自然と共生したコミュニティ創り―そのインスピレーションを得るため、一年間、東ヒマラヤ(インド)のシッキムとダージリンの村に住まわせてもらった。
ヒマラヤのシッキムに最も古くから暮らすレプチャ族は、自分たちのことをRong(ロン)と呼ぶ。ロンの言い伝えでは、人は死んだら川を遡ってヒマラヤ山脈の一つ、カンチェンジュンガへ還っていくという。何百年もの間、ロンの人々は豊かな森の中で、森の精霊と対話しながら生きてきた。
17世紀にチベットから来たブティア族がシッキム王国を建国し、20世紀初めには英国の政策下、多くのネパール系の人々が移り住み、1975年にシッキム王国はインドに併合された。ロン、ブティア、ネパリの諸民族が混在し、急激な変化にさらされながらも、変わらず続く大地に根ざした暮らし。
人と自然の繋がりから生まれた知恵、卓越した身体能力、焼き畑で育てられた伝統的な穀物とその多様性、村の人たちの、あたたかさ、逞しさ、誠実さ。
見えてきたのは、人として生きることの原点だった。 (小倉沙央里)
カラー約30点。
作者のプロフィール
小倉 沙央里(オグラ サオリ)
2007年学習院大学法学部政治学科3年卒業FTコース卒業。08年米国レズリー大学大学院で、北米大陸をキャンプ生活で横断しながらフィールドワークを通して生態系や環境教育について学ぶ。在学中にはUNESCOニューデリーオフィスでインターンとして働き、ブータンの国民総幸福を基盤にした教育政策を学ぶ。10年に修士課程修了後、能登のNPO「能登半島おらっちゃの里山里海」を経て、11年からインドの環境系シンクタンク「ATREE」の客員研究員として一年間ヒマラヤで活動。13年から米国カリフォルニア大学バークレー校で「環境プランニング」を専攻。ヒマラヤでの土地利用の変化について研究をまとめるとともに、気候変動、それぞれの土地の生態系に適応した環境デザインについて学び、修士号を取得。サンフランシスコのNGO「アライアンスフォーラム」を経て、16年ジンバブエにてNGO「ムオンデ•トラスト」とともに干ばつに強い伝統穀物について調査。17年からカナダのブリティッシュコロンビア大学にて博士課程に入学。
写真展概要
期間:3/21 (火) ~3/27 (月)
時間:10:30~18:30(最終日は15時まで)
場所:新宿ニコンサロン