ジョシュア・ツリー国立公園はアメリカのカリフォルニア州に位置する国立公園。大都市ロサンゼルスから東に向かって約220キロの位置にある。
ロサンゼルスからは車でおおよそ3時間弱。ハイウェイを走らせていると雄大な山々が左右に見え、街から離れていく感覚が強くなってくる。車の少なさ、道幅の広さから、日本とは異なる広大な世界を感じ取ることができる。
車を走らせていて感じるのは、緑がとても少ない。というのもカリフォルニア州の降水量は日本の10分の1と言われるほど極めて低く、年間を通じて厳寒酷暑がなく過ごしやすい気候が魅力だ。サンフランシスコあたりまで行くと緑が多くなってきて、北上するに従って降雨量も多くなるらしい。それでも日本に比べると雨は非常に少ないということだ。
今回はジョシュア・ツリー国立公園の中でキャンプを楽しむ。色々とルールがあるようだが、ネットで情報収集を重ねて片言の英語で挑戦をする。まずはジョシュア・ツリー国立公園のビジターセンターに向かい、中の受付で1泊2日でキャンプをしたい旨を伝えると、女性スタッフが懇切丁寧にキャンプ場の場所や注意点をパンフレットを交えて教えてくれる。「Your Favorite Campground?」と聞くと「Jumbo Rocks Campground」と教えてくれた。払った金額は車1台$20。この金額で7日間出入り自由というチケット。$30払えば年間パスで1年間出入り自由になる。徒歩、自転車、バイク、馬であれば入園は$5と定められているようだ。
ジョシュア・ツリー国立公園の中にはキャンプ場が全部で9つあり、事前に予約が可能なキャンプ場、先着順のキャンプ場とがある。また水道および水洗トイレの施設があるキャンプ場、簡易トレイのみのキャンプ場と設備の違いもあり、自分が気に入ったキャンプ場を選ぶことができる。日本で言うフリーサイトではなく、オートキャンプのようにそれぞれのキャンプ場に区画があり、空いている場所を探すというスタイル。
ビジターセンターでこれらの説明を受けて入場料金を支払うとチケットをもらえる。ビジターセンターを後にしてジョシュア・ツリー国立公園に向かうと途中にゲートがあり、ここで先ほど受け取ったチケットとパスポートを見せると「キャンプを楽しんできてね!(きっとそう言ったと思う)」と笑顔で送り出された。
ジョシュアツリー国立公園に広がる雄大な自然に圧巻
車を走らせること数分、徐々に景色は異様な雰囲気に包まれてくる。広大な砂漠地帯の遠くに大きな岩が点在し、不思議な形の木が目にとまる。このがっしりとして、不思議な形に曲がりくねった木の名前こそがジョシュアツリーなのだ。ジョシュアツリー国立公園は東京都の約1.5倍という面積があり、そのいたるところで、このジョシュアツリーを目にすることができる。
またこの広大な国立公園の中には幾つものトレイルが点在し、数分で周遊できるものから、かなりの距離のトレイルと様々あり、楽しめる景色もまた様々なのだ。とにかく多くのトレイルを限られた時間で堪能しようという心づもりで、まず初めに出くわしたのが『ヒドゥン・バレー・ネイチャー・トレイル』。ここまでゲートからおおよそ25分で到着する。
トレイルの入口には車が止まっているので、「ここがトレイルの入口」というのは容易にわかる。また看板も解りやすく設置されているので、地図1つあれば迷う心配もない。
トレイルを歩いているとなんだか涙が出そうになる。自分がちっぽけに思えたのか、たったひとりでよくここまで来たという思いなのか、色々な気持ちが凝縮してバーンッと心にぶつかってきたような衝撃だった。
『ヒドゥン・バレー・ネイチャー・トレイル』は周遊1.6キロのトレイルで、砂漠を歩き、程よく岩場を登り、永遠と広がる砂漠地帯にジョシュアツリーが点在する景色を楽しめる。
