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マウンテンハードウェア「Alakazam(アラカザム)」レビュー:新素材ALUULA採用のULバックパック

マウンテンハードウェア「Alakazam(アラカザム)」レビュー:新素材ALUULA採用のULバックパック

マウンテンハードウェアより、軽量性と耐久性を両立したUL(ウルトラライト)バックパック「Alakazam(アラカザム)」がリリースされました。ラインナップは、幅広い山行に対応する45Lと60Lの2サイズ展開。これまでにない革新的な素材を採用し、デザイン面においても独創的なアプローチが光ります。

特に注目したいのは、体の動きに合わせて柔軟に追従し、荷重を常に最適な位置で保持してくれる新技術「ゲイトキーパー・ヒップベルト(Gait Keeper™ Hip Belt Design)」、もう1つは背負ったまま片手で操作できる「ギディアップ・コンプレッション(GiddyUp™ Compression System)」です。

そのほかアクセスしやすいポケット配置など、実際の山行でどれほど恩恵を感じられるのか?軽量化と使い勝手を高い次元で両立させた、この「Alakazam」の実力を検証していきましょう。

Alakazam(アラカザム)の基本スペック

まずは基本となるスペックをご紹介します。私は身長180cmで「M/Lサイズ」を使用しています。側面の大型ポケットを活用することで、表記以上の収納力(45Lモデルで実質60L程度)を備えている点も特徴です。

項目詳細
容量
45L(ポケット全使用で約60L相当)
重量
800g (XS/S), 820g (S/M), 860g (M/L)
サイズ (目安)
高さ 67cm x 幅 32cm x 奥行 27cm (M/Lサイズ)
背面長
38-46cm (XS), 41-48cm (S/M), 46-53cm (M/L)
本体素材
ALUULA Graflyte™ UHMWPE 78 gsm (ポリエチレン100%)
フロント素材
105Dナイロン/200Dポリエチレン等ブレンド 3mmリップストップ

特徴1:軽量と耐久を両立した新素材「ALUULA」

アラカザムの最大の特徴は、カナダのALUULA Composites社が開発した最先端の複合素材「ALUULA(アルーラ)」を採用している点です。

UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)を核とした素材ですが、接着剤を使用していないため、長年の使用や屈曲による剥離(デラミネーション)が起きにくいという利点があります。近年のULザックで採用されることの多いUltraやDCF(ダイニーマ)との違いは以下の通りです。

素材構造の特徴

素材構造の特徴
Ultra
UHMWPEを使用しつつ、接着を容易にするため約33%のポリエステルを混紡。
DCF
UHMWPE繊維をポリエステルフィルムでサンドイッチした構造。
ALUULA
表面素材からフィルムまで100% UHMWPEで構成。

100% UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)で構成されたALUULA素材は耐摩耗性に優れており、岩場での擦れに対しても十分な耐久性を発揮します。岩稜帯の多いルートにおいて、ザックが岩に擦れても破れる心配が少ないことは、実際の山行で大きな安心感に繋がります。

また、Alakazam(アラカザム)メインコンパートメントにはシームテープ処理が施されており、ALUULA素材自体も水を吸わないため、高い防水性を備えています。通常、濡らしては困るダウンウェアなどが入っていると、少しでも保水するザックの場合は小雨でもすぐにレインカバーを被せたくなります。しかし、雨の中で立ち止まり、ザックを下ろしてカバーを取り出し、被せるという一連の作業は非常に手間がかかるものです。このザックであれば、そうした着脱の煩わしさをすべて省くことができます。雨天時の対応に追われることなく、内部の荷物を濡らす心配がないのは大きなメリットです。

※フロントポケットは防水性ではないので、雨が降って濡れては困るものは入れないように注意が必要

さらに、約130gほどある50L用のレインカバーを持ち歩く必要がなくなるため、実践的な軽量化にも繋がります。雨天時にザック自体が保水して重くなることも防いでくれます。こうしたALUULA素材の目付78g/m2という軽さとしなやかさを活かし、フレームを備えた45L(M/Lサイズ)でありながら860gという重量に収まっています。岩場での丈夫さと高い防水性、そして行動中のストレスを減らす工夫がバランスよくまとまった、実用性の高いバックパックです。

特徴2:身体に追従するヒップベルト「GAIT KEEPER」

Alakazam(アラカザム)は「GAIT KEEPER(ゲイトキーパー)」と呼ばれるヒップベルトシステムを採用しています。

最大の特徴は、中心点を軸にヒップベルトが上下に可動する仕組みです。これにより歩行時の身体の動きにザックが自然と追従し、固定式のウエストベルトと比較して股関節まわりの動きが制限されません。

そのため、岩場や段差などで足を大きく上げる際にもスムーズな足運びが可能です。足を上げたときに腰や背中にかかる重量負担が分散され、身体の力がしっかりと足に伝わります。結果として、急な登りや長距離の歩行でも不自然な力みが生じにくく、体力の消耗を抑えながら快適に登ることができます。身体の自然な動きを妨げない、理にかなった作りのザックです。

