登山で使用するアウターを分類すると2つの目的に分けることができます。
- 雨や雪を防いで濡れから体を守る
- 風を防いで寒さから体を守る
という目的のために着用します。
春夏秋の3シーズンでは雪の降る可能性は低いので、雨と風から身を守るためのレインジャケットがアウターとなります。
冬は雪の降る可能性が高くなり冷たい風に体が叩かれる可能性が高まるため、雪と冷たい風から身を守るためのハードシェルがアウターとなります。
登山におけるアウターの選び方
登山におけるアウターの選び方は、以下の点を考える必要があります。
- アウターを着用するときの環境
- アウターの持つ機能性
これらを踏まえてアウターの選び方を紹介します。
アウターを着用するときの環境から選ぶ
登山におけるアウターは、
- 気温
- 風の強さ
- 雨なのか雪なのか
この3点を考えて選ぶようにしましょう。
森林限界を超えない2000メートル以内の山
樹林帯を歩くシーンが多くなるため、強い風に当たる可能性が低く体感温度が安定していることが多いです。
森林限界を超える標高が2500メートル〜3000メートル級の山
風は強くなり冷たい風に体が叩かれる可能性が高くなります。風速1mで1度体感温度が下がるので、風の強さというのはアウター選びには重要な指標です。
アウターの持つ機能性から選ぶ
登山で使用するアウターは防水透湿素材という、雨を遮断し、アウター内の湿気を外に排出する働きのある素材を使用したものが大半です。
代表的なものにゴアテックス素材があります。ゴアテックス以外の防水透湿素材では、非常に軽量なパーテックスやポーラテックのネオシェル、また各メーカーが独自で開発した素材があります。以下に比較表があるのでチェックしてみましょう。
ゴアテックス製の防水透湿素材の種類
※横スクロールで表がスクロールできます。テクノロジー名 | ゴアテックスプロ | ゴアテックスファブリクス | ゴアテックスアクティブ | ゴアテックスパックライト | シェイクドライ |
---|---|---|---|---|---|
構造 | 3層構造 | 3層構造 | 3層構造 | 2.5層構造 | 2層構造 |
裏地 | マイクログリッドバッカー | マイクログリッドバッカー/トリコットバッカー/C-KNITバッカー | 薄い素材を使用 | コーティング | フィルム |
使用シーン | 冬山登山、スキー | ALLシーズン | 夏山登山、トレイルランニング | 3シーズン登山 | トレイルランニング |
特徴 | 軽量性に優れている | 価格抑えめ、C-KNITバッカーの方が高価 | 透湿性に優れている | 軽量でしなやか | 表にゴアテックスメンブレン |
防水能力は耐水圧で数値化でき、透湿性も数字で表すことができます。以下の表は、ゴアテックスを含めた防水透湿素材のスペック表です。
ゴアテックスを含めた主要な防水透湿素材の比較表
※横スクロールで表がスクロールできます。生地 | ゴアテックス | パーテックスシールド | パーテックスシールド・プロ | パーテックスシールド・エア | eVent | ネオシェル | Kamleika | ドライテック(R) | エバーブレス(R) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
透湿性(独自調べ) | 4,800 | 3,600 | 9,450 | 10,000(公表値) | 6,420 | 9,800 | 20,000(公表値) | 8,000~20,000(公表値) | -- |
耐水圧(独自調べ) | 20,000~ | 20,000(公表値) | 20,000(公表値) | 10,000以上(公表値) | 14,000 | 5,000~20,000(公表値) | 20,000(公表値) | 20,000㎜以上 | 20,000㎜以上 |
メーカー | 素材メーカー | 素材メーカー | 素材メーカー | 素材メーカー | 素材メーカー | 素材メーカー | OMM | モンベル | ファイントラック |
ゴアテックスを含めたメーカーオリジナル防水透湿素材の比較表
