天狗山(てんぐやま)は、長野県川上村と南相木村の村境に位置し、「信州百名山」にも選ばれている人気の山です。岩稜地帯の稜線上に飛び出た山頂部は、どこから見上げても目立つ存在で、この地域を代表する山の一つです。
南側は切り立った岩壁となっており、ロッククライミングでも人気の場所です。ふもとの川上村から見上げると、天狗山と男山の特徴的な岩峰が並んでいる存在感の強い山脈となっています。
そんな天狗山の山頂からは、想像通りの展望が広がっており、八ヶ岳や南アルプス、浅間山、北アルプスなど、数々の名峰を眺めることができます。
この記事では、天狗山の基本情報や魅力、登山コースごとの特徴などを紹介しています。天狗山登山を計画している方や、川上村や南相木村周辺の観光に興味がある方はぜひ参考にしてみて下さい。
天狗山の基本情報と魅力
天狗山は、長野県南佐久郡に位置する標高1,882mの山で、地元のシンボル的な男山と相対するようにそびえています。稜線は赤い巨岩の集積でできており、ふもとから見上げた通りの岩稜地帯です。山系は奥秩父山系に属しており、同山系最西部の男山と並んで東西に山脈を形成しています。
天狗山は、まさに山頂部の飛び出た岩峰が天狗の鼻のように見えることから名づけられたと言われています。古くから目立つ存在であり、男山や女山とともに信仰の中心として存在していました。
地域的に奥まった場所にあり、アクセスの問題などからあまり知られてない天狗山ですが、そこには奥秩父山地や南アルプス、八ヶ岳を眺望する大絶景の山が、突き出す岩峰の特徴的な山容で待ち構えています。
天狗山は、年間を通して登ることができる山です。ただし、冬は非常に寒さの厳しい場所です。凍結や低温には十分に注意する必要があるでしょう。おすすめの時期は9~10月ごろで、八ヶ岳から野辺山高原、さらには南佐久地方の山々に広がる紅葉を楽しんでみてはいかがでしょうか。
山の名前 | 天狗山(てんぐやま) |
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標高 | 1,882m |
エリア | 上信越 |
詳細情報 | 天狗山の地図・天気 |
魅力その①八ヶ岳や南アルプスを眺める絶景
天狗山は、隣の男山と並んで南佐久地域を代表する好展望の山です。山頂部からは、南側の川上村方面を除いて大きく展望が開けており、南佐久地域の深い山並みを楽しむことができます。
特に、西側には稜線伝いに突き出す男山と広がる野辺山高原、そして圧倒的な大きさで堂々とそびえ立つ八ヶ岳連峰の絶景が広がります。また、そこから南側に目を向ければ、3,000m級の山々がまさに壁のように立ちはだかる南アルプスが、北側には浅間山が噴煙を上げ、遠くには北アルプスまで遠望できます。
馬越峠からであれば、急登があるとはいえ1時間ほどで登頂できる天狗山ですが、その独特な山頂部からは、高度感のある素晴らしい景色が広がっています。
魅力その②突き出す岩峰に登り詰める達成感
ふもとから見上げると、すぐに天狗山と男山の2山が目につきます。それほどに特徴的な稜線は、岩石の堆積によって形成されており、見る場所によっては非常に難易度の高い稜線に見えます。
実際に稜線を歩くと、天狗山は目の前にポコッと飛び出るように構えており、そこに至る道は大岩の急斜面となっています。その間を縫うように、ロープに助けられながら、時には四つん這いになって登っていきます。
初心者の方でも挑戦可能な山で多くの登山者が訪れている1時間ほどの行程ですが、絶景が広がる山頂に立った際には、とても大きな達成感を得られることでしょう。
魅力その③南佐久地域の深い森に広がる一面の紅葉
天狗山のある南相木村や川上村などの南佐久地域は、長野県内でも山あいの地域であり、山裾が幾重にも折り重なり森の深さを感じます。天狗山の山頂や稜線では、そんな南佐久の山々が織りなす光景を目の当たりにします。
なかでも秋の紅葉シーズンには、八ヶ岳連峰から始まり南佐久の山々、そして野辺山高原へと順々に紅葉が下りてきます。紅葉した山肌が織りなす光景は、非常に美しく、どこまでも続いていくような幻想的な景色が広がります。
天狗山の難易度別おすすめ登山コース
【馬越峠ピストンコース】
