登山用レインジャケットを購入する際、ゴアテックス製品が良いのか、メーカーオリジナルの防水透湿素材が良いのか頭を悩ませます。もっともよく知られている防水透湿素材はゴアテックスですが、各メーカーが開発する独自の防水透湿素材とどのような違いがあるのか比較をし、レインウェアを購入する際の選び方を紹介します。
防水透湿素材とは
防水透湿素材とは読んで字の如く、防水をしつつ内部に溜まった湿気は外に排出する性質を持った素材の事を言います。
湿気の分子1つの大きさは約0.0004μm(1㎜の1000万分の1)、水の分子は100μmで、 水は湿気の100万倍の大きさです。
水の分子は通さないけど、湿気を通すことができるサイズの細かな穴が防水透湿素材には備わっています。
レインジャケットを購入する際、耐水圧〇〇mm以上、透湿性〇〇g/m²という数字で防水透湿素材のスペックを表すことができます。この数字が大きいと性能が高いことを意味します。主に透湿性試験(JIS L 1099)を行い、その結果出た数値となっています。
防水透湿素材を深掘り-耐水圧について知る
耐水圧については、以下の説明が多く見受けられます。
- 20,000mm --- 嵐
- 10,000mm --- 大雨
- 2,000mm --- 中雨
- 300mm --- 小雨
一般的な傘の耐水圧は500mm程度と言われています。
登山では雨で濡れると命に関わるため20,000mm以上が必要と言われています。日帰り登山で低山に出かけるならば10,000mmあれば十分と考えることもできるでしょう。
防水透湿素材を深掘り-透湿性について知る
透湿性については数値が高いほど蒸れが生じづらいと考えがちですが、レインウェアの内側と外側の湿度に違いがなければ湿気は移動しません。また生地に備わった透湿性能ばかりを重視するのではなく、ピットジップ(脇に備わった湿気を排出するジッパー)のありなし、ポケット内のメッシュ素材によるベンチレーションのありなしなど、見るべきポイントを抑えておくことは重要です。
登山では多くの汗をかきやすい運動量であることを想定して10,000g/㎡・24hrs以上の防水透湿素材がおすすめとされています。
主要な防水透湿素材を比較してみよう
ゴアテックスを始めとした主要な防水透湿素材を比較してそれぞれの特徴について理解を深めていきましょう。
残念ながらすべての防水透湿素材が上で紹介した耐水圧や透湿性能を明らかにしておらず、不明瞭な部分もあるため、その場合は、これらのスペック以外の特徴をチェックして自分の登山スタイルに合っているか検討することが重要になります。
※横スクロールで表がスクロールできます。防水透湿素材 | ゴアテックス3レイヤー | ゴアテックス2レイヤー | H2No | ドライテック | エバーブレス | FUTURE LIGHT | Hyvent | TYPHON 50000 | ベルグテック | ブリザテック |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
メーカー | -- | -- | パタゴニア | モンベル | ファイントラック | ザ・ノース・フェイス | ザ・ノース・フェイス | ミレー | ミズノ | 東レ |
耐水圧 | 45,000mm以上 | 30,000mm以上 | 20,000mm | 25,000mm | 20,000mm | 非公開 | 非公開 | 20,000mm | 30,000mm以上 | 10,000mm |
透湿性能(/㎡・24hrs) | 13,500g以上 | 15,000g | 非公開 | 15,000g | 10,000g | 非公開 | 非公開 | 50,000g | 16,000g | 7,500g |
引用サイト | https://www.naturum.co.jp/hajimeyo/rain_n/1sho.asp | https://www.naturum.co.jp/hajimeyo/rain_n/1sho.asp | https://www.patagonia.jp/our-footprint/h2no-performance-standard.html | https://webshop.montbell.jp/material/aboutmaterial/ | https://www.finetrack.com/products/l5-outershell/ | https://www.goldwin.co.jp/store/ec/contents/tnf_functionlist.html | https://www.goldwin.co.jp/store/ec/contents/tnf_functionlist.html | https://www.millet.jp/typhon/ | https://jpn.mizuno.com/bergtechex/philosophy | http://www.t-sincol.co.jp/product/breathatec.html |