※横スクロールで表がスクロールできます。防水透湿素材 | ゴアテックス3レイヤー | ゴアテックス2レイヤー | H2No | ドライテック | エバーブレス | FUTURE LIGHT | Hyvent | TYPHON 50000 | ベルグテック | ブリザテック |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
メーカー | -- | -- | パタゴニア | モンベル | ファイントラック | ザ・ノース・フェイス | ザ・ノース・フェイス | ミレー | ミズノ | 東レ |
耐水圧 | 45,000mm以上 | 30,000mm以上 | 20,000mm | 25,000mm | 20,000mm | 非公開 | 非公開 | 20,000mm | 30,000mm以上 | 10,000mm |
透湿性能(/㎡・24hrs) | 13,500g以上 | 15,000g | 非公開 | 15,000g | 10,000g | 非公開 | 非公開 | 50,000g | 16,000g | 7,500g |
夏の低い登山でレインジャケットを着用すると汗をかいてしまうので、このようなシーンでは透湿性に優れたレインジャケットがおすすめです。
高所登山で冷たい雨、風、雪に叩かれる可能性が高い場合は、3層構造のゴアテックスジャケットがおすすめです。
おすすめ登山用アウター-安心感の高いゴアテックスモデル
3シーズン向けのアウターと雪山登山向けのアウターの中でも、ゴアテックス素材を使用したおすすめモデルを紹介していきます。
肌寒い季節に頼りになるゴアテックスシェルジャケット-パタゴニア『トリオレット・ジャケット』
この寒い冬の登山、晩秋の寒くなる登山で安心感のあるアウターです。75デニールの ゴアテックス3層構造を活用しており、ピットジップが付いているので熱くなった時に通気性で発汗を抑えることができます。ヘルメット対応フードなのでウィンタースポーツにも活用することができます。
- 重さ:550g(メンズ)
- フィット: レギュラー
- 素材:ゴアテックス3層構造
汎用性に優れたゴアテックスレインジャケット−アークテリクス『ベータジャケット』
わずか300gと軽量で立体裁断による体にフィットした動きやすさが特徴のアウターです。裏地にはシーニットバッカーを採用しているため、汗をかいてもサラサラとして、高い透湿性もあるため心地よく着用し続けられるレインジャケットです。
- 重さ: 300g(メンズ)
- フィット: トリムフィット
- 素材:ゴア C-KNIT™
春と秋の寒い時期に活用できるアウター-アークテリクス『BETA LTジャケット』
軽量でミニマルなデザインの中に、ピットジップとハンドポケット、ヘルメットフード対応機能を備えたレインジャケットです。視界を遮ることのない立体的なフードにより、雨の日の登山も安心して行動することができます。
- 重さ: 約395g(Lサイズ)
- フィット: レギュラー
- 素材:40D-トリコットバッカー採用の3層構造
圧倒的な安心感のある雪山登山向けハードシェル− アークテリクス『アルファSVジャケット』
アークテリクスのハードシェルの中でも厳しいアルパイン条件向けに開発された高性能なアウターです。わずか485gながら優れた耐候性と耐久性を兼ね備えたハードシェルです。ゴアテックスプロを採用しており、マイクログリッドバッカーによる着心地の良さ、ヘルメット対応のストームフード、通気性に優れたピットチップ、動きやすい立体構造など、全てにおいて考えつくされたアウターに仕上がっています。
- 重さ: 485g(メンズ)
- フィット: レギュラー
- 素材:ゴアテックス プロ(Most Rugged テクノロジー)
しなやかな着心地が特徴のゴアテックス製ジャケット−ザ・ノースフェイス『オールマウンテンジャケット』
ゴアテックス3層構造のオールマウンテンジャケットはシーニットバッカーによる着心地の良さが特徴で、さらに通気性を確保するためのビットジップやダブルジッパー構造等、様々なシーンと標高の山で活用できるアウターです。フィット感に優れた特徴を備え、雨の侵入を防いだデザインに仕上がっています。雪山にも対応した安心感に優れたアウターです。
