甲斐駒ヶ岳への経由ルートである双児山(標高2649m)は、南アルプスの緑豊かな山で、赤石山脈の北端に位置しています。数々の名峰がひしめく南アルプスでは、低山かのような印象かもしれないです。他県に存在すれば、その地域の百名山に入るはずなんですよね。双児山は四季折々の表情を見せる、美しく整った山腹をもっています。双児山のルートを事前に徹底的に知ることで、甲斐駒ヶ岳への登山がもっと楽で有意義になるのは間違いなでしょう。
そこで今回は、まずは情報があまり多くない双児山を詳しく紹介します。甲斐駒ヶ岳の前衛の山にあたる駒津峰も、詳しく紹介していますので、のちほどそちらもご覧ください。
双児山の基本情報と3つの魅力
恰幅のよい整った形の山容は、南アルプスの特徴のひとつ。「双児山」と名がつくとおりに、南峰(標高2600m)と北峰(標高2649m)の2つのピークがあります。
標高は森林限界内にとどまり、登るごとに樹木の種類が変化していくのに気づくはずです。
針葉樹の深緑の葉は、鮮やかな新緑の中で自己主張をして凛と映えています。双児山の登山路は、規律正しく敷かれる枕木ではありませんが、自然を活かしたルートとしては非常に整っています。足場は登るごとに徐々に岩が多くなり、階段程度の高さの岩が山頂付近まで続いているのです。
山の名前 | 双児山(ふたごやま) |
標高 | 2649m |
エリア | 南アルプス / 赤石山脈の北部 (長野県伊那市) |
詳細情報 | 双児山の地図・天気 |
魅力その1) 自然の摂理を保ち続ける亜高山帯の原生林
双児山は健康な山として理想を保っている、広葉樹と針葉樹の混交林です。樹木の一本一本の存在が、自然の摂理に沿って存在しているので、お互いを守り続けているかのようです。もちろん、森の中に暮らす動植物も、登山で歩く人間をも守ってくれています。でも、時に植物同士の生存競争もあったりします。
針葉樹はクリスマスツリーになる、もみの木の仲間(マツ科モミ属/常緑針葉樹)の「ウラジロモミ」「シラビソ」がほどよく茂っています。もみの木は芳香を感じやすい樹木ではなく、悪臭を沈める消臭作用があったり、抗菌作用が高いです。つまり、南アルプスの森は清潔感溢れているということ。もみの木は、風と揉み合う神聖な木と言われており、風とよく語り合って音をだします。風を受けて囁く声に、遭遇できるのかもしれないですね。
広葉樹は9月上旬ごろより紅葉がはじまり、ダケカンバ(岳樺)の葉が黄色に染まります。夏山登山をすると、針葉樹が深く薄暗い森の印象を持つはず。秋になると明るく華やかな森になり、広葉樹の多さに驚くでしょう。秋に目視すると、8割ぐらいが広葉樹の葉に見えます。黄色の葉が太陽を浴びて、まるで夕暮れ前の黄昏時のような、やわらかい光ですよ。
魅力その2) ちょっと長距離になったけど、初心者も女性も歩ける登山道
双児山ルートの山頂付近は、甲斐駒ヶ岳登頂クライマックスである、花崗岩(かこうがん)の直登ルートとほとんど同じ傾斜。しかし、岩が小ぶりなので登りやすいです。直登ルートは自分が登れるのか、双児山を歩きながら心構えができます。2合目までは山腹を九十九折(つづらおり)で歩む、初心者と女性が登れる登山路としてつくられた経緯があります。
明治時代には双児山経由の登山道はまだなかった。山岳ガイド(猟師)の案内で、甲斐駒ヶ岳登頂の帰路に双児山の樹海を駆け下りる、ショートコースを歩く強者が利用していました。現代のトレイルランナーみたいですね。双児山のルートは登山者の安全を守るため開拓しただけあって、道迷いや事故が少ないルートとして愛用されています。
魅力その3) 双児山から名峰の数々を望む豪快な見晴らし
樹林から抜け出た瞬間に、南アルプスならではの恰幅の良い名山が、堂々たる姿勢で佇んでいる姿に出会うでしょう。北に甲斐駒ヶ岳(標高2967m)、東に北岳(標高3192m)、南に仙丈ケ岳(標高3033m)が望めます。名峰の山頂も山腹も、どちらも美しく見える丁度よい標高なので、展望台としても大人気です。
とくに新緑が眩しい6月上旬や、山々が紅葉する9月中旬頃の景色は圧巻で、いつまでも見ていられでしょう。甲斐駒ヶ岳と、駒津峠のコントラストは見事な美しさです。季節の色に鮮やかに染まる、形の整った駒津峠の向こう側に、白銀の山頂が顔を出しています。
前置きが長くなってしまいましたね。森好きは、書き止めるには難しい魅力的な山です。では、双児山のルートをご紹介します。
双児山|難度別の登山ルート2本とそのコース
北沢峠→甲斐駒ヶ岳|甲斐駒ヶ岳登頂の登山コース(双児山経由)
季節の変わり目は樹林帯内の風景が素晴らしく、新緑の初夏や紅葉がはじまる9月終わりごろは、樹林帯内の風情を思う存分に楽しめます。針葉樹と広葉樹の本数はほぼ半々のようだが、広葉樹のダケカンバの枝ぶりが立派なため、紅葉の季節は見事に秋を彩る色彩になるのが魅力です。
ここでは、甲斐駒ヶ岳行きの双児山にある登山ルートについて説明をします。
難度:C / 体力:★★★☆☆・・・長野県 山のグレーディングより
時間:8時間59分 | 距離:7.9km | 登り:1,200m | 下り:1,182m |
行動予定 | 05:00 北沢峠 - 07:13 双児山 07:23 - 08:09 駒津峰 08:19 - 09:42 甲斐駒ケ岳 10:12 - 11:31 駒津峰 11:41 - 12:17 双児山 (ランチ)12:47 - 13:59 北沢峠 |
双児山のルート状態はどうなってる?
