鼻曲山(はなまがりやま)は、群馬県高崎市と長野原町、長野県軽井沢町にまたがっており、「ぐんま百名山」や「信州百名山」に選ばれている人気の山です。
毎年8月ごろになると、長野県をはじめ複数の自治体でレッドリストに登録されている日本固有のレンゲショウマが咲き誇ります。そのかわいらしい見た目に惹かれて、登山客で賑わう人気の山になります。
また、登山口である二度上峠からの雄大な浅間山の景色や、山頂部からの八ヶ岳、秩父山塊、南アルプスなどの展望が良いことでも知られています。
この記事では、鼻曲山の基本情報や魅力、登山コースごとの特徴などを紹介しています。鼻曲山登山を計画している方や、軽井沢町や長野原町、安中市の観光に興味がある方はぜひ参考にしてみて下さい。
鼻曲山の基本情報と魅力
鼻曲山は、群馬県と長野県の県境に位置する標高1654mの山です。北側にある浅間隠山とともに約100万年前に活動していた火山だとされています。
浅間山から東に広がる高原に位置する鼻曲山は、東西に主尾根が伸びており、長野県側がなだらかで群馬県側が断崖のように急斜面となっています。そのため、横から見ると仰向けに寝転んだ人の顔のように見え、特にこの鼻曲山周辺が鼻のように見える山容をしています。
鼻曲山は1年中登ることが可能ですが、冬には積雪地帯であるため十分な装備と経験が必要です。おすすめの時期は8月ごろで、希少で美しいレンゲショウマの群生をお楽しみいただけます。
山の名前 | 鼻曲山(はなまがりやま) |
---|---|
標高 | 1,654m |
エリア | 上信越 |
詳細情報 | 鼻曲山の地図・天気 |
魅力その①日本固有のレンゲショウマ群生地
レンゲショウマとは、日本固有の1属1種の植物で、他に似た種のない希少な種の一つです。東北地方から近畿地方にかけて分布していますが、12の都県でレッドリストに指定されており、自然の群生を見るのはとても貴重な種と言えます。
「伝統美」という花言葉が表すように、和の雰囲気が漂う非常に美しい薄紫色の大きな花をぶら下げるように咲かせます。上品で奥ゆかしいたたずまいは、夏の風物詩として楽しまれています。
鼻曲山では、山頂直下の北側急斜面に多く群生しており、毎年8月にはレンゲショウマを見に来る多くの登山客で賑わいます。ぜひ一度、美しく可憐で希少なレンゲショウマを見に訪れてみてはいかがでしょうか。
魅力その②雄大な浅間山と八ヶ岳や南アルプスなどの展望
トーミの頭や黒斑山などの西側からの景観が良く紹介されている浅間山ですが、東側の二度上峠からの景観も大きな裾野と山麓に広がる広大な高原が見渡せるためとても見ごたえがあります。
また、山頂部からは、南側の展望がひらけており、八ヶ岳や秩父山塊、南アルプスや遠くは富士山まで一望できます。
魅力その③秘境にたたずむ一軒宿の温泉と登山
鼻曲山へ登る登山口の一つ霧積温泉・金湯館は、群馬県安中市の山中にある歴史深い温泉宿です。かつて霧積温泉は、「荒治療の草津、仕上げの霧積」と言われ、温泉旅館や別荘で賑わいました。
今では、金湯館の一軒だけとなってしまいましたが、今でも毎分300リットルの豊かな湯量と全国でも10本の指に入るほどと評される泉質は変わりありません。大人ひとり700円で日帰り入浴もできますので、下山時に寄ってみてはいかがでしょうか。
鼻曲山の難易度別おすすめ登山コース
【二度上峠ピストンコース】
①二度上峠登山口→40分→②氷妻山→70分→③鼻曲山→50分→④氷妻山→35分→⑤二度上峠登山口
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム※ | 3時間15分 |
