いよいよ最終日の下山。この下山ルートがなんとアドベンチャー度が非常に高く、怖さとワクワク感が交差し面白かった。景色を楽しむのではなく、死なないように注意するという己の力を試すような時間。これを乗り越え、お風呂に入って、生ビールを飲むというのが今日のゴールである。
※南アルプス大縦走の表紙記事では、全体を俯瞰した情報・装備・食料の情報を確認頂けます。
5日目の登山ルートについて
上記は「山と高原地図ホーダイ」というアプリで作った登山ルート。
高低図をみると今日どこまでが大変で、どこからがラクなのかが一目瞭然だ。しかしながら後半のフラットな道のりはコンクリートの道路をひたすら温泉施設に向かって歩くという、精神との戦いが待っている。
帰りのバスは僕が静岡駅へ、浅賀さんとサヤカさんは新宿へという、帰り道の違いがあり、バスのスタート時間の違いもあった。僕が乗車するバスは畑薙ダムから途中少々の休憩を挟みながら静岡駅に向かうというもの。
一方、新宿行きのバスは沼平という登山口から白樺荘という温泉施設に向かい、ここで1時間バスが待機する。その後新宿へ向かうからゆっくりとお風呂に入れるプランとなっている。僕はどうしてもお風呂に入っておきたかったので、1.5時間ほど歩いて白樺荘へ直接向かい、お風呂に入ってから白樺荘にくる静岡行きのバスに乗ることにした。
だから茶臼小屋を早めに出て、白樺荘でゆっくりお風呂に入って、ビールを飲んで、ご飯を食べて、バスの中で寝て帰ろうと企てた。この話を2人にしたら、折角だから一緒に白樺荘まで歩こうと同行してくれることになり、行動を共にすることになった。
今回の下山時のルートは縦走レポートでまとめていこうと思う。
縦走レポート
前日の天気予報から、雨の中でテント撤収を強いられると覚悟していたが、雨は弱く、スムーズに帰りの支度を済ませることが出来た。
下山道はウソッコ沢あたりまではよくある下山道。しかしウソッコ沢あたりから吊橋と、木材で対応した仮設の橋がなんともスリリングだった。2018年の台風で大半の吊橋が流されてしまったようで、今後もこのスリリングな橋を渡らなければならないのかは不明だが、注意が必要だ。
以下の動画はこのスリリングな仮設の橋を渡るところをサヤカさんがスマホで撮影してくれたもの。雨のため増水した川の上を、頼りない橋を使って歩くというのはなんとも怖い。見たときはヘッチャラだよ、と思ったが実際に歩くと足がすくむ。
この登山道でウソッコ沢やらヤレヤレ峠といった可愛らしい名前の場所がある。ヤレヤレ峠の名前の由来は、この峠を越えた場所に現れるという化け物に襲われた人が、峠まで逃げてきて「ヤレヤレこれで助かった」と言ったのがはじまりと伝えられているようだ。ウソッコ沢は色々調べたが名前の由来はわからなかった。
幾つものスリリングな吊橋を渡り安堵をするのも束の間、ラスボスは畑薙大吊橋が待っていた。この吊橋の長さは181.7m。高さは30mとあり、10月下旬から11月中旬には紅葉が見ごろで名所としても知られているそうだ。
因みにこの奥大井という場所は知る人ぞ知る吊橋の名所で、寸又峡の夢の吊橋をはじめ、塩郷の吊橋・両国吊橋・飛沫橋・接岨大吊橋・井川大橋と多くのスリリングな吊橋がある。
サヤカさんは高所が好きなのか?テンション高めに僕や浅賀さんの写真を撮っていた。僕は足がすくみ、後ろを振り向くことさえできない有様。後ろから「これは怖いねえ~」と浅賀さんの声。僕だけじゃないんだと、ちょっと勇気が出る。
雨と汗に濡れた僕たちはこの畑薙大吊橋から約2時間、林道をテクテクと歩きながら温泉のある白樺荘に向かう。雨はしきりに強くなり山の上が心配だ。下山タイミングとしては良い日程だったのかもしれない。
バスや車に抜かされながら最後まで歩きぬいて入ったお風呂は格別で、ビール、お漬物、ソバ、カツ丼と各々、心と胃袋を満足させるメニューを平らげ日常の体に戻っていく。とにかく無事にこの長い縦走を完結できてよかった。最終ログを浅賀さんがチェックしてくれ90キロ歩いていたようだよ、と教えてくれ、改めてお互いの健闘を称えたのだった。