登山者の歩行をサポートするトレッキングポールは、登山を始めたばかりの方にもおすすめのギアです。しかしながら製品によってさまざまな種類や特徴があるため、どれを選べばいいのか迷ってしまう方も多いと思います。
そこでこの記事では、トレッキングポールの使い方や選び方、そして初心者の方にもおすすめのコストパフォーマンスの高い商品をご紹介します。
トレッキングポールの使い方
足にかかる負担の軽減や、歩行中のバランス確保など、使用することでさまざまなメリットのあるトレッキングポールですが、その効果を発揮するには正しく使用することが重要です。以下ではトレッキングポールの使用方法について説明します。
基本的な使用方法
トレッキングポールを使用する際はストラップに手をとおしたうえでグリップをしっかり握り、肘は直角を意識します。左足を前に出したら右手のポールを前方の地面に突き、右足を出したら左手を、というように手足を交互に出していくのが基本的な使い方です。
登りの際の使用時のポイント
登りの際はグリップの下部を握ることでトレッキングポールを短めに持ちます。傾斜の強さに合わせて持つ場所を調整してください。肘は平地を歩くときよりも体側に寄せたほうが安定しやすいです。
下りの際の使用時のポイント
下りの際は登りとは逆にトレッキングポールを長めに持つと歩きやすくなります。長さ調整が出来るポールを使用する場合は、下りの傾斜にあわせて調整するとよいでしょう。肘は平地を歩くときよりも体からやや離し、小さめの歩幅で歩くと重心が安定しやすいです。
トレッキングポールの使用方法について、以下のページでより詳しく紹介していますので、参考にしてみてください。
トレッキングポールの選び方
トレッキングポールを選ぶ際は主に以下の4つの点に着目すると良いでしょう。
- グリップの形状
- ポールの素材
- ポールの収納方法
- ポールの固定方法
グリップの形状
グリップの形状には大きく分けて「I字型」と「T字型」の2タイプがあります。
①I字型
I字型のトレッキングポールは、グリップがⅠの字の形をしたトレッキングポールです。2本セットでの販売が主流で、両手に持っての使用が基本的なスタイルです。両手で杖を突くため、バランスをとりやすく、高低差の激しい山に登る際や、重い荷物を背負っての登山の際におすすめです。
②T字型
T字型のトレッキングポールはグリップがTの形をしたトレッキングポールで、グリップを上から握りこんで使用し、基本的には1本のみで使用します。どちかというと低山向けのため、本格的な登山にはI字型のポールを使用する方がよいでしょう。
ポールの素材
トレッキングポールの素材は主にアルミとカーボンの2種類です。
素材 | 特徴 |
アルミ | ・低価格の製品が多い ・カーボンに比べるとやや重い ・折れにくいが、強い負荷を与えると曲がることも |
カーボン | ・非常に軽量 ・アルミに比べると高価格の製品が多い ・一点に荷重が集中すると折れることがある |
アルミ製のポールは低価格で丈夫なのが特徴です。商品の種類も多く、カーボン製よりも一般的に低価なため、初心者におすすめです。耐久性は高めですが、荷重をかけすぎるとシャフトが曲がる場合があります。
カーボン製のポールは、アルミよりも軽量なのが特徴です。強度の高い素材ですが、狭い範囲に強い荷重がかかると折れてしまう可能性があるため、注意が必要です。アルミ製のものより高価格なものが多く、製品の種類もやや少なめです。
ポールの収納方法
トレッキングポールの収納方法については伸縮式と折りたたみ式の2タイプがあります。
ポールの収納方法 | 特徴 |
伸縮式 | ・ポールを縮めて収納 ・折りたたみ式に比べて収納時の全長が長くなる |
折りたたみ式 | ・シャフトを複数に折りたたんで収納 ・伸縮式に比べてコンパクトになるため、ザック内への収納も容易 |
伸縮式のトレッキングポールは収納時にはサイズを縮め、使用時には伸ばして使用します。グリップのついている上段、石付きのついている下段と中段を合わせた3つの棒(シャフト)で構成されているものが主流です。
折りたたみ式のトレッキングポールは、3~5段に分かれたシャフトを折りたたんで収納するタイプのものです。各シャフトは内部のコードでつながっているため、折りたたんでもバラバラになることはありません。 伸縮式よりコンパクトになるため、ザック内への収納もしやすいです。いっぽうで機構が伸縮式より複雑なぶん、シャフト内のコードやジョイント部分の破損のリスクがあります。長さ調整ができないモデルも多いため、購入前にしっかり確認しましょう。
ポールの固定方法
トレッキングポールのシャフトの固定方法は、ツイストロックとレバーロックの2種類が主流です。
ポールの固定方法 | 特徴 |
ツイストロック | ・シャフトの結合部を回すことで固定 ・低価格の製品への採用が多い ・固定が十分でない場合、使用時に緩む可能性あり |
レバーロック | ・レバーを閉めることで固定 ・高価格の製品への採用が多い ・レバーが付属するぶん、重量はやや重くなる |
ツイストロックは、シャフトの結合部を回して固定するタイプで、主に伸縮式のトレッキングポールに採用されている機構です。細かく長さの調整ができるのがメリットですが。固定が十分でない場合、使用時にゆるんで縮んでしまう可能性があり、商品によっては固定するのがやや面倒な場合があります。シンプルな構造のため、安価な製品に採用されることが多いです。
レバーロックは、シャフトの結合部についているレバーを開閉することで固定するタイプで、力をかけずに素早く固定ができ、ゆるむリスクも少ないです。従来は高価格帯の製品に採用されることが多かったですが、最近では比較的低価格のモデルでもレバーロックを採用しているものが増えてきました。
コスパの高いトレッキングポールのおすすめは?