距離 | 約6.5km |
累積標高 | 約650m |
難易度 | ★★☆☆☆ |
こちらは、鼻曲山のメインコースで、標高1380mの二度上峠から標高1467mの氷妻山を経由して登るアップダウンのあるコースです。長野県をはじめ複数の県でレッドリストに指定されているレンゲショウマが群生していることでも人気のコースです。
二度上峠には、群馬県長野原町と高崎市を結ぶ群馬県道54号線を通っていきます。二度上げ峠周辺から長野原町までの区間は、浅間山麓の高原地帯から浅間山が美しく見え、また浅間大滝などの景勝地もあり、ドライブコースとしても非常に人気があります。
登山口となる二度上峠には、北側に氷妻神社へと向かう階段、南側に見晴台があります。南側の見晴台手前に数台の駐車スペースがあり、その奥から氷妻山・鼻曲山へと続く登山道が始まります。
二度上峠から氷妻山までの登山道は、尾根上を進む細かなアップダウンの登山道が続きます。途中に、獅子岩という大岩があり、上に登ることもできますが展望はありません。登山道は巻いて進むので、初心者の方でも問題ないでしょう。
獅子岩を過ぎるとやや急傾斜の斜面を上がり、標高1450mを超えてきます。再び細かなアップダウンの尾根道を進むと、標高1467mの氷妻山に到着します。氷妻山は小さなポコの山頂で、樹木に覆われており展望は望めません。
氷妻山から、登山口と同程度の標高約1380mまで下りると、しばらく歩いてから鼻曲山の斜面にとりつきます。特に危険個所はありませんが、1kmほどの距離でおよそ300mの標高差がある急斜面を登ると山頂になります。
山頂部は双耳峰のようになっており、西側を小天狗、東側を大天狗と名付けられています。鼻曲山の山頂は、西側の小天狗となっており、小さな広場のようになっています。特に南側の眺望に優れており、八ヶ岳や秩父山塊、遠くは南アルプスまで眺めることができます。
【鼻曲峠ピストンコース】
①霧積温泉 金湯館 駐車場→60分→②鼻曲山・霧積分岐→80分→③鼻曲峠→30分→④鼻曲山→20分→⑤鼻曲峠→75分→⑥鼻曲山・霧積分岐→40分→⑦霧積温泉 金湯館 駐車場
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム※ | 5時間05分 |
距離 | 約8.5km |
累積標高 | 約910m |
難易度 | ★★☆☆☆ |
群馬県安中市にある歴史ある温泉旅館・金湯館の駐車場から登るコースで、3コースの中で最も標高差が大きく、コースタイムも5時間を超えてきます。初心者向けというよりは、少し体力にも自信をつけてから挑戦したほうが良いコースになります。
登山口は、霧積温泉金湯館の無料駐車場にあります。群馬県安中市から旧碓氷峠の方へ向かい、途中で霧積川をさかのぼるように県道56号線に入り、山中へと入っていきます。延々と進んでいくと、未舗装の広場のような駐車場に到着します。スペースは広く20台ほどは駐車可能ですが、トイレ等の施設はありません。
駐車場の奥にある金湯館への案内看板に従って、ほいほい坂という坂を上っていきます。霧積川を渡り、急坂を登ると林道に出ます。ここで、林道を進むと金湯館へ、右手斜面にとりつくと鼻曲山の方へと分岐します。
急登が続く登山道をひたすら登っていくと、十六曲峠に到着します。ここまでの区間は、急登続きで体力的につらい部分でありますが、秋になると色とりどりの紅葉が非常に美しい場所でもあります
十六曲峠からは、小さなアップダウンの続く尾根道を鼻曲峠まで進みます。ところどころに急傾斜がありますが、比較的歩きやすい気持ちのいい尾根道が続きます。鼻曲峠に近づくと、一気に急登区間となり、体力的にもしんどい中おおよそ1550mまで標高をあげていきます。
