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竜ヶ岳 / 1月の富士山

竜ヶ岳 / 1月の富士山

1月、もう何度目かの富士山を見に行く。今日は新しいお友達と五人でのパーティだ。

登場人物を紹介しておこう。
イカした指輪ブランド『puna moon』の中の人ムンさん。プナムーンなのでムンさんと呼んでいる。

puna.moon powered by BASEpuna.moonは自然から発想を得て制作しているブランドです。雄大さやおおらかさ、時に厳しさを教えてくれるような力強を持 punamoon.base.shop

続いてインスタで知り合った同い年のハイカーおさつとその旦那ミドルン。
二人はご夫婦だが、登山の趣味も夫婦揃って始めたらしい。私は心が狭いので彼氏と同じ趣味になることを避ける傾向にあるため、それができる二人のことを尊敬する。

そして妹みたいにかわいいおつきみちゃん。
身長が151センチなので私と並ぶと22センチ差になるところもめちゃくちゃ可愛い。

登場人物File 04 おつきみ

ムンさんも、おさつも、ミドルンも、おつきみちゃんも、それぞれに会ったことはあるが、私は一緒に登山に行くのは初めてのメンバーだ。

どんな感じになるかな。向かうは山梨県の竜ヶ岳。私は2度ほど登ったことがあるが、毎回お正月にダイヤモンド富士を見に、だったのでそんなにゆっくり楽しんだことのない山だった。また1月の富士山が見られることが嬉しいな。

過去2回登った時は日の出を待ったからというのもあるが、いつ行っても爆裂に寒いという記憶がある竜ヶ岳。「美しい景色を見るにはこのくらいは耐えなさい」と言われているが如く、刺すような風が全身を冷やす。前日に天気を調べたが、やはり風が強そうだ。
せっかくコースタイムの短い山だからみんなでお茶でもしたいが、山頂は寒くて厳しいかもしれない。でもそうなったら湖畔でお茶しよう。
晴れ予報だから、きっと気持ちのいいティータイムが過ごせるはずだ。
みんなで食べられたら嬉しいなと、前日の下北沢でカヌレを買った。水筒にはあったかいほうじ茶を入れるんだ。

01 | 富士山とトラックの位置関係

ムンさんが車を出してくれるということで、7時に新宿駅に集合した。
電車で集合して山に行くことは稀なので、なんだか新鮮な気持ちだ。
冬になってからすっかり早起きが苦手になってしまっているが、6時に外に出ると流石に少し明るいのだな。いつもなら絶対に座れない最寄駅からの電車も、今日は足を組んで読書する余裕まである。
空いている電車の中でムンさんにもらったピアスを家に忘れてきたことを思い出した。山でつけようと用意していたのにこんな恩返しすらできないなんて本当に悲しい。

新宿駅で集合し、いざ山梨へ。
ムンさんの車はめちゃくちゃでかく、三列の座席が作れるタイプのワゴン車だった。運転してくれているムンさんを一人にするのはなと思い、助手席に座る。おつきみちゃんが「車出しのお礼に」とムンさんに渡していたチャイラテが置かれているのを発見してしまった。ピアスも忘れているし、もう今日誇れることは遅刻しなかったことの一個しかない。

山梨に向かう高速道路は好きである。
途中で富士山がどどんと見えてくるので、ものすごく目的地に近づいている感覚になれるからだ。
晴天予報の曇りなき空に聳える富士山。喜んでいたら後部座席からおつきみちゃんが「富士山が見える時って絶対にトラックが一緒にいるんですよね」と言ってきた。
なんだそのオリジナルのマーフィの法則みたいなやつ、と思ったけど確かにいる。視界にトラック。

その後も富士山が視界に入ると必ずトラックが同時に視界に飛び込んでくるのであながち間違ってもおらず「おつきみ先生!」となった。この子の持っているこういう不思議な感覚が、なんだか神秘。

