アイゼンは登山靴に装着することで、雪の道や氷の道などの滑りやすい所で、登山靴がしっかりと登山道にグリップして、滑らずに歩行を助ける雪山登山では必須装備に数えられるアイテムです。この記事では雪山登山初心者向けに、アイゼンと軽アイゼンの違いや、アイゼンの選び方、メーカー別のおすすめアイゼンの紹介と比較をします。
アイゼンの種類・選び方
アイゼンは大きく分けて4種類あります。
※横スクロールで表がスクロールできます。アイゼンの種類 | 山の種類 | 山の例 |
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12本爪アイゼン | 3000m級の山 森林限界超える勾配の多い山 | 北アルプス 南アルプス 中央アルプス 南八ヶ岳 谷川岳 |
10本爪アイゼン | 2000~2500m級の山 森林限界を超えない山 足のサイズが小さい方向け | 南アルプス 八ヶ岳 乗鞍岳 |
6本爪アイゼン | 2000m級 森林限界以下の山 勾配が少ない山 春~夏の大雪渓 | 雲取山 奥多摩周辺 北八ヶ岳 丹沢 |
チェーンアイゼン | 勾配の少ない山 真夏の雪渓 アプローチの林道 夏の入渓時 | 勾配の少ない低山 冬季トレイルラン |
12本爪アイゼン
12本爪アイゼンは森林限界を超える3000m級の山に適したモデルです。フラットに足を置けない傾斜がある登山道や、登山道に出てくる大きな段差がある山で使用するモデルです。
見た目の特徴は前爪が長く、前から2本目の爪が前を向いていて、凍った雪面につま先をかけた時にこの2本の爪でしっかり体重を支えてくれます。これによって足を平らに置くことができない登山道でしっかり踏み込めます。
10本爪アイゼン
10本爪アイゼンは森林限界までの2000から2500m前後の山に適したモデルです。上で紹介した12本爪アイゼンと比べると爪の先端が丸く短いのモデルもあります。足のサイズが小さい方(23cm以下)が12本爪を登山靴に合わせると、爪の真ん中2つが寄り過ぎてしまって効きが悪くなってしまうという理由から10本爪を選ぶ場合もあります。
6本爪アイゼン
10本、12本爪と違って登山靴の先から飛び出している爪は無くなり、登山靴の中心に6本爪が備わっているタイプです。このモデルは軽アイゼンとも呼ばれます。このような作りなので踏み固められた登山道でフラットに足を置ける緩傾斜の登山道に適したアイゼンです。
6本爪アイゼンは森林限界以下の山で勾配が少ない山に適した軽アイゼンとも呼ばれるモデルです。
チェーンアイゼン
チェーンアイゼンは林道や低山ハイク、無雪期の滑り止めに使用できる軽量、コンパクトに持ち歩けるモデルです。爪が短く6本爪アイゼン同様に緩傾斜やフラットな凍結路面で適したアイゼンです。雪が溜まっているところというよりは、ちょっと凍って滑るところで、グリップを効かせるような使い方が主な使い方です。深い雪の場合はチェーンアイゼンの隙間に雪が溜まってしまって、グリップが効かなくなるため、積雪が深い場合は6本爪アイゼンにするなど使い分けが重要です。
アイゼンの取り付け方法の種類
12本爪と10本爪のアイゼンに関しては3種類の取り付け方法が存在します。自分の雪山用登山靴を確認してどの取り付け方が可能なのかチェックしましょう。
アイゼンを取り付ける時に重要なのが、寒い場所で手早くしっかり装着できることです。
ワンタッチ−爪先と踵にコバがついた登山靴に可能
ワンタッチと呼ばれるアイゼンの取り付け方法は、登山靴の爪先と踵にコバと呼ばれる溝があるタイプに装着が可能です。このコバにアイゼンの金具を取り付けて留めることができるタイプです。ワンタッチ式はアイゼンがずれたり外れにくい特徴があります。また剛性が高い特徴があるため初めて雪山登山に挑戦をする初心者に好まれます。
セミワンタッチ−踵にコバがついた登山靴に可能
