「テントを買って練習したけど、実際に山でちゃんと張れるか不安」
初めてテント泊登山にチャレンジする方にとってテントの設営や撤収の作業は、事前に練習をしていても、山という実践の場でちゃんとできるか、不安に思うのではないでしょうか。またテント設営を何度か行っている方でも間違った方法でテント設営を行っている方を多く見受けられます。
この記事ではテント泊登山をする方に向けて、どんな場所や気候でもテント設営と撤収が行えるよう、基本的な手順を紹介し、ポイントを解説しています。
また、テント設営の前提となる、テントを張るのに最適な場所の選び方についてもポイントを解説していますので、これからテント泊登山をしようと思っている方、テント泊登山の予定のある方、テント泊をしている方は、ぜひ参考にしてください。
テントを張るのに最適な場所な選び方
テントは、どこに張るかによって快適性が大きく変わります。テントを張る場所次第で、その日の安眠が得られるかどうかが決まってしまうといっても過言ではありません。テントの設営に最適な場所の選び方を紹介します。
- 平らな場所を選ぶ
- 風の当たらない場所を選ぶ(風の影響を受けにくい設営)
- 水捌けの良い場所を選ぶ
- 通り道を邪魔しない場所を選ぶ
- 1~4を満たす場所を確保するため、早くテント場に到着する(夏場は夕立のリスクがある)
1.平らな場所を選ぶ
平らな場所は、次の2つの基準を満たしています。
傾斜がない
稜線のテント場などでは、傾斜のある場所もあります。傾斜のある場所にテントを張ると寝返りを打つのさえ一苦労です。傾斜のある場所にテントを張らざるを得ない場合は、斜面と並行に頭を上にするなど検討しましょう。
石や木の根がない
石や木の根があるとデコボコして安眠できません。木の根が張っているところは避け、地面の石が動かせるようなら、取り除いてからテントを張りましょう。木の枝を折ったりするなど、もともとの自然の姿を変えてしまうのはNGです。
2.風の当たらない場所を選ぶ
山では風が強く吹き、テントを揺らしたり、時には吹き飛ばしたりすることさえあるので、早めに到着して、風の当たらない場所を探しましょう。またテント設営時は風向きを把握して、テントの短辺を風がくる方向になるように設営すると風の影響を受けにくくすることができます。
3.水捌けの良い場所を選ぶ
山は、昼間は晴天でも夜になると雨が降ることがあります。夏場は夕立が多いことも考えなくてはいけません。テント場のように地面がむき出しだと、雨が川のように流れるところがあるため、地形や地面をよく見て、雨が流れた痕跡のない場所、水たまりになりやすい場所を避けて選びましょう。
4.通り道を邪魔しない場所を選ぶ
テント場には通路となるスペースが設けられているのが一般的です。テントは通路を邪魔しない位置に張るようにします。またテント場と山小屋、テント場とトイレのルート上にテントを張ると、就寝中に自分のテントの近くを人が通ることになります。できるだけこのルートから離れた位置にテントを設営することで就寝時に目を覚ましづらく寝ることができます。
5.1~4を満たす場所を取るため、早くテント場に到着する
山のテント場は、テント場内であればどこでも好きな場所にテントを張れるのが一般的です。ということは、いままで挙げた条件を満たす場所ほど早く埋まっていくことになります。テント場へはできるだけ早く到着するように無理のないプランをたてるようにしましょう。夏場は夕立が起こりやすいので昼の12時あたりにテント場に到着するプランがおすすめです。
【初めてのテント泊登山】テントの設営方法
ここではテント泊登山初心者におすすめの「自立式ダブルウォールテント」の設営する手順とポイントを解説します。この手順を覚えることで一人で簡単にテントの設営を正しく行えるようになります。
①グランドシートを敷く
テントを張りたい場所の風上側に立ち、風下側に向かってグランドシートを広げます。グランドシートを敷くことで
- テントのボトム部分の汚れを防ぐ
- テントのボトム部分の破れを軽減できる
- 地面からの冷えを抑制できる
などのメリットがあります。広げた後は風で飛ばされないよう四つ角をペグで仮留めしておくようにしましょう。
また、グランドシートを入れていたスタッフバッグも風で飛ばされることのないよう、中身を出したらすぐにズボンのポケットなどに入れておきます。
②テント本体(インナーテント)を広げて固定する
グランドシートの上に、テント本体(インナーテント)の入口が風下側に来るように広げてセットします。
テントが風で飛ばされないよう、ここも固定しておきます。テントを入れていたスタッフバッグは風で飛ばされないよう、中身を取りだしたらすぐにポケットにしまいます。
③テントポールを伸ばす
