このピッケルはグリベルのもので、大学1年生の時から使っています。元々の歯は今よりも3、4センチ長かったんですが、削りすぎて短くなちゃいました。4年間の学生生活で年間100日間は山に入るんですね。その中で合宿制度っていうのがあるんですが、これが5回あるんです。
ピッケルを綺麗に削る習わし
その合宿中、都度ピッケルは綺麗に削らなくちゃいけなくて、削ったら先輩に見せなくちゃいけないんです。尖ってなければ「やりなおし、もう1回削って来い」と言われてしまいます。はじめは良くわかりませんでしたが、山に入ってなんであんなに先輩がしつこく削れと言ったのか理解できました。それは、過酷な山で適当に削ったピッケルでは、いざという時に使えなくなるのだと知ったのです。それからは、合宿ごとにピッケルを削りましたが、気づいたら3、4センチは短くなっていました。
学生の時は冬山が集大成というイメージで、1~3年生が剣岳周辺で4年生の時にデナリに行きました。この冬山に登る為に、3シーズンは合宿をしてトレーニングをし、体力をつける。だから合宿の名前も「冬山決算合宿」なんていうネーミングでした。山岳部としてのゴールが厳冬期の山なんです。
大学山岳部の世界
どこの山岳部もそうかというと疑問ですし、今もそうかというとまた違うんですね。昔はしきたりが強くあった厳しい世界だったんですが、今の山岳部を見るとフリーというかユルイというか、よく言えば自由に登れるようになった感じがありますね。悪くいうと学べる部分が限られてしまっていて、強い人はどんどん強くなれるけど、やってみたい人や知らない人は、教える基盤が無くなっちゃってる状態で取り残されちゃう事もあるんじゃないかと思います。
僕がいた明治大学の山岳部は組織登山といわれていて、ベースを作ってみんな同時進行でレベル上げをするので、入部して続けることができれば、みんな日本国内の厳冬期の山は入れるようにスキル、体力を持ち上げる、そういう体制でした。でもとても厳しく、時間も不定期なので、僕が入部した時には5名いたんですが、残ったのは僕1人でした。(笑)
大学山岳部で経験した登山スタイル
僕の登山スタイルは、この大学の頃がベースになっているので1日を使って登って帰ってくるという山行ではなく、山をつなげていく所謂縦走を多くしていて、多くはバリエーションルートといって人があまり入らないところに入っていく事が多いんです。登攀もするし、壁も登るしっていう事をやります。これから目指したい事、その為にやるべきことっていう未来も設計しています。この話はまたさせてもらいます。