テント泊登山において、翌日の行動力を左右する就寝の質を上げることは非常に重要です。気温に合った軽量で保温性の高いシュラフ、自分の寝心地の好みにあったマット、安心して就寝することができるテント、そして「枕(ピロー)」です。
今回は、数ある登山用枕の中でも、高い人気を誇る代表的な軽量枕4種類を比較紹介します。いずれも軽量で、価格や特徴、形状も様々です。テント泊登山だけでなく、車中泊や旅行先にも活用できる、ご自身にとって最適な枕を見つけてみてください。
1. 今回比較紹介する軽量枕4種類のスペック一覧

今回セレクトしたのは、就寝の質を上げることを目的とした枕です。「軽すぎて寝心地が悪い」という極端な枕は省きました。いずれも100g以下の軽量性を保ちながら、快適な寝心地を提供してくれる優秀なモデルです。
| 順位・製品名 | 価格(税込) | 重量 | 厚み(高さ) | 主な特徴・構造 |
| 1. Rab / ストラスフィアピロー | ¥4,400 | 95g | 10cm | コスパ優秀、首元にフィットするスカラップ形状 |
| 2. NEMO / フィッロ™エリート | ¥7,480 | 80g | 8cm | 3Dバッフル構造、収納袋一体型で紛失防止 |
| 3. シートゥサミット / エアロプレミアムピロー | ¥6,600 | 99g | 11cm | 微調整が容易なミニバルブ、確かな安定感 |
| 4. 山旅 / ダイニーマ製リバーシブルピロー | ¥7,990 | 21g | 自由に変形 | 衣類を入れるスタッフバッグ仕様、究極のUL枕 |
【選定のこだわり】シートゥサミットには、55gとさらに軽量な「エアロウルトラライトピロー」もありますが、表面が起毛しておらず個人的にあまり好きではない寝心地なので、今回はあえて省いています。
2. 4つの軽量枕を分かりやすく比較するポイント



2-1. 肌触りと静音性(共通の特徴)
今回紹介する枕はすべて、頭や顔がつく面に起毛素材(または肌触りの良いファブリック)が使われています。そのため、汗をかいてもベタベタせず、寝返りを打った時にカサカサとした音が気になりづらいのが大きなメリットです。サイズ感も、どのモデルもしっかりと頭を包み込む大きさが確保されています。
2-2. 重量と構造の違い
「山旅のダイニーマ製リバーシブルピロー」は、内部にレインジャケット、ミドルレイヤー、着替えやタオルなどの衣類を入れて厚みを出し、枕にするスタッフバッグ仕様です。中身によって自分の好みの高さで枕を作れるのが特徴で、アイテム単体としては当然ながら最も軽量(21g)です。
その他3種類の枕は、すべて空気を入れて膨らませるエアーピロー(厚み10cm前後)となっています。
2-3. バルブ(空気口)の構造と空気調整・撤収のしやすさ
Rab & シートゥサミット(二層構造バルブ)


空気を入れる部分が非常に似た構造で、バルブが二層構造になっています。空気を入れる時は一番上の蓋を開けて、キスをするような感じで空気を入れます。内部に逆止弁(バルブ)が付いているため、空気をいっぱい入れた後に口を離しても空気が抜けません。また、このバルブを指で少し押してあげることで、空気の量を調整することができ、好みの厚みに簡単に調整できます。
空気を抜く時は、2層目のバルブを外すことで一気に空気が抜けます。そのため、枕を手で強く押しながら空気を抜く必要がなく、登山の朝の撤収が素早く行えます。この2つの枕には専用のスタッフバッグが付いています。
NEMO(口を加えて空気を入れるタイプ)

口を加えて空気を入れるタイプのバルブが採用されています。空気を入れやすいバルブですが、空気を入れた後に口を離すとそのまま空気が抜けてしまいます。そのため、空気を入れたらバルブの先端を歯で押し込むようにして、空気の漏れを防ぐ必要があります。その後、バルブを回すことで固定し、空気漏れを防ぎます。
このタイプは空気の微調整が少し難しく、「バルブを少し緩めて抜いたら、素早く押し込む」を繰り返して調整をします。また、空気を抜く時も枕を押し込みながら空気を抜くタイプです。とはいえ、空気自体は素早く抜けるので、撤収が遅くなるような心配は不要です。なお、NEMOはスタッフバッグが枕本体にくっついている(一体型)ため、テント内でスタッフバッグを探す手間が省けるという利点があります。
3. 各枕の詳細特徴レビュー
① Rab / ストラスフィアピロー


サイズ: 36×26cm(厚み:10cm) / 収納サイズ: 7×12cm
首のラインに自然にフィットする形状が背骨への負担を和らげ、リラックスした状態での睡眠を促してくれます。首と肩をサポートする「スカラップシェイプ」を採用しているのが特徴です。

