週末はどの山に行こうかな――。 高嶺の頂や秘境の道で非日常を味わう登山も好きですが、山里の歴史文化を探究するフィールドワーク的な山旅はもっと好きです。登山と“テーマ”を掛け合わせて、超個人的な視点と偏愛で楽しんだ山旅の思い出を、ちょっとずつ綴っていきます。

年が明けると、雪山を歩きたくなる不思議

雪を見ると、つい興奮してしまいます。いや、興奮ではないか。むしろ安心。そう、心が安らかになるんですよね。気分が高まるとともにどこか安心する感じ。真逆のようだけど表裏一体。

ぼくが東北出身だからということもあるでしょうし、時代的なものもあると思います。仙台で過ごした子ども時代は平地にもたくさん雪が降り、そこら中で雪遊びができたし、いつも眺めていた郷土の山・泉ヶ岳の冬景色はもちろん真っ白だったし。小学校にミニスキーで通学したことも数知れず。

前回のテーマは「富士見ハイク」でした。その時の気分で選んだBEST3でしたが、それぞれ特徴のある富士山の眺めが楽しめる絶景のコースで、本当に大好きな山ばかりです。実は、あの3つのコースにはある共通点がありました。みなさん、気がついたでしょうか。

その共通点とは「周回コース」だということです。

スタートとゴールは同じ場所。ぐるりと周るコースなので、ピストンのように同じ道を歩くことは基本的にありません。登りは尾根道で下山は谷筋とか、その逆もあるし、登りも下山も尾根というケースもあり、まあいろいろですね。個人的には「尾根周回」が大好きなので、そういうコースを設計できないかと各地の登山地図を眺めながら、お酒を飲む“家時間”も大好きで。

コースを変えたり、季節を変えたり、時間帯を変えたり、テーマを変えたりしながら、同じ山に何度も通って楽しみ方の幅を広げていくわけです。

ということで、今回のテーマは極めて私的な「雪見ハイクBEST3」でいこうと思います。もちろんすべて「周回コース」ですよ。

第3位 赤城山(駒ヶ岳~黒檜山の周回コース)

歩きやすさとほどよい距離が魅力の赤城山ですが、なんといってもこの山は「霧氷」の素晴らしさが群を抜いています。故に、雪山初心者はもちろんのこと、経験者も足慣らしがてら雪見ハイクを楽しめる山だと言えるでしょう。特に赤城神社を起点にして駒ヶ岳と黒檜山を周回するコースは、楽しさ満点です。

駒ヶ岳は東に展望が優れているため、栃木から茨城方面の見晴らしが最高です。澄んだ冬晴れの日には筑波山もばっちり。登り始めの急登を越えてしまえば、あとはその眺望を楽しみながら黒檜山を目指すのみ。

赤城山の最高地点は黒檜山の1828m。その周辺には絶景スポットがいくつか点在しています。ゆとりのある登山計画を立てて、山上で過ごす時間をたっぷりとりたいところ。中でも黒檜山の北奥にある展望スポットからは、西方面に真っ白な谷川岳と上越国境に連なる山岳がどーん! 北方面には上州武尊山とその向こうに広がる尾瀬・日光方面の山岳がどーん!

これでもかという絶景の連続に、もうお腹いっぱい!と大満足で下山すること間違いなし。すると今度は目が眩むほどに夥しい霧氷のトンネルが現れ、その隙間から大沼の畔に鎮座する真っ赤な赤城神社が神々しいばかり。そしてそれを取り囲むようにぐるりと連なる外輪山と、その向こうにトドメの富士山まで姿を現すという……。ああ、こう書いているだけでお腹いっぱいになってきました、笑

個人的に、この山の核心部は登山口までの「道路」だと思っています。カッチカチの凍結路を運転しなければならないので、当たり前ですが冬タイヤは必須。ぼくはチェーン、スコップなども車に積んでいます。天候などによっては4WDじゃないと走れない日もあるし、ある意味、登山道以上に車道の方で技術と経験が求められます。運転、ご注意ください。

第2位 天狗岳(唐沢鉱泉~西天狗~東天狗~黒百合ヒュッテの周回コース)