折り畳まれているテントポールを組み立てて長く伸ばします。
テントポールは全部伸ばすととても長いので、周囲の人にぶつからないよう注意してください。
④テント本体を立ち上げる
スリーブにポールを通す
テント本体のスリーブ(ポールを通す筒状の穴)にテントポールを差し込み、押すようにして中に入れていきます。ポールは中にゴム製のショックコードが入っており、引っ張ると外れてしまうので、必ず押すように入れていきます。
また、ポールをスリーブに挿入する際は、風上側から入れましょう。
まず、1本のポールを取り、スリーブの一方の端まで押し込んだら、いったんそのままにしてもう1本のポールを取り上げ、反対側のスリーブに挿入していきます。これで2本のポールの半分ずつがスリーブに入った状態になります。
ここまでできたら残りの半分のポールを伸ばして、スリーブにすべて入れていきます。最初から全部ポールを伸ばして作業を行うより半分ずつ入れていく方がスリーブに入れやすい上、周りの人の邪魔になりません。
2本のポールを対角線上のスリーブにすべて入れ終えたら、ポールの末端をテント四隅に設けられた穴に入れると、テントが立ち上がります。立ち上がった瞬間は風に煽られるので飛ばされないように注意しましょう。
本体を吊り下げる
テント本体を吊り下げるタイプの場合は、まず初めにインナーテントをペグダウンし、テント本体四隅に付いた穴にポールの先端を差し込みます。
四隅の穴とポールの先端に色が付いている場合は、赤い穴には赤い先端を差し込むといったように、同じ色同士でセットします。その後、インナーテントに取り付けられたフックでポールに吊り下げていきます。
すべてのフックを吊り下げると、テントが立ち上がります。
⑤フライシートをかぶせて固定する
テント本体が立ちあがったら、その上にフライシートをかけます。本体の入口とフライシートの入口とを間違えずに合わせ、テント本体とフライシートをジョイントさせます。
間違えづらいようにジョイント部分が色分けされているタイプのものがあるのでご自分のテントを事前に確認しておきましょう。
フライシートは軽いので風に飛ばされないよう、ジョイントさせるまでは手を離さないでください。
また、フライシートの入っていたスタッフバッグも風に飛ばされないよう、中身を取り出したらすぐポケットにしまいましょう。
⑥ガイラインを使ってしっかりテンションをつくる
フライシートに設けられたループやガイラインを使ってフライシートにテンションを作ることは登山におけるテント設営では重要です。
- インナーテントとフライシートの間に隙間を作ってテント内部の結露を防ぐ
- テントの居住空間を広げる
- フライシートの耐水性を向上させる
- テントが風で飛ばされないようにする
設営時は風がすくなく晴れていても、夜に天候が悪化する可能性が高いのが山の上です。しっかりとガイラインを使って、きっちりテンションをつくりましょう。
ペグダウンする時は、ペグとガイラインとの角度が90度になるよう打ち込むと、外れづらくしっかりとテンションを作ることができます。
⑦自在(スライダー)でテンションをかける
ガイラインが緩んでいるとテントの強度や安定性が保てません。ガイラインに長さを調節する自在(スライダー)が付いている場合、張り綱がピンと張るくらいまで自在を動かして調節します。
以上でテント設営は完了です。
テント泊登山ビギナーにもおすすめの『山旅ダイニーマ製ガイライン&ロックシステム』
テントに付いているガイラインは、テント場の岩や石でこすれて切れてしまったりすることがあるので、予備に持っておくといいです。おすすめは『山旅ダイニーマ製ガイライン&ロックシステム』。高品質なガイライン2本と、ラインロックVが付いたコード4本とがセットになった、軽量で非常に強度の高い一品です。
悪天候に備えてガイラインを長く引いて石で固定したり、テント内の物干しに使ったりなどさまざまな使い方ができます。
テント設営のTIPS
練習ではうまくできたのに、実際のテント場では困った事態が起きて作業に手間取ることがあります。解決に役立つヒントを紹介します。
ペグが刺さらない時は石を利用する
地面が柔らかくてペグが抜けやすかったり、地面が固くてペグが刺さらない場合は、石でガイラインを固定します。
ガイラインの先端とペグを固定したらペグを横向きにし、ペグの両端に大きな石を重しとして置く、またはガイラインの先端に大きい重い石を結び付けて重しにするという2種類の方法がおすすめです。エバンスノットでこれらの対応が容易に行えます。
しっかりとペグダウンしても、夜間の急な悪天候でテントが揺れたりすることがあるため、ペグ+石で補強しておくのがおすすめです。
結露や悪天候対策にテンションコードやガイラインをピンと張り直す
