山行における装備のアップデートは、日々の歩きやすさや快適性を大きく左右します。
今回は、2026年8月に新しく装備へ迎え入れ、実際にフィールドへ投入してみて「導入してよかった」「購入して正解だった」と実感している5つの最新アイテムをご紹介します。
長年の課題を解決してくれた定番グローブの新調から、山中でのアクシデントを未然に防いだエイドツール、酷暑のハイクを支える行動食、細かなギアの携行性を高める新作ポケット、そして足回りを劇的に軽くしてくれた超軽量レインパンツまで、いずれも8月以降の実戦テストを経て確かな手応えを感じたものばかりです。晩夏から秋への山行に向け、装備の見直しを検討されている方の参考になれば幸いです。
プロモンテ:トレッキンググローブ(通常モデル/第二関節フィンガーレス)

手指の保護やトレッキングポールの操作性向上、紫外線対策など、トレッキンググローブの役割は多岐にわたります。しかし、厚手すぎると手先が鈍くなり、薄すぎると耐久性やグリップ力に不安が残るなど、理想のバランスを見つけるのは容易ではありません。そうしたなかで、実用性と使い心地の良さを高い水準で満たしているのがプロモンテのトレッキンググローブです。
重量:31g(Lサイズ)
甲側素材:ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン
掌側素材:ポリエステル、PVC

手の甲側には薄手のメッシュ素材が配置されており、汗をかいても湿気がこもらず素早く乾きます。暑い時期の登りでも着用時の蒸れ感が極めて少なく、手元を常にドライに保つことができます。一方、手のひら側には細かなドット状の滑り止め加工が施されており、岩場に手を置いた際や、トレッキングポールのグリップを握ったときに確かな吸着感を得られます。

特筆すべきは、指先のダボつきを抑えた立体的なフィット感です。手全体を包み込むような一体感がありながら、着脱もスムーズに行えます。通常タイプは人差し指と親指にタッチパネル対応素材が使われており、グローブを外さずにスマートフォンの操作が可能です。


さらに秀逸なのが、バリエーションとして展開されている「第二関節フィンガーレス」モデルです。先端の指先だけが露出する設計になっており、スマートフォンの操作はもちろん、カメラのダイヤル操作、ジッパーの開閉、行動食の開封といった指先の細かい作業がストレスなく行えます。

非常に薄手でかさばらないため、無雪期の単体使用だけでなく、冬のバックカントリーやスキーでの「インナーグローブ」としても重宝します。アウターグローブを外して手先の細かい作業を行う際にも素肌を冷気に晒さずに済み、トレイルランニングから冬期のアクティビティまで、通年で出番の多い隠れた名品です。
ティックツイスター

山を歩く以上、常に警戒が必要なトラブルのひとつがマダニによる刺咬(しこう)です。先日の蝶ヶ岳でのテント泊登山の際、特に藪漕ぎをすることもなく、整備された広い登山道を歩いていただけにもかかわらず、下山後の温泉で右腹部にマダニが食い込んでいるのを発見しました。

マダニは皮膚に口器を深く刺し込んで吸血するため、見つけたからといって慌てて指やピンセットで無理に引っ張ってはいけません。無理に引き抜こうとすると、深刻なリスクが生じます。
口器の体内残留:皮膚の中にマダニの頭部や口器が千切れて残り、局所の激しい炎症や化膿、異物肉芽腫(いぶつにくげしゅ)を引き起こす原因となります。
感染症の媒介:マダニの腹部を圧迫して引き抜くことで、ダニの体液が逆流し、体内に病原体が注入される恐れがあります。マダニが媒介する感染症には、発熱や(だるさ)、発疹を伴う「ライム病」や「日本紅斑熱(にほんこうはんねつ)」、そして血小板や白血球が減少し、最悪の場合は死に至ることもある「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」などがあり、極めて危険です。
基本的には速やかに皮膚科などの医療機関を受診することが推奨されますが、下山後の時間帯や休診日など、すぐに受診できない状況も少なくありません。その際にファーストエイドキットから取り出して役立ったのが、マダニ専用の除去器具「ティックツイスター」でした。
使い方は非常にシンプルです。


マダニのサイズに合わせたツイスターを選び、横からスライドさせて皮膚とマダニの間にツイスターの爪を差し込みます。
本体を軽く皮膚に当てた状態で、軸を中心にゆっくりと回転させます。
決して上に引っ張るのではなく、くるくると2回転ほど回したところで、マダニが口器ごと自然と皮膚から外れました。小型のマダニにも対応できる大中小3サイズがセットになっており、非常に軽量で場所も取りません。夏山から秋の低山まで、エイドポーチに必ず忍ばせておくべき必需品です。
塩チョコスプレッド & わらび餅行動食(コラビー)

登山時の行動食選びにおいて、「溶けにくさ」「携帯性」「エネルギー変換効率の良さ」は重要な要素です。気温が高い時期のチョコレートはバックパックの中で溶けてしまいがちで、一般的な市販品は砂糖が多く、急激な血糖値の上昇とその後の急降下(インスリンショック)による疲労感を招くことがあります。
それらの課題を解決すべく生まれたのが、山旅と川上製作所の「塩チョコスプレッド」です。
内容量:43g(211kcal)
原材料:パラチノース、蜂蜜(非加熱)、きび砂糖、オリゴ糖、くるみ、アーモンドオイル、天日塩、生姜、山椒など
糖質には、小腸でゆっくりと消化吸収される「パラチノース」を5,000mg配合しています。血糖値の急激な乱高下を抑え、持続的なエネルギー供給をサポートしてくれるのが大きな特徴です。非加熱の蜂蜜の自然な甘みに、天日塩の塩気、生姜や山椒のスパイス感が絶妙に効いており、汗をかく過酷なハイクアップの合間でも飽きずに美味しく補給できます。

