マナスル世界初登頂

戦後日本における登山隊の意義

1956年に日本山岳会の第三次隊が、世界で初めてマナスル登頂に成功します。戦後日本の復権を掛けた国を挙げての一大事業であったようで、苦難の上にこの偉業が成し遂げられたと聞いています。

第二次世界大戦が終わって10年もたっていないこの時代、52年の当時で全14座ある8,000m峰のうち、アンナプルナI峰をフランス隊が登頂しただけでした。この翌年の53年に、エドモント・ヒラリーがエベレストを征してます。そんな時代の中で、戦争に敗戦した日本にとって、残りの13座のうち、ひとつを獲ることは至上命題になっていたんですね。

 

キャラバン創始者 佐藤久一郎

この日本の第三次隊を率いたのが、隊長を務めることになる槙 有恒で、彼の後輩にあたるのが、のちにキャラバン社の前身になる山晴社を創設する佐藤久一朗だったんです。

この時に槙が佐藤に「登山隊がカトマンズからベースキャンプまで移動する為の靴を作って欲しい」と依頼をするんです。もともと手先が器用だった佐藤は、山や街で履く靴を自身の手で作ってしまうようなところがあったんですね。その精度の高さを知っていた槙がマナスル登山計画の支援隊のひとりに佐藤を指名したようです。

キャラバンシューズの誕生

初期キャラバンシューズ

以降、佐藤は登山隊の靴作りに奔走します。このときの高所登山用ブーツには、イタリア製のビブラムソールを使ったブーツが使われています。ただし、非常に重たい靴のため、それを履き続けるのは隊員にとって負担も大きく、軽くて履きやすくて歩きやすい靴が求められていました。そんな流れのなかで、佐藤は藤倉ゴム工業と協同で開発を進めていきます。そうして第一次登山隊が出発する直前に完成しますが、この隊は残念ながら登頂が叶いませんでした。

翌年に第二次登山隊が組まれ、さらに開発を加えたアプローチシューズを作成することになります。第一次登山隊の時に一枚革のアッパーにゴム底という仕様であったのに対して、この時はアッパーには布を用いて軽量化を図りました。当時は困難とされた布とゴムの接着技術を藤倉ゴムが見つけ出していて、完成に至ったようです。

 

第一号キャラバンシューズ

それから程なく山晴社が設立されました。この会社設立の決め手になったのは1通の手紙によります。それにはこう綴られています。「この度の布製の靴は快調です。キャラバンと愛称し、みな喜んではいています。こんな険しい山旅によい靴なら、日本の山歩きに最適のはずです。日本の登山界のために市販されるべきでしょう」と。

こうしてマナスル登山隊のために開発された軽登山靴は「キャラバンシューズ」という名を得ました。

キャラバンシューズのその後

キャラバンの歩み

1954年にキャラバンシューズが生まれてから、2016年で60余年になります。マナスル登山隊に向けてはアプローチシューズとして誕生しましたが、日本国内では「山登りの靴」としてベストセラー商品となりました。

しかしながら時代の流れで海外ブランドが脚光を浴び、国産ブランドの存在感は薄くなっていきました。2005年に一度販売を終了したんです。その時にキャラバンからキャラバンシューズが無くなってしまうのは寂しいというご意見を多く頂戴して、3年後の2008年に新生キャラバンシューズとして再度販売を開始したんです。

 

キャラバンシューズ

キャラバンシューズの代表的なものとして現在では「C1_02S」という型番がありますが、これが昔から続いているキャラバンシューズの歴史の流れを汲んでいる製品になっています。

キャラバンシューズの存在意義は『軽くて、履きやすくて、歩きやすい』という3つのキーワードが創業以来守り続けているポイントになっています。これから山をはじめようという人が手に取りやすい靴を具体化し、富士登山ブーム、屋久島ブームにも乗り入門者向けファーストトレッキングシューズとして今も支持を受けています。

キャラバンシューズのステップアップ版

キャラバンシューズ グランドキング

キャラバンにはキャラバンシューズと、グランドキングシューズというキャラバン社が手がける登山靴の2本柱が存在しています。キャラバンシューズが入門者向けに作られたシューズとしたら、グランドキングはキャラバンシューズのステップアップ版ともいうべき位置付けで、より高度な登山をする人向けに作られた登山靴となっています。

キャラバンのシューズで山を親しまれてきた方達がステップアップして、さらなる山域を楽しんでもらう為に、より山行に適した靴を履いてもらう。その当時でいうと、防水性があるとか、ソールのグリップ力があるという点を重視し、ビブラムソールや防水素材を採用した、グランドキングというブランドが1981年に登場します。

 

キャラバンシューズ グランドキング

キャラバンシューズの特徴である、履き口部分のソフトさ、指先周りや甲の部分を含めた日本人にあったラスト(木型)の使用というところは引き継いだ作りになっていて、それ以外の部分で、玄人の山の人たちが求めるフィット感、ホールド感、靴に求められるテクノロジーといったキャラバンシューズ以上のハイスペック性能を盛り込んだものが、グランドキングのシューズの特徴になっています。