セミワンタッチと呼ばれるアイゼンの取り付け方法は、登山靴の爪先にはコバがない為に、プラスチックハーネスで固定させ、踵のコバにアイゼンの金具を取り付けて留めることができるタイプです。セミワンタッチが可能な登山靴の中で、登山靴の底が固くないタイプは、アイゼンを装着して歩いている途中でアイゼンが外れやすい為、大変危険です。このような登山靴にアイゼンを装着する場合の登山スタイルには限界があるため注意が必要です。
バンド(ベルト)式−コバが無いタイプの登山靴に可能
コバを使用せず爪先も踵もバンドで固定するタイプです。ワンタッチ式タイプの様に固定しないために、バンドを足首やアッパー部分に巻くようにして固定するタイプです。
アイゼンの取り付け方法
アイゼンの取り付け方法は12本爪と10本爪のアイゼン、軽アイゼン、チェーンアイゼンとで異なります。軽アイゼンは足幅に合わせてアイゼンのサイズを調整し装着、チェーンアイゼンはゴムバンドを登山靴にフィットさせて装着とシンプルです。以下では12本爪と10本爪のアイゼンの装着方法をステップ毎に紹介します。
ステップ①:登山靴のサイズに合わせる
登山靴のサイズに合わせてアイゼンの長さを調整します。登山専門店で購入した場合はお店でサイズの調整をしてくれます。アイゼンの中心にプレートがあるので、ここで長さを調整することができます。前コバがある登山靴の場合は、アイゼンが前コバにしっかり入っているか確認をしましょう。
ステップ②:後コバの締め付けの強さを調整
ワンタッチかセミワンタッチのアイゼンの場合は、後コバに留めるアイゼンの金具の締め付けの強さを調整します。金具部分にネジがついていて回して調整をすることで締め付けを調整することができます。
締め付けを調整する際、どこまで締め付ければいいのかわからない方は、アイゼンのバンドを持って靴をぶら下げて振ってみましょう。登山靴がバタバタと跳ねるぐらい強く振ります。この時に登山靴とアイゼンが外れた場合は『締め付けがゆるい』ということになります。登山靴によってコバ周辺のサイズが異なるので、登山靴を変えたら後コバの締め付けの強さを調整するように心がけましょう。
ステップ③:アイゼンのバンドで登山靴を固定する
アイゼンによって固定方法は様々ですが、基本的にはアイゼンの前方についたリングに、踵から出たバンドを通し、登山靴の反対側の側面から踵に向かってバンドを登山靴の周りをぐるりと一周するように登山靴に固定させます。
緩みがないようにしっかり締めることが重要です。最初の紐が出ているところから順に、再度バンドを引っ張りながら緩みがないか確認してフィットさせましょう。
ステップ④:アイゼンを購入したばかりはバンドのサイズを調整
ステップ③でフィットさせた後、余ったバンドの紐はカットしておきましょう。お店で購入した場合は紐の長さを調整してくれますが、自分でカットする場合は、厚手のグローブをした状態で、最後の止め金具から、握りこぶし2つ分を残してカットしましょう。
カットする部分は先端を丸くなるようにカットすることで、手袋をした状態でも金具にバンド紐を通しやすくなります。
またバンドの先端を固める必要があり、ライターで炙っても良いのですが、アロンアルファで2〜3cm ほど塗って固めるのがおすすめです。
アイゼンを取り付けることができる登山靴について
本格的な雪山登山の使用には、12本爪や10本爪のアイゼンには雪山登山向けのブーツ、もしくは3シーズンで使えるアイゼン対応のアルパインブーツと呼ばれる2種類の登山靴が適しています。
それ以外の登山靴には装着することができないわけではありませんが、結構なリスクが増えるので、アイゼンの装着に適した登山靴を履くようにしましょう。
軽アイゼンやチェーンアイゼンは比較的汎用性が高いため、本格的な登山靴や3シーズンのアルパイン向けブーツにはもちろん、日帰りの軽登山靴や、小屋泊の登山靴にも適合しやすいです。
メーカー別おすすめアイゼン比較
アイゼンの開発に力を入れているメーカーからおすすめのアイゼンを種類別で紹介します。
【12本爪・10本爪】丈夫で低温に強い3種類の取り付け方法から選べる『グリベルG12・G10』
