小さな火力で素早く沸騰させることができるクッキングシステム『ジェットボイル』は全部で6種類のモデルがあり、何を求めるかで購入するものが変わります。そして通常のガスストーブと比較してガスの消費燃料にどのような差があるのか検証した情報というものは少なく、今回登山装備の軽量化というポイントでジェットボイルの力を試したいと思います。

まず最初の記事では6種類のジェットボイルの比較と特徴、そして僕がなぜマイクロモを購入したか?という点について紹介をしていきます。後半の記事では通常のガスストーブと比較してガスの消費燃料にどのような差があるのか検証し、ガスの消費という点での軽量化について確認をしていきます。
ジェットボイル共通の特徴
まず初めにジェットボイルが持つ共通の特徴について見ていきましょう。
高い熱効率を発揮するフラックスリング
ジェットボイルはなぜ素早い沸騰を可能にするのか?最も特徴的なのがフラックスリングです。一般的なクッカーと比べてクッカーの底部分のデザインに特徴があることが分かります。これがフラックスリングです。
通常クッカーのそこにバーナーを当てると熱がクッカーの周囲に拡散します。しかしフラックスリングがあることで周囲への拡散を防ぎ熱を閉じ込め、この構造によって高い熱効率を発揮します。
このフラックスリングは蛇腹状になっており、これによって熱を受ける表面積を飛躍的に拡大しています。熱を受けたらそれがクッカーへと伝わることで、小さな火力でも素早く沸騰させることができます。
全てをクッカー本体内に収納するオールインワン設計
ジェットボイルは
- 専用クッカー
- バーナーヘッド
- ゴトク
- スタビライザー
- フタ
- 別売りのガスカートリッジ
- 軽量カップになるカバー
の7種類の道具で成り立っています。
専用クッカーは、フラックスリングが付いており断熱性が高い特徴があります。またお湯が沸いた時クッカーを素手で持っても熱くならないようにネオプレン素材のカバーがついており。お湯を注ぎやすいようにハンドル付きです。
バーナーヘッドは、フラックスリングと連結することができるデザインで、これによって沸騰到達時間を早め、ガスの消費を抑えることができます。
ゴトクは、お湯を沸かす時には使いませんが、フライパンなどの調理用クッカーを使って料理をする時に使用することができます。
スタビライザーは、ガスカートリッジに装着することができ、3本の足が広がるのでしっかりと本体を支えます。このスタビライザーは様々なガスカートリッジに装着できるので便利です。
フタは、お湯が沸いた時に注ぎやすく、湯気を逃さない役割があります。
これらの道具を全て専用クッカーの中に収納することができます。収納の順番を間違えると蓋をすることができません。例えば僕が持っているマイクロモの場合は、一番最初にスタビライザーを入れ、その後にバーナーヘッド、ガス缶はボトムを下にして収納し、最後にゴトクです。
この順番をあやまると、蓋ができません。試してみましょう。
ガス缶をボトムが上にくるように収納し、その後にバーナーヘッド、ゴトク、スタビライザーを入れます。こうすると蓋が閉まりません。
6種類のジェットボイルの比較
まず初めに6種類のジェットボイルを比較していきましょう。以下の表は2025年4月現在の価格を反映した6種類のジェットボイルを比較した表です。
モデル名 | スタッシュ | フラッシュ | ミニモ | ジップ | マイクロモ | スモー |
---|---|---|---|---|---|---|
容量 | 0.8L(調理容量0.5L) | 1.0L | 1.0L | 0.8L | 0.8L | 1.8L |
サイズ(収納時) | ∅13cm×高さ11.2cm | ∅10.4cm×高さ18cm | ∅12.7cm×高さ15.2cm | ∅10.4cm×高さ16.5cm | ∅10.4cm×高さ16.5cm | ∅12.5cm×高さ21cm |
重量 | 約200g | 約371g | 約415g | 約340g | 約340g | 約453g |
出力 | 1134kcal/h | 2269kcal/h | 1,404kcal/h | 1134kcal/h | 1,404kcal/h | 1,404kcal/h |
沸騰時間(0.5L) | 約2分30秒 | 約1分40秒 | 約2分20秒 | 約2分30秒 | 約2分20秒 | 約4分45秒(1.0L) |
燃費(100g缶での湯量) | 12L | 10L | 12L | 12L | 12L | 12L |
ガス消費量 | 約65g/h | 約139g/h | 約120g/h | 約65g/h | 約120g/h | 約120g/h |
サーモレギュレータ | なし | なし | あり | なし | あり | あり |
圧電点火装置(イグナイター) | なし | あり | あり | なし | あり | あり |
価格 | ¥20,350 | ¥19,250 | ¥25,300 | ¥13,750 | ¥24,200 | ¥23,100 |
この表を見ながら、6種類のジェットボイルの違いを見ていきましょう。
サーモレギュレーターの有無で分ける

まず大きくサーモレギュレーターの有無で分けることができます。このサーモレギュレーターとは冬季や高所などの環境でも安定した火力を発揮するテクノロジーで、さらに細かな火力調整も可能なバーナーです。だから高所登山でジェットボイルを使用する、また火加減を繊細に調整して料理を楽しみたい場合は、サーモレギュレーターが搭載されている
- ミニモ
- マイクロモ
- スモー
の3種類をピックアップしましょう。
例えば高所でも比較的気温が高い夏山登山で、お湯を沸かすことに特化するならばサーモレギュレーターはなくとも問題ありません。
軽量なモデルをチョイスする

