こんにちわ。
たかくら(@takakura3twi)です。
今回は、ニュージーランドを縦断する3,000㎞のロングトレイル「テアラロア」を歩くときのリスク、心構えと注意点に関する記事です。毎年負傷者や遭難事態が発生しています。歩かれる方は是非ご一読ください。
※テアラロアについてはコチラ→「ニュージーランドを1000%楽しむ!ロングトレイル、テアラロアを解剖!」
テアラロアのリスク
テアラロアはニュージーランド全体を歩くこと。ニュージーランドは国全体が自然に恵まれています。いろんな自然環境と対峙することになります。延々と続く白浜のビーチ、緑豊かな原生林、膝まで沈む泥森、神秘的な火山地帯と、スイスアルプスを思わせる美しい湖を抱いた山々。地球の箱庭と呼ばれるにふさわしいバラエティ豊かな環境。だからこそ、いろんな危険があります。
ざっと考えられるリスクを、経験したもの含めて挙げてみます。
太陽系・気候系
- 熱中症、日焼け(やけど)、皮膚がん
- 低体温症
- 花粉症(多分牧草系、1月上旬から下旬くらい)
実力不足系・判断ミス系
- 遭難
- 渡渉
- 転覆(カナディアン・カヌーセクション)
植物系
- スピアーグラス(トゲトゲの植物、流血する)
- ゴース(トゲトゲの植物、ウェアが破ける)
- ツツ(猛毒)
- オンガオンガ
- ブッシュロイヤー
動物系・虫系
- サンドフライ
- ポッサム
- ウェカ
- キア
- マウス(時々ラット)
- 蜂/ウォスプ
- 牛
- 鶏
- キナのトゲ
- オイスターの殻
人災系
- 車道
- ヒッチハイク
- 盗難
自然災害系
- 山火事
- 洪水
- 滑落
- 雪崩
- 落石
- 強風
- 砂塵
- 落雷
不衛生原因系
- 虫歯
- 口内炎
- 陰部の病気
- ジャーディア(ジアルジア)
- マメ(ブリスター)
・・・書いてみたら「ロングトレイルほんとに楽しいのかよ」ってくらい挙げてしまいました。ちゃんとこの辺りのリスクを知ってトライすれば大丈夫だと思います。上から順に紹介します。
太陽系・気候系
まずは太陽系。熱中症。ニュージーランドの夏の太陽の強さは半端ではありません。暑い。トレイル上に日陰がまったくないこともザラ。最近山歩きの世界でも日傘が見直されてきていますが、意外にテアラロアでは日傘ユーザーは少なかったように思います。会った人でも一人だけ。私も日傘持っていきましたが、結局全然使わずに、前半800kmほど進んだところで、荷物から外しました。
日焼けも大きな問題。アウトドアをすればするほど、太陽の恩恵と忌々しさ(!)を痛感。日焼けは軽度のやけどであり、体力を急激に消耗する原因となります。日焼け止めは必須ですし、太陽が強い日はなるべく皮膚を露出しないような工夫も欠かせません。私の場合は「道具学 ウェア版」でもお伝えしたようにアームカバーとレッグカバーが大活躍しました。ニュージーランドの紫外線は日本の7倍強いといわれています。皮膚がんになる人も多い。死ぬまで健やかにアウトドアで遊び続けるためには太陽の怖さとその対処方法も知っておくべきです。
低体温症は恐ろしいです。最も気をつけるべきでしょう。自分の体温としっかり向き合うことで健康を維持できると思います。体温を正しく保つ。この意識は常に持っておきましょう。
牧草地帯も多いので花粉もそれなりに飛んでいます。花粉症です。1月上旬から中旬にかけて牧場エリアを通るときは症状が凄まじかった。ツラかった…。ひどい花粉症なので避けたかったのですが、無理でした。やはり、花粉のない国などどこにもないですね。ニュージーランドでも花粉症の薬は購入できます。絶対に必要でした。花粉症は英語でHay feverといいます。
実力不足系・判断ミス系
テアラロアのトレイル上には迷いやすい箇所がいくつかあります。大体うっそうとした森です。何枚か「どこがトレイルやねん」という写真があるのでご覧ください。
こういった「どこがトレイルやねんこれ、頭お●●いんちゃうかーーー」というようなところが時々あります。大体、森です。気をつけましょう。こういうところで、道迷いが出たりします。ありのままタラルア山脈で起こったことを打ち明けますと、「SOBOのつもりがNOBOになっていた(南に歩いていたつもりが北向きに歩いていた)」ということもありました。何を言っているのかわからないかもしれません。頭がどうにかなりそうでした。ニュージーランドの深山の恐ろしさの片鱗を味わった瞬間でした。
次に渡渉、川を渡るところでの事故です。