その後ムンさんが「なんだろうね、登山のために移動している時間帯にトラックの稼働時間が被っているのかな」とデータで裏付けたいみたいな雰囲気を出してきたから、「いや女子はデータとかそういうの大丈夫なんで。『しいたけ占い』とかをロマンだけで信じきってるんで。」って言っておつきみちゃんと必死に止めた。
ちなみに『しいたけ占い』ミリしら勢のムンさんは「あなたはエリンギタイプとかしめじタイプとかがあるの?」と聞いてきたけど、「もしそうだとしたら『しいたけ占い』じゃなくて『きのこ占い』だろ」ってエバース町田が言ってました。

02 | 行きたいな富士急ハイランド

東京の真ん中から竜ヶ岳までは、途中でSAに寄っても2時間もかからない。朝ごはんを買いに訪れたファミリーマートで、「おすすめって書いてあるからこれにする」って言って私が手に取ったたくあんおにぎりを見て、おつきみちゃんは「確かに!!だっておすすめなんだもんね!!」と言っていてとても素直だった。
その後肉まんコーナーで売られてる中で一番でかい高級豚まんを持って「一番高いの買っちゃった」とニコニコしながらファミマから出てきたので、レジのところにおすすめって書かれていたのかなと思った。
おさつとおつきみちゃんは九州出身で、九州の肉まんにはタレが付いてくるというご当地雑学を教えてくれました。

サービスエリアを出て程なく、姿を現した富士急ハイランドのジェットコースター。てことはもう富士山麓だ。
「青空に遊園地が生えますねえ」と思い見ていたら「俺富士急大好きなんだ。今から行く?」とムンさんが言ってきた。
冗談半分「いいねぇ〜」とゆるゆる言っていたら、三列目に座ってるせいで前の会話に入れないはずのおさつが「あり!!」と元気いっぱい反応してきた。
聞けばおさつは富士急に行ったことがないらしく、行く機会を虎視眈々と狙っていたそう。
一方で明らかに乗り気ではなさそうなのが、その隣に座っている旦那である。「今日行きたいところあるんじゃなかった?」とおさつに確認をとる。はっきりそうは言わなかったが、どうやら絶叫系アトラクションが苦手らしい。

そうなのだ、今日はおさつが登山の後用事があるらしく、東京に戻らねばならない時間が決まっていた。用事があるのに全力で私たちとの今日を楽しもうとしてくれているのがとても嬉しい。
でも流石に登山はしたいよね。なら下山して富士急寄ったらいいんじゃない。え、富士急ってそんなアフター5みたいなシステムあるの?
知らなかったんだけど、富士急って今入場無料らしい。アトラクションに乗る時に別でそのアトラクションの乗車チケットを買うらしい。そうなんだ!!
じゃあうまく予定を組めば、竜ヶ岳から下山して、そのまま富士急に行けるってことじゃん。それってめちゃくちゃエモくない?

私は絶叫系アトラクションがめちゃくちゃ好きな人というわけではないのだが、この弾丸で予定を詰め込むエモさにやられてしまい、富士急行きたい側につくことにした。ほら、女子ってロマンだけでいいからさ。
おつきみちゃんは絶叫系が苦手らしい。ただエモみのせいで車内で行く側が優勢となってしまったため、「早めに下山できたら富士急行こう」という方向性がふんわり漂った。
おつきみちゃんは相変わらずニコニコしている。三列目にいるおさつの表情は見えないけど、多分今も口角が上がっている。
ミドルンは「昨日ご機嫌に湖畔でお茶しよう言うてましたやん」とうなだれていた。彼は関西出身らしい。

03 | 本栖湖すこ

ほんのり熱量を帯びた車内の体感温度が少し上がった頃、本栖湖が見えてきた。キラキラと輝く湖がものすごく綺麗だ。
竜ヶ岳に登るのは3年ぶりだった。富士山を見るための特等席のような景色が見えることと同じくらい、溶けた霜でぬちょぬちょになった登山道がしんどいというイメージがあるが、今日はどうだろうか。

