ロングトレイルとの出会い『出会い編』、実際に歩いた感想を綴った『実践編』につづいて最後になる今回は装備編です。
ロングトレイルって調べると「ウルトラライトな装備」ってセットで出てくるんですね。だから「私の装備の重量はどうなんだろう」と思って、持っていく装備をリストアップして重さをそれぞれ量り総重量をチェックしてみたんです。そうすると重い道具が解ってきて「軽い別のものを買わなくちゃ!」って考えるんですね。例えば私が持っていたストーブはガス式のものだったので重量がある程度あって「より軽くと考えるとアルコールストーブかな」って買い替えを検討するんです。
そうしてウルトラライトの装備を購入しようとアウトドアショップに出かけて、ロングトレイルについて質問をしたんです。お店の方はロングトレイルを多くされている方で、投げかけた質問に真摯に答えてもらえました。私が軽量な装備の購入検討をしている事に彼は「ウルトラライトな道具っていうのも大切だけど、1番は使い慣れている道具を使うっていう事が大事だし、道具を買うお金があるんだったら、現地で楽しむ為に使った方がいいよ」って助言してくれたんです。
それを聞いて安心して、それでもこれは必要だろうというものは買おうと思ったんです。例えばアメリカのトレイルでは、汚れた衣類を湖や川に直接入れて洗っちゃいけない。だからバケツに水を汲んできて何メートルか離れたところで洗濯をするんです。その為に軽く折りたためるバケツを買わなくちゃって思ったんですけど、その彼は「それは買わなくていいから、これを使いなよ」って言ってくれたものが、プラティパスの底を半分切ったようなものだったんです。おそらく商品ではなくて自作で作られたようなものだったと思うんですけど、それが凄く役に立ちましたね。
ロングトレイルに行くことになって、こういう経験をしていると「買う」っていう事だけじゃなくて、「考えて自分で作って代用する」ことで、より便利になることだってあるんだなっていう気付きをもらえました。
私がアメリカに持っていったものは日本の登山で普段から愛用しているものを持っていきました。バックパックは75Lでそのものが2キロ弱という重量もあるものだったんですけど、「バックパックだけウルトラライト用のものに変えても中身が重いままだったら意味がないし、背負いなれていないバックパックよりも、重たいけどしっかりその分ホールドもしてくれる今持っているザックの方がいいんじゃない?」って後押しされて、ほぼ全てが普段から山で使っているものを持って行く事になったんです。
重さは平均して15キロで、食料や水を省いた重さが12キロ弱でした。途中で重たいのが嫌で山小屋の中に必要のないものを置いていけるスペースがあるんですけど、私はサングラスと幾つか細かいものを置いていきました。ここに置いていくと後から立ち寄った人が、必要と思えば持っていく事ができるというものなんです。
実際に現地を歩いていると、日本で言うほどウルトラライトな道具を持ち歩いている人は多くないんですね。私と同じような大きなザックを背負って歩いている人も多く見かけたので励まされました。すれ違った大学生らしい日本人の人はゼロポイントの100Lザックをパンパンに膨らませて歩いていて、「すごいなあ!」なんて感嘆したことを思い出します。(笑)
荷物が重いことによるストレスと、重い道具から得られる安心感や快適。この2つのせめぎあいが難しいところだなあと感じました。例えば夜、暗くなるにつれて少しでも音がすると熊かな?というように不安が押し寄せるんですけど、テントの中に入ると自分だけの空間を感じ取ることができるので、安心感を得ることが出来たんです。
だから初日から寝ることが出来たし、長い旅の中で休まる空間は歩ける元気を作るということを考えると、私にとってはテントはとっても大切な道具だったと感じることが出来たんです。だからロングトレイルを楽しむ中で何を大事にするか、どういう楽しみ方をしたいかで、ウルトラライトな道具があっているのか?そこにこだわる必要がないのかを吟味すべきだなあと実感しました。
気をつけたほうがいいこと、それによって必要な装備についてのおおよそは書籍やネットで情報収集できます。例えばウェルダネスで流れる水はそのままでは飲めないから浄水器は必要だよとか、あるいは季節によっては蚊が多いから蚊除けのネットがあるといいよとか、ロングトレイルならではの装備ですよね。
