この物語は大学仲間4名が43歳になり、1年に1回催す飲みの席で、ふとしたきっかけで登山の面白さを語りだしたことが発端となる。

    主演はK。彼以外の3人は登山経験者であり、登山の話についていけないKは悔しかったのだろう。「登山は興味あるなあ~。体力には自信あるし、みんな連れていってくれよ!」と柄にもないことを口走った。

    そのとき僕は思ったのだ「年を重ねるにつれて、夢を語って、次の日には忘れる。そんな時間に意味があるのだろうか?有言実行で語り合える仲間こそ、本当の友達だ」と。そして僕は言った。よし登ろう。絶対に登ろう。

    その日のうちに登山をする日を決め、その日のうちに登る山を雲取山と定め、その日のうちにLINEで「いざ雲取山」というグループを作りコミュニケーションを始めたのだった。登山決行日は1.5ヵ月後と定め、各自で減量、トレーニングに励むことを約束した。

    塔ノ岳 登山までの準備

    塔ノ岳 登山までの準備

    ゴールデンウィーク明けの5月中旬、その日はやってきた。待ち合わせした駅は奥多摩ではなく渋沢駅。雲取山ではなく、大倉バス停から塔ノ岳のピストンに変更。

    登山経験のない人が初回から塔ノ岳を目指すのはハードルが高い。だから途中途中の山小屋で休憩しては、無理せず引き返すことを念頭におくことにした。ちなみに雲取山と塔ノ岳の比較をすると。

    このように比較すると難易度がわかりやすい。

    以下はKからLINEできたメッセージ。登山初心者が登山経験者として成長するまでの道のりを辿ってもらえたらと思う。

    塔ノ岳 登山までの準備

    K「しゅーずはこれじゃ駄目だよな?エア入っているけど」

    D「磨り減っているじゃん」

    塔ノ岳 登山までの準備

    T「トレラン用シューズはこんなかんじ」

    そうしてKはシューズを購入した。シューズを購入するときも、皆から

    • 足の形は人それぞれだから、ちゃんと足入れて歩いて心地を確認すること。
    • 登山靴でみかけるハイカットは小さな石が靴に入りづらいとか、踝を守るとか、そういったことに有効だけど、捻挫になりにくいというのは間違い。捻挫をするときはハイカットでもする。行く山はガレ場も少ないからハイカットにこだわることはない。
    • ゴアテックスなどスペックが高いものを選ぶのも良いけど、最初の登山なのだし、履き心地がよく、その上で登山が楽しいと思えたら検討するのが良いと思う。2泊以上の天気が読めない縦走登山では、防水性能は検討しないといけない。などなど
    塔ノ岳 登山に挑む為の登山靴

    まあ皆で好き放題やりとりして、結果Kが選んだのがサロモンのハイキングシューズ。僕やトレイルラン好きのTはトレランシューズという出で立ちで挑んだ。因みに今回の登山で皆に美味しい山ごはんを振舞いたかった僕は、カレーを作ることにした。そんなプランでの登山装備は以下の通り。

    • 帰りの着替え
    • ファーストエイド
    • スプーン
    • 水筒
    • 行動食
    • クッカー
    • ストーブ
    • 米(各自1合ぐらいで無洗米)
    • 防寒着
    • レインウェア
    • カレーの具材
    • 日焼け止め
    • サングラス
    • 帽子
    • タオルやてぬぐい
    • ティッシュ
    • ゴミ回収用のビニール
    • カメラ

    装備品は以上。これらを分担するのが普通だが、今回は道具も持っていて、塔ノ岳へは何度も足を運んでいる僕がランチの食材、クッカー、ストーブを持った。それでも登山とはこういうものという経験も大事だからKには魚肉ソーセージとカレールーを持ってきてもらった。

    塔ノ岳 登山開始

    塔ノ岳 登山開始
    塔ノ岳 登山開始

    歩くこと数分、Dは山の植生に詳しい。これはヤマイモで、こっちはモミジイチゴ、葉で樹木を見分ける方法。成長しすぎて食べごろではないけど、これがタラの芽など色々と教えてくれる。ここは国定公園だし、これは地主さんがいる土地だろうから採取はだめよ、とルールなども説明してくれる。

