ニュージーランドで行われるアドベンチャーレースの出場はこれで2回目。ニュージーランドの自然は人間より圧倒的な存在感があり、挑戦に最高に相応しいところだと思います。今回のアドベンチャーレースの名前は『GODZone』。神の領域と呼ばれるこのレースでは、美しい景色、厳しい景色と向き合いながらゴールへと向かいます。
アドベンチャーレースGODZoneに挑むチーム構成
今回のGODZoneで組むチームはAdventure Team Real Discoveryという私を含むチームと、サンコンズという2チームの混成チームで挑みます。
Real Discoveryは2010年から海外レースに参加していますが、そのノウハウを若いチームに伝えていくことも使命と考え、2016年から国内アドベンチャーレースに参戦し海外レースを視野に入れてトレーニングに励んでいるサンコンズの男性キャプテン「よね」と女性メンバー「なつ」の2名をReal Discoveryに迎えてGODZoneに挑戦しました。
メンバーそれぞれのキャラクターですが、「ごおし」の特技はナビゲーション、バイク、パドリング。よく食べよくしゃべる、子供がそのまま大きくなったような41歳。海外レース経験が豊富で夜のナビゲーションや藪こぎが強い。
「よね」の特技はバイク。寡黙だけど闘志は強く、いたずら好き。キャプテンとしての素質は高い。
「なつ」の特技はトレイルラン。しっかりもので気が利き、常にチームのことを考えている。料理が上手でレース前後では美味しいお料理でおもてなしをしてくれました。
そして私「はな」はのんびりしておっちょこちょい。特技やスキルはないけど根性だけでやってます。
レースに挑むための綿密な準備
さて、レースは人が入らないリモートエリアで、チームで10日間を過ごす訳ですから、リスク回避のためにもチームメンバーのことをよく知っておくことが重要でした。例えば、歩くスピードは?という基本的な情報から始まり、睡眠時間が削られたときにどのような行動をとるのか?食事や水分の摂り方は適切か?寒さ暑さのどちらに弱いか?などです。
これらはチームで過ごす時間が長ければ長いほど、またそれがレースに近い環境であればあるほどチーム理解は深まり、戦略が立てやすくなります。今回、Real Discoveryのごおしとはなは東京在住ですが、よねは栃木、なつは愛知と、距離が離れたところにいてチーム練習の機会が十分に取れるか心配がありましたが、よねとなつが頑張って東京に足を運んでくれて、実際のところ月1回以上顔を合わせることができました。
東京都内の御岳を中心にパックラフト&トレッキングを練習しつつ、なつの地元の愛知県でMTBとトレッキングの1泊2日練習をしたり、年末年始にはよねの住まいに近い那珂川を舞台に、那珂川源流までMTBとトレッキングで遡上してパックラフトで下ってくるという、名づけて「那珂川エクスペディション2泊3日」なんていう壮大なトレーニングも敢行しました。
そうしたトレーニングでチームのことをよく理解しているつもりでいたのですが・・・。ただ、どのトレーニングでもテントで仮眠をしてしまい、2日以上寝ないで動いたときにどうなるか?という検証が十分でなかったことが唯一心配でした。この心配がレース中に響いてくることになります。
レースに挑むための必要な装備
GODZone公式ウェブサイトには各競技(トレッキング・カヤック・パックラフト・MTB)に対する必携装備リスト(必要最低限の装備でもある)が公開されています。また、レースまでに3回発行されたニュースレター、レース1週間前に公開されたロジスティックプランナーの情報から、その他の必要な装備を検討しました。
一度に携帯するアイテム数の多かったStage3(パックラフト&トレッキングセクション)の装備を紹介します。チームで1つでいい装備も含まれているのですが、重量は重いメンバーで20kg程度になります。
- パックラフト(アルパカラフト)&リペアキット:2人乗りを2艇持っていきました。これだけで5kgほどの重量に。