それでもやっぱり、「これは自分で考えて持ってきておいて良かった」とか「もっと多く必要だった」といった気付きもトレイルを歩いて初めてわかる事も多くありました。
1つは保湿クリームが本当に重宝しました。
重さも気にしながら、使うだろうと思われる量を考えて持って行ったんですけど凄く助かりました。ジョンミューアトレイルは、ほぼ毎日すごく天気が良くて、カラッとしてるんです。そうすると基本的に乾燥していて且つ砂埃が凄いんですね。だから体中砂まみれになっちゃうんです。
そうすると手も顔もカサカサになって真っ黒になちゃっうんです。現地でみかけた日本人の方で保湿クリームを持っていなかったようで、唇が割れちゃってそこが膿んじゃってめちゃくちゃ痛そうにしてました。手にも唇にも顔にも別々の保湿クリームなんて言ってられないので、全てに応用よく使えるクリームがおすすめですね。私はニベアのクリームを持っていきました。ニベアだったらアメリカにも売ってるし、最悪なくなってしまったら同じものを買い足せるしと思ってこれを選びました。
もう1つは日焼け止めです。1つしか持っていかず、結果足りなくなって買い足すことになったんです。アメリカの日焼け止めって日本のものと全然ちがう。これ塗った方が体に悪いんじゃないか?と思ってしまうような液体のもので、全てがそうだとは思いませんが、私が手にとったものは怖い代物だったんです。(笑)
日本の日焼け止めは優秀だなあと思います。伸びもいいし、塗れば保湿もされるし。仕方なくこの怖いアメリカ製の日焼け止めを塗ってたんですけど、心に痛い不安な思いをしましたね。(笑)
最後に、これは人それぞれだと思いますが、着るものにボタンダウンのシャツを選んだ事です。ボタンダウンのシャツっていかにも山の人っていう印象があって、ちょっと前までは格好悪いなあなんて思って敬遠してたんです。そんな中、今回ジョンミューアトレイルに行くことになって、気温については昼間暑くて夜は寒いっていう事は聞いていたんです。その時改めて「ウェアリングで1番いいのってなんだろう?」って考えたんです。
考え易いところとして、ベースレイヤーに長袖のTシャツ着て上にTシャツを重ねるとか、Tシャツ着て寒くなれば薄手のウインドブレーカーを重ねるとかだと思うんですけど、暑がりな私にとってみるとTシャツスタイルにすぐなれて、更に日焼けも出来るだけ防ぎたいと思ったときにシャツって意外といいんじゃないか?って思ったんです。
ウインドブレーカーの場合、腕まくりをしていると落ちてくることがあったり、汗をかいたらペタペタするのが気になったんですけど、対するシャツは腕まくりが簡単だし、化繊もののシャツであれば肌触りもサラサラしていて汗をかいても直ぐに乾いてくれるし不快感が少ないだろうと算段したんです。
着てみた感想としてはシャツって体温調節が凄くラクチンだったんです。ボタンの開け閉めで好きな場所に空気を送りこむことが出来るから、暑がりだけどずっとこれを着続けて快適でした。日が落ちてきて上にウェアを羽織るときにも干渉するものもなく快適に感じました。汗を吸ってくれて乾きも早く躊躇なく洗えるところも凄く良かったです。
ジョンミューアトレイルって高い山に囲まれたトレイルを歩くので、火が照る時間が少ないんです。だからテントを張って着替えて、濡れたものを乾かすってなると意外と時間が短いんです。そんな環境の中でもシャツにおいては次の日に着るときには乾いてくれているんですね。
実際に海外トレッキングに行ってみたい、でも1か月も休みが取れない…という人でも、セクションハイクという楽しみ方もあるんです。これは10日休みがあった場合に日本から出発する日から10日間で歩けるコースで、途中バスを利用しながらデイハイクの観光もしつつ、3泊4日でアメリカの大自然をトレッキングすることができるというプランなんです。日本でも近年、ロングトレイル文化が浸透し始めてきて日本各地でロングトレイルが整備されてきているので、色々な楽しみ方を模索してみるのもいいかもしれないですね。
第1回:初めてのロングトレイル『ジョンミューアトレイル ~出会い編~』
第2回:初めてのロングトレイル『ジョンミューアトレイル ~実践編~』
第3回:初めてのロングトレイル『ジョンミューアトレイル ~装備編~』