フライシートのテンションコードをきちんと張ってペグダウンしても、時間がたつと風や湿気で緩んできます。インナーテントとの間にしっかり隙間を作ってテント内側の結露を防ぐために、寝る前にもう一度テンションコードを張り直すのがおすすめです。
また、山では昼間晴天でも、夜間に天気が急変することがあります。風雨が強くなってから外に出て対策するのは大変です。寝る前に張り綱をもう一度ピンと張り直したり、石を巻き付けておいたりして強度を高めておくと安心です。
夜間の暴風雨対策にベンチレーションをテントの外に固定する
暴風雨時になるとテントに付いているベンチレーションがテント内に入り込み、コードを伝わって雨がテント内に入ってくることがあります。夜間の暴風雨が予想される場合は、あらかじめ予備のガイラインとペグでテントの外側に固定しておくことで内側に雨が流れ込むことを防止できます。
事前に練習をしておく
テントの設営は、テント泊登山デビュー時に、ぶっつけ本番で挑むのはNGです。設営に不安がなくなるまで、自宅や幕営が許可されている公園などで繰り返し練習しましょう。
【初めてのテント泊登山】テントの撤収方法
ここではテント泊登山初心者におすすめの「自立式ダブルウォールテント」を撤収する手順とポイントを解説します。山でのテント撤収作業は時間との戦いです。素早く、安全に撤収作業を行うのがポイント。事前にテントのパーツを収納するスタッフバッグをポケットに入れておくと作業がしやすくなります。
①フライシートを外して収納する
フライシートを固定していたペグを抜いていきます。抜いたペグは失くさないよう、まとめて置いておきます。撤収作業は早朝のまだ暗いうちに行うこともあるため、ペグを紛失しないよう注意してください。
フライシートを外してスタッフバッグに収納します。フライシートを地面に置くと汚れてしまうので立ったままでコンパクトにし、袋に詰めていきます。
②テントをさかさまにして、中に入ったゴミを出す
テント本体をさかさまにして、入口を下に向けて軽くゆすってテント内部に入った落ち葉や虫の死骸などのゴミを出します。ただし、風の強いときはこの作業は省いてください。
③スリーブ式はポールを抜く、吊り下げ式はポールからフックを外す
スリーブ式テントの本体からポールを抜きます。ポールを引っ張って抜こうとすると、途中でポール内側のゴム(ショックコード)が外れてかえって取り出しにくくなるため、テントの生地にギャザーを寄せてポールを押し出すようにしてあげるとスムーズに抜くことができます。
吊り下げ式テントの場合は、ポールからフックを外していきポールを抜きます。
④テント本体をスタッフバッグに収納する
テント本体をスタッフバッグに収納します。入口のファスナーを少し開けて、空気を抜きながら小さくしていき袋に入れます。もともとテントが入っていた専用袋よりも、少し大きいスタッフバッグの方が収納しやすいです。
⑤ポールを折って収納する
ポールは力が均等にかかるように真ん中から折っていきます。真ん中を折ったら、また真ん中を折り、さらにまた真ん中を折るというふうに、常に真ん中を折ってコンパクトにし、専用袋に収納します。
⑥グランドシートをしまう
グランドシートのペグを外し、袋に収納します。
⑦ペグの汚れを落として収納する
まとめて置いておいたペグは、簡単に汚れを落としてから専用の袋やジッパー付きビニール袋などに収納します。最後にペグが落ちていないか、地面を確認してください。
⑧テントギアをザックにしまう
ポールも含め、ザックにテント用具を収納します。テントの撤収作業に入る前に、あらかじめシュラフや防寒着など濡れては困る荷物をまとめて大きいドライバッグに詰めてからザックにしまっておくと、テントが雨で濡れていても安心です。また、濡れたテントもドライバッグに入れて収納すると、他のものを濡らす心配がありません。
テント泊登山に欠かせない『山旅ドライバッグ』
雨や結露で濡れてしまいがちなテントは、付属の小さなスタッフバッグに入れて収納するより、ドライバッグに入れて収納する方が簡単にパッキングできる上、撤収作業も素早く行えるのでおすすめです。『山旅ダイニーマ製ドライバッグLサイズ』は、1㎏前後のテントの収納に適したドライバッグ。撤収作業がスムーズに行えます。また、『山旅ダイニーマ製ドライバッグMサイズ』は、300g以内のダウンウェア2着または600g以上のダウンシュラフが収納できる大きさなので、濡れから大事な防寒具を守れます。
練習と実践を重ねて素早く、確実に作業しよう
テントの設営&撤収は、雨や暴風など悪天候時に行うこともあります。どんな状況にも臨機応変に対応するのはなかなか難しいですが、実践を重ねて身に着けていくしかありません。作業手順を確実に把握し、スムーズにできるようになるまで練習することをおすすめします。