- ポンプ:パックラフトを膨らませるための電動および手動ポンプ。※秘密兵器として「Max Pump」という小型の電動ポンプを使用し5分以内にパックラスト準備を完了させる作戦をとりました。
- スローバッグ(Fine track, モンベル):レスキュー時に使用する。
- グロースティック:夜間漕ぐ際に光らせる。
- パドル(Bracaなど、2ピース以上に分解できるもの):※藪こぎ対策のためザックからはみ出る部分が少なく動かないように固定します。
- 2mm以上のウェットスーツ(モンベル):必携装備。※今回、女性メンバーは背負う荷物を減らす&渡渉時の体温低下を防ぐため装着してトレッキング、男性メンバーは暑さ回避のために背負っていました。
- スリング&カラビナ:必携装備
- PFD&ナイフ(モンベル):必携装備
- ホイッスル(モンベル):必携装備
- ヘルメット(モンベル):必携装備
- 白色灯:必携装備。夜間走行時に点灯。
- ドライバッグ(モンベル、Sea to Summit):パックラフトの際、ザックを入れる用。45~65Lの大きさを使用。
- 長袖ベースレイヤー(モンベル):必携装備
- レイン上下(モンベル):必携装備
- テント&ポール(モンベル ステラリッジ3):必携装備
- ジェットボイル&ガス(現地調達):必携装備
- ファーストエイド:必携装備
- 赤色発煙筒(現地調達):必携装備
- イエローブリック(主催者提供)&エマージェンシービーコン(GPS位置情報発信装置:日本で購入)
- コンパス&マップ:必携装備(主催者提供)
- ポケットナイフ:必携装備
- ヘッドライト&スペア(SILVA):必携装備
- ストロボライト:必携装備
- 水1~2L:沢水が豊富にあるため最低限の持ち歩き。ボトル&ハイドレーション。
- 食糧2.5日分:チーム想定57時間から。
- ザック:これらをすべてきれいに収納でき長時間行動しやすいザックを見つけるのも一苦労でした。結果的に、オスプレイ、NorthFaceを使用しました。
レースに挑むための必要な山ごはんを想定
日本から持っていったもの
選んだポイントは、行動しながらの食べやすさ、軽くてカロリーが高い、ずっと食べ続けていられる味。食事は基本的に止まって摂ることはしません。ですので、チェストホルダーのボトルに食べやすい行動食を入れ常に食べています。
私、はなの場合は柿の種・ベビースター&フルーツグラノーラ(+ミールプロテイン)でした。途中やっぱり味に飽きたので、他のメンバーのナッツボトルと交換して凌ぎました。あとは気分あげる用としてグミを持っていきました。果汁グミとコーラグミです。コーラを飲みたいようなときはグミで気分を味わえます。
キャプテンのごおしは、ずっと”さきいか”を食べてましたね。お徳用のでっかいパックのやつです。
今回のレースでは沢の水は豊富ですがドライフードを水で戻す時間も節約したいため、水を必要としなくても食べられるものが最適と考えました。そこで持っていったものがモンベルの「リゾッタRISOTTA」とカモシカスポーツの「山飯」。
リゾッタはご飯をフリーズドライにしたもの、山飯はお米を揚げたもので、どちらも水なしでも美味しく食べられます。食感は、リゾッタはあられ、山飯はおかきの様で食べやすい。水やお湯で戻す場合でも3分と早い。山飯に関しては1袋で500kcal以上摂れるため、非常に重宝しました。
現地で調達したもの
現地でも食糧を調達します。タンパク源になるジャーキーは持ち込みが禁止されている食材のため現地で購入しています。行動中の補給食として食べています。
その他は、主にトランジションエリアと呼ばれる競技変更の場所に届けられる予め自分たちで中身を準備したギアボックスに入れておきます。
ビタミン補給に美味しいフレッシュフルーツ!りんご、バナナ、プラム。フルーツゼリー。これを摂取できるとかなりのリフレッシュが期待できます。また、でっかいバナナパウンドケーキはしっとりしていて美味しくカロリー摂取ができるのでトランジションではかぶりつきます。