1合目(標高2032m)の北沢峠登山口から、こもれび山荘のちょうど真上の山腹を九十九折(つづらおり)で登っていきます。2合目(標高2350m)は登山開始1時間頃に到着し、谷と尾根がはじまる平らな斜面です。2合目の斜面を横切ると、これから先は尾根を登るため、岩が多くなる稜線歩きに変化していきます。
北沢峠-双児山(往路1時間50分 / 復路1時間10分)
双児山経由は森が深いため、炎天下の真夏には有難いルートです。樹木は人の体を調和させるエネルギーも放出しているので、深く息を吸いながらゆったりと登ってみてはどうでしょう。ただし、山小屋と水場、トイレがないルートになります。
2合目から10分強歩くと(標高2380m)、北アルプスを眺められるスポットがあり、はじめて遠景を望めます。双児山/南峰(標高2600m)は地蔵菩薩様が目印で、平坦な場に。ハイマツが顔を出し始め、双児山の山頂が近くなると、恰幅のよい南アルプスの名峰に囲まれます。
双児山山頂(標高2649m)からは、東に位置する北岳(標高3129m)、間ノ岳(標高3189m)と、南には仙丈ケ岳(標高3032m)がよく見えます。人が溜まりがちなので、ピークシーズンは少し混んでいるはずです。
甲斐駒ヶ岳を攻略するための、ルートの選び方は?
日照りや風が強いような、体力を奪う気象条件のときは、双児山経由が安心かもしれません。樹林帯がバリアとなって悪天候を緩和してくれるので、少し安定した環境を保つことができます。登りは初級者も中級者も、それほど大きな時間差はないようですが、下りに慣れてないとプラス1時間かかることも。自分のペースで下れるのを、メリットと考えてくださいね。
北沢峠→双児山の周回 | 南アルプスの初級トレッキングコース
初心者の登りでオススメする場合は、仙水峠経由(標高2264m)側が少し多い感触があります。トイレと水場が仙水小屋があるのもありがたいです。
その他にも、双児山の樹林帯を、登山路の登りとふもとの仙水峠からも周遊するハイキングコースにもなります。四方八方を名峰に囲まれており、山腹の色合いをゆっくり楽しみたい場合は、仙水峠への周回が断然オススメ。とくに晴天に恵まれた日は、何処でも立ち止まりたいほどの山化粧に囲まれる。ゆったり南アルプスの景観を楽しみたい方は、トレッキングコースとして楽しめる。ガレ場は休み休み進むだけの道幅があるのも気が楽です。南アルプスにはじめて行く場合に、下見にいくと満足できる景色を体験できるでしょう。
ここでは、南アルプスの下見に行く周回コースをご紹介します。初心者レベルの難易度で南アルプスの恰幅のよい山を間近で見てはどうでしょうか。
難度B / 体力 ★★☆☆☆ 長野県 山のグレーディングより
時間:6時間28分 | 距離:6.0km | 登り:819m | 下り:811m |
行動予定 | 08:00 北沢峠 - 10:13 双児山 10:23 - 11:09 駒津峰 11:19 - 12:29 仙水峠 12:49 - 13:09 仙水小屋 13:39 - 14:02 長衛小屋 14:12 - 14:25 北沢峠 |
北沢峠-長衛小屋-仙水小屋-仙水峠(往路1時間30分 / 復路1時間5分)
双児山のQ&A
Q1. 初心者だけど、甲斐駒ヶ岳まで行けるか心配です。
A1.安全登山なら成功で、登山の勝者です。日帰り登山で計画していたら、山小屋で1泊する計画にしてはどうでしょうか?トレイルランで高山をランニングする時代ですし、徹夜もものともせず登っている時代です。最近はピッチが速い登山者が増えました。例えば、甲斐駒ヶ岳においては、初心者で中高年の無理は禁物かもしれません。自由自在に山を走りまわる若武者と同じように、ハードなスケジュールを立ててしまうと、経験者でも救助要請をしているのです。年に1回は、ヘリコプターが出動しています。
上級登山者のように、臨時のためのエスケープルートも、同時に計画する習慣をつけましょう。甲斐駒ヶ岳は気候や体調と相談しての、ルート変更を実践するにふさわし山です。登山は途中で諦められる人が、上級者になれるのです。ここだけの話、みんな悪天候や体調不良で登頂を諦めてます。諦めるのがとてもうまい方が、登山家として一流になれるんですから。
Q2. 双児山は熊が出る登山ルートですか?