    塔ノ岳 登山開始

    見晴らし茶屋手前の休憩場で一休み。
    K「まだまだ平気だな。この調子だったら塔ノ岳は行けそうだぞ」と意気込みがある。僕は塔ノ岳までの途中の長い階段や、駒止茶屋前のキツイ勾配などを知っていたので、これからが大変だぞ。そして下山の方が脚に来るから今のうちからケアしておいたほうがいいぞ。と念をおした。

    植生に詳しいDは「やべえ、キツイ」と弱音をはく。今僕はこの記事を書いていて、過去のラインのやりとりを見ている。Dはこう綴っている「登山までに5キロやせるわ」と。その腹のでっぱりは1.5ヶ月前の飲みより目立ち、5キロ太ったのでは疑惑が、今僕の頭に浮上する。

    塔ノ岳 登山とKの家族

    塔ノ岳 登山を楽しむ

    Kは言う「登山が近づくに連れて楽しみと同時に、今までにない不安が募っちゃって、そんな俺の状態を知ってか知らぬか、下の娘に登山前日、登山行っちゃ駄目!とか言われちゃってさ。だからパパ大丈夫だよってメッセージしてあげたいんだよね。」と心温まるエピソードを聞く。そうしてパシャリ。僕は「この笑顔が頂上でもあることを祈るぜ!」と憎まれ口をたたく。

    塔ノ岳 登山を楽しむ

    僕にとってはいつもの登山で、練習にはちょうどいいと思える登山コース。でも本格的な登山初体験のKにとってみたら家族の問題なんだよなと、安全な身でKを家に送ることを改めて強く考え、気を引き締めた。

    塔ノ岳 堀山の家

    塔ノ岳 堀山の家
    塔ノ岳 堀山の家の休憩場

    丹沢大倉尾根の中腹950mにある堀山の家に到着。この時点で遅れをとっていたDの到着を待つ。到着すると一言「駄目だ、俺は。ここで引き返す」と。皆で引き返すという手段もあったが「カレーどうする?」という質問に「まだお腹空いてない」というやりとりがあり、Dから「俺のことはいいから、頂上までいってカレー食べてきてよ。俺は写真を楽しませてもらうよ」と提案があり、Dのもってきたシャウエッセンのソーセージを託され、ミニトマトをつまみ(山で食べる生野菜は旨い!)、ここで残念だったがDと別れた。

    塔ノ岳 堀山の家の休憩場
    塔ノ岳 で水を飲む

    Kは自宅から凍らせた塩水を持参していた。これをソフトフラスコのような容器で持ってきて、500mlのペットボトルに入れ替えていた。そこで使っていたアルミのじょうごを使った水の持参方法に新鮮さを感じた。

    塔ノ岳登山の動画撮影

    TはSONYのアクションカメラ「HDR-AS300」を持ってきていた。「これ凄くコンパクトでしょ。俺が持っているのは4K対応じゃないのだけど結構綺麗に映るんだよね。」と見せてくれた。更には写真もとれて便利ということ。このアクションカメラで撮影しれくれた動画を後日編集をして共有してくれた。動画っていいなあ~。

    塔ノ岳頂上まで残りわずか

    塔ノ岳頂上まで残りわずか

    堀山の家を過ぎると、いよいよ勾配もきつくなり、長い長い階段をひたすらに登っていく。「これはD、折り返しておいて良かったよ」と皆で意見を交わす。登山では無理は禁物。そして下山のほうがラクだと思いがちだが、足に痛みがくるのは経験上、圧倒的に下山のほうが多い。

    塔ノ岳からみる富士山

    徐々に樹林帯から抜けて景色に広がりが出てくる。富士山もくっきりと拝めた。塔ノ岳の登山でここまで綺麗に富士山を見ることができたのは初めてだった僕は素直に感動した。

    塔ノ岳からみる市内の景色

    花立山荘からは秦野市、平塚市、茅ヶ崎市、その先に見える相模湾までと一望でき、その景色は圧巻だ。

    塔ノ岳頂上まで残りわずか

    この花立山荘を越して歩いていくと塔ノ岳頂上が見えてくる。あともう少し!と笑顔に包まれる僕ら。

    塔ノ岳頂上

    頂上が見えると到着は早い。多くの登山客で賑わう塔ノ岳頂上に到着。ちょっと遅れて到着したKにカメラを向けると映画プラトーンのように天を仰ぐ。山腹で撮影した写真とは違い、達成感もひとしおのようだ。

