4月は春山登山のシーズン真っ只中。登山を始める、新しい登山スタイルに挑戦するという人も多いのではないでしょうか。そんな人におすすめなのが、深田久弥氏が選定した日本百名山。各地の魅力、そして日本の山の魅力が詰まった日本百名山に、4月から登れる山頂をご紹介します。
日本百名山とは
随筆家で登山家であった深田久弥氏が定めた日本国内の山より100座を選定した随筆集で、山の品格・歴史・個性を基に選定された魅力ある山々が選ばれています。
登山を始めて間もない人にはいつかは登りたい目標の山として、経験者には深田久弥氏の選定に想いを馳せ、日本の山への理解を深める山々として、発表から数十年を経ても多くの登山者に登られています。
日本百名山は100座を登るという壮大な目標となっているだけでなく、ひとつひとつの山の深さを知るきっかけ、登山そのものの魅力や裾野を広げることに繋がっています。
4月から登る日本百名山の特徴
【残雪】1,500mを越える山が多い:チェーンスパイクやアイゼンを
日本百名山に選ばれている山の多くは標高1,500mを越えています。2,000m以下でもタイミングによっては雪が残り、2,000m以上では登山道が雪で埋まって通れず、積雪時に通る難しいルートを登ることもあります。
季節は4月で暖かな春山ですが、凍結路を歩くチェーンスパイク、山によっては12本爪のアイゼンを使用する場合があるので、事前の情報収集を入念に行っておくと良いです。
【気候】暖かく歩きやすい!寒暖差と天候急変に要注意
4月の登山は、薄手のロングシャツや晴れて風もなければ半袖でも汗をかく程に暖かく、身体がよく動く絶好の登山シーズンです。標高が2,000m以上でも防寒対策用のウェアを持っていれば、日中は薄手のウェアで対応できます。
注意が必要なのは日没後や天候が変わりやすい日で、日中の寒暖差が大きい春山では、一度天気が崩れれば気温も大きく下がり、冬の時期に戻ったかのような状況になります。
4月に入って1,000m前後の山を縦走したのですが、天気が悪い午前中は長袖を着ていないと寒く、天気が回復した午後は一転して暑くなり、一緒に登った仲間と「同じ山とは思えない」と話していました。
春山の天気、寒暖差を念頭に入れて計画、当日の行動を判断すると良いです。
【装備】ウェアは防寒対策をしっかりと!突然の状況でも対応できる装備を
4月の日本百名山で持っていくウェアは、軽量ダウンや化繊のジャケット、厚手のパンツなどが役に立ちます。
行動中は薄手のウェアで十分ですが、頂上ではまだまだ寒い日が続き、その場で留まったり、日帰りの山でも一夜を明かす事態になった時、防寒着があると安心です。レインウェアも厚手のものがあれば防風対策になります。
また当日に雪がなくても、突然の降雪や思わぬ凍結に対応できるチェーンスパイク、保温やシェルターになるツェルトの携行など、何が起きても対処できる装備を持っておくと良いです。
4月から登れるおすすめの日本百名山
【近畿】伊吹山
滋賀県と岐阜県にまたがる伊吹山は、標高1,377mの低山でありながら、冬は非常に多い降雪量、国内で2番目に多い植物を有する山とされ、深い山岳信仰に秀逸な眺望を有する名峰です。
4月の登山ではその年によって差はありますが、歩いていると汗ばむほどに暖かい中で上りが楽しめ、一部残雪の中を通ります。チェーンスパイクと防寒対策用で化繊ジャケットを持っておくと良いです。
観光地としても知られる伊吹山。絶景を終始堪能できる春山登山を満喫したら、下山後は入浴施設で汗を流し、地元の食事で舌鼓。伊吹山は最高の日帰り登山を提供してくれます。
【甲信越】金峰山
山梨県と長野県の境に位置する金峰山は、同山が属する奥秩父山域の名峰にして、日本百名山にその名を連ねるに足る山容と歴史を持っています。
古くから山頂に鎮座している五丈岩は遠方でも金峰山を認識できるほど存在感があり、森林限界を越えた山頂周辺の眺望は、気がつくと山の世界に没入してしまう程に美しく、金峰山が一年を通して多くの登山者に登られていることが頷けます。