A2. 熊鈴をつけていれば、出会うことはないはずです。北アルプスに比べると、甲斐駒ヶ岳をはじめとする赤石山脈の尾根近くのルートは、ここ数年も非常に安全な地帯のようです。黒戸尾根の登山口から1時間ぐらい入った所では、3年に1度は熊を見かけた登山者の情報があります。目撃情報は標高1,500m相当です。熊は標高1,000m程度に茂るブナ林にねぐらを作るとのこと。熊棚があったり、樹木に熊の爪痕が残されていたら、そこは熊の生活圏。熊は新しい標識を嫌うので、折れてたりボロボロになっていることも。そういった所は用心が必要です。南アルプスには、人の食べ物の味を知ってしまった熊は、まだいないようです。このまま熊と共存できる山を保ちたいですね。
Q1. お花摘み(お手洗い)が少し不便らしいが、どうしたら良いでしょう?
A1. 携帯トイレ、ポンチョ、トイレットペーパーをリュックに入れて登山しましょう。「緊急事態用のシェルター」を迷走柄のレインポンチョにしてはどうでしょうか。シェルターを持っていない方が多いようですが、お花摘み用に購入すると良いと思います。頻繁に使う”シェルター”になります。
地図を見るのは、お花摘みの情報を得るために必要と言っても間違いではないかもしれません。「何処で?」と、数か所にめぼしを入山前に考えておくのです。たとえば双児山なら、南峰(標高2,600m)が第一候補です。
有酸素運動がたくさんできる登山です。関節もよく動かすので、リンパに溜まった毒を放出できる絶好の機会なので、適切な水分補給をして綺麗な体にして登山をすると、健康的な登山にできます。
登山口へのアクセス・各種情報
北沢峠の登山口情報 - 仙流荘バス停
北沢峠・登山口は、北沢峠までは通年マイカー規制。仙流荘バス停から北沢峠・登山口へ、南アルプス林道バスを利用する(ゴールデンウイーク頃から11月中旬頃)。運行区間の注意点は、ゴールデンウィークから6月中旬までは北沢峠ひとつ手前の「歌宿(うたじゅく 標高1,680m)」が終点だ。北沢峠(標高2,032m)まで、徒歩1時間半(6.4km)の上りを歩く必要がある。
▼仙流荘前バス停 ・・・ 長野県伊那市長谷黒河内1847-2
仙流荘バス停 | 長野県伊那市長谷黒河内1847-2 (市営南アルプス林道バス) |
バス運賃 | 1,150円 仙流荘→北沢峠(手回り品 220円) |
所要時間 | 1時間弱 |
駐車場代 | 1,000円(5日以内)350台 |
設備 | WC / 自販機 / 日帰り温泉 / 温泉旅館 / 食堂・売店 / カフェレストラン |
その他情報 | 戸台大橋~北沢峠は、バス停以外でも乗降りができます |
北沢峠バス停 | 〒396-0403 長野県伊那市長谷黒河内 |
設備 | WC / 自販機 / 売店・水場は近くの山小屋に有 |
北沢峠~広河原の通行止め継続中(令和5年 復旧の見通しナシ)
北沢峠登山口(甲斐駒ヶ岳行)へは、もう1ルートバスが出ておりました。残念ながら、令和元年に発生した台風19号の影響をうけ、全面通行止めが続いています。令和5年に復旧の見通しはないとのことです。夜叉神~広河原(山梨県南アルプス市)まではバスが通っております。
関東からの季節バス - 甲斐駒ヶ岳行
シーズンピークは、北沢峠登山口(仙流荘バス停)へ「毎日アルペン号」が往路バスと往復バスを出している。夜に出発して早朝に着くので、自身で運転して登山するよりも負担が少ないため、日帰り登山者に人気がある。
双児山のまとめ
甲斐駒ヶ岳登頂する際に通過する、双児山の情報をお伝えしました。美しい双児山は登りやすくて初心者の方に最適なルートがあります。
はじめて南アルプスに挑戦したり、少し登るのが不安なとき、情報収集を多くしてくださいね。ランドマークの名前と場所を把握しておけば、いつでもだれにでも質問ができます。事前準備が整っていると、メンタル的にも安定するのは間違いありません。
今世紀最高の、よい天気に恵まれることを願っていますネ!!登山ルートの続きは、以下のページをごらんください。