南北に連なる八ヶ岳の、ちょうど真ん中あたりに位置する天狗岳。どこからどこまでを八ヶ岳とするのか、はたまた南北はどこで分かれるのか、いろいろ議論がありますが、ここでは「北八ヶ岳の南端」としておきましょう。だいたい夏沢峠で南北を区別することが多いので。

その天狗岳、東西にピークがある双耳峰の山容をしているのが特徴で、登山コースを何パターンでも組めるのが魅力です。ぼくがよく歩くのは、唐沢鉱泉を起点にして西から東へと天狗岳を横断し、中山峠から黒百合ヒュッテへと周るコース。樹林と岩場のほどよいミックストレイルは冬山道具のテストにもよいので、新しい道具を手に入れたらここに来ちゃうこと多々。

見ての通り、ここも絶景に次ぐ絶景の連続に圧倒されること間違いなしです。北アルプス、御嶽、中央アルプスと南アルプス、奥秩父の山々、浅間山方面……。素晴らしい眺めにしばし言葉を失うばかり。それらの日本を代表する巨大な山地の麓には、びっしりと町並みが広がっています。

西天狗から眺める東天狗は荒々しく、東天狗から眺める西天狗は丸みを帯びている。対照的な山容を楽しめるのも天狗岳ならではのこと。

感動の山岳展望は、眼前にも広がります。硫黄岳、横岳、赤岳、阿弥陀岳といった南八ヶ岳の連なりが、それはもう大迫力。火山の荒々しい爪痕も、純白の雪化粧によってたちどころに神々しく早変わり。

眺めを楽しんだ後は、黒百合ヒュッテの食事をお目当てにする人が多数。名物のビーフシチューはパンかライスを選択することができますが、経験的にライスは人気なのでパンしか選べない可能性も。いや、シチュー自体がないこともあるか。いやいや、そもそも食事にありつけないこともあるな!

というのは、黒百合ヒュッテの食事は、確か15時がラストオーダー。唐沢鉱泉や渋の湯あたりから、そのビーフシチューを食べるためだけに雪見ハイクを楽しむ人も割と多くいるようです。あ、もし行く場合は、食事の時間など自分で調べてくださいね。自分で調べる、これ基本。

第1位 湯ノ丸山(地蔵峠~湯ノ丸山~烏帽子岳の周回コース)

こんなに素晴らしい雪見ハイクが待っているなんて! と、思わず絶叫したくなる湯ノ丸山。ピークが南北にある双耳峰で、その西側に立ち並んでいる烏帽子岳と小烏帽子とあわせて、超ド級の絶景尾根が伸びやかに続いています。快晴の日なら、きっと天を仰いで神さまに感謝することでしょう。

起点は地蔵峠のスキー場です。ロープウェイを横目にゲレンデの端っこをコツコツ登り、ツツジ平から湯ノ丸山南峰に直登。広々とした南峰から岩の北峰は往復20分ほど。右手には浅間山、群馬方面の眺めが抜群です。八ヶ岳やアルプスなどの高峰の眺めとは異なり、2000m程度のミドル級ならではの横に広い山々が点在する様子は、本当に美しくて。

そんな湯ノ丸山の展望に別れを告げて、もうひとつの絶景ポイントである烏帽子岳を目指し、鞍部(分岐)まで一気に下ります。そこから再び登り返すと小烏帽子に到達し、さらに天に向かって伸びる稜線の先に烏帽子岳が聳えています。ここがまた最高なんですよね。

自然ってすげーなーと、おさまらない感動を抱えながらの帰り路。鞍部の分岐からキャンプ場に向かって歩くと、やがてだだっ広い場所に出ます。パウダーのように軽い雪が、ちょっと風に煽られるだけで雪煙を巻き起こしている様子は、山上とはまた違った雪原ならではの景観。スノーシューでもうひと遊びするものよさそう。この周辺にはたくさんのスキー場がありますが、それ自体が雪質の良さを裏付けるひとつのヒントと言えそうです。

たっぷり遊んで冷えた身体を温めるのは、車ですぐの鹿沢温泉で決まり。ここのお湯、最高ですから。

文と写真:大内 征(低山トラベラー/山旅文筆家)
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過去の「テーマで歩く山の旅」、大内征さんの書籍「低山手帖」を以下で紹介しています。気になる方は是非チェックしてみてください。

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