北アルプスの表玄関、上高地に降り立ってかっぱ橋まで歩くと、ひときわ目をひく山が左手にどーんと観えます。
これは日本百名山の【焼岳】(北峰は2444m)で、北アルプス唯一の活火山です。槍ヶ岳や奥穂高岳などに比べるとよりアクセスしやすく日帰り可能なこともあってとても人気の山です。
初心者の北アルプス入門に最適、とよく言われていますが、新中の湯と上高地の二つのルートを実際に歩いてみるとなかなか体力のいる山でした。上高地ルートにはスケルトンの橋や長ハシゴ、また途中ルートを外れやすい岩場があるので、初心者の人は新中の湯ルートの往復が歩きやすいかと思いました。
しかも今からやってくる紅葉の季節、新中の湯ルートの紅葉が見事らしいのです。
入山前に気を付けないといけないポイントがあるので、先にそれを紹介します。
山の名前 | 焼岳 |
都道府県 | 長野県・岐阜県 |
標高 | 2,455m |
天気・アクセスなど | 焼岳の詳細情報 |
焼岳の噴火警戒レベルのチェック
焼岳は火山なので必ず噴火警戒レベルのチェックが必要です。
私が入山したのは2023年8月12日で、噴火警戒レベルは1でした。
その数日後に山頂付近を震源とする微小な火山性地震が数回確認されています。
危険を感じたら入山しないようにお願いします。
▼気象庁のホームページ
https://www.data.jma.go.jp/vois/data/tokyo/STOCK/activity_info/310.html
焼岳はヘルメット着用推奨山域
山頂付近は岩場も多く活火山なのでヘルメット着用奨励山域となっています。万が一の時のためにもヘルメットは持参しましょう。
▼長野県山岳遭難防止対策協会の指定する山岳ヘルメット着用奨励山域一覧
https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangaku/helmet.html
焼岳の給水場・トイレ
給水場やトイレは上高地ルート上にある焼岳小屋のみです。新中の湯ルート上には全くありません。川や湧き水もないので十分な量の水分を持っていきましょう。
(私は飲料用に3リットルの水分を持ち歩きました。調理用の湯は別)
一般的な登山ルートと登山口までのアクセス
新中の湯コース→山頂→焼岳小屋→上高地コース
新中の湯登山口までのアクセス
車の場合
上高地方面へはマイカー規制がありますが、中の湯温泉までは車で来れます。新中の湯登山口の駐車場には約10台駐車可能とありますが実際は路肩に沿ってもっと駐車されていました。
6時過ぎると途端に車が増えて登山口より遠くなるので早めの到着が良さそうです。
車を使わない場合
上高地行きの濃飛バスに乗り、中の湯バス停で下ります。平湯バスターミナルからだと10分で着きます。下車後は約1時間車道を歩いて登山口まで行きます。
※帰りに中の湯バス停から平湯温泉に戻る場合はバスの乗車場所が異なるので気を付けて下さい。
登山届について
新中の湯側の登山口には登山届のボックスがなさそうでした。
登山アプリ「ヤマップ」で登山計画書を作り、そこからオンラインで提出しました。
登山前日
広島から新幹線のぞみ、名古屋で特急ひだ、高山で濃飛バスに乗車して平湯温泉に来ました。
(実際は上高地まで行って散策して平湯温泉に戻ってきました)
平湯キャンプ場にテントを張り前泊し拠点にしました。
当日5:30 平湯バスターミナル発
登山当日は不要な荷物はデポして平湯バスターミナルから上高地行きのバスに乗りました。
始発ではなく1本後の5時半発のバスに乗車。混雑していて乗れなかったのではなく、もうちょっと寝たかったから (笑)
あかんだな駐車場から来るバスなのでいつもあまり混んでいません。
10分乗って中の湯バス停で下車、うねうねと長い登り道を約1時間歩いて登山口に到着しました。
6:50 新中の湯登山口スタート
いよいよスタートです。車を止めている人の殆どはここから焼岳山頂までピストンで戻ってきます。私達は上高地へ下ります。
結構ガッツリ登らされます。危険な所はないけどこういう急な登りが続きます。
8:15 森林限界と広場
歩きやすい道に差し掛かると焼岳の頭がちょこっと見えてまた木々に隠れました。それからまもなくパア~っと開けて広場に出ました。快晴の空の下、前方に現れたのは焼岳南峰と北峰の堂々たる姿です。蒸気がもくもく上がっているのが見えます。
ここからは美しい笹の緑色の海の中を進んで行くと
北アルプスっぽい風景になってきました。綺麗なお花畑の向こうに見える荒々しい岩肌!