↑2023年の初日の出

みんな思い思いに準備をして、一番短いコースタイムを取れる登山口から登山を開始する。なんてったって富士急アフ5するからね。
普段一緒に登らない人と、登山に向けて出発する瞬間、少し好き。みんな身につけているアイテムが色々で目が楽しい。今日はミドルン、おさつ、おつきみちゃんの三人が揃って迷迭香のパンツを履いていて各々可愛かった。同じアイテムを身につけている時の方が個性が出るから不思議だね。

おつきみちゃんのザックには、ハート型のカラビナにキティちゃんがつけられていて可愛い。ミドルンのザックにはメッシュのところに『トムとジェリー』のトムのポーチが入っていて可愛いが、そのすぐ隣に全然可愛くないウェットティッシュが入っているので、可愛さでこのポーチをメッシュのところに入れているわけではないのかなと思った。
ムンさんはおニューだという大きいウェストポーチを腰につけていた。この身軽さでテント泊に行けないかと企んでいるらしい。歩くたびに存在感を放つウェストポーチは小動物の尻尾みたいで、どちらかというとおつきみちゃんに似合いそうだ。底に括り付けられた茶色のジャケットがどんぐりみたいに見えて、なおさらリスのようだった。

いい天気だねぇと言いながら短いコースタイムを埋めていく。こちらの道から登るのは初めてだったが、はじめから急登で、ジュンがいたら喜びそうだなと思った。
登山口からすぐのところに、人が1人入れそうな巨木があったので、おつきみちゃんを奉納した。想像通り、ちょうどいいサイズで収まっている。

「登りしんどー」と言いながらも、女子三人先頭にぺちゃくちゃ話しながら登る。しんどーとか言いながらでも繰り広げることができるのがガールズトークである。何を話したのかは一個も覚えていない。
汗が垂れたので立ち止まって振り返ると、男子二人と距離ができていることに気がついた。ジグザグ登る登山道から見下ろすと、向こうも立ち止まって写真を撮ってくれた。まるで写真を撮るために立ち止まってくれたように見えるが、休憩したかっただけだと思っている。なぜなら私もよくその作戦を使ってジュンの足止めをするからである。

休憩中におつきみちゃんがハイチュウをくれた。「ハイチュウはぶどう味だよねぇ」と言いながら一人一個受け取る。
今時のハイチュウにはおみくじがついているらしい。私のは「大大吉」だった。おさつのは「ハイパー大吉」。おつきみのは「ウルトラ大吉」である。なんだか平和な世界〜と思っていたらミドルンのは「チュウ吉」だった。シャレが効いてるのもあるのね。
最後に渡されたムンさんのは「吉」。「実質凶やん。」とどこかの関西人のツッコミで、みんなで笑った。「みんなで食べたらおいしいよ」という一人で食べる前提のコメントも面白い。不憫ってなんでこんな面白いんだろ。

04 | 竜ヶ岳はゴイゴイスー

1時間も頑張って登れば、もうあとは楽しい道に出る。
「自己肯定感と自己評価の高さは比例しないんだよ」なんていう内省的な話を繰り広げ、みんなでちょびっとだけ教養を深めながら登りを乗り越えた。
最近読書を頑張ってる話をしたらおつきみちゃんが『わたしは今すぐおばさんになりたい』という本の話をしてくれたから、今読んでるのが終わったら読みたいな。

登りを越えて、広すぎる青空よりも、もっともっと大きな富士山がいきなり目の前に現れた。裾野が広すぎて大地を包んでしまいそうだ。先頭を歩いている者の特権は、すんごい景色の第一発見者になれるところだ。
後ろにいる人たちからしたらネタバレになるくらい大きな声で「うわーーーー!!!」と叫ぶ。意図的にではなく、心がそうリアクションするので、それに従って声帯を震わす。
「富士山すごーーーーー!!!」と叫んだ後で、右奥には真っ白い南アルプスが見え「アルプスすごーーーー!!!」と叫ぶ。少し遅れて、みんなが「すごーーーー!!」と叫ぶ。短い距離で順番にリアクションがこだまする。