登山道は大半を樹林帯の中を歩きますが、残雪があり森林限界を越えると風を浴びて体感温度も下がるので、防寒対策とチェーンスパイクがあると安心です。
山頂までは早朝から登れば日帰りで登れますが、序盤で通過する富士見平小屋より1泊2日で登るのもおすすめです。
【四国】石鎚山
西日本最高峰の山として知られ、日本七霊山、日本百景にも名を連ねる石鎚山は、厳つく屹立とした山容の中に豊かな生態系を抱く山です。
登る者に畏怖の念を抱かせる山体は山岳信仰も深く、その昔は修行場としても登られていました。その姿を現在に残す建物や登り応えがある登山道が石鎚山の特徴であり、多くの登山者を惹きつけます。
無積雪期でも経験者向きの山で高度感があるのがポイント。4月は残雪があるので、チェーンスパイクは必携です。
厳しくも夢中になる登山道を経てたどり着く山頂では、言葉にならない眺望と山頂での一時が待っています。
【関東】赤城山
関東地方の北部、群馬県のほぼ中央部に位置する赤城山は、日本百名山と日本百景にその名を記す名山です。
最高峰の黒檜山を筆頭に複数の頂を持ち、山中には火山である赤城山が抱く名所が散りばめられ、この地が由来の伝説が存在するなど、日本百名山として相応しい山容と自然、そして人との深い繋がりを感じる歴史を有しています。長い時の中で赤城山の魅力は育まれ、赤城山を登ることがその時を辿るという、登山としてとても面白い時間を過ごせます。
4月の登山道は雪も大分溶けて歩きやすくなっていますが、ところどころ残雪があるので、お守りとしてのチェーンスパイク、標高も最高峰の黒檜山で1,828mあるので、防寒対策をしておくと快適な春山登山が楽しめます。
【北陸】荒島岳
標高1,523mの荒島岳は、四季折々で多彩な表情を持ち、信仰の山としても知られる福井県の名峰です。
大野富士とも呼ばれる美しい山容、その懐にはシャクナゲ、カタクリなどの花々が咲き、アサギマダラを始めとした生物も見られ、厳冬期の様相から春の美しい花々、福井県随一の眺望など、多彩な表情を持つことで登山者を魅了します。
4月の荒島岳は雪が残り春山としては経験者向きの山ですが、雪解けと共に景色が一変するので、季節の移ろいの只中に登れる貴重な時期です。装備はチェーンスパイクの他、状況によっては12本爪のアイゼンが必要になるので、事前の情報収集はしっかり行っておきます。
4月の日本百名山登山で持っておくと良い装備
サングラス
残雪で雪からの照り返しや木々が払われた場所では眼に強い紫外線を浴びることになり、また眩しくて小さな凹凸を拾えず思わぬ怪我をすることもあります。
真冬の雪山で使用するゴーグルを使うほどではありませんが、アウトドア用のサングラスを着用しておくと、紫外線から眼を保護し、視界も確保されるので持っておくのが良いです。
おすすめは、長時間の着用でも疲れない軽量なモデル。また、隙間を埋めて紫外線をしっかり防いでくれるレンズを採用しているモデルだとさらに安心です。
チェーンスパイク
残雪がある春山、早朝の凍結、雪が溶けてぐずついた急斜面は、通常の登山靴では通行が困難な場合があります。この時期に力を発揮するのがチェーンスパイクです。
着脱が容易で路面をしっかり掴んでくれるので、残雪の春山では必須と言えるおすすめ装備です。
チェーンスパイクにはサイズがあるので、当日に履く登山靴のサイズに合わせて入手しておきます。
当日に使うことがなくても、お守りとして持っておくだけでも不安が減り、とても心強いです。
日本百名山に登って日本の山の魅力を体感しよう
日本を代表する山々が記された日本百名山は、山中では四季折々の自然、麓からは芸術的な山容と深い歴史を持つことで、数十年を経た現在も登山者を魅了します。
4月の日本百名山の山々は、冬の終わりと春の訪れという季節の移ろいを感じさせる時期。しっかりと準備をして登れば、この時期ならではの厳しくも美しい山の姿を存分に経験できます。
ぜひ日本百名山で、4月の登山を楽しんでください。