登山で使用するテントは山岳用テントと呼ばれ、激しい雨風に耐える強度、ザックの中に収納することができるコンパクト性、持ち運ぶのに苦になりづらい軽量性が特徴です。
山岳用テントには様々な種類があり、最初は何を選べば良いかわからないことだらけでしょう。この記事では山岳用テントの種類と選び方を紹介します。
山岳用テントの種類
山岳用テントには様々な種類が存在します。どのような種類があるか以下のリストを見てまずは概要をつかみましょう。
自立式と非自立式
- 自立式…テントとポールを使うだけでテントが建つタイプ
- 非自立式…テントとポールで組み立てた後、張り綱でポールを引っ張ることで建つタイプ
自立式はすぐに組み立てることか出来るため、設営・撤収時間を短縮する事ができ、慣れれば誰でも簡単に組み立てることができます。
非自立式は張り綱を使用し、テントにテンションを掛けることで立ち上がるタイプです。このためある程度の時間を要し、張り綱をペグダウンするためのスペースが必要になります。自立式と比較するとポールを短くすることができるため、軽量なテントが多い特徴があります。
現在販売されている山岳用テントのほとんどが自立式です。
シングルウォールとダブルウォール
- シングルウォール…壁が1枚で、設営時間が短く、テントの軽量化が可能
- ダブルウォール…壁が2枚で、結露が出にくく、前室があるため、登山靴やザックを置いておくことが可能
シングルウォールは組み立てがシンプルで設営・撤収時間を短縮する事ができます。しかし壁が1枚なので、結露が生じやすく、また前室がないため登山靴をテント内に置いておく必要があります。
ダブルウォールは2枚の壁があるため、結露が生じにくく、雨の日も前室を使ってお湯を沸かしたり、荷物の置き場所にすることが可能です。
山岳用テントの主流は居住性が高いダブルウォールテントです。
吊り下げ式とスリーブ式
- 吊り下げ式…インナーテントの四角にポールの先端をさし、ポールに吊り下げるようにしてインナーテントを建てるタイプ。
- スリーブ式…テントポールをインナーテントに備え付けられたスリーブにさしてインナーテントを建てるタイプ。
吊り下げ式は、使用する生地が少ないため、テントの軽量化にインパクトを及ぼします。またインナーテントを組み立てる前に地面に固定することができるため、強風の際に飛ばされる心配が少ないメリットがあります。
スリープ式は組み立ててからペグダウンをする必要があるため、強風の際には飛ばされないように注意が必要です。吊り下げ式と比較すると、インナーテント内の居住空間が広いのが特徴です。
山岳用テントの選び方
山岳用テントの種類を選んだら、次にどのような点に着目して選べば良いかを紹介します。
インナーテントのメッシュの面積
軽量な山岳用テントのインナーテントの多くがメッシュ素材の面積が多いデザインです。
軽量ではありますが、寒い季節の場合は冷気の侵入が多くなるため、室内の気温が低くなります。
高所登山の場合は7月から8月と限定的な使用に限られる傾向があるため、長い期間使用するためのテントを望む場合は、メッシュ素材の少ないインナーテントを選びましょう。
バスタブの面積と高さ
バスタブとは、強い雨が降ったときに地面からの雨の跳ね返りによる雨の侵入を防ぐために設けられた、インナーテントに施されたバスタブ形状のフロアデザインです。
バスタブ部分は素材に厚みがあり、縫い目から雨の侵入を防ぐためにシームテープが施されています。
就寝時は風よけともなるため、バスタブに高さがあるタイプのテントを選ぶと、直接テントに当たる風から身を守ることができます。
フライシートのデザイン
フライシートの素材が少ないことでテントの軽量化を行うことができます。
冬用のテントはフライシートが地面にできるだけくっつくようにデザインされており、これによって風や雪の侵入を防いでいます。
3シーズン用のテントはフライシートが地面から離れたデザインが多く、これによって軽量化は行われていますが、風がインナーテント内に直接入ってきます。
インナーテントのメッシュ素材の面積や、バスタブの高さと照らし合わせて、フライシートのデザインもチェックしてテントを選ぶようにしましょう。
各所で使用されているデニール数