雨によって川が激流になることがあります。特に南島。気をつけましょう。南島は特に山が険しくその分川が細いところが多いです。雨が降ると急激に水位が上がりやすいということ。天気は安全管理のために最も大切な要素です。北島では潮合わせをして干潮時に渡るしかない場所もいくつかあります。南島で増水した川で足止めを喰らったときの映像はこちら。
カナディアン・カヌーのセクションがあります。ここでは転覆の可能性のある瀬がいくつかありますので、気をつけましょう。
転覆しても超楽しそうな(体が投げ出されても船がひっくり返らなければ問題なし)パーミーボーイズの三人。底抜けに明るい彼らのメンタリティ。多くのことを学ばせてもらいました。
植物系
トゲの強烈な植物がいくつかあります。スピアーグラスは写真右のもので、誤って手をついたり足が触れると、槍で刺されたように痛い!血が出ます。気をつけましょう。
ゴースという植物もトゲトゲです。トゲトゲでこいつも痛い。時々藪漕ぎならぬ「ゴース漕ぎ」が必要になるのですが、傷だらけになります。腫れてかゆいので、面倒臭がらずにレインウェア着て保護すればよかったです。みなさんはレインウェア着てください。
ほかにTutuという猛毒の植物があります。見慣れない実は食べないこと。オンガオンガとブッシュロイヤーというのも危ないそうです。写真撮影はできなかったのですが、気をつけましょう。
動物系・虫系
荒野は痒い。そう、サンドフライです。気をつけてください。Bushmanなどディートの入った忌避剤もいいですが、一番有効なのは肌を露出しないこと。アームカバー、レッグカバーはサンドフライ除けとしても非常に有効でした。ウインドブレイカーのフードもありがたかったです。
ウェカという盗みの得意な鳥がいます。サングラスを持っていかれました。ウェカの気配を感じたら、ものはしっかり確保!やっぱり整理整頓って大切ですね。
ポッサム。食欲旺盛ないたずら野郎です。疲労困憊でテント内を整理せずに倒れるように寝た次の日、テントが食い破られて食糧をかじられていました。しかもその穴からサンドフライが無限に侵入してくるというニュージーランド・コンボを喰らいました。大反省です。
次にネズミ系。マウスはネズミ、ラットは大ネズミ、かな?笑
ネズミは食糧を漁りにきます。食糧は就寝時は吊り下げておきましょう。特に古いハット(山小屋)では。水のタンクの中でラットが死んでたときなんかは絶望的でした。
ほかに蜂刺されもありえますし、牛が迫ってくることもありますし、鶏が食糧を奪いに来ることもあります。ウニのトゲが刺さったり、牡蠣をとっていて皮膚を切ったりしたのは自業自得ですが海の幸好きな人は気をつけてください。
気をつけてください。
人災系
基本的には治安の良い国ですが、やっぱりいろんな人がいますので気をつけましょう。ニュージーランドの公道は時速100km制限のところが多く、その脇の道を歩くときなんかは重々気をつけてください。またヒッチハイク・リンチ事件なんかも起きないわけではないので、ヒッチハイクも気をつけましょう。
盗難も起こりえます。ウィルダネスではあまり聞きません。街です。都会です。怖いです。ウォール・チャージャーとモバイルバッテリーは盗まれると致命的なので、気をつけましょう。
という内容で記事を書いていたら日本の山でテントの盗難事件が連発しているとか。気をつけましょう。
自然災害系
山火事はどこでも起こりえます。私が遭遇したところでは、ネルソンあたりとキャッスルヒルあたり。巻き込まれないこと、起こさないこと。
ガレ場や雪面は滑落に注意しましょう。時期が違えば雪崩も注意事項となります。落石も怖いですね。
落石にも要注意。落とさないことも大切です。
風が最も厄介な天候要素かもしれません。この風は翌日も続き、砂塵被害でいろんなギアがダメージを受けました。おそらく、身体も・・・。
落雷、日本ほど起きませんが、天気怪しいときは気をつけましょう。
不衛生原因系
水の衛生管理はとても大切です。ソーヤーユーザーがほとんどでした。カタダインのもいいですね。
基本的にTAハイカーの足は濡れています。ずぶずぶ。そのため皮膚がふやけてストレスが集中するとマメができることがあります。痛いので、いい絆創膏みたいなやつは持っておいたほうがいいです。
なんといっても、山の旅ですので体力勝負的なところはあります。
アップダウンの非常に厳しい山域では、自分の体調や体力と相談して安全第一で歩を進めることが本当に大切。ロングトレイルは自分自身と向き合う時間とよくいわれますが、身体的に向き合わざるを得ないと言ったそんな側面のほうが強い気がします。