鼻曲峠から山頂へは、距離的にはすぐ近くですが、目の前に見える鼻曲山の鼻に向けて最後の標高差100mほどの急登になります。急登を終えると大天狗と呼ばれる山頂部に出ます。こちらにも鼻曲山の山頂標識がありますが、地図上では三角点のある隣の小天狗を山頂としています。
【長日向ピストンコース】
①長日向バス停→10分→②登山口→100分→③鼻曲山→80分→④登山口→10分→⑤長日向バス停
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム※ | 3時間20分 |
距離 | 約7.1km |
累積標高 | 約510m |
難易度 | ★☆☆☆☆ |
3つのコースの中で唯一公共交通機関によるアクセスが可能なコースです。距離的には短くありませんが、累積標高差が少なく、コースタイムは3時間強と短めで、初心者でも挑戦しやすいコースです。
登山口の長日向へは、マイカーで有料道路の白糸ハイランドウェイを通るか、草軽交通の路線バスを利用してアクセスします。白糸ハイランドウェイの通行料金は普通車で500円、草軽交通の路線バスは軽井沢駅から長日向まで530円です。
長日向のバス停からは、少し北にある別荘地に入り、林道を奥に進むと登山口になります。はじめは、うっすらと轍の残る幅の広い林道をなだらかに登っていきます。標高1350mを超えたあたりで別の林道と交差し、ここから本格的な登山道へと変化します。
草木の生い茂るなだらかな登山道を登っていくと、標高1550m付近で尾根上に出ます。残り標高差100mほどは、山頂直下の急登区間となり、登りきると鼻曲山山頂の小天狗に登頂です。
鼻曲山のQA
鼻曲山に関する質問で多いのは、登山ルートや気温・積雪などに関することです。このような質問について以下QAを紹介します。
鼻曲山の登山レベルは?初心者でも登れる?
鼻曲山は、初心者の方でも登ることができる山です。メジャーな二度上峠コースや長日向コースの標高差はそれほどでもなく、無理せずゆっくりと登ることができるでしょう。
一方で、鼻曲峠コースは急斜面が多く、アップダウンも激しい尾根道のため、累積標高差は900m以上にもなるなど、少し厳しさのあるコースです。危険な岩場などはありませんが、初心者の方は他のコースから行くのが無難です。
鼻曲山の気温は?どんな服装で行けばいい?
鼻曲山のある長野原町の月ごとの平均最低気温と最高気温を下記の表にまとめました。冬の最高気温は氷点下となり、夏でも25度未満と非常に冷涼な気候です。
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
最高 | -1.2 | 0.1 | 4.1 | 11 | 17.1 | 19.9 | 23.6 | 24.4 | 20.5 | 14.6 | 8.6 | 1.9 |
最低 | -8.1 | -7.4 | -4.0 | 1.5 | 7.4 | 12 | 16.3 | 17.0 | 13.5 | 7.3 | 0.8 | -5.1 |
夏でも日によっては冷え込む場合があるため、春や秋と同様に一枚羽織れる上着を持っていくといいでしょう。
冬期間はしっかり冷え込みますし、豪雪地帯ではないものの積雪地域に位置しています。積雪直後など、深い時には膝上以上の積雪にもなりますので、十分な下調べと装備・経験が必要です。また、3つの登山口までの道は積雪があり圧雪路や凍結路となりますので、こちらも注意が必要です。
鼻曲山で見られる山の花は?見ごろは?