この辺りから足元に岩が多くなってきました。
右前方に目を移すと今から向かうコルが近づいてきたのが分かります。
一旦はあの蒸気の出ている近くまで行きます。
10:00 コル到着
登り切るとなんと裏側には【正賀池】という美しい火山湖がありました。
蒸気の吹き出し音がゴーゴーと聞こえてきて、ここは活火山なんだなぁと改めて思いました。
ちなみに南峰(最高峰2455m)へは立ち入り禁止の為、行くことはできません。
正賀池を後にして右に回りこみます。右側がゆるく崖になっているので、すれ違う時は譲り合って慎重に進みます。この辺は浮石や落石も多いので気を付けて歩かないといけません。
でもさっきまでと違ってザ・火山という雰囲気でカッコいいです!
10:15 焼岳山頂(北峰2444m)到着
小休憩も挟みつつ、登山口から4時間半で山頂に到着しました。
山頂標の後ろに連なるのは北アルプスの名だたる山々の姿!
槍ヶ岳だけもうちょっとアップにしてみました。
今日もたくさんの人がアタックしている事でしょう。この後、すぐに槍ヶ岳は雲に覆われてしまいました。気が付けば早朝の快晴の空と違って随分雲がわいてきています。
ランチタイムはコジ―飯
山専用ボトルの中のお湯は、キャンプ場で沸かしてきた物なので既に6時間経過。
でも沸かしなおすことなく焼きそばUFOは出来ました!これ本当におススメ、遠征には欠かせないお気に入りメニューです!
- 〇山旅コジ―×ジップロックフリーザーバッグS×焼きそばUFO
- 〇サーモス山専用ボトル750ml(二人分の湯)
- 〇フリーズドライスープ(湯切りの湯を利用)
11:30 下山開始
いかにも火山成分が出ていそうな黄色い毒々しい吹き出し口の近くを通ります。
美しいけど危険なのでここは注意して早めに通り過ぎます。
岩が多く足元が悪いので慎重に30分下りてきました。
なんとなく振り返ってみるとこの迫力ある姿が観えました。
上高地側から登ってくると、登頂直前にこの風景を観ながら登ることになるのですね!
実はうっかりしていてこの後ルートを外れてしまいました。
浮石も多くなっておかしいかも?思っていたら、黄色い岩や蒸気の出る割れ目が目の前に現れたので「これは違う!」と確信。ドキドキでしたが慎重にゆっくりコースに戻りました。
先行していた同行者はもう戻るに戻れず突っ切って行きました。黄色い所はヌルヌル、大きい一枚岩も滑り降りるしかなく腕を少しケガしていました。無事合流できたけどちょっと怖い思いをしたようです。
踏み跡が多く登りも下りも通った形跡がたくさん見られたそうです。この後で出てくる長ハシゴよりも本当に危険な所だと思いました。
12:30
火山エリアから脱出して一安心、稜線歩きになりました。
今から向かうのは焼岳小屋です。
ここから中尾峠あたりのお花畑が満開でした。さっきの危険地帯のある同じ山とは思えません。
13:00 焼岳小屋
ここまでトイレもなし給水場所もなし、唯一のオアシスです。
ちなみに3リットル分背負ってきた水分は既に2リットル飲み干しています。
あと1リットルでは心細いので飲み物を買い足しました。
ドリンクも500円、ゴゼンタチバナモチーフ入りの焼岳エイコーバッジも500円でした。
後はお花に癒されながらこのまま上高地に向かって下りるだけです。
いえ大事なことを忘れていました。いよいよ上高地コースの核心部です。
13:40 長ハシゴ
左は岩壁、目の前には崖。ここを下りないと帰ることが出来ません。
1人1ハシゴ、前の人が下りるのを上から見とどけます。
今度は自分の番。全部で26段あったでしょうか。見た目は垂直っぽく感じますが一歩一歩足を確実にステップに乗せてゆっくり下りると、高所恐怖症の私でもさほど怖くはなかったです。
次のグループが下りはじめたので見上げて写してみました。
どうでしょう?アトラクション的な感じで楽しかったです。
他にもここまで長くはないハシゴがまだ数か所ありました。
そして最初の長ハシゴから20分位進んだところで私にとってのラスボス登場!
