パタゴニアからは様々なザックが販売されていますが、ハイキングや登山向けにデザインされたのが今回紹介するテラヴィア・パックです。日帰りの軽登山、小屋泊、軽量化できたテント泊と様々なシーンで使えるように22L、28L、36Lの3種類のサイズ展開です。今回は36Lの小屋泊、テント泊登山に適したサイズを紹介します。
今回は過去モデルの「アルトヴィア・パック36L」との違いを照らし合わせながらスペックを紹介し、近い容量で代表的な他のブランドのザックと比較した際の価格差と重量差を確認し、デザインや特徴について紹介をして、実際の背負い心地と使い心地についてレビューをしていきます。
テラヴィア・パック36Lのスペック
テラヴィア・パック36Lの過去モデルにアルトヴィア・パック36Lがあります。山旅旅で過去レビュー記事を執筆したのですが、その時のスペックやデザインと照らし合わせると全く同じであることが分かりました。
過去モデルとの違い
変わっているのは14Lという容量のモデルが販売されていましたが、これが廃盤となっている点ぐらいです。そして価格は約133%値上がりしていて過去のモデルが1万9800円だったのに対し現在は2万6400円です。
これはパタゴニアに限らずオスプレーやドイターなどの登山用ザック専門メーカーでも同様で、パタゴニアは値上がり率が低い設定であることがわかります。
スペック
素材:
本体:140デニール・リサイクル・ナイロン100%のリップストップ
フロントポケットとボトム部分:210デニール・リサイクル・ナイロン100%のリップストップ
重量:992g
サイズ:60x30x27cm(高さx幅x奥行)
容量:36L
重量は実際に測ってみたら1060gありました。ボトムに付属されているレインカバーを取り除くと990gだったので、レインカバーが単体で70gです。
近い容量で代表的な他のブランドのザックと比較
ブランド | パタゴニア | オスプレー | ドイター | グレゴリー | Hyperlite Mountain Gear |
製品名 | テラヴィア・パック | タロン | FUTURA PRO 36 | スタウト35 | Southwest40 |
容量 | 36L | 36L | 36L | 35L | 40L |
重量 | 992g | 1170g | 1580g | 1310g | 910g |
2021年価格 | ¥19,800 | ¥20,900 | ¥24,200 | 不明 | 不明 |
価格 | ¥26,400 | ¥29,700 | ¥34,100 | ¥28,600 | ¥66,000 |
今回近い要領で代表的なブランドとして取り上げたのはオスプレー、ドイター、グレゴリー、そして最近人気があるHyperliteMountainGearです。
その他にも色々あると思いますがこのように見てみると非常にコストパフォーマンスに優れていることがわかります。重量が軽いザックの特徴にフレームなし、ショルダーハーネスやウエストベルトが簡易的なものであることが挙げられますが、パタゴニアのテラヴィア・パック36Lは、ばね鋼の外周サポートを備えたフレームが備えられており、ショルダーハーネスやウエストベルトも通気性とクッション性を備えた荷重分散が可能なデザインを採用しています。
また重量もレインカバーを除いた場合に1kgを切る軽さで、36Lのザックに収納できる容量から考えて、装備重量が10キロ以上になるようなことは少ないと思うので、必要十分な機能を備えたこの軽さは武器になると思います。
デザインや特徴について
クイックオープンとクローズが可能な開口部
パタゴニアのザックの代名詞とも言える開口部はクイックオープンとクローズが可能なデザインです。登山用バックパックが採用している雨蓋の構造とは異なり、メインポケットの開閉と雨蓋部分が一体化されています。
通常のバックパックの場合、メインポケットを巾着型に閉めてから、その上から雨蓋を被せてコードロックで止めるという、2段階の作業が必要ですが、このバックパックはワンアクションでこれら全てが行えるようになっています。これによってスピーディーにメインのコンパートメントからものを出し入れし行動へ移すことができます。
背面の通気性
36Lサイズのモデルは、蒸れを軽減することを目的にした背面パネルが備わっています。横に向かって凹凸構造を備えたパネルの上にメッシュの素材が覆われています。これによって体とザックの背面部分に隙間が生まれ、背中の蒸れを軽減し、通気性によって汗で濡れた後もザックが乾きやすい特徴があります。
ショルダーハーネスとウエストベルトの通気性
ショルダーハーネスとウエストベルトの内側、いわゆる体に当たる側も背面パネルと同様、細かく穴の開いたパネルの上にメッシュの素材が覆われています。そして柔らかすぎずに硬すぎない反発性の高いクッション素材なので、重い荷物を背負った時に背中にショルダーハーネスが食い込みづらく、荷重分散してくれます。
これによってしっかりと腰荷重ができて背中全体で荷物を背負うことができます。
チェストベルトとウエストベルトのデザイン
チェストベルトは非常にシンプルかつ位置変更も容易に行うことができます。ウエストベルトもストラップの長さがちょうどよく、シンプルなバックルで使い心地に優れています。
シンプルなショルダーハーネス
ショルダーハーネスはポケットは一切なく非常にシンプルな構造です。だからボトルホルダーやスマホポーチなどを取り付けやすいデザインです。
耐久性のある素材