- 重さ:約530g(Lサイズ)
- 素材:70D GORE-TEX C-Knit Backer
春登山に快適な軽量なレインジャケット-ノースフェイス『クライムライトジャケット』
ゴアテックスの3層構造を採用し透湿性と軽さと強度のバランスを追求した登山に最適なレインジャケットです。登山シーンにおけるあらゆる機能性を向上し、風にバタつきづらいシルエット、ザックを背負った際の裾が上がりにくい丈感、腕の上げやすさなど特徴を持たせています。
- 重さ:約315g(Lサイズ)
- 素材:20D-マイクログリッドバッカー採用の3層構造
軽くて安い代表的なレインジャケット−モンベル『ストームクルーザージャケット』
ゴアテックスのシーニットバッカーテクノロジーを採用した無駄を省いた軽量なレインジャケットです。ゴアテックス製のアウターで20,000円台前半で購入できるモデルは珍しく、多くの登山者に愛用されているレインジャケットです。
- 重さ:254g(メンズの平均重量)
- 素材:ゴアテックスファブリクス3レイヤー[表:20デニール・バリスティック®ナイロン・リップストップ]
- K-Mono CUT/ジッパー付きポケット2個(腰)/スマートソーイング/ネームタグ付き/スタッフバッグ付き
より軽量でコンパクトになるゴアテックス製レインジャケット−モンベル『トレントフライヤージャケット』
わずか194gでトレイルランニングからファストハイクまで使用できるゴアテックスパックライトプラスを採用したレインジャケットです。装備の軽量化にインパクトを及ぼすアウターです。
- 重さ:194g(メンズの平均重量)
- 素材:ゴアテックス パックライトプラス ファブリクス2レイヤー[表:12デニール・バリスティック エアライト®ナイロン・リップストップ]
- K-Mono CUT/スムースピットジップ/ジッパー付きポケット1個(左胸)/車のライトなどを反射して光るテープ(フロントジッパー)/スマートソーイング/スタッフバッグ付き
雪山登山のフラッグシップモデル−ノローナ『ロフォテン ゴアテックス プロ ジャケット』
ゴアテックス製品の中でもハードシェルに強いブランドとしてノローナは知られており、使い勝手の良さと耐候性に優れたデザインが特徴です。チェストポケットの横に配置されたベンチレーション兼素早くビーコンを取り出せるアクセスホールなど、リスクの多い雪山で使いやすいアウターです。バックカントリースキー以外にも雪山登山での使い勝手も良く、高価ながらもリスクヘッジに優れた機能性を備えたデザインが特徴です。
- 重さ: 698g(メンズ)
- 素材:ゴアテックス プロ 70D(Most Rugged テクノロジー)
おすすめ登山用アウター-軽量・透湿性に優れた個性的なモデル(ゴアテックス不使用)
ゴアテックスを使用していないアウターの多くは3シーズン向けとなります。ゴアテックス素材ではない個性的なモデルが多く、特徴は透湿性と軽量性です。
軽くて心地よいレインジャケット-ノローナ『ビティホーン ドライ1 ジャケット』
ノローナ独自の防水透湿素材「dry1」を採用した軽量なレインジャケットです。登山、ハイキングやトレイルランニングと様々なアクティビティで軽く風通しの良い柔らかな着心地を体感できる動きやすいレインジャケットです。特徴は軽量でありながら脇下にベンチレーションを配しているため、通気性に優れ夏山登山の縦走などにも活躍します。
- 重さ:220g(メンズ)
- 素材:dry1(2.5-LAYER 100% RECYCLED NYLON WITH PU MEMBRANE)
透湿性に優れた軽量なレインジャケット−パタゴニア『ストーム10ジャケット』
パタゴニアのオリジナルメンブレンH2NOを使用した透湿性に優れたレインジャケットです。ヘルメットの上からフードをかぶることができ、チェストポケットとハンドウォーマーポケットが付いて、わずか235gと軽量で持ち運びがしやすいアウターです。
- 重さ:235g
- フィット:スリムフィット
- 素材:H2Noパフォーマンス・スタンダード・シェル(3層構造の2.2オンス・20デニール・リサイクル・ナイロン100%のリップストップ)
