第1回:もつ鍋とお酒でまんぷくスノーキャンプ編
プロローグ
ちょうど去年の今頃にはじめて企画した、スノーキャンプメインの山旅。前回は公共交通機関を使いなるべく近いアプローチでスノーキャンプを楽しみたいということで、キャンプ道具を満載したザックを背負い雪を求めて雲取山を登った。これがあんまり楽しいものだったから「今年もやろう!」ということで、僕と高橋くんと2人で計画に励んだ。
この山旅のコンセプトは
①スノーキャンプで大好きなお酒をたらふく飲みたい
だから必然的に公共交通機関を使うことになる。
②荷物の重量は気にしない
これは公共交通機関を乗り継ぐので軽い装備を、と気にしてしまい本来楽しみたいことを我慢することになるのはやめようというもの。何を食べたいか?何を飲みたいか?どんなテントに泊まりたいか?寝心地は最上級に…なんていう楽しみたいこと、やりたいことを念頭に考えて装備を持ち歩くので、結果ヘビーデューティーな山旅となる。
前回のヘビーデユーティーな山旅
前回は奥多摩小屋まで飲みたいお酒、食べたい肉の塊と根菜類をザックに詰めこんで、2人のザックの総重量は50キロほどになったわけだが、そいつを背負い山に登るという苦渋の思いをした結果のテント場での山ごはんは格別であり、達成感も並々ならぬものだった。
プラスαなコンセプトで楽しむ山旅
そして2回目となる今回は更にプラスαなコンセプトを追加した。
『スノーランニング』である。
前回の登山で僕自身がずっと心に持ち続けていた反省点。それはウェアのレイヤリングを上手に選択して体のドライを保ち続けることができなかったこと。この反省点をふまえたレイヤリングで雪山をハイクアップし、走れるところは走る、走れなければスピードハイクを楽しむ。ちょっと挑戦的だけど絶対に無理はしないという雪山遊びを実践するということ。これが追加コンセプトだ。
それらが楽しめるフィールドを探していると、高橋くんからLINEで
“赤城山、一昨日の大雪でモフモフの雪山!!”
というメッセージが飛んできた。そうして僕らは食べたい山ごはん、飲みたいお酒、面白いテント、抜群な防寒グッズを備えて2月のある日、豊富な雪を携えた赤城山へ向かったのである。
グレードアップ気味の山旅装備
赤城山までは前橋まで電車を乗り継ぎバスで赤城山ビジターセンターまで向かう。バスの中は満員御礼の山好きな人々で埋まり、グングンとバスで標高を上げていくがバス内は暖房が効き暖かなまま。
晴天に恵まれるも10:00頃に到着したバスから降りると体に染み入る冷気が肌を包み込む。気温計はマイナス5℃。「うわっ!さむっ!」とビジターセンターに駆け込む。今回ザックはお互い1年前と同じもの。重量も40キロ強とほぼ変わらず。前回の思い出から「ここはこだわりたい!」っていうお互いの気持ちで持ちものはちょっとグレードアップ気味。
グレードアップしたギアたち
例えば前回は使い捨てのプラスチックコップだったけど、今回はシャンパングラス風なものにしたい!とか、座椅子で背をもたせかけながら雪の中で食事とお酒を楽しみたいとか、テント場に雪が豊富だろうから、雪を使ってテーブルや椅子を作りたいとか・・・まあ希望をいったら尽きないのだが、とにかく全てがかなう様にお互いが持ちえる道具を満載した。
今回向かうテント場は赤城山ビジターセンターから大沼を挟んでちょうど反対側にある赤城山キャンプ場へ。道を辿ればおおよそ徒歩30分ほど。肩に食い込む荷物を背負ってテント場へ。
今回の山旅プランについて
今回の山旅プラン1日目は移動のみにして雪上キャンプと山ごはんとお酒を大いに楽しもうとし、アクティビティを楽しむのは2日目とした。そんな心持ち余裕な一日目だから、午前中という時間にも関わらず移動中のあたまの中は『テント場に着いたらすぐにでもビールで乾杯したいなあ』なんて思いでいっぱい。