鼻曲山では、晩春から初夏にかけて様々な山野草のお花を見ることができます。特に、長野県のレッドリストに指定されているレンゲショウマの群生地は、とても人気があります。下の表に見ごろと一緒にまとめて紹介しますので、参考にしてみてください。
山の花 | 見ごろ | 山の花 | 見ごろ |
---|---|---|---|
マイヅルソウ | 4~6月 | レンゲショウマ | 8月 |
ミツバツツジ | 5~6月 | キイチゴ | 8~9月 |
シモツケソウ | 7~8月 | キツリフネソウ | 8~9月 |
カラマツソウ | 7~8月 | トウバナ | 8~9月 |
ヤマオダマキ | 7~8月 | シシウド | 8~10月 |
登山口へのアクセス・各種情報
どちらの登山口へも、アクセスは車がおすすめです。冬季は、路面に積雪が合ったり凍結していることもありますので、十分にご注意ください。
二度上峠登山口
登山口情報
群馬県長野原町と高崎市を結ぶ県道54号線の途中にある二度上峠が登山口になります。峠は展望台にもなっており、4,5台ほどの駐車スペースがあります。また、300mほど離れた場所にも20台ほどの駐車スペースがあります。トイレ等の施設は、どちらにもありません。
登山口までのアクセス
安中市方面から
松井田妙義ICから車で約60分
佐久市方面から
佐久ICから車で約60分
霧積温泉 金湯館 駐車場
登山口情報
群馬県安中市の秘境にたたずむ一軒宿の金湯館の無料駐車スペースです。20台ほどの駐車スペースがあり、トイレ等の施設はありません。
登山口までのアクセス
安中市方面から
松井田妙義ICから車で約30分
長日向バス停
登山口情報
長野県軽井沢町にある有料道路・白糸ハイランドウェイの途中にあるバス停になります。竜返しの滝付近にあり、自家用車では路肩スペースに駐車します。
約5台ほどのスペースで、トイレ等の施設はありません。バス停より少し先にある軽井沢ふれあいの郷別荘地奥から登山道が始まります。
登山口までのアクセス
安中市方面から
碓氷軽井沢ICから車で約30分
軽井沢駅からバス
軽井沢駅から草軽交通の路線バスで約20分
鼻曲山周辺のおすすめ山旅スポット
霧積温泉 金湯館
鼻曲山への登山口の一つになっている霧積温泉金湯館は、明治17年に創業した歴史の深い温泉旅館です。伊藤博文を中心とした明治憲法の草案作成が行われたり、勝海舟、与謝野晶子も訪れ歌を詠むなど、日本の歴史の中でも重要な役割を担った旅館の一つです。
現在では、周囲の旅館や別荘はなくなり、秘境にたたずむ一軒宿となりましたが、当時から温泉の湯量や泉質は変わっておらず、今でも全国で10本の指に数えられるほどの温泉を楽しむことができます。
鼻曲峠コースの途中にあるため、下山の際には立ち寄って日帰り温泉を楽めます。ただし、街灯もない山の中にありますので、暗くならないように時間には注意して行くようにしましょう。
はまゆう山荘
二度上峠から高崎市方面へ下った先にある日帰り入浴可能な温泉宿泊施設です。石と木がうまく融合した独特の建物は、建築業協会賞を受賞したこともある建築物です。
日帰り入浴は、大人一人570円で入ることができます。山荘敷地内からくみ上げられた源泉は、含鉄塩化物冷鉱泉で多くの鉄分を含んでいます。そのため、濃厚な茶褐色の見た目で、保温効果の高い温泉となっています。
二度上峠からの登山の帰りに、ぜひ寄ってみてはいかがでしょうか。
星野温泉 トンボの湯
こちらは、軽井沢町にある大人気エリアの星野リゾート内にある日帰り入浴施設です。星野温泉の歴史は深く、1915年に開湯して以来軽井沢の名湯として歴史を紡いできました。
源泉かけ流しのお湯は、低張性弱アルカリ性高温泉で飲泉ができるほどに新鮮な温泉です。冷え性や疲労回復に効能があると言われるお湯はやわらかく、美肌の湯としても人気があります。
隣の建物には、カフェやレストランがあり食事を楽しむこともできます。また周辺には、ハルニレテラスなどの観光スポットも隣接しており、軽井沢観光を楽しむことができます。