透湿性と耐候性のバランスが特徴-パタゴニア『トレントシェル 3L・ジャケット』
パタゴニアのオリジナルメンブレンH2NOを使用した透湿性に優れたレインジャケットです。ストーム10と比較すると、50デニールのシェルと厚みがあり、耐候性に優れているため初春、晩秋における肌寒いことが予想される登山で安心して使えるレインジャケットに仕上がっています。
- 重さ:400g
- フィット:レギュラーフィット
- 素材:H2Noパフォーマンス・スタンダード・シェル(3層構造の2.2オンス・50デニール・リサイクル・ナイロン100%のリップストップ)
超軽量で透湿性に優れた防水レインシェル-OMM『Halo+ Jacket』
丸めればテニスボールサイズにまで小さくなるコンパクト性に優れたレインジャケットです。ハードな行動でもバタつかないフィット感からトレイルランナーに人気のモデルです。
- 重さ:130g
- 素材:Point ZeroH2o fabric (2.5layer)
ウィンドシェルのような軽やかさが特徴−ザ・ノースフェイス『ストライクトレイルフーディ』
耐水圧20,000mm、透湿性40,000g/m2-24h(B-1法)の防水透湿性を維持しながら、さらなる軽量化を実現した軽量防水シェルジャケットです。こちらもコンパクトで軽量なモデルからトレイルランニングの大定番モデルとして人気のあるレインジャケットです。
- 重さ:約115g(Lサイズ)
- 素材:10D HYVENT Flyweight (3層)
まずは安いものからという方におすすめのアウター
圧倒的なコストパフォーマンスで多くの登山者に大人気なのがモンベルのレインジャケットとレインパンツです。レインジャケットとレインパンツを同じスペックのものに合わせなくても良く、例えばレインジャケットは耐候性に優れているものをセレクトし、レインパンツは軽量性に優れたものを選ぶというセレクトが可能です。
モンベル レインハイカー ジャケット
エントリーモデルながら高い防水性と多彩な機能を備えたコストパフォーマンスに優れたレインウェアです。2レイヤーを採用しているため、夏山における低山登山、ハイキングからキャンプまであらゆるシーンで活躍します。
おすすめの登山シーン:3シーズンの低山登山、ハイキング、キャンプ
モンベル サンダーパス ジャケット
モンベル独自の防水透湿性素材ドライテックを使用した初心者登山者にもおすすめのレインウェアです。3レイヤーのため耐候性と耐久性にも優れており、低山登山におすすめのエントリーモデルです。
おすすめの登山シーン:3シーズンの低山登山
モンベル レイントレッカー ジャケット
軽量性としなやかな着心地、運動性を高める独自のパターン、そして耐候性に意識したベルクローテープとドローコードを採用したゴアテックスインフィニアムを採用したレインウェアです。
おすすめの登山シーン:3シーズンの低山登山、スピードハイク
モンベル バーサライト ジャケット
軽量コンパクト性を実現したモデルです。ベルクロテープやドローコードなどを排除し、シンプルな作りながらも、フードからの雨をシャットアウトし高い耐水性も実現した装備の軽量化にインパクトを及ぼすレインウェアです。
おすすめの登山シーン:トレイルランニング、スピードハイク
価格を抑えたゴアテックス製レインウェア『レインダンサー』
ゴアテックスファブリクスを使用したモデルとして、最もリーズナブルな価格を実現したレインウェアです。厚手の生地なため耐候性と耐久性に優れており、運動量が少なく、しかしながら外は寒いというシーンに適したレインウェアです。
おすすめの登山シーン:初春、晩秋における低山登山、高所登山
またモンベル以外にもPuroMonteやコロンビア、ミズノもコストパフォーマンスに優れたアウターがあります。
登山用アウターウェアはちゃんと洗うことがベター
登山用のアウターウェアは風に当たる、雨に濡れるなどして汚れやすいです。アウターの表面が汚れてしまうと撥水性能を落とし、内側が皮脂で汚れることで透湿性能が失われます。このようなことがないように正しい洗濯方法で、一度アウターを着用したら必ず洗濯機にかけるようにしましょう。