手のひらに収まるスリムなパウチ設計のため、サコッシュやバックパックのショルダーポケットに収まりやすく、片手で素早く摂取できます。43gで211kcalという優れたエネルギー密度を誇り、1日で使い切れる容量設計のため、下山時には軽量なゴミとして持ち帰ることが可能です。

また、同じく川上製作所が手掛けるクラフト行動食「コラビー」も、山行のお供として優れた選択肢です。
クラフトコーラ風味のわらび餅(コラビー):南高梅、きび砂糖、本わらび粉、蜂蜜をベースに、生姜、シナモン、クローブ、カルダモン、ブラックペッパーをブレンド。甘さ控えめでスパイスが香り、疲れた身体にすっと染み渡る味わいです。
梅酢仕立てのクラフトコーラわらび餅:南高梅から梅干しを作る工程で生まれる「梅酢」を、水を一滴も加えずに抽出して使用。自然なクエン酸の爽やかな酸味が際立ち、乾いた喉や疲労感のある身体を心地よく潤してくれます。
果物発酵エキス仕立てのわらび餅:果物由来の発酵エキスを取り入れた、身体への優しさに配慮した仕様。長丁場の山行でも胃腸に負担をかけにくい、すっきりとした口当たりが特徴です。
口当たりがつるりと滑らかで、行動中の呼吸が乱れている場面でも無理なく飲み込めるため、固形物が喉を通りにくい場面での心強いエネルギー源となります。
山旅 × 山の帆布工房:トレイルユーティリティポケット

バックパックを背負ったまま、使用頻度の高いアイテムへいかに素早くアクセスできるかは、行動中のリズムを保つうえで重要です。「トレイルユーティリティポケット」は、細かなギアの持ち運びを効率化するために開発された汎用性の高い外付けポケットです。


重量:約36g
外寸サイズ:11.5 × 18cm
素材:リップストップナイロン(ナイロン93%・UHMWPE)、富士金梅 帆布、スチール
カラー展開:3色展開


本体のメイン収納部には適度な保護クッションを備えており、傷つきやすいサングラスやスマートフォンの定位置として機能します。モバイルバッテリーやケーブルなどの電子機器を保護しながら携行するのにも適しているほか、行動中に出た細かな行動食のゴミを一時的に放り込んでおくダストスペースとしても重宝します。


外側には、片手でもスムーズに開閉できるスナップボタン式のサブポケットを配置しました。サングラス拭き、行動食、ティッシュ、リップクリームなど、立ち止まらずにすぐ取り出したい小物を分けて収納可能です。


耐久性に優れる超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)混紡のリップストップ生地と、使い込むほどに馴染む上質な国産帆布(富士金梅)を組み合わせることで、軽量性とタフさを両立しています。取り付ける位置や収めるものを選ばず、歩き方に合わせて柔軟に使いこなせる実用的なポーチです。
モンベル:ドライテック U.L.レインパンツ

夏山の装備軽量化を図るうえで、大きな効果を発揮するのがレインウェアの見直しです。無雪期の雨具として新たに導入したのが、モンベルの「ドライテック U.L.レインパンツ」です。
重量:117.5g(本体実測値/スタッフバッグ8.5g、総重量126g)
素材:7デニール・ナイロン・リップストップ(スーパードライテック)
透湿防水素材には、非常に薄くしなやかな7デニールの「スーパードライテック」を採用しています。スタッフバッグへの収まりが極めて良く、パッキング時に余計なスペースを取りません。

サイズ展開の豊富さもモンベルならではの強みで、股下長さに応じてショート・レギュラー・ロングが用意されています。今回は足元のバタつきを最小限に抑えるため、「S-L(Sサイズのロング丈)」を選択しました。風が吹き抜ける稜線では、オーバーサイズのレインパンツが風を孕んでバタつき、足さばきを妨げる原因になります。足を大きく上げた際にわずかに足首が覗くものの、横幅のだぼつきがなく、すっきりとしたシルエットで足元が視認しやすい絶妙なサイジングです。

軽量化のため裾のジッパーは短めの設計ですが、27cmのトレイルランニングシューズを履いたままでも脱ぎ履きが可能でした。内側を泥で汚さないよう丁寧に通す必要はあるものの、急な降雨時にも靴を脱がずに素早く着用できます。
直接肌に触れるショーツとのレイヤリング時も、裏地の細かなニット素材が効いており、汗によるベタつきや吸い付き感が抑えられています。

さらに使いやすさを感じたのが、ウエスト部分のミニマルな仕立てです。フラットな平紐とシンプルな伸縮ゴムバンドで構成されており、バックパックのヒップベルトと干渉しても腰回りがゴロゴロしません。長時間の歩行でウエストが緩んでずり落ちてくるストレスもなく、終始快適な歩行感を保ち続けてくれます。
実用性を重視した装備選びは、山行中の小さなストレスを削ぎ落とし、安全で心地よい行動につながります。自身の山行スタイルやフィールドの環境に合わせて、装備をアップデートする際の参考にしてみてください。

