードフェイス調
といった見た目の違いだけでなく、
通気性・保温力・耐久性などの性能もモデルごとに大きく調整されていました。
つまりサーマルプロは、
いまの細分化された素材カテゴリーの"親世代の素材群" なんです。
時代が進むにつれ、登山者のニーズが変わりました。
「もっと通気が欲しい」
「汗を素早く処理したい」
「動き続けるアクティビティにも対応したい」
こうした要求に合わせて、サーマルプロの一部機能が独立し、より専門性の高い素材として派生していきます。
パワーグリッド/パワーストレッチはサーマルプロの系譜にある派生素材
Polartecの素材カテゴリーが整理・細分化されていくなかで、用途別に特化したのが現在の パワーグリッド と パワーストレッチ&パワーストレッチプロ です。
パワーグリッド(高通気 × 汗処理の進化系)

・凹凸構造で「凹」が通気、
・「凸」が汗を吸い上げ保温
・吸い上げた汗を表へ移動し、速乾
→ ベースレイヤーとして大活躍
パワーストレッチプロ(伸縮性 × 汗処理の両立)

・高いストレッチで動きやすい
・裏面で汗を吸い、表面へ拡散
→ アクティブなミドルレイヤーの定番
これらは、
サーマルプロの長所を"専門特化"させた後継素材 と言える存在です。
「昔はサーマルプロだったものが、現在は用途別に細かくカテゴライズされ、よりわかりやすく・選びやすく進化した」という流れです。
サーマルプロを使ったアークテリクスのコンシールジャケット

ここで一つ、素材理解の参考例として紹介したいのがアークテリクスが過去に展開していた 「コンシールジャケット」です。"過去の製品" ではありますが、素材カテゴリが整理される前の時代に作られたウェアとして、サーマルプロ → 現在の派生素材への変遷 を読み解く良い教材になります。

コンシールジャケットに採用されていた生地は、当時サーマルプロにまとめられていましたが、実際の性質は
- ストレッチ性
- 吸水性
- 通気性
といった特徴を持ち、
いまのパワーグリッドやパワーストレッチに近い構造 をしていました。

つまり、コンシールジャケットを見ていくと「サーマルプロがどんな要素を持っていて、そこから何が分離されて現在の素材カテゴリになったのか」が理解しやすいんです。
あくまで "現在の主役" ではありませんが、素材理解のための"橋渡し"として非常に良い例 と言えます。
サーマルプロの大きな価値は、生地設計の自由度の高さです。
パイルの長さや密度で保温力を調整
編み構造で通気やストレッチを調整
表面仕上げで耐久性をプラス
薄手〜厚手まで幅広い展開
デザイン表情のバリエーションが豊富
軽さ・保温・通気・耐久のバランスをブランドが自由に調整できるため、現在でも多くのフリースが"サーマルプロ系統の発想"を受け継いでいます。
サーマルプロは、現代の登山ウェアの基盤となった素材

素材の理解を深めることで
「自分が登る環境で必要なのは、通気性? 伸縮性? それとも保温?」
「このウェアはどのような素材で、それがどういうシーンに適しているのか?」
といったことが素材で理解ができ、そしてデザインの特徴をみて自分に最適化であるかを見極めることができます。
"素材から逆算して道具を選べる"=失敗しない装備選び に繋がります。
まとめ
今回は、サーマルプロという素材を軸に、現代のポーラテック素材がどのように進化してきたのか を紹介しました。
素材を理解すると、山での快適さが本当に変わります。そして行動中に寒い、暑いといった課題からどのウェアを着用すれば良いかが今よりも深くわかるようになります。
ぜひ店頭やECサイトで、
「これはパワーグリッドか」「これはパワーストレッチか」など素材を見て自分に適したアイテムなのか?という目線でウェアを見てみてください。

