雪山登山やバックカントリースキーをしていると防寒テムレスを使用している方を多く見かけます.
この製品、紹介文を見ると「【透湿性と防水性を兼ね備えた防寒手袋】水は通さず、汗などの湿気を手袋外部に放出する特殊樹脂コーティングによりムレを軽減した、裏起毛付きオールコートタイプの防寒手袋です。」
と記載があります。間違ってはいないのですが、実際に使用していくつかの違和感から細かく調べてみると注意点があるので、今回は防寒テムレスの特徴、正しい使い方、最後にサイズ感について紹介をします。
防寒テムレスの特徴
防寒テムレスとは作業用のゴム手袋の内側に裏布とボアをつけた冷凍庫作業なんかで使ったりする-60度でも柔軟性を保つ作業用手袋です
ゴム手袋はそもそも透湿性能がないので、手から出た湿気がグローブの外に排出せず、すぐに汗で手がベタつくのに対して防寒テムレスはしっかりとした防水性能を備え、透湿性があるので手がべたつきづらい特徴があります。
しかしながら防水性能を備えた登山用手袋に使用されているゴアテックスと比較すると透湿性は1/10程度なので使っているとどうしても汗で手が湿っている感覚があります。使った瞬間は手がドライで心地よく感じるのですが、長い時間使っていると中が湿りやすく、冬季テント泊の場合は次の日に防寒テムレスの中が凍ってしまっていることも考えられます。
この湿っている原因はグローブの中で結露が生じている状態です。この結露が生じている最大のデメリットは手が冷たくなることです。水は空気の20倍熱伝導率が高いためグローブの外側に触れた冷気が、中が湿っていることが原因で20倍のスピードで手を冷たくしていきます。
また防寒テムレスの内側に備わっているボアタイプの裏起毛はパイル地で、ここに空気層を貯めて保温するのですが、濡れていることで起毛部分が薄くなりグローブの中の温度が下がりやすくなります。
このように防寒テムレスは、非常に価格が安く、保温性と防水性に優れたグローブながらも、手に汗をかく可能性のある登山やバックカントリースキーなどのアクティビティにおいて、ひとたび手が湿ると、手が冷えてしまうリスクが生じるグローブであることを知っておく必要があります。
防寒テムレスの正しい使い方
このようなリスクを踏まえて、山の中で防寒テムレスをどのように使うのかという点について次からお話をしていきます。
ベーパーバリアを活用
まずアルパインクライマーの方は知っている方も多いと思いますがペーパーバリアを活用するという内容です。
これはテムレスの中にサージカルグローブをするという方法です。サージカルグローブは感染予防や汚れ防止に使う薄いゴム手袋で、特徴は全く透湿しないこと、そして保水しないことです。なのでサージカルグローブの中は手の汗でびちょびちょに濡れます。
しかしながらサージカルグローブの外側、いわゆる防寒テムレス側は全く濡れていない状態を保つことができます。中間層を濡らさずに維持することで防寒テムレスの内側に備わっているボア部分に空気層を貯めることができ保温力の低下を防ぐことができます。
この場合防寒テムレスはできるだけ外さないように行動し続けることが重要なのですが、細かな作業を防寒テムレスをした状態で行うことが厳しい場合、体が冷えないことのほうが手を冷やさないことよりも優先順位が高いので、防寒テムレスを外すことになります。その場合サージカルグローブは保水しないので雨や雪で湿ることはありませんが、勢いよく手が冷えてしまうので、防寒テムレスを外してしまうようなことが考えられる場合は注意が必要です。
汗をかきづらい行動時に活用
手に汗をかきづらい行動時に防寒テムレスを活用するようにしています。例えばバックカントリースキーでは滑走タイミングでの使用、肌寒い登山中では休憩時での活用などです。
この時はインナーグローブがあると防寒テムレスのボアが直接湿気を吸って溜め込む空気層が少なくなるのを軽減することができます。またインナーグローブがあることで防寒テムレスを外した時に素手になって雪が付着することを軽減しリスクを少なくすることができます
この時使用するインナーグローブはできるだけ薄手のものを選ぶことで、素手で防寒テムレスをした状態と比較した時に操作性を損なわないようにすることができます。
サイズ感
防寒テムレスはM・L・LL・3Lの4サイズで、オフィシャルサイトでサイズをチェックしても、製品寸法しか出ていなくてどのサイズが自分にちょうどいいのか分かりづらいと思います。
僕はLLサイズを使用していますが、通常登山用のグローブはMサイズを使っています。防寒テムレスに限らずテムレス全般に入れることですが、通常使用しているサイズよりもワンサイズ上以上を選ぶようにしましょう。
ちなみに僕の手のサイズは、手のひらまわりは約21cm、中指の長さは8cmです。
今回は防寒テムレスの特徴と、特徴を踏まえた登山での正しい使い方を紹介しました。防寒テムレスだけでなく、レイングローブとして活用している人も多いテムレスも同じようにゴアテックスよりも透湿性が少ないので汗をかく可能性が高い登山では、手が冷たくなりやすいことを覚えておく必要があります。
また透湿性がないと中で結露を起こして体が冷える原因となるため、透湿性があると書かれていてもどれだけの透湿性があるのかということを気にしてチェックすることも重要です。