「はじめチョロチョロ中パッパ、赤子泣いてもふた取るな」とは、その昔、かまどでごはんを炊いていた時代に、おいしく米を炊くための火加減についてまとめた言葉のようです。
言われ方はいろいろあり「はじめチョロチョロ中パッパ、ジュウジュウ吹いたら火を引いて、ひと握りのわら燃やし、赤子泣いてもふた取るな」という長いパターンのものもあります。
今は炊飯器がすべてを行ってくれますが、その昔はかまどで火加減を調節して、その日のごはんをこしらえていたのでしょう。情景が浮かびあがります。
登山で米を炊く時には、炊飯器を持っていくわけにはいかないので、昔の人たちのように火加減を考えて米を炊く必要があります。またかまどのような大そうなものをこしらえることはできない(石や木があり、直火が問題ないフィールドではかまどを作ることも出来ますが)ので、小さな焚火や、コンロなどで米を炊くことになります。
登山で米を炊く
炊飯器で米を炊く時に必要となる時間はどれほどでしょう?早炊きメニューで40分ほどでしょうか?登山では10~15分という短い時間を使って米を炊くことになります。あまりにも早いので、家でしか米を炊いたことがない人にとっては、「こんなに短い時間でいいの?」と疑問を感じて、はじめての米炊きでは焦がす人が非常に多いのも事実です。
この短い時間の中で音と匂いを感じ取って、おいしいごはんを炊き上げます。
米を炊く1:はじめチョロチョロ
はじめは火加減をチョロチョロとした弱火にします。最初に弱火で鍋全体を温めることでムラなくお米に水分を吸収させることが出来ます。
米を炊く2:中パッパ
その後、一気に強火にして沸騰をさせます。沸騰しはじめるとシューシューと湯気が出て、白い汁が吹きこぼれる事でしょう。ふたもカタカタと動きます。このとき、重しを蓋にのっけって中の水蒸気を閉じ込めると美味しく炊くことが出来ます。
米を炊く3:ジュウジュウ吹いたら火を引いて~ひと握りのわら燃やし
ここは、僕は省いてしまうのですが、沸騰したら火を少しづつ弱め、沸騰を維持したままにします。ひと握りのわら燃やしでは、最後の最後に加熱をして、余分な水分を飛ばすという行程です。
米を炊く4:赤子泣いてもふた取るな
加熱後にすぐふたを取るのではなく、高温でしっかりと蒸らしましょうというプロセスです。
これらのプロセス時に、鍋の中からは様々な音がします。はじめチョロチョロでは音はほとんどしません。徐々にグツグツと音がしてきて、中パッパでは、最高潮にカタカタとフタが踊りはじめ、湯気が吹く音がします。ここからが集中が必要な段階になってきて、水分がなくなると同時に再び静かになります。「焦げないかな~」という心配が湧いてくるのも、このあたりで決して蓋をとってはなりません。ピシピシッとお米が跳ねるような音がしたら出来上がりです。
米を炊くまでの3つの段階
ここまでは炊く時の重要ポイントの紹介でしたが、炊く前後にも重要な段階が存在します。1つは、米を洗って充分に水を吸わせる段階です。米を洗ってすぐに炊くと、米の表面だけに水分があるので、表面だけ柔らかく、中が固いままになり、しんのあるごはんになってしまいがちです。米は洗ってから30分は炊かずにじわじわと表面にある水分を中に伝わらせてあげましょう。
しんの状態にもよりますが、もしもしんのあるごはんになってしまったら、酒を少しふりかけてもう1度ふたをし、30秒ほど強火にしてから蒸らすとしんが軟かくなります。
2つめは火にかけてたく。これは前述した通りです。
3つめは火を止めて蒸らすことです。蒸らしの時間は約15分です。この時に鍋をひっくりかえす人もいて、僕もその一人ですが、ひっくりかえす必要はないようです。鍋や飯盒からお米が飛び出してしまうリスクがあるので、何もしない方が良いと思います。
このように考えると、洗う時間5分、洗ってから放置しておく時間が30分、炊く時間が10分、蒸す時間が15分、合計で1時間かかるので、お腹がすきはじめてからでは遅いことが解ります。しっかりと考えて米の準備をすることも野外活動では重要です。