山を歩いたり走ったりしていると、沢すじで山菜取りを楽しむ人や、渓流釣りをしている人を見かけることがある。そんな彼らのことは以前から気になっていて、その気持ちの延長で「山に泊まるときに食べるもの、特にたんぱく質で調達できたら楽しいだろうなあ~、山の恵みをありがたく頂戴したい。」なんて思うようになっていた。
中でもミニマムな道具を駆使した釣り手法「テンカラ」で沢を釣りあがりながら駆け回りたい!!という思いがふつふつと沸いていたので、ある夜のアウトドア仲間との酒席で、この気持ちを話してみたところ「いや俺もまったく同じこと思っていたよ!!」「Junくん俺もやってみたい!」「俺はもうやっているぜ!」なんて大盛り上がり!そしてその盛り上がりのまま、その場で“マウンテンカラ部”を発足させてしまったのである。
そんな僕たち“マウンテンカラ部”の最初の練習会がリヴァスポット早戸で行われた。
今回のメンバーは、僕たちの仲間であり師匠、Flys Unidentified Anglersというサイトを運営するフライフィッシャー牟田口くんをはじめ、超速ウルトラランナーの山屋くん、プロショップさかいやのバイヤー高橋くん、パタゴニアの中枢を支えるウルトラランナージローくん、すでにマウンテンカラにハマリ中のムードメーカー、ナミネムくん、そして僕。
考えたらなんだかすごいメンツだ。
お酒の席では陽気なナイスガイたちだがフィールドに出たらアウトドアに精通するプロ軍団。ドキドキわくわくしながら練習会の始まりだ!
「おー!」いろいろな種類の魚がいることに驚く。料金を払ってさっそく準備にとりかかる。
今回は師匠、牟田口くんに道具を借りて、管理釣り場で徹底的に基本を学ぶ会。出てきた道具はフライロッド、テンカラ竿で、メーカーも長さも調子も様々。どういった竿が今の自分にあっているのか学ぶには大変ありがたい。興味深いなあ~。
僕が知っている釣りは竿があり、リールがあり、糸があり、浮きがあり、錘があり、針があり、エサがあるという海釣り用のもの。フライの場合は竿とリールと糸とフライのみ。テンカラにおいては竿と糸とフライのみで構成された、とてもシンプルな道具で釣りを楽しめる。これらはラインと呼ばれる糸の重さを利用してフライを飛ばすわけだが、そういった道具の事、フライの投げ方について教えを請う。
とにかくまずはひたすら竿をふる練習。屈指のアウトドアマンが並んで従順に竿をふる。可愛らしい姿だ。だって沢釣りしたことないもんね。滑稽だけど真剣だ!
みんな期待に胸をふくらませて、魚影が濃いスポットをさがす。
「まあ、この辺りかな」と思うや早々に、待ちかねたようにフライを投げる。目の前に魚影はある。さあ、誰が最初に釣れるのか・・・。そんな競争心のようなものが沸いたかは解らないが、とにかく参加した皆にアタリがある事を祈るばかりだ。
山屋くんの20センチほどのトラウトヒットを皮切りにどんどんみんなが釣り上げる。釣りあがるたびに仲間たちが祝福!みんな笑顔を浮かべながら童心に戻り、無心に釣りに没頭する。
「お?山屋くんのスポットが釣れるのか?」と続々とみんなが集まり糸をたらす。おいおいそんな集まったら、警戒心のつよい魚たちにもろバレじゃん!(笑)
魚に気配を察知されないようにするのも重要な要素。
師匠は、いとも簡単に狙ったポイントにフライを落とし、釣り上げる。こういう姿をみていると、テンカラ技術の奥深さを感じ、「技術は目で見て盗め」と自分に語りかけ、牟田口くんを凝視する。
時間が経過すると魚は活発になり、飛び跳ねる様子も伺える。ここぞとばかりに「この仕掛けに変えよう!」と成果の上がらない僕に適切なアドバイスをくれる師匠。そうか、時間帯によって魚の動向が変わってくるからそれに見合った仕掛けで勝負する。テンカラ奥深し。
その後も「ここは川幅があるから長めの竿がいいけど、奥秩父あたりの小渓ならもっと短いほうがいいかな~?」とか「俺のファストパック30なら山の中で引っかからない、仕舞い寸法の短い竿がいいな~」と、あーだこーだ言い合いながら、どんどんみんなの知識が、経験とともに深まっていく。
高橋くん、続々ヒット。技術がいいのか?場所がいいのか?仕掛けがいいのか?そのすべてか?僕の知識ではわからない。高橋くんもたぶんわかっていない。(笑)
経験のあるナミネムくんは、自分の判断で場所を変え、フライを変え、合計3匹ほど釣りあげていた。釣り初体験の僕たちより少しだけ大きく見えたのは僕だけだろうか。
ジローくんも虎視眈々と魚を狙いつづけ、会心のヒット!!僕もなんとか一匹釣り上げた!うーん満足!(笑)
いよいよお腹がぺこぺこになった僕らは食事の準備にとりかかる。ここからはさすがアウトドアのプロ集団、食事の準備がはやいはやい!見ているだけで楽しい。川原の石を積み上げてかまどを作ったかと思うと、瞬速で火をおこすジローくん。
ビクトリノックスできれいにさばいた釣った魚をおかずに、きのこたっぷり味噌汁とご飯。もちろん焚き火缶大なべを使ってつくる。なんとも贅沢だ!
生姜とネギ、そして写真にはないが黒七味も。これらは魚や味噌汁にすごくあって、非常に好評だった。
竹串まで!流石アウトドアに精通しているみんなだから、準備万端なのは気持ちがいい。
僕たちマウンテンカラ部の合言葉は「荒々しい」。少しでもワイルドさが出ると「おっ!荒々しい!」と声がかかる。(笑)
「おっ!荒々しい!」
「おっ!荒々しい!」
「おっ!荒々しい!」
僕たちが釣った魚がほどほどに焼けた頃合をみてカンパーイ!
「おっ!荒々しい!」
「おっ!荒々しい!」
ごはんも美味しく炊き上がり味噌汁、焼けた魚とともにほおばって腹を満たす。
マウンテンカラ部は山を駆け回り、釣りを楽しむ。釣った魚は必要最低な分だけ、普段の日常では忘れてしまいがちな「命を頂く」という気持ちを大事に、自然と対峙してテンカラを楽しみたいと思っている。
目標は今年アルプスでのマウンテンカラ。こうしてボーダレスにアウトドアを楽しみたいと気持ちは募るばかりである。