14:00 スケルトンの橋
右は谷底、下はスケスケ、しかも橋自体は斜めに下がっています、頼れるのは左のロープだけです。これは高所恐怖症にはなかなか刺激的でした。長ハシゴが怖いとよく取り上げられているけど、私にはこっちの方が格段怖かったです。
これさえ過ぎればあとは1時間ほど森の中を歩いて
15:10 焼岳登山口(上高地側)
上高地側の登山口に下りてきました。しばらくはこの辺り特有の湿地帯、立ち枯れの美しい風景を右手に観ながら歩きました。
西穂高岳登山口の分岐に来たら右へ折れて橋を二つ渡ります。そのまま梓川左岸沿いに歩いて上高地バスターミナルに到着、下山完了です。
もし余裕があれば、かっぱ橋まであと5分足を延ばしてゴールするのもいいでしょう。
(私達は前の日に上高地散策をしにきているので省略しました)
16:00 上高地バスターミナル
あかんだな駐車場行きのバスの列に並び、平湯温泉で下車しました。
本日も平湯キャンプ場でテント泊の続きを楽しんで、翌日広島に戻りました。
以上真夏の焼岳のレポートでしたが、紅葉の時期の参考にもして頂けたらと思います。
おすすめの場所
平湯キャンプ場
オートサイトなどは要予約ですが、私達の様に徒歩でテント持参の人は予約不要です。
男女別温水シャワートイレ、炊事棟、洗濯棟、分別ごみボックスなど充実しており、
とても広くて静かなフリーサイトでした。
管理センターには売店があり便利です(20時まで)
温泉施設「ひらゆの森」まで徒歩10分、平湯バスターミナルまで更に徒歩3分です。
テント持参のフリーサイト一泊1人700円、連泊可(2023年8月現在)
持参テント:Mountain.DAX(マウンテンダックス)ヌプカ2
平湯キャンプ場
- 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯768-36
- TEL:0578-89-2610 FAX:0578-89-2130
- https://www.hirayu-camp.com/
平湯の湯
キャンプ場に近い温泉「ひらゆの森」も定番でお勧めですが、平湯民俗館に併設された露天風呂の「平湯の湯」が静かに入れる穴場の温泉です。洗い場がないのでつかるだけになりますがとても風情があります。無人なので300円程度をボックスに入れてから入湯します。
- 夏期6:00~21:00
- 冬期8:00~19:00
- 無休
- 平湯の湯(平湯民俗館敷地内)
- 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯24
禄次
「平湯の湯」の奥にあるお食事処です。予約できないので時間帯によっては待つことになりますが、定食のみで帰る人もいて思っているよりも回転がはやいです。
けいちゃんや飛騨牛などの郷土の食べ物や居酒屋メニューなど、どれも美味しくボリューミー。北アルプスの打ち上げはいつもここ、絶対に教えたくないお店です(笑)
写真は「砂肝のオリーブオイル炒め」、必ず最初に注文するお気に入りメニューなのでした。
禄次(平湯民俗館敷地内)
- 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯29
- 11:00~24:00(LO23:00)(GW、夏休み、お盆休み等の繁忙期は朝6:30~)
- 木曜日定休(繁忙期は無休)
- TEL0578-89-3339
関連動画
焼岳後編(焼岳アタック編)