①馬越峠登山口→50分→②天狗山→35分→⑦馬越峠登山口
必要日数 | 日帰り登山 |
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総コースタイム※ | 1時間25分 |
距離 | 約1.9km |
累積標高 | 約300m |
難易度 | ★☆☆☆☆ |
標高1,600mほどの馬越峠から天狗山を往復する最もやさしいコースです。距離にして2kmほど、標高差300mほどですので、初心者の方をはじめ老若男女誰でも挑戦できるでしょう。ただし、急登や岩場がありますので注意が必要です。
登山口は、川上村と南相木村をつなぐ長野県道2号線の最高地点・馬越峠から始まります。開通記念碑のある川上村側に登山口はあります。その周辺には、無舗装の路肩スペースがいくつかあり、10台ほどの駐車が可能です。
馬越峠から登山道に入ると、すぐに尾根上までのつづら折りの急登が始まります。標高差にして100mほどありますが、20分ほどの短い時間です。アップのつもりでゆっくりと登ると良いでしょう。
尾根に出ると一旦は平坦な道になります。尾根上も樹林に囲われており展望はあまり利きませんが、ところどころで南方面への視界が開け、山あいに広がる川上村ののどかな景色を眺めることができます。
やがて、岩稜地帯になってくると目指す天狗山山頂がはっきりと見えるようになり、山頂手前のコルへといったん下ります。ここら辺は岩場が多く、ロープがいたるところに設置されている核心部になります。とはいえ、慎重に安全に通過すれば問題はありません。
山頂直下の標高差100mほどの急傾斜を時には両手も使いながら登り切れば、大展望の広がる天狗山山頂に到着です。目の前には、天狗山に隠れて見えていなかった八ヶ岳が現れ、目の前の雄々しい男山の向こうに鎮座している圧巻の光景が広がります。
山頂部は、見た目よりも広くゆっくりできます。北の方を見ると、妙義荒船佐久国定公園の山々や浅間山、遠く北アルプスまで遠望することができます。また秩父山塊の山々をはじめ金峰山や瑞牆山、南アルプスなど山頂からの見所が多いのも天狗山の魅力です。
【立原高原ピストンコース】
①立原高原登山口→60分→②立原高原分岐→40分→③天狗山→35分→④立原高原分岐→40分→⑦馬越峠登山口
必要日数 | 日帰り登山 |
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総コースタイム※ | 2時間55分 |
距離 | 約4.3km |
累積標高 | 約480m |
難易度 | ★☆☆☆☆ |
馬越峠からの標高差の少ない稜線歩きよりも、もっとがっつり登山をしたい方にはこちらのコースが良いでしょう。標高差も500mほどとそれなりにあり、ふもとから天狗山まで登り上げるコースです。
登山口は、北側の南相木村にある立原高原キャンプ場になります。馬越峠から南相木村に下っていった先、もしくは、小海町から県道2号線に入りそのまま南相木村を抜け川上村方面に進んだ先にあります。県道沿いに管理棟のある駐車場があり、一声かけて利用します。20台ほどの駐車スペースに、トイレ等の施設もあります。
駐車場からキャンプ場内のバンガロー群を抜け、林道を進んでいった先に看板と案内標識のある登山口があります。少し幅の広い林道のような道を上がっていくとすぐに案内板が再び現れ、左に曲がり岩石の敷かれた登山道になります。
北斜面で苔の生えた岩石も多いためスリップに注意しながらも、それほど急傾斜ではないため、シラカバの美しい登山道を楽しみながら登っていきます。コメツガの林や古い丸太橋が現れたら、稜線までもう少しです。
標高1,700mほどの地点で稜線上、天狗山と垣越山の間にある立原高原分岐となります。垣越山方面へ行けば、そのまま男山まで縦走できます。天狗山へは、山頂直下の200m近い標高差の岩稜地帯の急登をこなして登頂です。
【天狗山-男山縦走コース】
①馬越峠登山口→50分→②天狗山→45分→③垣越山→45分→④男山→110分→⑦男山登山口
必要日数 | 日帰り登山 |
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総コースタイム※ | 4時間10分 |