    塔ノ岳頂上からの水場へのトレイル

    僕とTにはもう1つの仕事が残っている。それは300メートル下って水をゲットしてくること。Kは下山の体力を残してもらうために場所取りと荷物の見張りをお願いした。

    塔ノ岳近隣の水場

    水場までは勾配が強く、頂上到達の満足のあとには体にこたえる。水場はちょろちょろと頼りない水量だったが、冷たく美味しい水だ。

    塔ノ岳頂上で楽しむランチ

    塔ノ岳頂上で楽しむランチ

    戻ってからはカレーの支度。頂上でお米を炊いて、大きな焚き火缶でカレーを作っているのはきっと僕らだけだろう。疲れた体にピリリと香辛料の効いた、炊き立てのお米と一緒に食べるカレーは格別に違いない。

    まずは鍋に持ってきた無洗米をあけて、水を手の甲の高さほどまで入れる。そのあとは放置。

    塔ノ岳頂上で楽しむランチ

    次にもう1つの焚き火缶に火をかけ、油を垂らしたら、ショウガとにんにくを炒める。焦げないように気をつけて、自作のガラムマサラを投入。自作といっても、家に残っていたクミンやチリなど適当なものを各大さじ1ぐらい混ぜたもの。でもこれが本格的な味わいのカレーにしてくれる重要な調味料になった。

    塔ノ岳頂上で楽しむランチ

    この後、刻んできたにんじん、じゃがいも、たまねぎを投入し軽く炒める。そして魚肉ソーセージとDに託されたシャウエッセンのソーセージを手でちぎって鍋に投入。

    塔ノ岳頂上で楽しむランチ

    300メートル下で汲んできた山の水を入れて蓋をして待つ。沸騰したら、鍋を交換して米を炊く。こうすることで、炊飯中にカレーのほうは余熱で野菜が柔らかくなる。米が炊けるのはおおよそ10分。音がグツグツからパチパチと変わり静かになってきたら、香りの違いに集中。焦げ臭くなるだろう直前に火から鍋をおろして放置。

    塔ノ岳頂上で米炊き

    次にカレーの鍋に変えて引き続きグツグツと煮立たせる。にんじんとジャガイモの硬さをチェックしてカレールーを投入し出来上がり。お米も上手に炊けた。

    塔ノ岳頂上でカレー

    カレーはいつも沢山作ってしまう。案の定今回も作りすぎ。それでも完食しないと下山できないからKが多めに、僕とTはがんばれ!と応援役に。

    片づけを済まして下山開始。下山の終盤でKはかなり足の痛みを訴えていた。誰もが必ず通る道のように、下山時は生まれたての小鹿のような足取りになる。

    塔ノ岳登山の疲れを癒す

    途中の休憩場には大人2人が横になれるようなスペースがあり、そこで僕が整体でうけている按摩を施し、痛みが和らぐ3種類のストレッチを教えた。

    按摩は大きな筋肉であるお尻を柔らかくする目的。硬くなった筋肉がほぐれることで、腰や足がラクになる。「おお調子いい!」と足取りが幾分軽くなって大倉バス停に到着できた。

    塔ノ岳登山を祝福

    各自で色々と課題が見えたようだった。ギアを揃えなくてはという意見、痩せなくてはという意見、鍛えなくてはという意見。なんとも貴重な時間だったとつくづく思う。

    次は雲取に挑戦する。その後にも幾つかの登山を行い、最終的には皆で八ヶ岳の最高峰、赤岳に登頂するというのが目標になった。飲み会の会話、明らかに変わるだろうなあ~なんて思いながら、素敵な時間を仲間と共に出来たことが嬉しく、登山という趣味をもてたことにありがとうと言いたい。

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