厳しい冬のシーズンが終わり、雪が解け草花が芽吹き、鳥の声が山へと誘う春山の季節がやってきました。登りたいと気持ちが焦りますが、山によってはまだまだ雪が残っているところもあります。今回は雪がなく無雪期の春山登山にピッタリの山をご紹介します。
雪のない春山ってどんなところ?特徴と対策
ここでは雪の溶けた春山の特徴と対策をご紹介します。
春山の魅力はこちらの記事で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
標高の低い山
雪が溶けている山で真っ先に思いつくのは、低山と呼ばれる標高の低い山です。標高は高いところで1,000m程、北陸や地理的に降雪が多いところを除いては、概ね雪が溶けています。
低山では山野草が芽を出し、気候も登りやすく動いていると少し汗ばむ程度の、気持ちの良い山登りができます。
アウターを着なくても薄手の長袖で行動でき、ハイキング時の装備で登れるところが多いです。
葉が枯れ落ちていた冬山では、麓から見る山は茶色く、標高の高いところから雪を纏っていましたが、低山では徐々に葉が出て緑がかり、ヤマザクラを始め春の花々が咲き、山に彩りが戻ってきます。
登りやすく、雪がないので頂上でも過ごしやすくつい長居してしまいます。
とはいえ、気温が一気に下がったりすると早朝は凍結することがあるので、目的の山に登る事前情報で凍結が予測される場合は、チェーンスパイクの携行やルートの見直しをしておくと良いです。
3月は雪がなくても気温変化が大きい
冬型の気圧配置が弱まり、気温が上昇して登りやすくなるのが春山ですが、昼夜の気温差や日ごとの気温差も大きい時期でもあります。
前日まで山頂で半袖でも過ごせた場所が、翌日は一気に気温が下がって薄手のダウンジャケットが必要なんてこともあります。
以前、雪解けの低山の山小屋に泊まった日の朝、調子に乗って半袖で山小屋周辺の写真を撮ろうとしたら、雪でも降るのかという程の寒さに見舞われたことがありました。
この特徴は南寄りの風が吹いている日や、実は快晴の日によく起こります。
対策として、事前に翌日の天気や気温を調べておくと、適切な防寒対策(薄手のソフトシェルからダウンにする・薄手の保温用アンダーを着用するなど)をしやすくなります。
また早朝に登る際は、日中との気温差を考慮して、薄手のソフトシェルやウインドブレーカーを羽織って、日中は脱いで歩くという対処をしておくと良いです。
3月の登山道がぬかるむ
全ての登山道ということではありませんが、朝晩は気温が下がって登山道上の水分が凍り、日中に溶け出すことがあります。雨が降っていないのに登山道が泥でぬかるみ、滑りやすくなり、思わぬ転倒による怪我や、足元が泥だらけになりやすいです。
私は歩き方が目も当てられないほど下手で、山仲間の足元は泥がちょっと跳ねた程度なのに、ブラックのイケてるロングパンツが、アースカラーのパンツに見間違えるほど泥だらけになるのがこの時期です。おかげで泥対策のスパッツが欠かせなくなりました。
対策として、登山中は泥除けのスパッツを携行する、避けられない登山靴の泥汚れは帰宅後に汚れを落としたり、登山口によっては汚れを落とせる水道やブラシが設置されているありがたい場所もあります。
虫が少ない
ここについては主にメリットになりますが、盛夏時に比べると虫の動きはまだ活発ではなく「うわっ!」と耳元に飛来してくる虫や、汗でウエットな肌やウェアにまとわり付かれる事もほとんどなく、非常に快適です。
また、特定地域に出没する不快生物上位のヤマビルも3月はまだまだ動きは見られないので、足元や木の上、雨上がりの翌日などを気にしなくても良いのはとても嬉しいポイントです。
3月は本格的な登山シーズンの少し前
GWや連休、イベントが増える4月以降は、登山者や周辺観光客も増える時期になります。
登りやすく絶好の登山条件であるからこそ多いというのもありますが、シーズン少し前の3月に登ることで、駐車場の満車対策やバスや電車の満員状況を回避できるというポイントがあります。
平日ともなれば人はより少ないので、山もメジャーなルートでも比較的静かな山登りが楽しめることも。
とはいえ登山者が少ないということは事前の情報収集がしづらいので、初めて足を運ぶ山の場合は、情報が多く登山道が明瞭なメジャールートを選ぶと安心です。
雪解けで新しい春の世界へ-3月から5月のおすすめ春山登山
【関東】大野山-丹沢の西部に位置するの山でのどかな雪なし登山を満喫