距離 | 約6.9km |
累積標高 | 約560m |
難易度 | ★★☆☆☆ |
天狗山ピストンコースの馬越峠から、天狗山、垣越山、男山を縦走し、信濃川上駅の近く男山登山口に下りる縦走コースです。距離は7kmほどで、そこまで長いわけではありませんが、岩場や急登が多く思いのほか体力を使うコースです。また、馬越峠と信濃川上駅は10kmほど離れていますので、車の回収などの計画が必要です。
登山口は、馬越峠ピストンコースと同じ馬越峠になります。下山口の男山登山口は、信濃川上駅の川向い、広瀬地区へ向かう県道68号線にあります。周囲に駐車場はありませんので、信濃川上駅にある村営の無料駐車場を利用するといいでしょう。
馬越峠から天狗山までは、馬越峠ピストンコースと同じ行程になります。天狗山から、八ヶ岳方面に男山まで伸びる稜線を進んでいきます。天狗山の岩峰からロープなど使用しながら降りると、いったんは平坦な道になり立原高原への分岐点などがあります。
分岐を過ぎると程なくして垣越山に到着します。こちらは樹林に囲まれており展望は利きません。さらに男山に近づいていくと、岩稜地帯に変化し、再び目の前に現れる八ヶ岳方面へ進んでいきます。
岩稜地帯のピークをこなしながら進むと、御所平との分岐になります。男山登山口へはここから下りますので、分岐から男山まではピストンになります。
分岐からは、すぐに男山山頂になりますが山頂直下の急登が待ち構えています。設置されているロープを使いながら、登り切って男山登頂となります。
男山からは、360度の大絶景が広がっています。天狗山からも素晴らしい展望が眺められますが、こちらの方が優れているでしょう。男山については、別の記事に詳しくまとめていますので参考にしてください。
男山からは、分岐に戻り、急傾斜を下り、林道を進むと男山登山口に下ります。登山口からは、少し遠回りをして橋を渡り、JR小海線の信濃川上駅へと向かいます。
天狗山のQA
天狗山に関する質問で多いのは、登山ルートや気温・積雪などに関することです。このような質問について以下QAを紹介します。
天狗山の登山レベルは?初心者でも登れる?
天狗山の登山ルートは、初心者から上級者の方まで、だれでも登ることができます。また、登山道はよく整備されており、道迷いやルート外れの心配は少ないでしょう。
ただし、5km以上と比較的長い距離のコースであり、また標高差も500m以上とそれなりにあります。中には急登区間やロープを使う岩場もあるので、時間には余裕をもって計画するようにしましょう。
冬場には積雪があり、アクセス道や登山道は氷結しています。豪雪地帯ではありませんが、寒さが非常に厳しい地域ですので、冬山装備は必須です。
天狗山の気温は?どんな服装で行けばいい?
天狗山のある川上村の月ごとの平均最低気温と最高気温を下記の表にまとめました。真冬には月平均の最低気温が-12℃となるなど非常に寒さが厳しい地域です。一方で、晴天率も高く日中の気温は比較的高く1日の寒暖差が大きい傾向にあります。
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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最高 | 0.1 | 1.1 | 5.4 | 12.1 | 17.2 | 19.9 | 23.7 | 24.7 | 20.3 | 14.7 | 9.6 | 3.5 |
最低 | -12.2 | -11.4 | -6.4 | -0.6 | 4.9 | 10.2 | 15.0 | 15.5 | 11.4 | 4.4 | -1.8 | -7.9 |
夏でも天候次第では肌寒く感じる日もあるので、春や秋と同様に一枚羽織れる上着を持っていくといいでしょう。また、春・秋は他地域と異なり冬のように寒くなります。防寒対策は十分に行い備えましょう。
冬期間はしっかり冷え込みます。長野県内でも有数の寒冷地で非常に厳しい寒さになります。積雪は多くありませんが、一度積もるとなかなか融けず、氷結した路面や登山道となりますので、冬期登山の際には十分な下調べと装備・経験が必要です。
天狗山で見られる山の花は?見ごろは?