そんな思いを見透かしてか高橋くん「テント場についたら、まずはテント張って寝る準備や雪山の生活準備を整え、それから乾杯しようね」と一言。こういうのもアウトドア力のうちに入るのかもしれない。
凍る大沼、歩ける大沼
少し歩いていくとカルデラ湖である大沼は結氷しており、氷上ではワカサギ釣りを楽しむ人々が点在していた。1,345メートルという標高にある大沼湖は6月にはツツジが見ごろ、8月は夏祭りがあり、冬は釣りにスケートにと1年中イベントがある、山旅には最適なスポットだ。
氷上を歩くというのは初体験。興味津々で地(湖)に足を付ける僕ら。ワカサギ釣りをしている人々の邪魔にならないようにテント場へと氷上経由で向かった。そうして僕は瞑想した。
「あっ、ここウユニ塩湖だ」と
鏡のような地面にはなっていないものの永遠と広がるような白の世界。「あ~こんなにも東京から近い場所でボリビアを旅したような経験に浸れるとは」
ウユニ塩湖に行ったことがないだけに、なんとも浅はかな瞑想を一瞬楽しめた。
赤城山キャンプ場で設営スタート
キャンプ場に着くと思った通りの雪の多さ。おお~これだったら雪でダイニング空間を作れる。
平らな地面を作りやすく、そうして風の影響を受けにくい場所をみつけて早速設営に取り掛かる。
今回高橋くんが持参したテントはまだあまり世の中には知られていない面白いブランドのテント。その名はZEROGRAM(ゼログラム)。今回持参したというテントはEl Chalten(エル チャルテン)の2P。4シーズン用のダブルウォールで重量は1,560グラムという驚きの軽さ。
「これフライとインナー、ボトムが連結された吊り下げ式のテントだから設営がラクなんだよね」と設営をはじめるも、ものの数分で完了。あまりの速さに驚きを隠せなかった。そうしてマットを膨らませて、シュラフを取り出しテントの中に投げ込めば寝る準備はもう完了。ここまで10分とかからなかった。
これ、それこそ悪天候に見舞われる可能性のある登山や寒い冬の低山なんかだと設営までの時間を短縮できるからリスクヘッジにもすごく有効だな~なんて思いながら関心してしまった。
「次は雪でテーブルと椅子を作ろう!ほらスノーショベルもってきたよ!」と高橋くん。「僕はスノーショベルを持ってなかったから雪を整形するための道具として防寒用手袋ダイローブ!」と2人力を合わせてせっせとダイニング空間をこしらえる。
「ぼくたち今とっても贅沢な遊びをしてるよね!いつまでたっても子供な気分だ~」なんて笑みを浮かべながら、まるで秘密基地を作るような少年の気持ちで雪と戯れる。そうして出来上がった空間を見ながら「じゃ、一杯乾杯しようかね!」と、プラスチック性のシャンパングラスを取り出しビールを注ぐ。
今回持参したお酒類は最近2人共々はまりにはまっているIPA(インディアンペールエール)とシャンパン、赤ワイン。雰囲気を出すためにここは全部ビンで。IPAはよなよなエールの『インドの青鬼』。アルコール度数は7度と高めで苦味、風味としっかりしていて飲み応え抜群。それに前橋の駅前でゲットした群馬の地ビール『川場ビール レッドエール』。
まずはこの川場ビール レッドエールで乾杯がスタート。まだ12時にもなってない。お酒足りるだろうか・・・なんて思いながら湖畔の雪景色を眺めながら明日の計画を話し合う。
本日の料理スタート
もう1杯、もう1杯なんて言いながら、お腹もすきはじめ「ツマミでも作ろうかね~」と言いながら食材を並べてみる。今回の料理は牛モツパラダイスと銘打ってモツ焼き&モツ鍋&モツ煮込み飯。
ヘビーデユーティな山旅に持ってきた食材達