大野山は神奈川県西部に位置する723.1mの山で、頂上から丹沢湖、丹沢の山々、富士山などが望める、年間を通して登られている人気の山です。
JR御殿場線の谷峨駅をスタートして緩やかに標高を上げていき、芽吹く山野草を楽しみながら眺望がひらけるエリアに入ります。
谷峨駅周辺の渓谷の景観、富士山、おおらかな山容がもたらす気持ちの良い登山道、どれも3月の雪解けの登山にうってつけのロケーション。気持ちの良い山の清々しさと春の訪れの喜びを噛み締めながら到達する山頂は広く、ゆっくり足を伸ばして休むのに最適です。
下山は御殿場線の山北駅へ進路を取り、どこか昔懐かしい風景に癒やされながら帰路につけます。
日帰り旅行でのんびり山に浸かれるのが、大野山の魅力です。
【関東】シダンゴ山-静かな里を愛でる3月の雪なし春山登山
標高758mのシダンゴ山は、神奈川県松田町に位置する山で、寄集落の静かな風景と共に歩く里山ハイキングが楽しめます。
シダンゴ山は登山口である寄から登ると90分ほどで山頂に達し、冬が明けて登山再開の足慣らしや、友人とのハイキングなどに丁度良く、程良い疲労感で登れます。
山頂からは周囲の山々が望め、春シーズン以降の山への期待も上がります。
シダンゴ山のみを目指しても良いですが、周囲にある高松山まで縦走したり、登山経験がある方なら山北駅を目指すなどルートにバリエーションがあり、コンディションや技量に合わせて柔軟な登山計画が立てられます。
【関西】雲山峰-大阪府と和歌山県の境を歩く紀泉アルプスで3月の低山縦走を楽しむ
雲山峰は大阪府と和歌山県の県境にある紀泉アルプスの最高峰です。標高は490mで、雲山峰に至るまでは眺望が開けているところが多く、また山野草も縦走路で随所に見られ、信仰と日本の歴史を感じながら登れるという、低山縦走ならではの楽しみが詰まった玉手箱的スポットです。
とはいえこうした里山の縦走路ならではの難所もあり、長距離のルートを計画したり、道迷いが起こりうる場所があるなど、初心者の方には素敵な眺望と春山の楽しみを、経験者の方には長期縦走登山に備えたトレーニング山行としてなど、目的に合わせて紀泉アルプスを歩けます。
また、基本的には公共交通機関(JR山中渓駅や六十谷駅など)を利用して登れるので、アクセスが良好なのもポイントです。
【関西】二上山-美しい山容に惹かれる双耳峰へ3月の雪なし登山
大阪府と奈良県にまたがる二上山は、517mの雄岳と474mの雌岳、2つの山頂を持つ双耳峰です。
麓のどこからも見ても綺麗な顔立ちをしており、朝、日中、夕刻と多彩な姿を見せてくれ、登っても良し、眺めても良しの山です。
美しさが目を惹く二上山には、深い山岳信仰が根付いている山としても歴史があり、目に見える姿の奥にある神聖さも持っています。
日帰りで楽しめる山として親しまれ、大和平野を始めとした眺望の山、また花の百名山に選ばれている通り、春山では彩り豊かな花々を楽しめます。
【関西】王子ヶ岳-3月下旬のサクラからツツジまで楽しめる春の爽やか登山
岡山県児島半島に位置する王子ヶ岳は、ハイカーからボルダーまで、多くのアウトドアユーザーが訪れ、春はサクラからコバノミツバツツジなどの綺麗な花々を楽しめることでも知られています。
眺望も素晴らしく、瀬戸内の景色はいつまでも眺めていられる景勝地。また眺望だけでなく、ニコニコ岩といった個性的な大岩も見られ、王子ヶ岳が生み出す様々な自然の造形美が登山者を迎え入れてくれます。
行程は3時間前後で登れる半日ながら歩き応えのあるルート。下山後の食事や日帰り入浴といった観光と合わせて楽しめます。
【関西】高御位山-春の花から山野草を愛でる3月からの雪なし春山登山
播磨アルプスと呼ばれる稜線の一峰である高御位山は、標高304mとは思えない存在感ある山容と眺望が印象的な山です。
1年を通して登れる人気の山ですが、春はコバノミツバツツジを始めとした花々が山を彩り、険しく厳つい印象を持つ岩稜に、相反する美しい植物が咲き誇る姿は一見の価値あり。春の時期にこそおすすめしたい山です。
ダイナミックな岩山でありながら初心者の方でも登れるルートを備え、アクセスも公共交通機関を利用できるので、春ののんびり登山が出来る山として、ソロからグループまで楽しめます。
【九州】可也山-糸島富士で3月から春の雪なしお手軽ハイキング
福岡県糸島市に位置する標高365mの山で、別名糸島富士と呼ばれる独立峰です。富士の名のつく通り綺麗な山容をしており、海に面した独立峰ということで、麓からもその印象的な姿と頂上から見る唐津湾、博多湾の秀逸な眺望が魅力です。