ゴアテックス
ゴアテックスはメーカーオリジナルの防水糖質素材と比較しても耐水圧の高さが光ります。しかしながら糖質性能はモンベルのドライテックやミレーのティフォンなどと比較すると、決して高い数値とは言えません。
登山で必要な耐水圧20,000mm以上を考えると、45,000mm以上も必要なのか?と考えてしまいますが、それだけ耐候性に優れた防水糖質素材といえます。
防水透湿素材 | ゴアテックス3レイヤー | ゴアテックス2レイヤー |
メーカー | -- | -- |
耐水圧 | 45,000mm以上 | 30,000mm以上 |
透湿性能(/㎡・24hrs) | 13,500g以上 | 15,000g |
ゴアテックスのおすすめポイント
- ハードな条件下で安心のクオリティを求めることができる
- 様々な登山家がゴアテックス製のレインウェア、ハードシェルを着用し実証されている
- アクティビティに即して3層・2.5層・2層構造から選ぶことができる
ゴアテックス製のおすすめレインウェア
アルパイン登山に適したレインウェア『パタゴニア カルサイト・ジャケット』
75デニールの安心感があるゴアテックス・パックライトプラスを採用したレインジャケットです。冷たい雨にたたかれることが予想される縦走登山にも、耐候性と保温性に優れた機能の充実で安心した登山を楽しめます。
ヘルメットの着用時にも被ることができるフードなので岩稜帯の多い登山でも安心して使用でき、ベンチレーションを備えているので、体温調整も容易に行えます。
素材 | 75D-ゴアテックスパックライト |
重量 | 411g(Mサイズ) |
ピットジップ | ◯ |
ヘルメット対応フード | ◯ |
軽量且つ登山者に大人気のレインウェア『モンベル ストームクルーザー ジャケット』
レインダンサージャケットとの大きな違いは20デニールの生地厚みによる軽量性と、C-KNITバッカーを採用した着心地の良さです。ストームクルーザーは夏山登山など汗をかくシーンの多いレインジャケットに適しています。
素材 | 20D-C-KNITバッカー採用の3層構造 |
重量 | 約254g |
ピットジップ | ✕ |
ヘルメット対応フード | ✕ |
初心者も安心な作りが魅力のレインウェア『アークテリクス BETA LTジャケット』
軽量でミニマルなデザインの中に、ピットジップとハンドポケット、ヘルメットフード対応機能を備えたレインジャケットです。視界を遮ることのない立体的なフードにより、雨の日の登山も安心して行動することができます。
素材 | 40D-トリコットバッカー採用の3層構造 |
重量 | 約395g(Lサイズ) |
ピットジップ | ◯ |
ヘルメット対応フード | ◯ |
H2No-パタゴニア
登山で必要な20,000mmの耐水圧を備えた防水透湿素材です。残念ながら糖質性は非公開です。この素材を使用したレインウェアは当然ながらパタゴニア製品のみで、普段使いがしやすいデザイン仕上げています。
防水透湿素材 | H2No |
メーカー | パタゴニア |
耐水圧 | 20,000mm |
透湿性能(/㎡・24hrs) | 非公開 |
H2Noのおすすめポイント
- 優れたデザインに落とし込んだレインジャケット
- アクティビティに即して3層・2.5層構造から選ぶことができる
- 登山、スキー、トレイルラン用で特徴あるデザインで解りやすい
H2No製のおすすめレインウェア
最も軽量な20デニールで仕上げたレインジャケット『ストーム10・ジャケット』
登山シーンにおすすめのレインジャケットの中で最も軽量な20デニールで仕上げたレインジャケットです。
ヘルメットの着用時にも被ることができるフード、ポケットは3つ、袖口のテープ留め、フードと裾はドローコード付き、3層構造の生地と、耐候性能もバッチリなレインジャケットです。
商品名 | ストーム10・ジャケット |
