携帯浄水器があると沢や川の水、雨水を浄水して飲み水にすることができます。登山中は山小屋や水場で水を補給することができますが、最悪の場合を想定すると携帯浄水器があると安心です。今回は登山時に持ち歩くのに適した軽量で扱いやすい6つの携帯浄水器をレビューします。
山の生水はとっても危険
標高を上げることで山の水は冷たく綺麗になるから飲んでも大丈夫だと思っていませんか?一見綺麗に見える沢や川の水ですが、動物たちの糞や死骸、山小屋などの生活用水によって汚染されている危険があります。最悪の場合命を落としてしまう危険もあります。以下は生水を飲むことで発症する可能性の高い代表的な病原体について簡単に紹介します。
大腸菌
動物や人の腸の中にいてほとんどのものは無害なのですが、病原性大腸菌は激しい腹痛や下痢などを起こすとされています。子供や高齢者は痙攣を起こすなどの症状が出ることもあり、その後重症になると死に至ることもあります。即日から2〜3日で症状が出るとされています。
クリスプトポリジウム
腸管に寄生し、下痢、苦痛、倦怠感、食欲低下、吐き気などの症状を通常3~10日で、大多数の患者は9日以内に発症するとされています。免疫機能が低下している人は重症・難治性・再発性・致死性下痢症になることがあるため注意が必要です。
エキノコックス症
北海道の北きつねが主な感染源とされているエキノコックスですが、愛知県の野犬からも発見されたことから本州での広がりが懸念される非常に危険な寄生虫の一種です。エキノコックスに寄生したキツネやその糞に直接触るなどするか、糞に汚染された山菜や沢水を口にすると感染の危険があるとされています。
卵が体内で幼虫になり寄生することから、数年から十数年は無症状の時期が続き、放置しておくとだんだんと悪化して命に関わるような肝機能障害や腹部症状、それによる発熱や黄疸などの症状が出てきます。
このように山の中の水を煮沸、浄水せずに飲むことがとっても危険な行為であることが分かったと思います。
登山に適した携帯浄水器の選び方
登山に適した浄水器の選び方を紹介します。様々なタイプがあるのでしっかりチェックして自分にとって使いやすく安心なモデルを手に入れましょう。
重量・コンパクト性
重くて嵩張る浄水器は登山装備が重くなってしまい体力が奪われてしまいます。また登山中に素早く取り出して使いたいことを考えるとかさばるタイプの浄水器は不便です。重量は100g以内で、浄水器単体ではコンパクトなタイプであること、またボトルと一体型タイプもおすすめです。
浄水スピード
浄水スピードはフィルター孔サイズと、フィルターの面積によって異なります。フィルター孔サイズが0.1ミクロンと0.2ミクロンでは、0.2ミクロンの方が早いですが、フィルターの孔が小さい方が安全性が高いと言えます。
またフィルターの断面が小さいソーヤーミニよりも中サイズのソーヤーマイクロスクィーズフィルターの方が浄水スピードが早く、大サイズのソーヤースクィーズフィルターは最も浄水スピードが早いですが、徐々に重く、大きくなるので、何を重視するかが選び方のポイントになります。
メンテナンスのしやすさ
メンテナンスはどの浄水器も非常に簡単です。使った後に最も効果的にきれいにする方法がバックフラッシュと呼ばれる方法です。これは使用時とは反対側から綺麗な水を通す方法です。
もう一つの方法にシェイクがあります。これは浄水フィルターに水圧をかけて洗う方法です。綺麗な水を使って浄水器にボトルをセットしシェイクして洗います。
ろ過能力=コストパフォーマンス
ろ過能力とはどれだけの水の量を浄水することができるかを表したスペックです。実際に浄水した水の量を数えて使用することは現実的でないため、交換時期を考えるのは困難です。例えば1年で浄水器を使用する回数と、1回あたりの水の量をおおよそ計算しておき、定期的に色のついた泥水などでチェックするなど対策を講じる必要がありそうです。
1回の山行で2リットル浄水したと仮定しても、最もろ過能力が低い380Lのセイシェルサバイバルプラス携帯用浄水ボトルでも190回使用することができ、1000Lのカタダインやプラティパスで500回、38万Lのソーヤーにおいては19万回なので、数年、数十年に買い替えというレベルです。
登山におすすめの携帯浄水器6つのモデルをレビュー
今回紹介する5つの浄水器はいずれも軽量なモデルで、登山での使用に適しています。また上に挙げたバクテリアや水生微生物を99.9%以上除去する能力を備えています。
※横スクロールで表がスクロールできます。商品名 | ろ過能力 | 浄水器部分の重量 | フィルター孔サイズ | 価格(税込) | ペットボトル 装着可否 | メンテナンス |
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ソーヤーミニ | 38万L | 40g(実測) | 0.1ミクロン | ¥4,510 | 可能 | バックフラッシュ(注射器の使用必須) |
ソーヤーマイクロスクィーズフィルター | 38万L | 54g(実測) | 0.1ミクロン | ¥4,950 | 可能 | バックフラッシュ |
ソーヤースクィーズフィルター | 38万L | 75g(実測) | 0.1ミクロン | ¥6,930 | 可能 | バックフラッシュ |
