バックカントリーは、皆さんも知っての通り雪崩や滑落、遭難の危険性が伴うエリアです。この危険を知った上でバックカントリーに出かけるモチベーションというのが、正直イマイチよく分からないでいました。
バックカントリーは冬の山旅でした
僕が初めてバックカントリーデビューを果たしたのは、湯ノ丸山でした。雲に覆われた根子岳からの軌道修正です。妙高エリア2箇所、かぐら、至仏、かぐらと続き合計6回のバックカントリーをこの年に楽しむことができました。
テレマークの大先輩がこう言いました。『バックカントリーでは滑るのは全体の30%ぐらいでメインで考えていないんだよね。登るのも、ランチタイムを楽しむのも全部含めてで、山旅を楽しんでいる気持ちが強いんだよね。』
そして『大事なのは怪我しないで滑ることができる技術であって、テレマークターンができるというのは二の次って考えた方がいいよ。』と。
その言葉が自分の背中を押してくれました。とても大事な言葉を頂いたように思います。
そしたら視界が広がって、転んで雪まみれになっても、なんだか楽しく感じることができるようになりました。
今では一番好きな時間は、ランチタイムで雪景色を見ながら、時に自分が滑ったシュプールを見ながら暖かな薄い味の紅茶を飲むことです。
テレマークスキーを履くことの自由さ
バックカントリーに入ると、当たり前ですがリフトなんてありません。スキーを履いて登って、移動して、滑っては登っての繰り返しです。この行動はほとんど登山と一緒です。違うのは下山で歩かないことぐらいです。
この行動を自由にさせてくれるのがテレマークスキーだと思います。ちょっとした傾斜もテレマークスキーだと登れます。『あそこに行きたい』と思ったら、テレマークなら板を履いたまま辿り着くことができるシーンがとても多いです。きっと僕はテレマークを選んだことで、雪山の中での自由を少しばかりか手にしているんだと思います。
バックカントリーで男泣き
46歳になって山の中で泣くとは思ってもみませんでした。それは最初から最後までずっとテレマークスキーを教えてもらっている友人に『綺麗なシュプール描けてるじゃん』と言ってもらえた瞬間でした。
今まで頑張ってきた練習がバックカントリーで形になったという喜びと、課題だらけだと思っていたテレマークターンの連続がバックカントリーの山の斜面できれいに描けている事実と、テレマークスキーの上手な友人に認めてもらえたような気がして、ツーっと涙が流れてきました。
これはゲレンデではなく、バックカントリーだからこその感動で、なかなか言葉にすることが難しいのが事実です。
春の2週間だけ滑ることができる至仏山
1年のうち4月の後半から2週間だけ、残雪期利用可能な期間として至仏山に入山することができます。バックカントリースキーを目的とした人や登山を楽しむ人達で賑わう、言わばイベントのような期間です。
2022年の至仏山は、友人曰く『コロナ前から遊びに来ているけれども、こんなにも人が多いのは見たことがない』というほどに賑わっていました。
Instagramでは、至仏山で滑りを楽しんだ投稿に溢れ、自分が写り込んではいないか?などと楽しんで目を通していたことを思い出します。
そして僕にとっては夏山の景色も知っている山での初めてのバックカントリースキーで、冬山を知って、3シーズンの山の良さがわかるという意味がここでよくわかりました。
山頂からは雪に覆われた山々の景色が美しく、冷たい風が肌をさすこともしばしば。しかし下山をすると町は花々に覆われ、春らしい景色に彩られています。
登山後に春の景色に身を委ね、心あらわれる気持ちになることができるのは、厳しい冬の寒さや景色を堪能していたからに違いないだろうと思うのです。
6月を迎えるといよいよ気持ちが縦走登山や渓流での釣りへと心が赴きます。そして5ヶ月もするとスキーシーズンへと突入するわけです。なんだか1年が短く感じるのは僕だけではないはずです。