小さな火力で素早く沸騰させることができるクッキングシステム『ジェットボイル』。このクッキングシステムを使うメリットは、高い熱効率を発揮するフラックスリングにより早くお湯を沸かすことができるということです。通常のガスストーブはフラックスリングがないため、ジェットボイルと比較すると熱効率が劣ると考えられます。
ということはお湯が沸騰するまでに使用する燃料は、ガスストーブと比較するとジェットボイルは少ないと考えられます。
今回は通常のガスストーブとジェットボイルを比較した時に、消費燃料にどれだけ差があるのか?その数値から推測した時に登山装備の軽量化にどれだけインパクトを及ぼすことができるのかを検証していきたいと思います。
比較するガスストーブとクッカーのスペック

今回比較するガスストーブとクッカーは、登山装備を軽量化するために使用するSOTOのウィンドマスターとエバニューのTi 570 FD Cupをピックアップします。クッカーの素材はジェットボイルがアルミなのに対し、エバニューはチタンなので、フラックスリングによる熱効率を精度高く比較することはできませんが、今回の目的は消費燃料による登山装備の軽量化のインパクトをチェックする目的なので、あえてクッカーは軽量なものをピックアップしています。
ジェットボイルは平均的な機能と軽量なモデル「マイクロモ」を対象とします。
メーカー | ジェットボイル | SOTO&エバニュー |
モデル名 | マイクロモ | ウィンドマスター&Ti 570FD Cup |
容量 | 0.8L | 0.5L |
重量 | 約340g | ストーブ:67g(3本ゴトク) クッカー:78g(蓋付き) 風防:9g 合計:約154g |
出力 | 1,404kcal/h | 2,800kcal/h |
沸騰時間(0.5L) | 約2分20秒 | ? |
燃費(100g缶での湯量) | 12L | ? |
ガス消費量 | 約120g/h | ? |
レギュレータ機構 | あり | あり |
圧電点火装置(イグナイター) | あり | あり |
価格 | ¥24,200 | ストーブ:¥9,350 クッカー&蓋:¥5,390 合計::¥14,740 |
上の表はクッキングシステム化しているジェットボイルのマイクロモと比較するために、SOTOのウィンドマスターとエバニューのTi 570 FD Cupの合計数字も入れています。
重量はガスを抜いて、ジェットボイルのマイクロモが約340g、通常のガスストーブを使ったシステムでは約154g。その差は186gです。どちらも寒い場所や高所でも火力が落ちづらいレギュレーター機構が備わっています。
ガスストーブの比較検証方法と確認ポイント

ご自身が持っているクッキングシステムと比較しやすいように、今回テストする場所はあえて自宅のベランダにしました。気温は20度、無風環境で行っています。
水量は0.33L、常温で沸騰するまでの時間を測ります。

OD缶はそれぞれのメーカーのものを使用しています。最初にガス缶の重量を測り、沸騰した後に改めてガス缶の重量を測ります。その差を確認してガスの消費重量を確認します。ガス缶は充填ガス比率が異なるので、この差によっても沸騰するまでの時間が若干異なることが推測できますが、今までの経験から大きな差はないと推測しています。
OD缶に互換性があるか?と聞かれたら
ガスカートリッジの口金の形状は微妙に違いがあり、多少のガス漏れや危険性はあるが接続、使用は可能です。しかし、万が一事故が発生した場合は、保証を受けることは一切できないと考えましょう。だから他者に対し「使える」「使っても大丈夫」と言える事柄ではありません。
- ジェットボイル「JETPOWER100g」
- 重量:194g
- 内容量:100g
- 充填ガス比率:ブタン0|イソブタン80|プロパン20
- SOTO「パワーガス105トリプルミックス」
- 重量:192g
- 内容量:105g
- 充填ガス比率:ブタン35|イソブタン45|プロパン20
沸点が低いガスほど気化させやすく、低温化でも出力することができます。
- ブタン:-0.5度
- イソブタン:-11.7度
- プロパン:マイナス42.09度
上記のことから、ジェットボイルの方が、寒冷地向きのOD缶という立ち位置になります。
ちょっと話が外れましたがそれでは比較検証をしていきます。
比較検証

まずはじめにジェットボイルからスタートします。火をつけたら一気に最大火力にして沸騰するまでの時間を確認します。結果は1分37秒8。


ガス缶の重量を確認すると、最初の重量が199g、沸騰後の重量が195g、差は4gです。

次にSOTOのウィンドマスターとエバニューのTi 570 FD Cupの組み合わせを確認します。先ほどと同様火をつけたら一気に最大火力にして沸騰するまでの時間を確認します。結果は1分40秒。


ガス缶の重量を確認すると、最初の重量が132g、沸騰後の重量が124g、差は8gです。
沸騰時間においてはわずか2秒、ウィンドマスターの出力が2800kcalで、マイクロモが約1400kcalと考えるとジェットボイルのパフォーマンスの高さがわかります。
ガス缶の重量差は4g。日帰り登山でお湯を作る量が今回と同様0.33Lなのであれば、大した差がないので、軽量化を重視するならば、SOTOのウィンドマスターとエバニューのTi 570 FD Cupの組み合わせが良いです。
これが縦走登山だと、ジェットボイルはガスの減りが半分なので、お湯が沸くまでの時間は無風状態では大きな差はありませんでしたが、ガスの消費を抑えることができるので、小さなガス缶で長期縦走が可能になります。
ここからは新品のガス缶で何リットルのお湯を沸かすことができるか単純計算ですが、出してみました。
- ジェットボイル:330mlのお湯を作るのに使ったガス重量:4g=1.21g/100ml
- 通常のガスストーブ:330mlのお湯を作るのに使ったガス重量:8g=2.42g/100ml
例えば1泊2日の登山であれば
- 1日目の夜:500ml(アルファ米、フリーズドライスープ、暖かい飲み物を想定)
- 2日目の朝:600ml(アルファ米、フリーズドライスープ、暖かい飲み物を想定)
- 2日目の昼:200ml(アルファ米、暖かい飲み物を想定)
おおよそ1300mlのお湯を作るとします。そうするとガス重量は
- ジェットボイル:1.21×13=15.73g必要
- 通常のガスストーブ:2.42×13=31.46g必要
ジェットボイルであればガス缶は1つで充分。通常のガスストーブだとガス缶1つだと不安があります。
その場合、ガス缶を追加することになります。
- SOTO「パワーガス105トリプルミックス」を1つ追加:192g
- SOTO「パワーガス250トリプルミックス」に変更:385g
こうすると
ジェットボイルのマイクロモ約340g+「JETPOWER100g」194g=534g
ゴトク不要の場合は36g減るので、498gです。
通常のガスストーブを使ったシステム約154g+SOTO「パワーガス105トリプルミックス」192g×2=538g
通常のガスストーブを使ったシステム約154g+SOTO「パワーガス250トリプルミックス」385g=539g
となり、結果ガス缶を入れて重量を考えるとジェットボイルのマイクロモの方が軽量になります。このように考えると通常のガスストーブを使ったシステムで、どれだけのお湯を作る必要があるか事前に想定をし、ガス缶の予備もしくは大きなガス缶に変更する想定がなされる場合はジェットボイルセレクトした方が、お湯を作る時間も風が強い場所だと短くなるので、様々な点でリスクが少なくなります。
ということで僕は1泊以上の縦走登山の場合は、ジェットボイルを持って行くことも想定に入れて装備を考えます。
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