次に最も軽量なモデルが約200gのスタッシュです。このモデルはジェットボイルの中で容量0.8Lと最も少なく、直径は13cmと広めに作られていますが高さが11.2cmでコンパクト設計です。
サーモレギュレーター、イグナイターがなく、出力も1134kcal/hとジェットボイルの中では燃焼効率が低いモデルです。軽量であるがゆえにお湯を注ぐ際のハンドルが不安定である点、風がある時に熱損失が起こる可能性のあるフラックスリング周りの形状、バーナーやクッカーのジェットボイル同士の互換性がないことを念頭に置く必要があります。
この次に軽量なのがジップとマイクロモの約340gです。最も軽量なスタッシュと比較すると約140gの違いがあります。ジップはマイクロモと同様の容量、出力でサーモレギュレーター、イグナイターがないのも一緒です。何が違うかというと価格が最も安い点です。
マイクロモは容量0.8Lはスタッシュ同様ですが、サーモレギュレーター、イグナイターが備わっています。
高い出力を備えたモデルをチョイスする

出力が高いということは沸騰時間も早いということです。フラッシュは出力2269kcal/hで、他のモデルが0.5Lの沸騰時間が2分20秒から30秒なのに対し、それよりも40秒から50秒早い、約1分40秒で沸騰到達します。この1分40秒という時間は、周囲温度が20℃、水温20℃、無風の条件下ということなので、山の上だと2分以上かかることは覚えておいてください。

フラッシュはサーモレギュレーターがありませんが、大型の火力調整、沸騰を外側から色の変化でわかるインジケーター、お湯を注ぎやすい直径10.4cmの縦長タイプの作りで、価格も2番目に安いので、人気のある商品です。
最近ではJETBOILフラッシュ1.0Lという製品がリリースされ、視覚的な火力調整機能やバーナーを押さえるためのグリップなど、今までのシングルバーナーになかった機能を搭載しており、初心者の人にも扱いやすくなっています。この製品も重量371gです。0.5Lの沸騰時間は約2分で出力は1335kcal/hとスペックが低いことに注意しましょう。
たくさんのお湯を作りたい!

最も容量が大きいのがスモーの1.8Lです。そしてこのモデルはサーモレギュレーター、イグナイターが備わっているので、冬季登山で雪からお湯を作るシーンで活用している方が多い印象です。
僕がマイクロモを使っている理由
- 最も価格が安いのはジップ
- 最も軽量なのがスタッシュ
- 最も出力が高いのがフラッシュ
- 最も大きいのがスモー
「最も」がつく4つのモデルの中で、ジップ、スタッシュ、フラッシュはサーモレギュレーターがないので、調理時にはとろ火設定にストレスを感じるし、気温が低い場所ではお湯は沸くけど、燃焼時間が気温が高い場所と比べると時間がかかってしまうことから、セレクトから外しました。
さらにスモーは3シーズンの登山での使用と考えると容量がオーバースペックなので、これもセレクトから外しました。
これら4つ以外のモデルにミニモとマイクロモがあります。
この2つのモデルの違いを見てみると価格差はミニモが1,000円高い、どちらもサーモレギュレーター、イグナイターが備わっている、出力は1,404kcal/hと同じ、大きく違うのは重量と形状で、ミニモは直径が12.7cmで高さが抑えめのデザインなので調理用に最適化されたモデルです。
僕がジェットボイルを使う時は主にお湯を沸かす時を想定していること、また装備の軽量化にも力を注ぎたいので、重量340gと軽量で0.8Lとちょうど良いサイズ感のマイクロモを選びました。
このように自分の登山シーンで何を重視するのか、また予算はいくらなのか、お湯を作ることが多いのか、または調理をすることが多いのかなどを検討して選ぶことで使い勝手の良いモデルを選ぶことができます。
マイクロモを少しアレンジ
軽量カップになるカバーは熱いものを入れると手で持てないし、活用することが少ないので、この部分にジップロックスクリューロックコジー473mlをシンデレラフィットさせています。
ジップロックスクリューロックコジー473mlにカップラーメン、アルファ米とフリーズドライのスープなどを入れて、そこにお湯を注いで食べることで、保温をした状態で食事ができます。カップラーメンやアルファ米などは、匂わない袋に入れて山に持って行き、その時の気分で食べたいものをスクリューロックコジーの中に入れて食べています。
ジェットボイルの軽量カップが32g。スクリューロックコジーが蓋なしで36g、蓋が18gです。蓋があると中に入れたものが冷めづらいので、蓋は持っていくようにしています。もしくはアストロフォイルをカットしたものを、ジェットボイルの蓋に合うようにカットして使用しても良いと思います。
ジップロックスクリューロックコジーではなくエバニューのチタン製400FDカップはよりシンデレラフィットします。エバニューのチタン製400FDカップにジェットボイルの蓋がばっちりフィットするほどで、クッカーが2つある状態になるので、チタンカップに直接火をつけて温めることができたりと利便性が高まります。
ちなみにチタンカップは49gです。