農大山岳部で登山の楽しみと厳しさを学びました。現在はOBとして、そして指導する身として関わり続けています。
学生の4年間では登山の基礎を学ぶことを基本としているので、ライト&ファストといった軽量な装備を背負って、早く山の中を移動するという考えはありません。反対に非常に重い荷物を背負って身も心も鍛えてきたという印象です。
いわゆる重量のあるものを背負って山を登る。その上で起こる危険と対峙してスキルを磨いていくのです。だから登山を始めようとする人が、いきなりライト&ファストでというのに違和感があるのは、大学での山岳部の経験が根付いているからだと思います。
学生のころに持ち歩く装備で、重量の占める割合が一番大きかったのがテントです。我々農大山岳部のテントは昔ながらのウィンパーテントで非常に大きく、頑丈です。
大きさは1つのテントで10人ぐらい寝むれるほどの大きさです。テント内の高さが、一番高いところで170センチぐらいあって空間はとっても広く快適です。ポールを3本使用して合掌造りのように組み立てます。組み立て方も珍しければ、見た目も珍しいテントです。
生地はコットンとポリエステルを混紡したような分厚い生地で火の粉にも強く、耐久性が非常にあります。1年に何度も登山に出かけてその度に使用して10年ぐらいは使用しています。素材や我々の使い方の問題もありますが、これがいま主流の生地の薄い軽量ドームテントだと、そこまでもたないはずです。テントの外側には大きく農大って書いてあるので、見かけたら一発でわかると思います。
テント内は非常に快適です。多くのメンバーが揃って食事を囲むことも可能です。テントは暖かいというよりは、よくいえば涼しく風が抜けるような作りです。ダブルウォールなんていう代物ではないので、雨が降ればところどころから水が染みて、ポタポタと垂れてきます。
こういう経験をしていると、道具に過剰に頼ることがなくなります。もしも装備に不具合があっても修理して大切に長く使い続けることができます。改めて装備のことを考えると、大学山岳部の経験は偉大だったなあと考え深いです。