価格 | ¥41,800 |
重量(M) | 235g |
素材 | H2No |
構造 | 3層 |
デニール | 20D |
パッカブル | ◯ |
フード調整 | ◯ |
ヘルメット対応フード | ◯ |
ベンチレーション | ✕ |
ポケット数 | 3 |
おすすめシーン | 登山 |
最も価格を抑えたモデル『トレントシェル3L・ジャケット』
パタゴニアのレインジャケットの中で最も価格を抑えたモデルですが、耐候性に優れ、50デニールの保温性を備えた汎用性の高いレインジャケットに仕上がっています。
ベンチレーションによる通気性確保、パッカブルできるコンパクト性能を備え、フードを使用しない時にはフックで止めてジャケットのような使用も出来る特徴を備えています。
商品名 | トレントシェル3L・ジャケット |
価格 | ¥22,000 |
重量(M) | 394g |
素材 | H2No |
構造 | 3層 |
デニール | 50D |
パッカブル | ◯ |
フード調整 | ◯ |
ヘルメット対応フード | ✕ |
ベンチレーション | ◯ |
ポケット数 | 2 |
おすすめシーン | 登山 |
ドライテック-モンベル
非常にコストパフォーマンスに優れたモンベル独自の防水糖質素材です。価格が安くとも耐水圧と糖質性能は非常に優れており、多くの登山者が活用していることもうなずけます。ドライテックにはストレッチドライテックと呼ばれる、ストレッチ性能がある防水糖質素材があり、耐水圧・糖質性能は変わらず運動量の多い場面で活躍する素材です。
防水透湿素材 | ドライテック |
メーカー | モンベル |
耐水圧 | 25,000mm |
透湿性能(/㎡・24hrs) | 15,000g |
ドライテックのおすすめポイント
- コストパフォーマンスに優れている
- アクティビティに即して3層・2層構造から選ぶことができる
- ストレッチ ドライテックは運動量の多いアクティビティに最適
ドライテック製のおすすめレインウェア
初心者登山者におすすめのレインウェア『サンダーパス』
モンベル独自の防水透湿性素材ドライテックを使用した初心者登山者にもおすすめのレインウェアです。3レイヤーのため耐候性と耐久性にも優れており、低山登山におすすめのエントリーモデルです。
おすすめの登山シーン:3シーズンの低山登山
エバーブレス-ファイントラック
高いストレッチ性による動きやすさが特徴の防水糖質素材です。パンツに置いては足上げがしやすく、ジャケットに置いては腕を上げるなど大きな動きに追従する特徴があり、このストレッチ性によってスリムシルエットに仕上げることができ、風邪にバタつきにくい特徴あるレインウェアに仕上げています。
防水透湿素材 | エバーブレス |
メーカー | ファイントラック |
耐水圧 | 20,000mm |
透湿性能(/㎡・24hrs) | 10,000g |
エバーブレスおすすめポイント
- 高いストレッチ性による動きやすさ
- 動きやすいことによるスリムシルエットのデザイン
- 加水分解による劣化が発生しにくい
エバーブレス製のおすすめレインウェア
異次元ストレッチを備える『エバーブレスフォトンジャケット』
着心地の良さを高めるために新たなパターン設計を取り入れ、よりスムーズな腕の動きを実現しています。フードのフィット性、バタつきやモタつきを抑えるスリムデザイン、大型の収納ポケットなど登山以外にも使いやすく着心地に優れたレインジャケット
FUTURE LIGHT-ザ・ノース・フェイス
耐水圧も糖質性能も非公開なため比較がしにくいですが、独自のボンディング技術(異なる2つの生地を接着する技術)による、薄い素材に仕立て上げ、さらにストレッチ性があるためハードなアクティビティで活躍するレインウェアに仕上げることができる素材です。レインウェアを見る限り、非常に高い糖質性能を備えているように考えられます。
防水透湿素材 | FUTURE LIGHT |
メーカー | ザ・ノース・フェイス |
耐水圧 | 非公開 |
透湿性能(/㎡・24hrs) | 非公開 |
FUTURE LIGHTおすすめポイント
- しなやかな素材で動きやすい
- ストレッチ性による動きやすさ
- ハードなアクティビティに合わせやすい素材
FUTURE LIGHT製のおすすめレインウェア
コストパフォーマンスに優れたレインジャケット『フューチャーライトドリズルジャケット』
