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2016.03.31
サバイバル登山家・服部文祥の装備論3『テンカラ竿に求める三要素』

サバイバル登山家・服部文祥の装備論3『テンカラ竿に求める三要素』

撮影:亀田正人

私がイワナ釣りに使っている竿は、ダイワのテンカラ竿「燕翔LL4.1」である。日本の毛バリ釣りであるテンカラ専用の、しかもレベルラインという細くて軽いラインを飛ばすことを目的に設計された竿だ。胴調子で軽く、穂先はやや太い。長さは名前の通り4.1メートルである。

服部文祥の釣り

撮影:亀田正人

「胴調子」というのは、手元から曲がる竿の具合を指す。先端だけが曲がるのは「先調子」。軽いラインを遠くまで飛ばすには胴調子がいい。穂先は繊細さが不要なうえに、岩や枝にぶつける可能性を考えると太い方がよい。

4メートルはテンカラ竿としては長い部類だが、遠くから毛バリを打ち込めるので有利になる。「胴調子」「太い穂先」「4メートル前後の長さ」の3つが、おおざっぱに言うと私が竿に求めるスペックである。

服部文祥の釣り

撮影:亀田正人

竿が長ければ重くなり、振り上げるとき毛バリが高く上がるので木の枝に引っかける可能性も高い。ただ私の山旅は雪国の、規模の大きな渓谷を繋ぐことが多いので、それほど渓に覆い被さる木を気にする必要はないし、重さより大渓谷で遠くから打ち込む利点の方を優先させている。「1センチでも遠くから」はテンカラの師、瀬畑雄三の教えでもある。

服部文祥の釣り

撮影:石川竜一

「初心者程よい竿を」

最近テンカラ釣りが人気らしい。シンプルフライフィッシングとしてアメリカから逆輸入されてファッションになっているようだ。テンカラをはじめようとする人は、まず竿の値段に尻込みする。いい竿は2~3万円と高価であり、長く続けるか解らないのに購入するのは勇気がいる。扱いに慣れるまでに竿を折ってしまうことを心配して安い竿を選ぶ人も多い。

だからビギナーが多かった先シーズン、大手のメーカーはこぞってビギナー向けの安価な竿を発売した。私の友人の何人かがそんな竿を購入し、私もいくつか実際に振らさせてもらったが、正直あまり調子は良くなかった。おおむね硬いというのがビギナー用のテンカラ竿の印象である。

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撮影:亀田正人

調子の良くない竿で、思い通りの場所に気持ちよく毛バリを打ち込むのは難しい。できないわけではないが、高価な竿の方が毛バリを簡単に打ち込めて疲れない。ここぞという絶好のポイントで、毛バリが思い通り飛んでいかないと釣果を大きく左右する。

初心者こそいい道具という不文律はテンカラ釣りでも生きている。

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撮影:亀田正人

私のテンカラ竿コレクション

2シーズンほど前から、いろいろな竿を購入するようになった。いろいろな竿を使うと自分の釣りがいかに竿に頼っているかが解るからである。現代毛バリ釣りはなんだかんだ言っても竿である。身も蓋もないが高価な竿は概して使いやすい。

●シマノ「渓流TENKARA ZL」
すでに挙げた「ダイワの燕翔LL4.1」をメインに使っている。
シマノが2012年に出した「渓流TENKARA ZL」は燕翔LL4.1を使えなかったときに購入した。私の釣行は1回1回が長いので、竿を手入れせずに使い続ける。そうするとどうしても細かい砂が竿の中に入ってしまい、ジョイント部分が固着しやすい。燕翔LL4.1もハードに使いすぎて固着してしまい、翌週の釣行までに直せず、しかたなくシマノの竿を買って釣りに行った。(2015年のシーズン「燕翔」はずっと品切れが続いていた)
渓流TENKARAの売りは何と言っても穂先が1.6ミリと太いことである。そこそこの胴調子で、レベルラインも飛ばしやすい。北海道で47センチの元気なニジマスをかけたが、長時間やりとりして釣り上げることもできた。長さは3.4から3.8のマルチだが、3.8のほうがバランスはよいようだ。

●宇崎日新「ゼロサムテンカラ 6:4 360」
息子と南アルプスの信濃俣河内にいくことになり、折ってもいいという名目で息子用に購入。とはいえ、ダメな竿では釣りが嫌いになりかねない。そこそこ振れるのを選んだら結局2万円くらいのこの竿になった。実は「燕翔LL3.6」を予備を兼ねて購入しようと思っていたのだが、売り切れだったので選んだもの。ただし現場での調子は良く、かつて使っていたダイワの「華翔」によく似ている気がした。
息子はこの竿で、イワナを3尾釣った。その後、北海道で友人に貸したら踏みつけて、購入時の目的を達成した。

●竿中「和竿 3.9」
テンカラ竿の幅を広げようと、かなり高価(10万円)な和竿を竿中さんに作ってもらった。できるだけ長く、40センチ以上のニジマスも上げられるように、という私の注文が難しかったのかもしれない。やや重く、手元を一本抜いて使うくらいでもいいかもしれない。実は重さに負けて、まだそれほど使っていない。釣り上げた魚はトータルでも5本ほどだと思う。
ただ、この竿のおかげで自分の釣りがカーボンに頼った釣りだったことを思い知らされた。それは大きな収穫だった。

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すでに予約しているけどまだ届かない竿

○天竜「テンカラ 風来坊 TF39」
友人が使っていたのをちょっと振らせてもらったら、かなりいい調子だったため、予約分だけ制作すると聞いて予約した。先径が細いのがちょっと好みに合わないが、2016年のシーズンのメインにするかもしれない。

○ダイワ「エキスパートテンカラ L45」
ダイワが2016年のシーズンに出す新しいテンカラ竿。元径が太すぎないか気になるものの、ともかく1回振って試してみたいと思っている。


サバイバル登山における装備論をより深く知る

服部文祥『サバイバル登山入門』

服部文祥『サバイバル登山入門』
服部文祥氏の装備論がよりわかる書籍。彼の実行する「サバイバル登山」はできるだけ自分の力で山に登ろうという試みであるから、自分で作り出せないものを山に持っていき使うのはフェアとは言えず「ズルい」というのが基本スタンスにある。
持っていく装備に対して条件を課すことで登山を難しくしているように映るかもしれない。足枷を増やすのではなく、装備をそぎ落とし、自分を道具や文明から解放することで、本来の姿に戻っている(本来の困難と向き合っている)という考え方の方向性がカギである。〔サバイバル登山入門 42ページ〕

このような考え方で服部文祥氏が普段持っていく装備を全てチェックでき、それぞれの装備に丁寧な解説があるから登山初心者から、上級者まで新しい発見を見出せる書籍である。書籍そのものは、サバイバル登山の全貌を知る事ができる内容の濃いものである。

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