「今回はモツ鍋の為にガッツリ食材を持ってきたよ~」と高橋君のザックからは野菜、調味料が出てくる出てくる!「キャベツはひと玉分、ニラは2束、長ネギ1本分、これらは既にモツ鍋用に切ってきたよ。それにもやし2袋、豆腐1丁にショウガ一塊分、ニンニクチップにダシ、コチュジャン、ゴマ、タカノツメ、そして僕の大好きな八幡屋礒五郎の七味」この食材と調味料を見ただけで「あ~これは絶対に美味しいモツ鍋が出来るなあ」と楽しみが増す。
僕はモツ焼き用に味付けされた牛モツ2種類と、モツなべ用にアブラがのったシマチョウ、そして米2号。山に来たのに太るんじゃないか?という食材たんまりでウキウキする献立で料理タイムがスタートした。
おつまみのモツ焼き
まずはビールを横においてモツを焼きはじめる。前回と同様、お互いお気に入りの焚火缶で調理。オイルにニンニクとショウガ、そしてタカノツメを切って種ごと放り込む。
香りが立ち込めたら塩味のついたモツから投入。グツグツしてきたら高橋くんお気に入りの八幡屋礒五郎の七味を多めに投入。そうして頃合をみて火の入ったモツを口に放り込む。
この時気温はマイナス5度ほど。そんな寒い中カプサイシンの効いたモツは心も体もポカポカに。「旨んめえ~」とお互いニンマリでIPAを口に運ぶ。これぞアウトドアを満喫するって事じゃない!なんて語り合いながらメインディッシュの仕度に取り掛かる。
メインディッシュのモツ鍋へ
本日1日目はとにかくゆっくりと時間を使えるから、お米を早めに水につけて自然に水を含ませて凍らないようにテントの中へ。その間モツ鍋の仕度に取り掛かる。
まずは水を注いで火をつける。ニンニクチップ少々とショウガのスライスを鍋に投下。グツグツしてきたら味噌を溶かして調味料で味を整えシマチョウを入れる。ひと煮経ちしたら次に野菜。
まずは長ネギを投入。
それから「これでもか!」とキャベツを敷き詰めていく。キャベツで土台を作ったら真ん中にもやしを投入。
火にかけること少々。ちょっとキャベツがしんなりしてきたら、隙間を作って豆腐を投入。
それからフタをしてしばし待つと、今度は全体的に沈んでくるので、その上にニラ
ニンニクチップ
ごま
タカノツメ
おおっ!この絵はまさしくモツ鍋やさんで出て来る本格的なモツ鍋そのもの。それからフタをして待つこと数分。出来上がったモツ鍋をお互いのコッヘルに入れて、七味をこれまた多めに振りかけて完成!!
今思い出してこの記事を執筆していてもよだれが出て来る。そんな旨さ。残りわずかなビールも飲み干しシャンパンをあけて、しっかりと水分を吸った米を炊き始める。
炊き上がったご飯はふっくらとした仕上がり!モツ鍋にご飯ってこんなにも美味しかったっけ?と感動に包まれながらもくもくと食べる。※男二人旅なのでまわりがとても散らかっていてスミマセン・・・最後ちゃんときれいに片付けました。(笑)
シャンパンもなくなり急激な眠りに誘われて、暖かなシュラフに潜り込む。この時うろ覚えだが15時頃。
なんと僕はそのまま次の日の朝5時まで寝てしまった。高橋くんも同じ時間にシュラフに入り寝たんだけど、夜に一度目覚めてモツ煮込み飯を堪能したとのこと。
「アウトドアって静かだし、心も開放されるからよく寝れて良かったじゃない」と優しいひとこと。まさしく次の日の朝は頭がものすごくスッキリしていた。「夜中に変な泣き声した動物がテントの近くまで来てたよね?」と高橋くん。そうそう僕もその泣き声でひととき目覚めたわけだが、鼻をすするような「ズーズー」と泣き声の正体は未だ判らず。こんな未知を楽しめるのもアウトドアならではと話し、シュラフに潜り込みながら2日目の計画を確認しあう合うのだった。
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