コストパフォーマンスに優れたFUTURELIGHT素材を使用した通気性に優れたレインジャケットです。75デニールのハリのある素材で、冷たい雨風から身を守ってくれます。
Hyvent-ザ・ノース・フェイス
Hyventには、いくつかの種類があり、Hyvent ALPHA、Hyvent ALPHA Eco、Hyvent-D、Hyvent 3D、Hyvent 3DT、Hyvent FLASH DRYと展開が様々です。それぞれに構造とストレッチ性のありなし等の違いがあり、ザ・ノース・フェイスではアクティビティによって素材を使い分け、特徴あるレインウェアに仕上げています。
防水透湿素材 | Hyvent |
メーカー | ザ・ノース・フェイス |
耐水圧 | 非公開 |
透湿性能(/㎡・24hrs) | 非公開 |
Hyventおすすめポイント
- 様々な種類を使い分けた特徴あるデザインに仕上げることができる
- 構造の違いが様々で、ゴアテックスのように好みによってレインウェアを選ぶことができる
- 登山だけでなく普段使いがしやすい特徴がある
ベルグテック-ミレー
非常に高い糖質性能を持つ防水透湿素材で、さらに動きやすいストレッチ性能があるためハードなアクティビティで快適性を求めるユーザーにおすすめです。ミレーならではのスリムなシルエットと立体裁断でゴワゴワしたイメージがなく、足上げ、腕上げが快適なレインウェアに仕立てています。
防水透湿素材 | TYPHON 50000 |
メーカー | ミレー |
耐水圧 | 20,000mm |
透湿性能(/㎡・24hrs) | 50,000g |
TYPHON 50000おすすめポイント
- 高い糖質性能による蒸れの軽減
- ストレッチ性による動きやすさ
- 肌触りの良いニット裏地で快適な作り
TYPHON 50000製のおすすめレインウェア
秋冬登山に快適『ティフォン 50000 ウォーム ストレッチ ジャケット』
登山やスキーといった冬のアウトドアアクティビティを想定して、裏地には起毛トリコット素材を配置し、耐久性と保温性を高めています。ストレッチによる動きやすさを備えています。
ベルグテック-ミズノ
2021年までの過去5年以内に富士登山をした人の約27.3% がミズノのレインウェアを着用した称号を持つ信頼ある防水糖質素材です。この素材は歴史が古く1956年から進化し続けています。比較表を見てもわかるように高い耐水性による安心感が特徴です。
防水透湿素材 | ベルグテック |
メーカー | ミズノ |
耐水圧 | 30,000mm以上 |
透湿性能(/㎡・24hrs) | 16,000g |
ベルグテックおすすめポイント
- ゴアテックスとほぼ同等の耐水圧
- 初心者から上級者まで愛用者の多いレインウェア
- コストパフォーマンスに優れている
ベルグテック製のおすすめレインウェア
パッカブル機能など充実した作り『ミズノ ベルグテックEXストームセイバーVI レインスーツ』
ミズノのレインウェアの中でも毎年人気があり、富士登山や屋久島歩きをした人の多くが着用していることで知られています。耐久性、防水性、透湿性、をとっても安定のある数値を叩き出し、様々な登山シーンで活躍してくれるレインスーツです。ベンチレーションポケットや軽量コンパクトに収納することができるパッカブル機能など充実した作りで登山初心者だけでなく多くの登山者におすすめのレインスーツです。
ブリザテック-東レ
東レ開発したブリザテックは、ワークマン、ニューエラ、パトリックなどが採用している防水糖質素材で、撥水性も高く生地表面の汚れが付きづらい特徴があります。コストパフォーマンスにも優れ、安価なレインウェアながら必要最低限の耐水圧と糖質性能を備えた防水糖質素材です。
防水透湿素材 | ブリザテック |
メーカー | 東レ |
耐水圧 | 10,000mm |
透湿性能(/㎡・24hrs) | 7,500g |
ブリザテックおすすめポイント
- 様々なメーカーが採用している
- 価格を抑えることができるため売価から求めやすい
ブリザテック製のおすすめレインウェア
圧倒的な安さ『WORKMAN 3レイヤー透湿ストレッチレインスーツ』
裏地にはトリコットを使った三層構造の本格的レインスーツです。透湿性は紹介するレインスーツの中では低いので、レインウェア内の蒸れが少し気になるスペックです。しかしながら圧倒的な安さは登山初心者に嬉しいポイントです。このレインスーツはストレッチ製なので動きやすく、足を上げたり、手を振る動作にも追随します。