今回紹介する内容は燕山荘に宿泊した際に、燕山荘グループ代表の赤沼さんがお話されていた、登山で命を救う守って欲しいこと、注意して欲しいことをまとめたものです。知っているつもりだったことや、知らなかったこと、非常に貴重な内容になっています。登山を安全に楽しむためにご一読頂けたらと思います。
ヘルメットの重要性
槍ヶ岳頂上から1キロほど離れた場所にヒュッテ大槍があります。ここに来る登山客のほとんどがヘルメットかぶっているということだ。このヘルメットのおかげで落石と滑落といった事故が置きても毎年助かっている方々が多いという。これ以外にも転倒などが置きてしまった際に頭の強打を防ぐことができるので、重要装備としてヘルメットの着用を重視して欲しいとお話されていました。
低体温症の怖さ
風・気温・濡れ
大きく分けて夏山と冬山に大別できますが、それぞれの季節において低体温症の発生源が異なるそうだ。夏山は雪が降らないの7~9月。雪が降る10~6月までを冬山として考えます。低体温症は1年を通して発症の可能性があるそうだ。
特に低体温症になる登山者は最近ものすごく多いようで、原因は風、気温、濡れだと言います。
例えば話を伺っていた時の最低気温がマイナス3度で、風速が10メートル近くあったのですが、この場合マイナス13度以下の体感になっていたはずと話します。風は1mで1度体感気温を下げるので忘れてはいけないのが風の存在です。
また寒さにおいては、100メートル登ると0.6度気温が下がります。高度を上げると気温が下がり、風も強くなり、そこに濡れが重なってしまうと極端に熱を奪われるそうです。
低体温症で有名なのは北海道のトムラウシで起きた2009年7月13日の事故です、このときの気温が6度で、20メートル以上の風があったといいます。6度マイナス20度ですから体はものすごく冷たくなっているはずです。
気化熱による急激な体温低下を防ぐ
夏の場合は雨に濡れないことが大事です。2020年もポンチョを着て稜線は歩いていた登山者が大天荘でほとんど意識不明に近い状態であったのを救助したといいます。その原因は雨による濡れだと言います。
冬山では登る時に汗をかかないように心がけることが大事で、救助にでかけて倒れている方のほとんどが汗をかいていると話します。夏は汗と雨、冬は汗というのを特に覚えておくと良いでしょう。
低体温症になると
もし低体温症になったら思考力・行動力・判断力の3つが全部低下してしまいます。自分では歩いてるつもりだけれども歩いていない…そんなことが起きてることを考えると非常に危険で、重要なことは食料と装備に力を入れる必要があるようです。
大事な装備について
装備の中でぜひ皆様に持っていただきたいのがレスキューシートです。エマージェンシーシートとも呼ばれますが、アルミ箔で出来たものです。これは指の上にのせることができるほどに軽いものなのですが、トムラウシの事故でもレスキューシートを持っていた方が助かっているそうです。
またもしも登山中に道に迷って遭難をしてしまった際、レスキューシートを広げることで、ヘリコプターから視認しやすく、見つける可能性が格段に増えると言います。だからおまじないだと思って必ずお持ちいただきたいと強くお話されていました。
高所肺水腫について
高所肺水腫とは、高山病の重症度により、山酔い、命にかかわる高所肺水腫、高所脳浮腫の3段階に分けられます。ほとんどの方はなりづらいものですが風邪を引いた状態で登ってしまうと可能性が高まると言います。38度ほど熱が出ると酸素が足りなくなり、高所肺水腫が高まるそうなので、山に登って体調が悪いなと思ったら必ず下山しましょう。下山するという勇気も必要です。
転びづらい時期、転んで止まらない時期
4月の下旬は雪が多い中で、ポカポカ陽気であったり、雨が降るといった気候に変化のある時期です。6月中旬ぐらいまでは雪や氷による転倒の可能性があるためアイゼンは必ず持参しましょう。とにかく冬山では転ばないということが鉄則ということです。
ゴールデンウィークの5月は転んでしまったら、少しの坂道でも止まらないようで、真冬の雪山の方が途中で踏みとどまることができるそうです。真冬の時期は転ばないという視点に加えて更に寒さと天気が荒れることを心配してほしいと話します。
山に登るときに具合が悪くなる方が多い理由
山に登るときは酸素が薄い場所へ移動するので、具合が悪くなる可能性が高くなります。酸素の濃度においては下りは濃い場所に向かうわけなので安心です。
山を登るときは汗だとか呼吸で1時間あたりの水分量が体重×4CCが出てしまうので、1時間置きにコマ目に水分補給が大切です。また登る前に飲む、のどが渇いてから飲むのでは遅いんです。これでは吸収が遅いので危険です。
次にエネルギーになるものを食べるということです。山に登ってダイエットなどはもってのほかです。山に登ったら太るくらいの気持ちでしっかりエネルギー補給をしましょう。
次に会話ができるほどゆっくり歩くことが大事です。息が荒くて話ができない状態は高度順化ができていないと思ってください。
到着後の1時間は横になって寝るのはやめましょう。寝てしまうと呼吸数が落ちてしまいます。酸素が薄いと高山病になってしまい貧血っぽい症状を引き起こすので、そうなってしまったら両足をちょっとザックなどを置いて高くしてあげてください。そうすると点滴をうったときのように血液が流れるので、少しラクになりやすいです。