4泊5日の縦走クライマックスとなる光岳。光岳山頂の南西直下に位置する遠州から、光岳方面を見ると、夕日に照らされて白く光って見える光岩と呼ばれる石灰岩の岩峰があり、これが山名の由来であるという。南アルプス最南端に位置する光岳はどのような景色なのだろうか。
※南アルプス大縦走の表紙記事では、全体を俯瞰した情報・装備・食料の情報を確認頂けます。
4日目の登山ルートについて
上記は「山と高原地図ホーダイ」というアプリで作った登山ルート。
本日の縦走は平面距離で約18キロと4泊5日の中では最も長い距離となる。累積標高は1,566mで疲れた身体にはこたえるプランだ。しかし唯一の軽量装備を背負っての登山。
まず向かうのは茶臼岳。約200m標高を上げる。そこから階段を下るように、2,600mから2,200mまで徐々に標高を下げていく。
途中ダケカンバの美しい窪地の木道を歩いていく。このあたりは今まで出会ってこなかった優しい雰囲気に包み込まれるような縦走路で大変気持ちが良い。その後希望峰に到着。ここは仁田岳へ向かう分岐点となっており、仁田岳へは帰りに立ち寄る計画として先を急ぐ。
アップダウンの少ないトラバース道からは曇っていなければ光岳をみることができる。このあたりはお花畑とシダの美しい景色が続く。
シラビソに囲まれた易老岳を過ぎると標高を落とし三吉ガレと名前がつくほどのガレ場に差し掛かる。ピストンなので、帰りはここを下るのか・・・という不安に包まれながら登っていく。
登りが終わると三吉平~静高平と続き、ミニ雲ノ平と表現したくなるような美しい景色の中を歩いていく。静高平手前にイザルヶ岳へと向かう分岐点があり、僕らはここをピストンで向かう。
その後の光岳まではアップダウンも少なく短時間で到着できる。帰りには光岳小屋でブレンドコーヒーを飲み休息をし、元来た茶臼岳へと歩いていく。行きも帰りもガスが多く時々小雨にうたれ、景色を楽しむことは出来なかった。
縦走レポート
茶臼小屋を出発し茶臼岳へと登っていく。風は強く容赦なく体を冷やしていく。道は狭く団体の後方をゆっくりとついていくような形で登っていく。
意識してペースを落とす形となってしまったことで、身体はどんどん冷えていく。一言声をかけて先をゆずってもらい、ペースを上げて身体を温める。運よく登り調子の縦走路だったため、走って身体の熱量を増やすことができた。
茶臼岳頂上は残念ながらガスって視界は悪い。雨の心配もあったので先を急いだ。
ダケカンバの森の中を突き抜ける木道は歩きやすく、行動食を口にしながら小鳥のさえずりを楽しみ、ゆっくりとした時間を歩きながら過ごす。
易老岳まではアップダウンは少ない縦走路で驚くような眺めも少ない。前を歩いていたパーティが休憩していなければきっと気付かなかったような場所が易老岳だった。シラビソの枯れ木に囲まれた場所で写真を撮ってもらう。脱力感のある「易老岳」という文字に笑いがこぼれ和やかな気持ちで三吉ガレへ向かう。
上の写真は帰りのものだが、大小様々な岩が急斜面にあり、歩きづらく危険だ。しかも雨のため滑りやすく、これが30分ほど続く。先が見えない不安はアドベンチャー感があって僕は好きだ。
地図上では「涸れていることが多い」と注意書きのあった水場は運よく水が流れていた。ひしゃくがあって、これで水をとって飲む。南アルプスの天然水はとても美味しかった。
静高平にある分岐点を左に折れてイザルヶ岳へ。分岐から往復15分程度でいける360度の眺望が楽しめる場所なのだが、ガスっていて景色はなし。しかし異口同音で光岳への道に感動していた僕たちは、改めてここへ足を運びたいという気持ちでいた。このあと出会うことになる仁田岳といい、本筋から外れた山の景色が素晴らしく、こういう山の存在を見直すきっかけになった。
静高平は先にも書いたがミニ雲ノ平のような景色だ。霞に包まれた景色もまた美しく涼しい空気が気持ちがよい。
光岳小屋を横目にみて、先に光岳を目指す。ここまでくるとあともう少し。
今までの登山道には感じなかった信仰を感じさせる光岳周辺。このあたりは遠州の住人たちにとって身近な存在だったのかもしれない。
光岳へ到着。なんとも拍子抜けするような頂上だ。眺めはなく樹林帯に囲まれている。この先に光岩があり、そこは開けた景色を楽しめるということだが僕たちは光岳小屋へと向かった。
光岳でドリップコーヒーを頼み、一息つく。クッキーまでついて400円は山小屋にしては安い。
晴れ間が広がることを祈りつつ来た道を戻る。
仁田岳に到着するころにはガスに包まれていた。ここも晴れていれば素晴らしい景色が広がるのだろう。
こうして茶臼小屋へと戻り、最後の晩餐を楽しむ。
茶臼小屋には雨風を凌ぐことのできる自炊場というスペースがある。ここで食事をしていると僕たちと同じく光岳のピストンを楽しんだ方や、今日畑薙ダムから登ってきたという方と一緒に肩を並べて食事する。
今日茶臼小屋に登ってきたという兄妹がいた。妹に日本の素晴らしい場所を案内しているというお兄ちゃん。日本語はペラペラだから話も進む。渋谷、下町、南アルプス、京都という順番で旅をしているという。南アルプスの異色感が面白い。話を聞くと、僕の住んでいる場所の近くに住居があるという。下山したら大衆酒場で飲みましょう!と面白い約束ができた。
素敵な出会いが多い4日目の光岳ピストンが終了した。明日の夜は暴風雨だって、朝からも雨が降るみたい。という声に雨の中の撤収を覚悟して眠りにつく。
山小屋・避難小屋情報
光岳小屋
ルールがしっかりと整備されていて、とても綺麗な山小屋。トイレは綺麗に使ってね。と注意喚起が徹底している。中の張り紙や陳列されているジュースなどをみても「汚く使ってはいけない」と背筋がシャキっとするような雰囲気。だからといって心地が悪くなく、バランスのとれた素敵な山小屋。
スタッフの方々も光岳小屋の勝手が解る方々で構成されており、新規でスタッフを雇うようなことは行っていないようだ。だから食事の提供などにも限りがあり、お邪魔する側も勝手を理解する必要がある。
トイレのなかの壁に虫取りシートがある。これが芸術的なできばえなので気になる方は是非みてほしい。