僕が思う登山靴づくりって、昔はドイツやイタリアの靴職人たちが伝統的な製法で頑丈に一足一足作り上げているイメージだったけど、最近では技術も進みオートメーション的な作られ方が一般的になり、革も大量に仕入れられてスピード重視でバンバン製造してるんじゃないの?という勝手な疑い(偏見?)があった。

登山靴メーカーマインドルへ

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でもある日、訪れたドイツ、ミュンヘンでマインドルというブランドにゆかりのある方と知り合い「高橋さん、お店でマインドルを扱っているんだから、せっかくだから行ってみない?マインドルに!」と思ってもいなかった嬉しい話をいただいた。もちろん僕の返事は「はい!!お願いします!!!」と即答。

マインドルはドイツで1683年創業の長い歴史を誇る登山靴メーカー。まえから抱いていた疑問をこの目で確かめるチャンスをもらい年甲斐もなく目をきらきらさせた僕は、まるで社会科見学にいく小学生のようにワクワクしてついていった。(笑)

ミュンヘンから急行列車で国をまたいでオーストリアのザルツブルグへ、そしてそこからまたドイツにちょこっとだけ戻った、国境近くの町“キルハンシェーリング”にマインドルはある。

マインドル家が経営するブランド

マインドル家の長男と次男が経営するブランド“マインドル”。彼らの考えは世界中に靴を卸しているだけあって、今の登山業界に沿ったニーズを徹底しておりとても理にかなっている。フィット感のこと、防水性や吸放湿性にすぐれた素材のこと、マインドルという会社の歴史についても語ってもらった。でもそのときは特に驚きもなく、僕の心の中は「ふ~ん、まあそうだよな、、」っていう感じ。(笑)

マインドルの倉庫での出来事

マインドル社で知った靴職人の世界

話が終わると、まずは革の選別とストックルームを兼ねた倉庫に連れていってもらうことに。昔ながらの古い倉庫、なんだかうす暗く不気味な雰囲気さえ漂う中に膨大な皮が巻いてストックされている。中を進むと革が敷き詰めてあるテーブルが1つ。そしてそこにはルーペをもった初老のドイツ人が!

「まるで映画の中の世界みたいだなー」なんて思いながら彼の作業を見てみると、1枚1枚革をめくりながら入念に凝視している。手に持ったチョークでときおり革に×を書いてみたり、文字を書いてみたり。何をしているのか聞いてみるとそれは革の選別。

革の選別、こだわりの光景

皺やキズ(これ素人の僕にはほとんどわからない)がある部分は使わない。革の厚みや柔らかさなどを細かくチェックして、どの製品にあてれば適切なのかを選別する。その作業をこの大きな靴メーカーの中でたった一人の職人が行っている。長年革を見つづける彼のゆるぎない自信と、マインドルという会社が彼にすべての革の選別を託す信頼。これには僕も驚き「あれあれ、なんかちょっと思っていたのと違う。なんだかすごいぞ・・」と気持ちの変化を感じ始めた。

工場ではマインドルこだわりの光景が

マインドル社で知った靴職人の世界職人1人1人が目を光らせる

そしていよいよ工場に。冒頭にも話したように靴作りに無知な僕は「きっとオートメーションで作られているんだろう」ぐらいに思っていた。

案内してもらった当時の社長はマインドル家の長男で、彼に話を聞きながら見学をした。話を聞くと「僕自身が靴職人で、全て自分が生産管理をしている」という。どんなものかと見てみると、工場の中は機械が並びオートメーション的ではあるんだけど、凄い沢山の人がいる。機械が靴をつくるための1アクションに1人の靴職人が目を光らせている。ドイツ人1人1人が1つ1つ靴をチェックしている姿が目に飛び込んできた。

登山靴作り中にアクシデント

マインドル社で知った靴職人の世界

その時、ちょっと具合が悪いことがあったのか、1人の職人が工場の流れを一斉に止めた。「これちょっとソールの付きが甘いかもしれない」みたいな事になると、その靴を持って社長の所に見せに来る。

社長自身が熟練の靴職人だから的確な意見で先導をする。まわりに明確な指示を出してトラブルを解決して、そしてまた工場が流れ出す。

世界中から集まる登山靴

マインドル社で知った靴職人の世界

そういった光景が靴作りのどこのセクションでも繰り広げられている。もうここまで見てきた僕の気持ちは180度ひっくりかえってしまった!「いやいや、これは凄いや!完全な職人作業だ!!」

最後に社長は、興奮を抑えきれなくなった僕を工場の2階に連れて行ってくれた。少し天井が低く、なんとなく屋根裏部屋っぽい空間に。
そこで見た光景はとても印象的。木の間仕切りに仕切られた小さいブースがズラーっと並び、それぞれ1人づつの職人たちが座っていて靴を直している。機械ではなくすべて手作業で!話を聞くと世界中から靴が集まってくるらしい。

 

マインドル社で知った靴職人の世界世界中から集まってきた修理をまつ靴たち

例えばマインドルの靴は日本でもある程度修理ができるけど、専門的すぎてなかなかむずかしい修理が必要な場合、そんな靴たちはすべてドイツに戻って職人さんが1つ1つ手作業で直していく。決して新品同様になるわけではないけど、愛情をもってしっかりと直す。この先もこの靴で山を歩けるように。
ここまで見た時には僕はもうこの“マインドル”というブランドの虜になってしまっていた。

ドイツのこの地に根を張り、一家代々で靴作りを継承していく。そしてそこに人が集まり工業が生まれる。そこにはしっかりとした伝統と技術に裏打ちされた靴職人の世界が繰り広げられている。「これって昔自分が想像していた靴作りそのものだ!こういう文化っていいなぁ~」とあらためて思ったとともに、海の向こうで愛情をもって作れられた登山靴なんだから、しっかりとそれを理解して大事に山を歩かなきゃ!と思ったのであった。

後記

マインドル社で知った靴職人の世界

最後に訪れた修理工のいちばん端っこに10歳くらいの少年を見つけた。
はじめは誰か従業員のお子さんかな?なんて思っていたんだけど、なんか雰囲気が違う。聞けば彼は毎日毎日、靴作りを勉強しにこの工場に通っているとのこと!伝統の技術を身につけ一人前になるために!

「かれが“マインドル”の将来を担う“靴職人”になるのかな。」