360度って大抵二次元の話だけど、今日は三次元の360度で雲がないよ。あまりにも青すぎる空と、あまりにもデカすぎる富士山。近すぎて逆にフェイクみたい。
みんなで立ち止まって、南アルプスを眺める。「あれは何山〜?」と質問して、ちゃんと答えが返ってくるのがありがたい。山の名前を答える時に、何かしらのエピソードがついてくる。「今年はあそこに行きたいんだ」「甲斐駒ヶ岳は去年行った」「北岳は一番好きな山なんだ」とか、みんなそれぞれに自分の記憶であの山たちの塗り絵に色がついているんだ、っていうのがわかってすごく良い。会話に色はないけれど、カラー漫画にするならこのコマはきっとカラフルだ。

八ヶ岳はその一体だけ独立しているように見えるし、それが雪ではっきり縁取られて見えて、あそこだけ取ってつけたような空間が不思議だった。おつきみちゃんが付けていた『puna moon』のリングはちょうど八ヶ岳のモチーフだったから、「これが赤岳かもね!」と二人で言ってにっこりした。制作者が後ろにいるが、答え合わせはしなかった。

景色があまりにもすごいので、みんなでご機嫌にすごいすごい言っていたが、テンションが上がった誰かしらが「ゴイゴイスー」と言い始め、ミニオンのように全員に伝染して、かなり竜ヶ岳にスーを差し上げることになった。全員夢の中みたいに記憶に残らない会話しかしていなくて、なぜか山頂付近の写真は全てゴイゴイスーをしている。お笑いが特別好きでないおつきみもおさつも何も疑わずにゴイゴイスーしていた。山って変なの。

富士山が見えてからの歩みは牛歩だ。写真を撮るし、山を眺めるし。
分岐のところで立ち止まったら、おつきみちゃんが自分のツメを見て「クレヨンがくっついてたぁ」とニコニコ言ってきた。最近クレヨンで絵を描くのにハマっているらしい。「36色入りのやつ買ったんだぁ」と言っていた。サンタさんにもらったのかな。

05 | 山頂茶しばき

1時間20分で山頂に着いた。
ずっと見えていた富士山を改めて山頂から見上げる。ここから見える富士山は嘘みたいに2Dだ。銭湯の壁紙のよう。

ずっと雲がないと思っていたけど、富士山の右側奥には雲海のように霧が出て山々を演出していてかっこいい。「なんだか掛け軸みたい!こういうのパパのホテルにあった」と金持ちみたいな発言をしてみたが、特に誰も聞いていないようだった。私の人生初の「パパ」呼びは竜ヶ岳山頂にホバリングして消えていった。
風が冷たいのではないかと怖がっていた山頂は、嬉しい想定外でポカポカとあたたかかった。「これは流石にお茶をしよう!」とみんなでありったけのおやつを並べて腰をかける。
「富士急に早く行きたいからさっさと下山しよう」と言っていたのに、目先の欲求に振り回されててすごく自由だ。私はせっかく用意したカヌレを山頂でみんなで食べられてすごく嬉しかった。

ムンさんは萩の月を持ってきてくれていた。萩の月大好き。
「萩の月ってどこの名物なんだっけぇ」「東北だよねぇ」「東北の山ってさ〜」とどの角度からでも土地の話ができる私たちは良い。会話の中に何も苦しさがないのだ。
自分で持ってきたカヌレはタッパーに入れていたので、みんなに渡すときに「自分で作った」と嘘をついたが、あまりにも嘘すぎて申し訳なくなり、リアクションが広がりきる前に「嘘です」と言ってしまった。初めて食べたカヌレはなんだか生焼けに感じてあんまり美味しくなかった。調べてみたらそういうものらしい。萩の月の方が美味しい。