本体には140デニールのリサイクル・ナイロン100%のリップストップが使用されています。そしてフロントポケットとボトム部分には210デニール・リサイクル・ナイロン100%のリップストップが使用されています。
デニールというのは生地の厚みを表し、数字が大きいとそれだけ厚みがあるので耐久性に優れています。デメリットは生地が厚いため重くなりがちという点です。ただしが長い期間使用したいザックという風に考えれば、210デニール素材は安心感が高いと考えられます。
ザック全体が同じカラーなので、どこが140デニールなのか分かりづらいと思いますが、リップストップの格子の細かさで区別が付きます。140デニールはザックのメインコンパートメントを覆う部分と、雨蓋部分に施されています。
ポケットのデザインと数
メインコンパートメントの内部には貴重品などを収納するのに便利なファスナー付きポケット、ハイドレーション用のスリーブポケットが備わっており、1気室のシンプルな作りです。
雨蓋上部にはファスナー付きポケットがあり、雨蓋の大きさ分のポケットです。内部にはキーチェーンが備わっています。
サイドには伸縮性のあるメッシュポケットが備わっており1Lのナルゲンボトルを無理なく収納することができます。
ウエストベルトには左右それぞれストレッチ性のある素材で覆われたポケットが備わっています。マチがついていないので、中に入れたものをストレッチ素材で固定するようなポケットです。
コンプレッションベルト
コンプレッションはサイドに設けられたコードで行うことができます。コンプレッションした後にはまったコードがブラブラしづらいようにゴムバンドがついています。またテントポールやトレッキングポールなどの長物を指してしっかりと固定させることができます。
トレッキングポールを素早く固定
フロント部分にはドローコードが備わっており、この箇所にトレッキングポールを通してコードロックで固定することができます。
ボトム部分に備わったレインカバー収納
テラヴィア・パック36Lにちょうど良いサイズのレインカバーがボトム部分に備わったベルクロテープ付きのポケットに収納されています。別でレインカバーを購入する必要がないのは嬉しいポイントです。レインカバーは70gで、単体で考えた時に軽量なモデルのように思います。レインカバーを使用しない時は取り外して置いておくこともできます。
実際の背負い心地と使い心地についてレビュー
最初はパタゴニアのザック?とザック専門ブランドではないことから懐疑的な見方をしていましたが、背負ってみるとフィット感がよく、重い荷物を背負ってもロードリフトストラップによってしっかりと体に近づけることができ、ザックの重さで背中側が引っ張られるようなことがなく快適に登山をすることができると思いました。
そしてストレッチポケットによるコンプレッションによって収納したものがポケットの中で揺れづらく、安定した方向ができるのも良い点だと感じました。
軽量な登山装備で登山に出かけると考えた場合のちょうど良い容量と、それに対しての価格の安さ、そしてもしザックにトラブルがあってもすぐにパタゴニアのショップに出かけて相談できる安心感は他のブランドと比較した時の魅力です。
実際に背負ってみた時に良い点もあったのですが、僕にとって気になった点についても紹介をします。
その1つ目がパッキングの仕方によっては背中に物が当たるという点です。上手にバッキングすれば問題ないのですが、背中に近いところに重いものを位置させるときにクッカーを斜めに収納してしまうと角が背中に当たることがあります。
2つ目が最後のメッシュポケットが縦に長いので、ザックを背負っている状態でサイドに入れたボトルを取りづらいという点です。お水を飲む時はザックを下ろせば良いと考えている人にとっては、何ら問題ないことですが、背負った状態ではボトルは取れないと考えた方が良いです。メリットとしてはストレッチメッシュポケットと縦に長い深いポケットによって、ボトルが意図せず落下させてしまうようなことがほとんどないという点です。
僕の場合はショルダーハーネスにボトルホルダーを固定させるのでこの点全く気にならないのですが、ボトルホルダーをショルダーハーネスに取り付けることが嫌な人は、この点注意が必要です。
3つ目がフロントポケットの出し入れです。フロントポケットの素材は全くストレッチしないので中に入れたものを固定させることができません。またフロントポケットから物を出す時に雨蓋から出ているストラップが邪魔で取りづらいと感じることがあります。
またフロントポケットの中を上から見るときは、まず初めに雨蓋から出ているストラップを開放し、その後フロントポケットのロックを外して、というように2回の動画が必要になります。
さらにフロントポケットから出ているストラップが異様に長く、この長さは必要ないんじゃないかと思います。
4つ目が全てのポケットにマチがないという点です。フロントポケットも、雨蓋上部に設けられたジッパーポケットも、メインコンパートメントの内部に繋がっているポケットも、マチがなく、それによって収納力、中に入れたものが2つ以上ある場合手探りで探すことになることが気になります。
これらが改善されるとかなり使いやすいザックになるんではないかと思いますので、是非さらに開発を進めてもらいたいと思います。
それにしてもコストパフォーマンスがよく使い心地が良い優れたザックだと思います。28Lも今回紹介した36Lと近しいデザインを採用しているので、日帰り登山用、小屋泊用のザックとしてもとてもおすすめできるアイテムです。
僕は22Lのザックがちょっとしたハイキングに使える容量で気になっています。