なお、状況に応じて動きを抑制したい場合は、ヒップベルトの側面に備えられたループに通し、ザックに固定するとヒップベルトの可動を程よく固定することが可能です。

特徴3:背負ったまま調整可能な「GiddyUp」コンプレッション

ザックの重みを身体に近づけ、安定した歩行を保つためにコンプレッション(圧縮)機能は欠かせません。Alakazam(アラカザム)は、側面にコードが上から下までジグザグに配置された「GiddyUp」コンプレッションシステムを採用しています。このシステムはマウンテンハードウェアが特許出願中の独自システムです。

このシステムの利点は、局所的ではなくザック全体を背中側へ引き寄せるように圧縮できることです。さらに、使用されているALUULA素材がしなやかであるため、コードを引いた際にザック内部に不自然な隙間ができにくくなっています。パッキングに不慣れな初心者の方でもスムーズにコンプレッションを行うことが可能です。

全体を均等にコンプレッションされることで、荷物の重さが身体にしっかりと近づく感覚が得られ、結果として歩行時の重心がブレにくく、安定した登山ができ、無駄な力を必要とせず登山ができます。

また、実際の行動中に非常に役立つのが、ザックを背負った状態のまま片手でコンプレッションが可能な点です。コードの先端が操作しやすい位置に設計されており、歩行中に荷物がボトムに移動して隙間ができ、コンプレッションをかけ直したい時でも、いちいち立ち止まってザックを下ろす必要がありません。

またザックをおろした時は上部からコンプレッションストラップの先端を手に取ることができるので、下からも上からも、行動中も休憩時も容易にコンプレッションができます。

さらに面白いのがこのストラップ、完全に取り外しができ、シーンに応じて自由に組み合わせられるパーツ構成になっています。カスタマイズ性も高く、持ち運ぶギアの種類や配置に合わせて、さまざまな取り付け方が可能です。左右とも簡単に着脱できるため、必要に応じてストラップの通し方も柔軟に変更できます。

上部では、携行するギアに合わせて、ストラップをギアの"中を通す・上を通す・下をくぐらせる"など状況に応じて素早く組み替えることができます。

また、前面のフロントポケットに大きめの荷物を入れた際には、ストラップを前面を横断するように付け替えることで、しっかりと荷物を固定することもできます。

下部では、ストラップをパックの底を横切るように通すことで、スリーピングパッドやトレッキングポールなど、行動中にも取り出したいアイテムをしっかり固定できます。

また、底部を締めて圧縮することで荷重を背中側に寄せられ、全体的にバランスの良い背負い心地にもつながります。さらにヒップベルトにも取り付けることができ、荷重をより安定させて腰まわりにしっかり寄せることができます。一方で、ヒップベルトから外せばパック本体だけを圧縮する形になり、腰まわりの動きがスムーズになるため、軽い荷物や不整地での動きやすさを重視する場面に向いています。

特徴4:揺れを軽減するV字型フレーム

「軽量ザック=フレームレス」という概念は、素材と技術の進化により変わりつつあります。

アラカザムには、ヒップの中心からショルダーハーネス上部のスタビライザーに向かって伸びるV字型フレームが内蔵されています。このフレームが、可動式ヒップベルトと連動することで、内部の荷物の揺れを軽減しつつ適切に重量を分散します。

肩や背中への局所的な負担が少なく、長時間の歩行でも快適な背負い心地を維持します。登山を始めたばかりの頃は、荷物をバランスよく詰める「パッキング」に悩む方も多いのではないでしょうか。背面にフレームが内蔵されていない柔らかなザックは、パッキングに少しコツが必要です。初心者の方によくあるお悩みとして、以下のような経験が挙げられます。

  • 荷物の重心が定まらず、歩行中にザックが左右にブレて疲れてしまう
  • 荷物を安定させようとコンプレッションを引きすぎ、ザック全体が不自然に曲がってしまう
  • 中に詰めたクッカーなどの硬い道具が、背中にゴツゴツと当たって痛い

しかし、背面にしっかりとしたフレームが備わっているザックであれば、こうした問題の多くを防ぐことができます。フレームがザック本来の形を保つ「背骨」のような役割を果たすため、パッキングに不慣れでも重心が安定しやすく、硬い荷物が背中に当たる不快感もブロックしてくれます。

特に45リットル前後の容量になると、持ち運ぶ道具が増える分、パッキングの難易度も自然と上がります。そのため、小屋泊、テント泊想定で使用するザックは、フレームが内蔵されたモデルを選ぶことが、パッキングの負担を減らし、快適に歩くための必須条件だと感じています。

収納力とパッキングの使い勝手(テント泊登山を想定)

容量45Lの本モデルは、パックウェイト10kg前後の装備で縦走登山を行う方に適したサイズ感です。本体の容量に加え、フロントとサイドに配置された大型ポケットにも収納できるため、すべてのポケットに装備を詰め込めば60L位の容量になります。

メイン収納部の特徴

メインの開口部は、雨の侵入を防ぐロールトップ式です。荷物の増減に合わせて上部から簡単に巻き込んでコンプレッションできるため、日によって変わる荷物量にも柔軟に対応できる実用的な作りになっています。