休憩をしている間、まだ二度めましてのミドルンに「私はなんの教科の先生だったでしょうクイズ」を出してみたら、想像以上にしっかり考えてくれてなんだか嬉しかった。
まだ大してデータの集まっていない私の言動を振り返って「話し方の特徴的に理系かな」「でも文章書くから国語かな」「バレー部の顧問ってことは体育かな」と多角的に分析をしてくれる。
自分の話すぎるこのクイズ、話題に出すところまではあるあるだが、どうしても途中で照れ臭くなってしまってそんなに話を引っ張ったことがない。でも今日はあまりにも晴れていて、風が穏やかで、みんなふにゃふにゃ笑っていて、右も左もゴイゴイスーなので、なんかこの話題ですごくだらだら話してしまった。萩の月を食べ、カヌレを食べ、アルフォートまで順番が来たところで「国語」とファイナルアンサーが下された。
全然数学なので大はずれなのだが、自分のことを一生懸命考えてくれている時間がなんだか嬉しかったし、ミドルン優しいなと思った。私はユーモアに全てを帰着させる人が一番優しい人だと思っている。

解答を知るおつきみちゃんが冒頭「服の色がヒントだよ」と独自目線のヒントを出したのに、主観すぎてフル無視されていたのが愉快だった。あとは英語科の線が浮上したときに私が英文を発音したら、それ以降英語の線がなくなったことには納得いっていない。

「数学は青色だから」とのことらしい。青?

06 | 下山ぬ

さっさと下山しようねぇと言っていたが、YAMAPを見るとなんだかんだ1時間滞在していたようだ。山頂は空いていて、流れる時間がゆっくりだ。
写真を撮って下山しようかと言って立ち上がったタイミングで、二十代前半くらいの可愛いパーティが登ってきた。慣れた手つきで写真を撮る若者をまじまじ凝視した上「あれ真似しよう」と大人気げもなく合意した。とりあえず真似しているつもりなのだが、流石に「こんな感じであってますか」と聞く勇気はないので自己満おじおばとなって無事帰路に着く。

あってる?
これはあってなさそう

下山中に「来年は若者に登山が流行るらしいねぇ」と人ごとのようにおさつと話しながら滑り降りる。ぐちゃぐちゃを心配していた登山道は、今日がそんなに冷えていないおかげか割と乾いていた。その代わりに踏みつける地面はとても硬くて骨格ナチュラルって感じだ。
いつもふんわり笑っているおさつのことを掘りたくて「案外嫌いなものの話でもその人のこと知れたりするのかなって思ってるんだけど、許せないこととかってある?」という終わってるトークテーマを選んでしまったせいで、なんだか山でネガティブな話をさせてしまって申し訳なかったなと思っている。でもその話の時も相変わらず朗らかでとても可愛らしい彼女なのであった。
行きでおつきみを奉納した枯れ木に、今回は一番大きなムンさんを入れてみたが、ザックを持っていないせいですごくここの山の住人みたいに見えて面白かった。

13時下山。どうやら富士急には行けそうだ。
車が発車する時、ムンさんが「シートベルトした?」みたいなテンションで言った「YAMAP切った?履歴がえらいことになっちゃうからね」という山の人しか通じ得ないあるあるが愛おしい。
誰かがお昼ご飯の話をしたら、途端にお腹が空いてきた。ちょうどどこも14時に閉まってしまう中途半端な下山時間。
ダメもとで電話してみたほうとう屋さんのお母さんがめちゃくちゃ優しく「あと15分くらいで着くんですけど」と言ったら「15分でも20分でも遅れてきていいわよ」と言ってくれた。でっかいお鍋いっぱいにかぼちゃほうとう、美味しかった。

07 | 富士急ハイランド

おさつの時間はギリギリだが、もう富士急に行きたくなってしまっているので、「まあ混雑状況見るだけね」と富士急に吸い込まれて第一駐車場に駐車した。それだけで成り立つような予定を下山活動に当て込めるのはリッチだ。最大瞬間風速が強いことに、なんだか刹那を感じる。
刹那とは、すなわち青春である。