上でみたようにトレッキングポールにはさまざまな種類があります。店頭で少しさわってみただけでは自分の登山スタイルにあったものを見つけるのは難しいため、いろいろなタイプのものを実際の登山で使用してみるのがおすすめです。
トレッキングポールの代表的なメーカーとしてはレキやブラックダイヤモンドが挙げられますが、これらのメーカーの製品は高価格のため、複数のタイプを試すとなるとかなりのコストがかかります。そのため、まずは低価格のトレッキングポールを購入し、使用してみることをおすすめします。
低価格のトレッキングポールでおすすめなのが、ダバダ社とランプトップ社の製品です。いずれもAmazonをはじめとすオンラインショップでの販売を主とする国内メーカーで、低価格ながら性能の良い製品を展開しています。
ブランド | DABADA(ダバダ) | DABADA(ダバダ) | LAMPTP (ランプトップ) |
製品名 | アルミ製 トレッキングポール | カーボン製 トレッキングポール | 折りたたみ式 トレッキングポール |
価格 | ¥3,000 | ¥6,000 | ¥3,480 |
重量(ペア) | 440g | 350g | 540g |
素材 | アルミ | カーボン | アルミ |
収納・固定方法 | 伸縮式 (ツイストロック) | 伸縮式 (ツイストロック) | 折りたたみ式 (レバーロック) |
使用時サイズ | 95~120cm | 100~125cm | 90~110cm |
収納サイズ | 56.5cm | 61cm | 30cm |
1つめはダバダ社のアルミ製のツイストロック式のポールです。1本あたり220gと軽量かつシンプルな構造で使いやすいため、初心者が最初に使用する一本としておすすめのポールです。地面にポールを突いた際の衝撃を緩和するアンチショック機能や、手になじみやすいコルク製のグリップなど、低価格ながら、随所に使いやすさへの配慮がなされています。
他メーカーの場合は別売りのことも多い石突き用のゴムキャップやバスケットキャップが付属しているのもポイント。特にゴムキャップは登山道や植物の保護のために重要ですので、別に購入する必要がないのはありがたいです。
2つめのおすすめ製品は、ダバダ社のカーボン製のトレッキングポールです。前述のアルミ製のものと同様、ツイストロック式の製品で、基本的な性能にほとんど違いはありませんが、カーボン素材を使用しているため、1本あたりの重量は175gと、非常に軽量なモデルです。
製品価格は約6000円とアルミ製のものと比べて高額ですが、カーボン製のポールとしてはかなり安価なため、軽量性を重視したい方や、カーボン製のポールを試してみたい方におすすめです。
3つめは、ランプトップ社の折りたたみ式のアルミ製トレッキングポールです。3つに折り分けてコンパクトに収納できます。レバーロックを採用しており90cm~110cmの幅で長さの調整が可能です。
重量は1本あたり270gと、今回紹介の製品のなかでは重めですが、折りたたみ式のポールを試してみたい方にはおすすめの商品です。
高価格の製品との違いは?