体力をゼロまで使い切ってなおフラフラの状態で進むと、怪我に繋がります。私は絶対に怪我をしたくなかったので、その日を終えるときは最低でもHPが5くらいは残るようにコントロールしていました。
ハイカー仲間で知っている限り、
- 小指の骨折でリタイヤ
- 転倒→鼻骨骨折
- 森で行方不明(遭難)
辺りが発生しました。
健康管理。日常生活はもとより、海外ロングトレイルの場合は、最優先事項になります。
- 長寝より早寝(夜ふかししない)
- 翌日の準備をして寝る(しっかり眠れる)
- 歯磨きは毎食後しっかり(歯のトラブル絶対に避ける)
- おしりはしっかり拭く(前も後ろも)
今振り返ってみると、全部これらは母上の教え。お母さんはロングトレイルの過ごし方を教えてくれていたんですね。ありがとうございます。
ちなみに、トレイル中はほとんどの日を太陽のリズムに合わせて生活しましたが、これはとても健やかだと感じました。
ニュージーランドで遊ぶ。心構えと注意点
テアラロアに限らず、ニュージーランドでアウトドアするときの心構えと注意点を記しておきたいと思います。
- 病気を持ち込まない!拡げない!
- ダメゼッタイ!不法侵入!ステルスキャンプおすすめしません
- トレイルに敬意を!トレイルを無闇に拡げない!
- ゴミを正しく処理しよう!
ニュージーランドはどの大陸からも遠く離れた地球の孤島であり、それ故独特な自然環境が生まれ、残ってきています。繊細な環境はいともたやすく壊れます。入国時のBIO SECURITY検査は厳しいです。ギアは洗浄してくるか、新しいものを準備しましょう。ちなみに私は既に持ってるギアはボロボロだったので多くを新調しました。五ヶ月でまたボロボロになりました。修理の連続です。
過去に、不法侵入がありルート変更が行われた場所があります。テアラロアのトレイルには個人所有の土地も含まれます。敬意と感謝を持って歩きたいものです。不法侵入ダメゼッタイ!ステルスキャンプもおすすめしません。
思わず左右の森を切り開きたくなるような泥の道。でもトレイルを無闇に拡げるのはよくありません。泥の中に、無数のTAハイカーの足跡…皆ここを通ってるんだ…ヌチャ、グチャア〜。楽しいですよほんと。
私達は生きている限り「ノーインパクト」は不可能です。
できることは「できるだけローインパクト」。
ゴミをなるべく出さないように努めたり、出たゴミ小さくまとめて正確に分別し、適切に廃棄する。
アウトドアに深く関わり続けていると環境の変化に敏感になります。アウトドアは楽しく素晴らしいものですが、良い自然環境あってこそ。持続可能性を意識して、道徳をもってアウトドアで楽しんでいきたいものです。
テアラロアイングリッシュ
●River crossing is not something that you challenge yourself, but something you must stay rational.
●Play safe, your longtrail continues until you come back home.
●There should not be tramping without morality.
おっと。
最後に、もうひとつ。リスクを書き忘れていました。
ひとたびロングトレイルの門をくぐってしまったら、
フツーの生活には戻れません。
気をつけてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
※追記(20190914)
facebookで本記事をシェアしましたところ、現地ガイドの方より有益な追加すべき情報をいただきましたので追記します。
リスク追加
・倒木
・ノロウイルス
NZの南極ブナは風で倒れたり、枝が折れたりしやすい。大木が倒れる瞬間に立ち会ったり、すぐ頭上で枝が落ちてくることに遭遇することもある。他のアクシデントに比べても遭遇する確率は高いので、天気の悪い日は停滞するなどの対応が必要。自分も嵐の森でビバークしたとき枝がテントに落ちてきたのを経験したことがあります。
ノロウイルスは数年前にネルソンレイクス国立公園のTA区間で問題になった。リッチモンドレンジの一部のハットやブルーレイクハットで過去のシーズン中に発生したことも聞いた。患者とトイレを共用しないといけない+感染した人が移動するので、根絶するのは大変。難しい問題ですね、アルコール消毒ジェルを使っているハイカーもいました。
以上追記でした。