デニール数とは素材の厚みを表します。10Dと記載があれば、それは10デニールという厚みを表しています。
デニール数が高ければ、それだけ耐久性と耐候性に優れており、岩場の多いテント場での設営、暴風雨に見舞われた際にテント泊をする際、雨の侵入や破れ等が少ないため、安心して使用することができます。
素材が厚くなるため、テントの重量は増してしまいます。特にテントと地面が擦れることが多いグランドに使用されている素材は、デニール数が高いテントの方が安心です。
テントポールの素材
強風に煽られたり、雪が積もってテントポールが折れてしまったら大変です。このようなことがないように柔軟性の高いテントポールが使用されているか確認をしましょう。
MSRが使用するイーストン社のポール、多くの山岳用テントが使用しているDAC社のポールは安心感が高く人気があります。
テント内の居住空間
テント内が広いことで、荷物を多くテント内に並べることができたり、体やシュラフが直接インナーテントの壁が当たらないことで、結露で濡れることを防ぐことができたり、広い空間による居心地の良さを体感できたりとメリットが多いように思いますが、山岳用テントの場合はデメリットもあります。
居住空間の広いテントはその分、重量が増す傾向にあります。また設営場所を選ぶため、テント場に狭いスペースしかない場合には設営が難しい可能性があります。
どちらを選ぶかよく考えてテントを購入するようにしましょう。
入り口が長辺か短辺か
テントの入り口が長辺についていると前室が広くなる傾向があり、前室を使用することが多い人には使いやすいテントとなります。テントから山の景色も眺めやすいモデルが多いです。
テントの入り口が短辺についていると、部材が少なくなるため軽量なテントが多いです。また出入りする際に、雨がインナーテント内に入りにくく、悪天候の場合は有利となります。
ここまではテントのデザインや素材、スペックを見てのテントの選び方を紹介しました。次に山岳用テントを選ぶときに見るべきポイントについて紹介をします。
テントを選ぶときに見るべきポイント
テントを選ぶときに注意して見ないと後悔してしまうポイントについて紹介をします。
最小重量と総重量
テントの重さを確認する時に、テントのスペック表に最小重量と総重量という表記があります。
最小重量とはテント本体(インナーテント)、フライシート(レインフライ)、テントポールの合計重量を指します。
総重量とは、これらに追加してペグ(テントステーク)、ガイコード(張り綱)、スタッフサックの合計重量を指します。
ペグや張り綱については、より軽量なものと交換することができるので、最小重量でテントを比較するようにしましょう。
3シーズンと雪山登山向けのテント
3シーズンのテントは降雪を前提としていないデザインに仕上がっており、雪山登山向けのテントは降雪、吹雪の中でのテント泊を前提としたデザインに仕上がっています。
全く違う目的でデザインされているため、できれば分けてテントを選ぶのがおすすめです。
ソロテントと2人以上のテント
ソロテントはその名の通り、1人の大人が寝るスペースが確保されたコンパクトなテントです。
2人の大人が寝るスペースが確保されたテントは、出入り口が2カ所設けられていたり、前室が2カ所あるなど、2人で1つのテントを活用するのにストレスなく使用出来るデザインに仕上がっています。
2人用のテントを2人で使用すると、例えばポール・インナーテントとフライシートとペグ類というように、装備を分けて持ち歩くことができるため、結果、軽量な装備でテント泊をすることができます。
もしもあなたが1人よりも2人で行くことが多いならば、ソロテントを2つ購入するのか、2人用のテントでま賄うのかを考えるようにしましょう。
海外メーカーと日本メーカー
円安の影響などで、海外メーカーのテントはとても価格が高騰しています。また海外メーカーのテントは、その国の気候に合わせたデザインになっている場合が多いことにも注意が必要です。
日本メーカーは海外メーカーのテントと比較すると価格が安く、もし壊れた時でも修理に出しやすく、相談もしやすいメリットがあります。しかしテント場で『同じ形と色のテントがたくさんあるから、山小屋から戻ってきたら自分のテントがどこにあるかわからなくなってしまった。』何ていうデメリットもあります。