前段では低価格帯のなかでおすすめのトレッキングポールについて見てきました。紹介した製品はいずれもコストパフォーマンスの高い製品ですが、高価格の製品と比べるとやはり違いもあります。
ポールを固定する機構についていうと、低価格の商品はツイストロック式のものが多いです。長さの調整の幅が大きく、軽量性に優れるなどメリットもあるツイストロック式ですが、固定するのにやや手間がかかるほか、長期間使用するとだんだんと固定が緩くなり、使用時に突然ポールが縮んでしまうことも。こうしたデメリットがあるため、高価格帯のトレッキングポールはレバーロックを採用しているものが多いです。
ドイツの老舗ポールメーカーであるレキのトレッキングポールには、独自の機構である「スピードロックシステム」を採用したモデルが多くあります。ワンタッチですばやくしっかりと固定できるのが特徴です。
折りたたみ式のトレッキングポールでは、アメリカのブラックダイヤモンド社のものが人気です。こちらの「ディスタンスカーボン FLZ」は、カーボン製の折りたたみ式トレッキングポールで、2本で352g(110~125cmサイズ)と、非常に軽量なのが特徴です。 折りたたみ式のポールは長さ調整が出来ないものも多いですが、こちらは最大15cmの調整が可能。また、ジョイント部にアルミを使用することで強度を上げており、軽量性と耐久性を両立させています。
上記のような機能面の違いのほか、高価格帯の製品はデザイン面ですぐれた製品が多い点、故障や破損時のアフターサービスの充実度といった点でも低価格製品と比べてメリットがあります。
以下のページでは、人気ブランドのトレッキングポールのおすすめ製品とその特徴をを紹介していますので、よかったら参考にしてみてください。
登山初心者に低価格のトレッキングポールがおすすめな理由
前段で見たとおり、高価格のトレッキングポールには低価格のものにはない付加価値がついています。しかしながら、トレッキングポールの役割や各製品の特徴の理解が曖昧なまま高価格のものを購入するのを必ずしもおすすめはできません。 最初に手に取るトレッキングポールとして、低価格のトレッキングポールがおすすめするのはなぜか、その理由を以下で詳しく説明します。
①低価格の製品でもトレッキングポールとしての機能は十分果たす
高価格のトレッキングポールには、使用時の快適さや耐久性を高めるためのさまざまな工夫が施されています。しかしながら、トレッキングポールの基本的な役割である疲労の軽減や、バランスの確保といった面については、低価格のものも高価格のものも、実は大きな差はなく、低価格の製品であってもトレッキングポール使用のメリットを十分受けることができます。快適性やデザイン面、安心感といった高価格の製品ならではの魅力をあまり重視しないのであれば、まずは安価な製品を手にとって試してみることをおすすめします。
②トレッキングポールの使用頻度は人によって大きく異なる
登山に大変役に立つトレッキングポールですが、使用および携行の頻度については人それぞれです。毎回の山行で使用する方から、ハードな山行や重装備での登山でのみ使用する方、足を痛めた際など緊急時のみ使用する方もいれば、全く携行しない方もいます。 登山を始めたばかりの段階では、自身が今後どのくらいトレッキングポールを使用することになるか、見極めは難しいでしょう。せっかく高価格のポールを買っても結局ほとんど使用しなかった、ということにならないよう、まずは低価格なものから使用してみるのをおすすめします。
③さまざまな製品を試したうえで自身に合うトレッキングポールが選べる
トレッキングポールには素材や収納方法などの異なるさまざまな製品がありますが、それぞれメリット・デメリットがあるため、自身のスタイルに合った製品を選ぶには実際に山行で試すのが一番です。20,000円以上する製品も珍しくない有名ブランドのトレッキングポールを複数購入して比較するのはなかなか難しいですが、低価格の製品ならそれも可能。いろいろな製品を試したうえで自身にフィットするタイプのポールを見つけ、そのうえでワンランク上の製品を選ぶほうが失敗するリスクを減らせます。
まとめ
本ページではトレッキングポールの特徴や、初心者におすすめの製品をご紹介しました。 トレッキングポールを使用することで登山の快適さや安全性を高めることができます。しかしながら、どのタイプのトレッキングポールが自身にフィットするか判断するにはいろいろな製品を実際に試してみるのが一番です。
今回紹介した3つの低価格トレッキングポールは、安価ながらもトレッキングポールとしての機能を十分に果たす、登山初心者にもおすすめできる製品です。素材や収納方法の異なる各製品を試すことで、自身の登山スタイルに合うトレッキングポールを見つけてください。