ジャンクフードのポテトチップス、高カロリーチョコクッキーは疲れたときには最高のご馳走になります。Snakeとネーミングされた細長いグミも高カロリーかつ行動食として補充する用に入れています。また、ドリンク系として、紙パックのプロテインドリンクと、パワーの源・缶コーラ!これに出会えたトランジションではみんな飛びつきます。
前述したとおり、やっぱり日本の食材だよね、ということでドライフードのお米を沢山持って行った訳ですが、こちらのアドベンチャーレーサーが食べているドライフードも気になる、ということで購入した緑のこちら「Back Country Cuisine」。
ビーフストロガノフ、タイカレー、クスクスサラダ、ブルーベリープディング・・・と、何十種類も美味しそうなメニュー名が並んでいます。しかも175gで700kcal以上と高カロリー!試しにみんなで食べてみました。するとこれがめちゃくちゃ美味しい!!ビーフは高野豆腐みたいな食感だったりするのですが、日本から持ってきたドライフードと違って具材が沢山入っているし、味がしっかり完成されていてメニュー名を裏切らない。
クスクスサラダなんて水で戻して本当に冷たいサラダ感覚で食べられますし、プディングに至っては甘くて美味しいデザート!即、チームで大量購入して、半分くらい食糧を入れ替えました(笑)
レース中疲労し食欲が沸かないものには手が伸びなくなるようなことがあるとエネルギー不足を引き起こします。特に運動強度の高いアドベンチャーレースでエネルギー不足は大変危険です。今回もメンバーのよねが食べるタイミングを逸してしまったことから低体温→発熱→食欲不振→低体温・・・の負のスパイラルに陥ってしまいました(その後、
今回自分の発見として面白かったのは、前回の海外レースでとても美味しく感じて毎回食べていたソイジョイチョコ味が、今回のレース中はそこまで美味しくなかったこと。毎回のレースで好みは変わってしまうのは今後ちょっと考えものですね。
今回のアドベンチャーレースは、ほかのアドベンチャーレースと何が違うのか
わたしはこれまでに2016年XPD世界選手権しか出場したことがないので比較対象が1つですが、その時経験したXPDレースと違ったのは、同じリモートエリアが舞台としても、GODZoneでは相当はるか遠くのリモートまで行かされたと思います。
実際、よねがヘリで救助された際、残ったメンバー3名は2日間かかる次のトランジションエリアまで自力で行くことを言い渡されましたからね。あー私は人の手の届かないところにいるんだ、生きて帰らなければ!と腹をくくったのを覚えています。
その他としては、1ステージがXPDより長い。今回リタイヤしたステージ3は、トップチームでも70時間(約3日)以上、有名なチームでも120時間(5日間)掛かっていました。主催者が予測した最終チーム予想が60時間だったのですが、この予測はあてになりませんね(笑)長ければ長いほど食糧や装備に気をつけなければなりませんので、よりリスクが高いレースと言えます。
ここで国内レースの話もしておくと、現在の国内レースは1日完結や2日ステージレース(1日目夜に就寝して翌日リスタートする)が多く、5日間以上ノンストップで定義されるエクスペディションレースとは全く異なります。近年は、海外レースへの橋渡し的レースとして、2日間ノンストップの上越国際アドベンチャーレースや2.5日間ノンストップのReal Questというレースが開催されています。それらは国際レースルールに準拠していたり、要求されるスキルが高いため、海外レースにより近いレースだと思います。また、
次の回はレース中の出来事などをより詳細に綴っていきたいと思います。みなさんお付き合いくださいませ。
Real Discovery・GODZone2018報告会
5/6 名古屋(https://www.facebook.com/events/2026148090974294/)
5/19 東京(https://www.facebook.com/events/223559435053384/)
5/20 宇都宮(https://www.facebook.com/events/431832613915847/)