次に訪れたのは『ベイカー・ダム・ネイチャー・トレイル』。ここは『ヒドゥン・バレー・ネイチャー・トレイル』のすぐ近くにある。ベイカー・ダムというだけにダムがあるのだろうという想像は容易につくものの、この暖かく乾燥した気候にダムがあるというのは非常に不思議な気持ちだった。僕の前にはラフな格好でまるで散歩でもきたような出で立ちの家族がトレイルをゆるりと歩いていた。こんな雄大な自然を身近に楽しめる環境は羨ましく思い、自分の日本の生活に重ねてみて未来の夢を想像してみたりする。
岩場の隅にはサボテン。そして空は真っ青で、雲は真っ白で、くっきりと彩られたコントラストの美しさに暫し呆然とする。
サボテンにふれると当たり前のように痛く、ここがモハベ砂漠とコロラド砂漠の交差地点であるということを思い出す。
トレイルはこっちだよ、という安易な目印を頼りに歩いていくと、ベイカーダムにたどり着く。
ベイカーダムには残念ながら水はなく、枯れたダムを見るのみで、こんな国立公園のど真ん中になんでダムなんて作ったのだろうか?どのような歴史があったのか疑問がよぎる。調べてみると約5000年以上前から先住民族が生息していたが、白人達が19世紀の半ばにこの地に入ってきた。牛飼い達がより良い飼葉を求めてこの地に辿り着き、水場を設けたのが最初という事だからき、きっとその時に作られたものなのだろう。
ジョシュアツリー国立公園で楽しめるトレイル
ベイカーダムを後にし歩いていき、ふと立ち止まると、白い雲が流れていく景色がなんとも美しく感動する。この美しい景色をバックに記念撮影をしたくなり、カメラをパシャ。1人旅なのにこんな写真を撮れるのはカシオのアウトドアレコーダーのおかげ。この旅では必須ギアの1つだった。
先に進むと看板に【PETROGRYPHS】とある。ペトログラフというのは日本で聞いたことがあるので、それかな?と歩いていくと…
先住民族が書いたと言われる壁画があった。説明を読むと、【先住民族が食料と水を探して移動を続けていく中で、それらが見つかった場所にはこのような壁画が残っている】という。壁画というエビデンスを残して、いつときか再度訪れた時に食料調達を容易にする知恵だったのだろう。
この壁画が描かれた岩を俯瞰すると、不思議な形をしていることが解る。この後もトレイルを歩いていると面白い形の岩に遭遇するのだが、これこそジョシュア・ツリー国立公園のトレイルを歩く楽しみの1つなのだろう。
このベイカー・ダム・ネイチャー・トレイルの周遊が終わると、横道にトレイルがのびていた。そこを歩いていくと錆びれた車や線路、井戸らしきものが置き去りにされており、明らかに近い過去に人が住んでいたことがわかる。ここはキーズ牧場という名の場所で、1900年代にウィリアム・F・キーズという人が農場兼自宅としてここに住んでいたらしい。以下はキーズ牧場についての説明
キーズは、少なくとも30箇所の採鉱権を持ち、金と石膏を採掘しました。また、彼は砕鉱機も用い、同地域の他の鉱山で採取された鉱石の砕石も請け負いました。この人里離れた岩だらけの峡谷で、彼と妻のフランシスは、5人の子どもを育てながらランチハウス、校舎、作業場と店舗を築きました。ヤギ、ニワトリ、畜牛を育てながら果樹園と菜園も切り盛りしていました。水を得るために深い井戸を掘り、風車を建て、牧場を囲む岩だらけの峡谷をせき止めて湖を作りました。彼らは文字通りの、まさに開拓者だったのです。
なるほど!さきほどみたベイカーダムはきっとこのウィリアム・F・キーズが作ったものなのだろう。
トレイルを楽しみながら頭の片隅には『キャンプ場空いているかな?』という不安があった。トレイルを歩いていても人の気配は非常に少なく混み合っている印象は全くないので、大丈夫だとは思うが、なんせ日本以外の地でキャンプを行う事が初めてだし、色々なルールをクリアしなくてはならないから、今日のところはとりあえず先にキャンプ場をチェックしに行こうと、トレイルを後にした。