メインの気室は仕切りのないシンプルな寸胴型です。ボトム部分に向かって細くなっていないため、下部にも十分なスペースがあります。

テント泊装備のパッキングの際は、重心が下がりすぎないよう、シュラフやダウンウェア、テント本体など「軽くてかさばるもの」「行動中に取り出さないもの」をボトムに詰めるのが基本となります。また多くの荷物をパッキングした後にザックが自立します。ハイドレーション用のチューブポートは備わっていません。

大容量のサイドポケット

ザック本体の高さに匹敵する大容量のサイドポケットを備えています。仕舞い寸法の長いトレッキングポールやテントポールもすっぽりと収まるため、歩行中に木の枝などに引っ掛けるリスクを減らせます。

体側には切れ込みが入っており、背負ったままでもアクセスしやすい設計です。直径の大きい1Lボトル(ナルゲンなど)も取り出しにくいということはなく、様々なボトルの出し入れが可能です。

開口部が広いフロントポケット

開口部の広いフロントポケットは、行動着の収納に最適です。ウィンドブレーカーや軽量なレインジャケット、あるいは100g程度の軽いアルファダイレクトのミドルレイヤーなどをドライバッグに入れて収納しておけば、メイン気室を開けずにこまめな脱ぎ着で体温調節が可能になります。

ただし、便利な反面、パッキングには注意が必要です。ここに重量のあるものを入れたり、過剰に荷物を詰め込んだりすると、ザックの重心が後ろに偏り、歩行時のバランスが崩れる原因になります。フロントポケットはあくまで「軽くてすぐ取り出したいもの」の収納スペースとして活用することをおすすめします。

ヒップベルトとショルダーハーネスのポケット

ヒップベルトポケットはジッパーを開けると大きく開口する立体裁断が施されています。これが結構使いやすく、リップクリームや日焼け止めなどの小物が取り出しやすいのはもちろん、例えばグローブをしたままでもゴミなどを地面に落とさずに収納できます。

ショルダーハーネスポケットはソフトフラスクを収納できる深型のポケットです。

スマートフォンを入れると上部がはみ出るため、スマートフォンの収納には、このメッシュポケットの体側に備えられた「ジッパー付きポケット」の利用をおすすめします。程よく固定され、行動中の揺れも気になりません。

500mlのペットボトルはギリギリ入ります。

クッション性と汗処理について

背面パネルやショルダーハーネス、ウエストベルトなど、身体に当たる側にはハニカム構造のメッシュパネルが備わっています。クッション性がちょうど良く、背負ったときに身体へ優しくフィットしてくれます。

汗処理については「ものすごく特殊な作り」というわけではないものの、よほどの登山でない限りは汗でびしょびしょになりにくい通気性と、乾きの速さを備えた素材です。ショルダーハーネスも風が抜けるように作られていて、気持ちよく登れる工夫がされています。(ただ、実際に汗を多くかく夏山ではまだ試していないので、その点はご了承ください。)

個人的に気に入っているのがウエストベルトの硬さです。柔らかすぎず固すぎず、腰回りにピタッとフィットするクッション性が絶妙です。全体的に、ザックの「軽さ」と「背負い心地」をしっかりと両立させた素材で作られているなと感じました。

まとめ

マウンテンハードウェアの「Alakazam(アラカザム)」は、単なる数値上の軽量化にとどまらず、実際の登山における「歩きやすさ」と「扱いやすさ」を徹底的に追求したバックパックです。

本レビューで検証した主な魅力は、以下の4点に集約されます。

  1. 過酷な環境に応える新素材「ALUULA」: 岩場での擦れに対する高い耐久性と、レインカバーを省けるほどの優れた防水性を備え、雨天時や岩稜帯でのストレスと荷物の重量を軽減します。

  2. 身体に追従する「GAIT KEEPER」とV字フレーム: 上下に可動するヒップベルトが股関節の動きを妨げず、段差の多い登りでもスムーズな足運びをサポート。フレームが荷重を適切に分散し、荷物のブレを防ぎます。

  3. 歩行中も調整可能な「GiddyUp」コンプレッション: ザックを背負ったまま片手で全体を均等に圧縮でき、常に荷物を身体に密着させ安定した重心を保てます。

  4. テント泊にも対応する柔軟な収納力: ロールトップ式の開口部や大容量のサイドポケット、小物の出し入れに便利な各所ポケットなど、パッキングのしやすさと行動中の使い勝手が考え抜かれています。

45Lサイズで860g(M/L)という軽さを実現しながらも、フレーム構造やクッション性といった「背負い心地」に関わる重要な機能を一切犠牲にしていない点が最大の評価ポイントです。

パッキングに不慣れな初心者の方から、少しでも体力の消耗を抑えたいベテランの縦走登山者まで、身体への負担と行動中の煩わしさを確かな機能でサポートしてくれます。本格的な夏山での汗抜けなど、今後さらに使い込んで検証したい部分もありますが、現時点でも岩場や長時間の歩行において非常に頼もしい相棒になると感じています。

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