グリベルの G12は12本爪のアイゼンで、取り付け方別でいくつかのモデル展開があります。このアイゼンは素材がクロモリなので、丈夫で折れにくく、低温にも強い特徴があります。
ブランド | グリベル |
製品名 | G12 |
価格 | ¥28,050 |
ペア重量 | 1080g(G12 New Matic) |
対応シューズ | 装着方法別でモデルあり |
素材 | クロモリ |
爪の数 | 12本 |
シーン | アルパイン・アイス |
ブランド | グリベル |
製品名 | G10 |
価格 | ¥22,000 |
ペア重量 | 840g |
対応シューズ | コバ無しのブーツにも装着可能 |
素材 | クロモリ |
爪の数 | 10本 |
シーン | 縦走登山 |
【12本爪】軽量タイプが特徴のペツル バサック
グリベルのアイゼンと比較すると軽量化が施されていますが、素材はステンレススチールで爪も少し短めに作られたアイゼンです。アクティビティに応じて取り付け方法の選択が可能なモデルです。パーツ交換がしやすくメンテナンスがしやすいことで人気のあるモデルです。
ブランド | ペツル |
製品名 | バサック |
価格 | ¥23,760 |
ペア重量 | 892g |
対応シューズ | コバ無しのブーツにも装着可能 |
素材 | スチール製 |
爪の数 | 12本 |
シーン | 縦走登山 |
【10本爪】軽量タイプが特徴のペツル イルビス
イルビスには2種類あり、バックカントリースキーおよび雪上歩行用にデザインされた、オールスチールの790gの軽量なモデルと、イルビス ハイブリッドと呼ばれるスチール製フロントパーツとアルミニウム製ヒールパーツにより、軽さと操作性をバランスよく実現した570gのより軽量なモデルがあります。初心者向けにはオールスチールで剛性が高いイルビスがおすすめです。
ブランド | ペツル |
製品名 | イルビス |
価格 | ¥19,250 |
ペア重量 | 790g |
対応シューズ | コバ無しのブーツにも装着可能 |
素材 | スチール製 |
爪の数 | 10本 |
シーン | 縦走登山 |
【12本爪】軽量で錆づらいブラックダイヤモンド セラックストラップ
ステンレス製で錆づらく、フロントレイルがコンパクトで軽量に作られたアイゼンです。コバなしブーツに対応したモデルで軽さとフィット感に特徴があるアイゼンです。
ブランド | ブラックダイヤモンド |
製品名 | セラック ストラップ |
価格 | ¥30,140 |
ペア重量 | 860g |
対応シューズ | コバ無しのブーツにも装着可能 |
素材 | ステンレススチール製 |
爪の数 | 12本 |
シーン | 縦走登山 |
【12本爪】軽量で錆づらいブラックダイヤモンド セラックストラップ
ステンレス製で錆づらく、フロントレイルがコンパクトで軽量に作られたアイゼンです。コバなしブーツに対応したモデルで軽さとフィット感に特徴があるアイゼンです。
ブランド | ブラックダイヤモンド |
製品名 | セラック ストラップ |
価格 | ¥30,140 |
ペア重量 | 860g |
対応シューズ | コバ無しのブーツにも装着可能 |
素材 | ステンレススチール製 |
爪の数 | 12本 |
シーン | 縦走登山 |
【10本爪】軽量で錆づらいブラックダイヤモンド コンタクトストラップ
上で紹介したセラック ストラップの10本爪バージョンに位置付けられるモデルです。ブーツの形状を選ばず装着が可能で汎用性の高さが魅力です。
ブランド | ブラックダイヤモンド |
製品名 | コンタクトストラップ |
価格 | ¥24,090 |
ペア重量 | 808g |
対応シューズ | コバ無しのブーツにも装着可能 |
素材 | ステンレススチール製 |
爪の数 | 10本 |
シーン | 冬の低山・スキー登山・スノーハイク |