おつきみちゃんは「ついに来てしまったぁー」とニコニコしながら言っていた。「一週間前くらいから心の準備ができていれば大丈夫なんだけど」とニコニコしている。つまり今は大丈夫じゃないということだね。
おさつは普通にニコニコしている。

こんな地獄の門みたいな入り口だったんだ

富士急ファンらしいムンさんは「この世で一番好きな乗り物は『ええじゃないか』だ」と言っていた。乗り物として認められるのは移動手段になるものだけだろとは思ったが、そこまで言うならぜひ乗りたい。
しかし空いているとはいえ今日は土日、人気アトラクションは60分待ちだった。雰囲気だけ味わえればいい私たちは、コスパ良く絶叫できるアトラクションを探して、『パニックロック』なるチケットを買って列に並んだ。
相変わらずニコニコしながら震えているおつきみは下界に置いていくことにする。一番苦手そうにしていたミドルンは、プライドなのかみんなに付き合って乗ることにしていてえらかった。男の子って本当に可哀想だ。
「ポケットの荷物は全てロッカーに預けてください」とアナウンスされているのを聞いて、アトラクション内にロッカーがあることを知らない私たちは、下で待つおつきみちゃんのポケットというポケットに少ない私物を詰める。

変な機械に乗りこむ前の各々の表情

「この待機列の短さで20分の待ち時間は長いな」と思っていたが、どうやら丁寧な安全装置の点検に20分の時間を要しているようだった。そりゃそうだ、てきとうな確認で空に放り出されるわけにはいかない。
セッティングをすると足が浮くが、楽しみにしている人はどうしても足をぷらぷらさせて待機する。前に座るミドルンの足は微動だにしていなくて面白かった。

よくわからない機械に命を預けて360度ぐるぐる回される。放り出された空中で視界いっぱいになるのは澄み切った青空で、ミドルンからしたら皮肉なんだろうなぁと思った。富士山は竜ヶ岳山頂で見たのとおんなじ顔で私たちを見下ろしている。
ムンさんは大爆笑しているし、前の座席にいるおさつのロングヘアが上下左右に揺れていた。カオスだ。
待っている時は「こんなもんか」と思っていたパニックロックの稼働時間は体感してみるととても長く、再び足が地面についた時にはとても疲れていた。ミドルンはちょっとだけ泣いていた。

「おかえりい」と下で待つおつきみロッカーからみんなの荷物を回収。おつきみちゃんが「あれなら乗れそう」と言うので、その隣の空中ブランコにぶん回されて私たちの青春の1ページを埋めた。
「乗れそう」と言った空中ブランコでは、おつきみちゃんもちょっと泣いていた。ずっとニコニコしていてなんて健気なんだ。

初めて富士急に来たというおさつは目をキラキラさせながら「楽しかったぁ〜〜!」と言っていた。帰る前に富士急の看板で写真を撮ったが、誰が言い出したのか当たり前のようにみんなでゴイゴイスーして、なんだか大満足して1日を終えた。駐車場に向かうとき、背に聞こえる富士急のBGMが威風堂々のように勇ましい。「なんだか戦いを終えた気分だ。アベンジャーズみたいだ」とおつきみちゃんが言っていてとても良い。

私があんまり気づいていないだけで、世の中ってひょっとしたら優しい人しかいないのかもしれない。と思うくらいみんな優しい。
高校生の時に「世の中の9割の人は優しいし、9割のことは楽しい」と言い切ったのが青さではなければいいなと思っていたが、30を超えても同じように思って生きている。

山という大きなもので繋がる私たちは、体の中のどこかの神経が同じ角度でつながっているのではないか。
人の視界は見ることができない。今自分に見えている色が、ある人に同じように見えているのかはわからない、という話を聞いたことがある。
ここにいるこの人たちはきっと、今日の青空はあの青だし、南アルプスの白はあの白だし、富士急の入場ゲートはレトロなあの赤だ。

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