山頂までの所要時間は1時間ほどで、静かな頂上には可也神社があります。可也山の歴史を思い、付近の展望台より望める景色を堪能するという、里山ならではの優雅な時間を過ごせます。
時間に余裕を持って山登りができるので、山頂でゆっくりしたり、下山後は周辺で食事など、春の暖かな1日を過ごすのに最適です。
【中部】宮路山-春の陽気を楽しむ3月から気軽な低山登山
宮路山は愛知県豊川市に位置する361mの山です。
交通アクセスが良く、こじんまりとした山頂から望める海と街並みの眺望、季節ごとに魅せる花々、周辺の山への縦走路を計画できるなど、登山の醍醐味が気軽に楽しめる山として人気があります。
麓から見る宮路山は存在感があり、登山意欲に駆られるシルエットを持っています。
春の暖かく登りやすい時期に、山仲間との低山縦走、宮路山を目指してファミリーハイクなどにおすすめです。
【中部】高館山-鳥海山を望む展望と花の楽園へ3月からの雪なし登山
高館山は山形県鶴岡市に位置する標高273mの山で、緑豊かな自然と鳥海山や月山といった名山を望める山として親しまれています。
雪深い中部地方の山の中でも早い時期から雪なしの山登りができ、オオミスミソウを始めとした植物やギフチョウなど、高館山が抱く山の魅力を満喫するのに春は特におすすめ。麓の大山公園は桜の名所として知られているので、登山とセットで楽しむと山形の春を1日を通して感じることができます。
公共交通機関、マイカー共にアクセスができるので、厳しい冬を越えた春爛漫の雪なし登山として、ファミリーハイクからグループ登山に最適です。
雪のない春山に持っていくと良い装備
保温ができる水筒で3月でも温かい飲み物を
気温差の激しい3月の登山では、早朝で気温が低い時間帯、頂上で風が強い場所などではまだまだ冬の寒さが残っています。
そんな時に役立つのが、登山やキャンプで役立つ長時間の保温・保冷に特化した水筒です。
グローブの上からでも握りやすく、栓も通常の水筒より開けやすい工夫がされており、出発前に入れたお湯が昼頃の頂上でも熱いままで飲むことが出来るなど、登山者が扱いやすく水筒本来の機能も非常に高いなど、ひとつ持っておいて損はない、正に魔法瓶です。
休憩中にほっと一息、頂上で暖かいスープを飲む、湯沸かし時の燃料節約など、水筒があるだけで登山中の快適さはエベレストと海底ほどの差があります。
私は長時間の登山や1泊以上の登山では500mlを、日帰りや行動中に気軽に飲みたい時は350mlなどを使い分けています。もしまだお持ちでない方は500mlを持っておくと安心です。
凍結や万が一の積雪にも安心のチェーンスパイク
事前情報では載っていない凍結や突然の積雪が現地で起こる場合があり、登山ではよくある事態です。
登山のお守り装備としてメジャーなチェーンスパイクは、冬の低山や春山で真価を発揮するアイテムです。
凍結面で使用すると路面にしっかり食い込み、転倒することなく凍結面を通過でき、斜度のある場所でもしっかり路面に食いついてくれます。そして着脱が簡単というのがチェーンスパイクの魅力です。
また、ぬかるみの斜面を通過しようとすると、転倒・滑落の危険性がある場合にも有効で、雪がなくてもぬかるみが想定される春山では、持っておいて損はありません。
私は沢登りもするのでチェーンスパイクは1年を通して持ち歩いていて、ぐずついた斜面を登ることが多い沢登りでは欠かせない相棒です。
軽くてコンパクトな化繊ジャケットで休憩も行動も暖かく
春山の防寒着としておすすめなのが、化繊ジャケットです。
冬山では行動着としても優秀なウェアで、濡れに強く、使用後もメンテナンスが容易という点で、保温着を着用して行動する冬山の行動では特に重宝します。
ダウン素材より重量はあるものの、春山で持っていく軽量で程良い保温力を持つ化繊ジャケットであれば、350ml缶ほどのサイズに収まり、重量も250g前後で負担も少なく、バックパックに忍ばせておけば休憩時の保温に最適です。
3月から雪なしで登れる春山で登山を満喫しよう
3月の雪解けは、気温も上がり歩きやすくなる時期。高所では雪が残っており経験者向きの山が多いですが、1年を通して登れる低山の中には、雪がなく3月から登山を楽しめる山も沢山あります。
春の爽やかな風を感じ陽光を浴びながら3月の春山は、山頂でご飯を楽しんだり花々や動物たちの姿に微笑んだり、暖かな山頂でくつろいだり、山登りの魅力が詰まっています。
新しいシーズンの登山の幕開けに最適の3月の春山登山を、ぜひ楽しんでください。