プラティパスクイックドローマイクロフィルター | 1000L | 75g(実測) | 0.2ミクロン | ¥7,040 | 可能 | シェイクorバックフラッシュ |
カタダインビーフリー0.6L | 1000L | 36g | 0.1ミクロン | ¥7,590~10,780 | 専用ボトル3種類のみ | シェイクorすすぎ洗い |
セイシェルサバイバルプラス携帯用浄水ボトル | 380L | 30.5g | 0.2ミクロン | ¥8,242 | 専用ボトルのみ | シェイクorすすぎ洗い |
軽量で安心感の高い携帯浄水器の人気モデル『ソーヤー ミニ』
高性能なポータブル浄水器やファーストエイドキットを製造するアメリカのブランドです。有害な病原体を宿したバクテリアや水性微生物を99.999999%除去することができ、最も安心感の高い浄水器の一つと言えます。このソーヤーの携帯浄水器の中で40gと最も軽量で価格が安いのがソーヤーミニです。
ソーヤーミニの使い方
- 別の水筒に浄水したきれいな水を入れる
- ペットボトルやパウチに取り付けて直接飲む
- ストローと接続してかわや沢から直接飲む
- ハイドレーションに取り付けて飲む
特徴
- 38万リットルのろ過能力に優れている
- 軽さとコンパクト性に優れている
- 0.1ミクロンで安心感が高い
- ほとんどのペットボトルの口に取り付けることができる
浄水スピードと重さのバランスに優れた携帯浄水器『ソーヤー マイクロスクィーズフィルター』
ソーヤーミニよりも浄水スピードが早く、値段は約400円程度高いだけで重量もわずか14gの差で、さらには注射器がなくともメンテナンスが可能な最もバランスに優れた浄水器です。ソーヤーの販売を手がけている株式会社アンプラージュインターナショナル(UPI)のスタッフはミニよりマイクロスクィーズ派が多いという話を聞きました。
ソーヤーマイクロスクィーズフィルターの使い方
- 別の水筒に浄水したきれいな水を入れる
- ペットボトルやパウチに取り付けて直接飲む
- ストローと接続してかわや沢から直接飲む
- ハイドレーションに取り付けて飲む
特徴
- 38万リットルのろ過能力に優れている
- 0.1ミクロンで安心感が高い
- 専用の注射器を使用しなくともアダプタを使用してメンテナンスが可能
- ほとんどのペットボトルの口に取り付けることができる
最も高性能で優れたスペックを誇る携帯浄水器『ソーヤー スクィーズフィルター』
ソーヤーの浄水器の中で最も浄水スピードが速く、グラビティシステムを使えば自動浄水も可能なモデルです。特に渓流域や沢遊びに出かける方に人気のモデルで最も高性能なモデルに位置付けられます。
ソーヤースクィーズフィルターの使い方
- 別の水筒に浄水したきれいな水を入れる
- ペットボトルやパウチに取り付けて直接飲む
- ストローと接続してかわや沢から直接飲む
- ハイドレーションに取り付けて飲む
- ぶら下げて置くだけで綺麗な水を生成
特徴
- 38万リットルのろ過能力に優れている
- 浄水スピードが3つのモデルで最も早い
- 0.1ミクロンで安心感が高い
- 専用の注射器を使用しなくともアダプタを使用してメンテナンスが可能
- ほとんどのペットボトルの口に取り付けることができる
浄水スピードの速さと汎用性が魅力の携帯浄水器『プラティパス クイックドローマイクロフィルター』
驚くような浄水スピードで素早くきれいな水を入手することができる携帯浄水器です。2種類のメンテナンス方法から選ぶことができる簡便さや、プラティパスのオプションアイテムを使用することで使い方の幅が広がる携帯浄水器です。
プラティパスクイックドローマイクロフィルターの使い方
- 別の水筒に浄水したきれいな水を入れる
- ペットボトルやパウチに取り付けて直接飲む
- 別売りのキットを活用してハイドレーションに取り付けて飲む
特徴
- 0.2ミクロンの必要な浄水機能を備えながら浄水スピードが早い
- 2種類のメンテナンスから方法を選ぶことができる
- ほとんどのペットボトルの口に取り付けることができる
ソフトフラスクと一体化した使いやすい携帯浄水器『カタダイン ビーフリー0.6L』
3つのサイズから選ぶことができるソフトフラスクとセットになった浄水器です。綺麗な水を入手できないようなシーンにおいて水筒代わりとして使用するのに適しているデザインです。
カタダインビーフリー0.6Lの使い方
- 別の水筒に浄水したきれいな水を入れる
- 専用パウチに取り付けて直接飲む
特徴
- 0.6Lサイズ以外に1L、3Lの3種類の容量がある
- ソフトフラスクを使用する感覚で活用できる
ペットボトルを持ち歩く感覚で使える携帯浄水器『セイシェル サバイバルプラス携帯用浄水ボトル』
カタダインビーフリーが、ソフトフラスクなのに対し、こちらはボトルとセットになった浄水器です。浄水スピードが早く、こちらも綺麗な水を入手できないシーンにおいて水筒代わりとして使用するのに適しています。
セイシェルサバイバルプラス携帯用浄水ボトルの使い方
- 専用パウチに取り付けて直接飲む
特徴
- ボトル形状で水筒感覚で使用することができる