週末はどの山に行こうかな――。 高嶺の頂や秘境の道で非日常を味わう登山も好きですが、山里の歴史文化を探究するフィールドワーク的な山旅はもっと好きです。登山と“テーマ”を掛け合わせて、超個人的な視点と偏愛で楽しんだ山旅の思い出を、ちょっとずつ綴っていきます。

3.11、故郷宮城の低山に思いを馳せる

3.11、故郷宮城の低山に思いを馳せる

2021年3月11日14時46分になりました。東日本大震災から10年の節目と言われる今日、まさしくあの大地震が発生した時間です。おそらくぼくは普段と変わらない日常を過ごしていると思います。原稿や資料でも作っているか、オンラインで打合せか、本を読んで勉強しているか、静かに内省でもしているか……。山には、いないかな。とはいえ、気がついた時にそっと目を閉じて、故郷とそこに暮らす友人たちに思いを馳せることは、忘れません。

と、そんな気持ちを胸にして、今回は故郷の大好きな低山「金華山(きんかさん)」のことを少々。

あ、名称に“山”とつきますが、実際は“島”です。岐阜県の金華山(きんかざん)とは違いますのでご注意を。ここは宮城県牡鹿半島の先に浮かぶ東北を代表する霊場であり、東日本大震災の震源地からもっとも近い陸地でもあります。

歴史あり文化あり絶景ありの「低山トラベル」的な醍醐味がぎゅーっと凝縮された島です。震災以降は毎年のように足を運んで山遊びをしていますが、昨年は新型コロナウイルスの影響で断念しました。今年はぜひ渡りたいところですが、どうなるかなあ。

そんわなけで、語りだせば夜明けまで話していられる金華山の魅力を3つの視点にしぼってご案内します。できるだけ簡潔に、写真とともに。

海の只中の名低山、金華山

海の只中の名低山、金華山

周囲を海に囲まれた「島」ですが、その漢字の成り立ちをご存じでしょうか。島とは、山の上空に鳥が飛んでいる様子を表したものだといいます。なるほど海には魚を狙う鳥がたくさんいて、羽を休めるために大挙して山を覆う……そんな光景が目に浮かびますね。金華山は、まさにそのような「島」です。東には太平洋の大海原が、西には青々と凪いだ「瀬戸」があり、その金華山瀬戸を挟んだ向かい側に牡鹿半島が横たわっています。

金華山の最高地点は445m
海の只中の名低山、金華山

金華山の最高地点は445mの山の頂で、そこには金華山黄金山神社の奥宮が鎮座しています。ここから西の尾根伝いにちょっと進むと、そこは絶景中の絶景が待つ展望地。眼下に広がる真っ青な海に、真っ白な航跡波を描く船……。

穏やかで平和そのものの風景ですが、あの日は目の前の瀬戸の海水がすっかり引いてしまい、露わになった真っ黒な海底を目撃して恐れおののいた―ーそう神社の方がおっしゃっていたのが印象に残っています。

金華山の最高地点は445m

見晴らしのよい日にここに立てば、宮城から福島までの奥羽山脈の連なりがばっちり見えるし、仙台湾のぐーんと湾曲する様子と南三陸の複雑なリアス式の海岸線も“外側”から眺めることができ、まさに海の只中に聳える“低山”にいることを実感します。こういう低山は、なかなかありません。

祭りと祀りの島、金華山

祭りと祀りの島、金華山
祭りと祀りの島、金華山

神の依り代となる巨石や巨木、あるいは御神輿や岩壁などに定められた神籬。島のあちこちに、こうした信仰の気配が感じられます。

お祭り好きな方なら、黄金山神社の祭りの予定を確認してから島に渡れば、そうした特別な場所・特別な祭事に立ち会うことができるのでオススメ。祭りのない時は奥宮まで一時間の山道を登拝すれば、金華山の厳かで優しい一面を、その頂で感じることができるでしょう。

弁財天が舞い降りた伝承がある天柱石
神輿渡御として海潮祓の特殊神事

特に、弁財天が舞い降りた伝承がある天柱石は圧倒的な存在感と優しい雰囲気をまとった必見の場所。新緑の5月に例年執り行われる大祭では神輿渡御が行われ、海潮祓の特殊神事が圧巻です。そして、この神事をひと目見ようとたくさんの人で賑わうのです。

静かな金華山も好きですが、賑やかに神事を楽しむ金華山も、ぼくは大好きです。

お金に困らなくなる黄金の島、金華山

お金に困らなくなる黄金の島、金華山

奈良時代の天平年間は宮城県にとって重要な時代で、当時「陸奥国」と呼ばれたこの地から産出した大量の“金”が朝廷に献上された記録があります。また、島に伝わった真言密教の根拠地は“金”という字がふたつも付く金花山大金寺といい、なにやら“金”との縁が深い様子。江戸期になり「3年連続してお詣りすると一生お金に困らない」という民間信仰が起こったことで、金華山詣でがブームになったとか。

そのため、関東や東北からたくさんの人が金華山を目指し、仙台から牡鹿半島までの道中にある塩竃や松島は参拝者で大いに賑わいました。かの松尾芭蕉は『奥の細道』において、大伴家持の歌を引用しながら「金花咲く」島の存在を紹介しています。

西日が島を黄金色に照らす11月
西日が島を黄金色に照らす11月

西日が島を黄金色に照らす11月は神々しく、桜と新緑が弾ける5月は清々しく、金華山の漲るパワーを感じとるにはそれぞれ最高の季節。海の只中の低山にいるだけで、ありがたい気持ちになる不思議な島。

そうそう、ぼくは8年連続してお詣りしているご利益なのか、ここまでなんとか仕事が継続できています。ところが昨年は島に渡ることができず、いろいろ不具合が……。

そんなわけで、今年はお詣りに行かないと、ちょっとまずいかもしれません(笑)

文と写真:大内 征(低山トラベラー/山旅文筆家)
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