カバーは完全ではないですが、取り外して洗うことができます。カバーを取り外した状態で内部を膨らませると分かりますが、左右が少し盛り上がっていて頭を包み込むような形状をしています。これによって就寝の質が高くなり、寝返りを打っても頭が枕から落ちるようなことがほとんどありません。
カバー表面には肌触りの良いソフトなファブリックカバー(50デニール ストレッチ・ポリエステル)を使用。内部の断熱材(Stratus™ポリエステル100%の中綿)により、地面からの冷気をしっかり遮ります。枕上部のインサレーションは柔らかく、湿気を逃がす効果があり、頭を乗せた時に少しふわふわとしたクッション性も補ってくれます。
マットやシュラフと枕が接する裏面側には起毛素材が使用されており、滑りづらく密着するような素材(30デニール リサイクル・ポリエステル・トリコット)になっています。中の空気が入る袋自体もしっかりと厚みのある素材で、少し弾力を感じるような特徴があるため、パンクの心配も非常に少ないように感じます。
② NEMO / フィッロ™エリート


サイズ: 39×27cm(厚み:8cm) / 収納サイズ: 8×10cm
形状はいたって普通の長方形ですが、独自の「3Dバッフル構造」を採用しているため、頭をしっかりと支えて快適な寝心地を提供してくれます。

カバーは完全に取り外して洗うことが可能です。頭側の素材は、Rabの素材と非常に似たポリエステルジャージで、非常に肌触りがよく気持ちよく就寝することができます。枕上部のインサレーションは柔らかく、湿気を逃がす効果があり、頭を乗せた時に少しふわふわとしたクッション性も補っています。
マットやシュラフとの接点(裏面)には、プリントされた素材で滑り止めが施されています。個人的にはこの「8cmの厚み」がちょうどよく、空気の調整もそれほど必要なく、シンプルに使えてとても気に入っています。ただし、「枕の高さを細かく調整したい」「硬さを頻繁に変えたい」というニーズに対しては、前述の通り少し慣れが必要なバルブ構造になっています。
③ シートゥサミット / エアロプレミアムピロー


サイズ(レギュラー): 34×24cm(厚み:11cm) / 収納サイズ: 11×8cm
※サイズは2種類から選ぶことができ、私が愛用しているのは「レギュラーサイズ」です。
形状は首のラインに自然にフィットするRabの枕と非常に似ています。頭を乗せる中心部分が少し凹んでいるため、寝返りを打っても頭が落ちづらいのが特徴です。

表生地には非常に柔らかなリサイクルポリエステルの機能素材を採用。側面には少し起毛を落ち着かせた50デニールのリサイクルポリエステル、そしてマットやシュラフとの接点には滑り止めを目的とした40デニールのリサイクルナイロンが施されています。この枕も同様に、枕上部にインサレーションが施されており、柔らかく頭を乗せた時に少しふわふわとしたクッション性を補ってくれます。
簡単に吸気・排気・微調整ができるミニバルブは、Rabのものと比べてもさらに使いやすく、空気調整を容易に行える印象です。このあたりは、使い勝手の良さとして価格差(クオリティの差)をしっかりと感じる部分です。
④ 山旅 / ダイニーマ製リバーシブルピロー

サイズ: 中に入れる衣類によって自由(重量:21g)
今回紹介する中では最も異色なアイテムですが、「こういう面白い選択肢もある」ということで紹介させていただきます。これは空気を膨らませる必要がなく、中に手持ちの衣類などを入れて高さを調整して枕として使えるスタッフバッグです。


「リバーシブルピロー」という名の通り、ザックの中に入れた濡れたもので、頭を乗せる側のポリエステル生地を濡らさないように、裏返して内側に隠すことができる設計になっています。
素材に使用されているダイニーマ(Dyneema)は、透湿性も通気性もないため、中に入れた衣類が万が一汗で濡れていても匂いが外に漏れにくく、当然ながら頭側を濡らすような心配もありません。


この枕の四方にはループが備わっているため、付属している蛍光のバンジーコードを使って、寝る時にマットへしっかりと固定して使うことができます(枕がどこかへ行ってしまうのを防げます)。
さらに、このバンジーコードを肩にかければ、簡易的なサコッシュ(ザック)にも変身します。登山終わりにお風呂(温泉)に出かける際の、衣類入れ兼スタッフバッグとしても最適で、マルチに活躍してくれます。
4. まとめ:自分に合った最適な枕の選び方
今回ご紹介した4つの枕は、どれも100g以下という軽量性を満たしながら、それぞれに異なる魅力を持っています。
コストパフォーマンスと頭を包み込むフィット感なら、バルブも優秀な Rab
ジャストな8cmの厚みと、収納袋一体型のシンプルさが好みなら NEMO
極上のバルブ操作性と、細かな高さ・硬さの微調整にこだわるなら シートゥサミット
究極の軽さ(21g)と、下山後の温泉バッグにもなる多用途さを求めるなら 山旅
テント泊登山だけでなく、車中泊や旅行など、ご自身の山行スタイルや睡眠の好みに合わせて、ぜひ最適な相棒を見つけてみてください。