下の表に見ごろと一緒にまとめて紹介しますので、参考にしてみてください。
山の花 | 見ごろ | 山の花 | 見ごろ |
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アオダモ | 5月 | ウマノアシガタ | 5~6月 |
フデリンドウ | 5月 | アズマシャクナゲ | 5~6月 |
イカリソウ | 5月 | ミツバツツジ | 5~6月 |
シロヤシオ | 5~6月 | ハコネコメツツジ | 5~6月 |
ハシリドコロ | 5~6月 | ハクサンシャクナゲ | 5~6月 |
馬越峠と立原高原キャンプ場へのアクセスは、車のみとなります。男山登山口は、JR小海線の信濃川上駅から歩くことも可能です。冬季は、路面に積雪が合ったり凍結していますので、十分にご注意ください。
馬越峠駐車場
登山口情報
長野県川上村と南相木村を結ぶ県道2号線の馬越峠付近にある路肩の駐車スペースになります。6,7台ほどの無舗装の駐車スペースで、トイレ等の施設はありません.
例年12月上旬から4月中旬までは、冬季通行止めとなりアクセスできなくなります。
登山口までのアクセス
長野県佐久穂町から
八千穂ICから車で45分
山梨県北杜市から
長坂ICから車で約50分
立原高原キャンプ場駐車場
登山口情報
長野県川上村と南相木村を結ぶ県道2号線の馬越峠から、北側の南相木村に少し下ったところにあるキャンプ場です。20台ほどの無舗装の駐車スペースで、トイレも利用することができます。管理棟が脇にありますので、一声かけて利用するようにしましょう。
登山口までのアクセス
長野県佐久穂町から
八千穂ICから車で30分
山梨県北杜市から
長坂ICから車で約60分
男山登山口
登山口情報
長野県川上村にあるJR小海線の信濃川上駅から千曲川を渡り、広瀬地区へ向かう県道68号線の途中に登山口があります。登山口に駐車場はありません。
信濃川上駅からは、歩いて25分ほどになります。村営の無料駐車場があり、20台ほどのスペースがあります。無料で利用でき、トイレもありますので、車でのアクセスの際にもこちらを利用したほうがいいでしょう。
登山口までのアクセス
長野県佐久穂町から
八千穂ICから車で35分
山梨県北杜市から
長坂ICから車で約35分
信濃川上駅から
信濃川上駅から徒歩で約25分
天狗山周辺のおすすめ山旅スポット
南相木温泉 滝見の湯
馬越峠から南相木村に下りて行った先にある温泉施設です。天狗山のある川上村、南相木村にある唯一の天然温泉で、一面ガラス張りの内湯と広々とした露天風呂でゆっくりと登山の疲れを癒すことができます。
建て替えられ新しくなった館内には、食事処や休憩所もあり、地元産の食材を使った料理をいただくこともできます。中でも、南相木村で作られた蕎麦は相木蕎麦と呼ばれ、香り高く人気のメニューです。
馬越峠や立原高原キャンプ場などの天狗山登山口からほど近く、自然豊かな南佐久にある天然温泉に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
里山ダイニング PachaMaMa
南相木村にある古民家を改装した自家栽培のお米やそば、野菜をふんだんに使ったランチが楽しめるお店です。オーナーの築百年を超える実家を改装した店内は、落ち着いた雰囲気ですぐ隣にある小川のせせらぎに耳を傾けながらゆっくりできます。
自家製の無農薬野菜はこだわりが詰まっており、風味豊かなやさい 本来の味を感じます。また、新鮮なイワナの唐揚げや自家製のお蕎麦、鹿肉料理など地元の味をいただけるお店です。
松坂屋
男山の登山口である信濃川上駅前に唯一あるちいさな食堂です。老夫婦で切り盛りしており、ランチタイムから夕方までの営業になっています。田舎にポツンとある食堂といった雰囲気ですが、手作りの料理はどれもおいしく隠れた人気店です。