『まだ多くの人たちに知られていない』という地域密着性がある山で、そこで出会った地元民の人たちとのふれあいを楽しむ。そんな夢を叶えに、岩手の七時雨山でトレイルランを楽しむ山旅。
七時雨山は双耳峰(そうじほう)と呼ばれる山で、ほぼ同じ高さの2つのピークをもつ。地元では「おっぱい山」と親しまれている訳だが、Vol.1ではスタートからこの2つのピークから眺める雄大な景色までをまとめた。1日目後半のVol.2では2017年に開催される「七時雨マウンテントレイルフェス」で検討中の開拓したばかりのトレイルを走る。
南峰から不動の滝方面へと下山を開始すると落ち葉で敷き詰められたトレイルが現れる。落ち葉の下には石が転がっていたり木の根があったりと、この季節特有の危険がトレイルにはある。レースが行われる季節にはきっとこの場所は新緑に彩られ、走りやすいトレイルになっているのだろう。
そんな事を思いながら下山をしていると。
樹林帯から抜け出し、急に視界が広がる。
ここは牧草地となっており今は牛は見当たらない。ある程度標高がある場所だから、ここまで牛が来ることは少ないのか、ただただ草原が広がりその向こうには雄大な景色が広がる。「よ〜し走るぞ〜」という掛け声と共に皆んなで草原を走り抜ける。
放牧牛の隔離の為の柵に出くわすと「以前は柵を飛び越えなくてはいけなかったんだけど、助成金を使わせてもらって人が移動し易い様に新たな柵を設置させてもらったんだよね」と昔話を土屋さんがしてくれた。なんでも無いような事もこのようにトレイルを整備する努力があってこそ、僕らは有意義に山を楽しめるんだよな、と考え深くなる。
そんな思い出話しを聞きながら、牧草地の中心を貫くトレイルを走り抜ける。開放感ハンパない!
少し進んで再度樹林帯へと入っていくと美しい林へ。こんな風に景観の変化が多くあるから、飽きずに楽しくトレイルを走ることができる。そして、もうここは既に新しいトレイル地帯。「こっちかな?いやここのトレイル入っていくんだよ」と皆んなで話し合い進んでいく。
「よっしゃいくぞ!」とランナーの仁義くんにつられて、衝動的に走り出した僕。頑張って付いて行ってたけど皆んな速い。
「あっ、これ残り距離がまだあるのに、このまま走り続けたら体力がもたないなあ〜」そう思ってスピードダウン。ふかふかな絨毯のようなトレイルは気持ちよく、先を行くみんなに心の中で「あとでね〜」と声をかける。
しばらく進むと視界が広がり、遠くには七時雨山を望む。ここから見る七時雨山は綺麗に2つのピークを拝める。あの山の向こうがゴールの山荘ということだから、まだまだ距離はある。
不動の滝に入る手前では七時雨マウンテントレイルフェスの実行委員会に携わる立花さんが車で水や食料を持ってきてくれていた。本番のレースではここにエイドが置かれる予定という計画のようだ。
「やべえ〜チップスター止まらない」と真吾くん。「塩っ気あるお菓子ってこういう時に美味しいよね」と芽生ちゃん。「今度、レースに出る時、チップスターをドリンクホルダーに入れて走ろうかな〜」と桜田くん。アウトドア好きの男には子供っぽい人が多いという持論は、どうやら当たっているようだ。
お腹も満たされ不動の滝へ。ここは神聖な場所であるということと、観光客の方も来る場所だから走らず歩く。
日本百名瀑に選ばれているこの滝は、岩手の名水二十選にも選ばれている。古くは修験者の道場だったという歴史があるものの、厳かな雰囲気は感じなかった。それよりも紅葉と滝と橋の色のコントラストが美しく、ここではみんなが記念撮影。
「え!?ここ」という急に現れる新しいトレイルの入り口。そんなウキウキワクワクな時間はまだまだ続く。程よい坂道を疾走して行くみんな。
しばらく走っているとだいぶ七時雨山に近づいてきた。紅葉する木々と緑を残す木々が織りなす景色にしばし見惚れながら、今走ってきたルートを確認する。それにしても長い距離を走ってきた。
七時雨山の左手を山荘に向かって走って行く。相変わらず視界は広がり気持ちの良いトレイルが続く。
そうして5キロほどだろうか…走り続けるとスタート時と同じような牧草地帯に出て来る。
小屋の手前では牛に道を譲ってもらえずに立ち往生する桜田くん。牛強し。
牧草地帯と樹林帯、そして木々がなくなり景色が広がる山頂とトレイル、滝や見晴台などの景勝地ポイント。とにかく飽きることのない目まぐるしく変化を楽しめる25キロはあっという間に終わりを迎えた。
疲れた体を山小屋にある温泉で癒し、今回走ったトレイルに関する意見交換を行い夜もふける。そうして夜のバーベキューへと突入した。事前に土屋さんから「牛一頭単位でしか購入できないモツがあるんだけど、これが絶品でね。それと東北の野菜がこれまた美味しいんだ。とにかく立花さんが準備する食材は旨いよ!」と聞いていたから、とにかく楽しみで仕方がなかった。
小屋から少し離れた立花さんお手製の焼肉小屋へと移動をすると、そこには既に皆んなを唸らせるような食材がテーブルを埋め尽くす。
柔らかで旨味のあるモツ、ワタに苦味が全くない秋刀魚、甘みと旨味のあるイカ、フルーツのようなピーマン。どれもこれも東京ではなかなか味わうことができない食材ばかりだった。
生ビールに日本酒、ウイスキーにワイン、シャンパンととにかく無いお酒が無い。皆んな失ったカロリーを全て補うかのようにとにかく飲んで食べて話して楽しんだ。明日も引き続き七時雨山のランを楽しむわけだが、こんなに飲んで皆んな走れるんだろうか…自分も含めて不安を感じるものの、「今を生きる」と考えを改め、この時を楽しんだ。
・東北のトレイルの魅力を探る『七時雨山』Vol.1
・東北のトレイルの魅力を探る『七時雨山』Vol.2
・東北のトレイルの魅力を探る『七時雨山』Vol.3