前回の海と山 島旅パッキングの解説 〜ザック&海道具編〜に続き、野営道具の紹介
島旅の季節
島という特別なフィールドを楽しむには季節の選択も重要になってくる。僕の経験からすると、山と海の両方を楽しむ島旅は秋と春がとても良いと感じている。
夏は海水温が高く海遊びには最適だが、山歩きには暑すぎることが多い。台風も発生しやすい。逆に冬は山歩きは快適でも、海水は冷たく長時間の活動は難しい。しかし秋と春なら、海水温はまだ穏やかで、山の気温も歩きやすい。特に春は新緑が美しく、秋は澄んだ空気の中で両方のフィールドを存分に楽しめるのだ。
海という自然との付き合い方
だからこそ、僕たちは謙虚に、そして準備万端で自然と向き合わなければならない。適切な装備を身につけ、十分な知識と経験を積み、常に安全を意識する。
それが自然を楽しむための基本なのだ。
島旅における道具選択は、軽量性と信頼性のバランスが特に重要だ。本土のように「忘れた装備を道中で買いに行く」ことはできない環境だからこそ、一つ一つの道具が果たす役割を十分に理解し、慎重に選び抜いてゆく必要がある。これから紹介するのは現時点での装備の一部であり、継続的な改善と工夫を重ねていく過程にある。

シェルター
テラノバ ソーラーフォトン2

スペック
- 重量:最小814g・最大849g
- 使用人数:2名
- サイズ:高さ100〜130cm、長さ225+65cm、幅60〜85cm
- 収納サイズ:40×15cm
- フライシート:Watershed R/S Si2 2000mm
- フロア:Watershed R/S Si2 3000mm
- ポール:DAC 8.7mm NFL
- ペグ:Titanium 1g (14本)
2人用ダブルウォールテントで最軽量クラスのモデルである。個人用のテントでは充分の広さを確保でき、昨今のフライシートを短くして軽量化を図っているわけではないので、大雨による吹き込みの心配もない。テントの防水性にはこだわる。
これまで筆者は貧乏学生時代、安物のテントで無人島で何度か大雨に見舞われたが、朝になると、まるで海の中にいるような音と自身の体温で温まった生ぬるい水の中で目が覚めた苦い経験がある。悪いことは言わない。島旅のハードルを上げたくなければテントの性能にはこだわるべきである。

寝具
山と道 ULPad 15+

スペック
- 重量:75g(100cm)
- サイズ:100cm × 50cm × 1.3cm(L)
- R値:2.0
- 素材:XLPEフォーム(シボ加工)
冬山兼用で通年使用している。超軽量ながらR値2.0を確保し、島の夜の底冷えにも対応できる信頼性がある。クローズドセル構造のため、パンクの心配がなくラフに扱えるのも島旅では重要な要素だ。
山と道 Stuff Pack XL

スペック
- 容量:9L
- 重量:68g
- 素材:X-Pac
- 形状:巾着型 デイジーチェーン付き
運搬時にはテントを入れているが、就寝時には枕代わりに使うこともしばしば。湿気が多い環境でも不快感が少ない。防水性に優れたX-Pac素材により、濡れた装備の収納にも安心して使える。
AEGISMAX Wind Hard Tiny

スペック
- 重量:約400g
- 温度域:コンフォート10℃、リミット5℃
- 素材:800FPダウン
- 形状:キルト型
季節の変わり目はもちろん、夏の島でも意外と明け方には冷えることがある。温度調整のしやすいキルト型が便利だ。可能性として低いが、ダウンジャケット代わりになるこの製品を選んだ。
SOL エスケープヴィヴィ
スペック
- 重量:241g
- サイズ:213×91cm
- 材質:アルミ蒸着加工特殊フィルム+ポリエステルシート
- 反射率:体温の90%以上を反射
- 形状:マミー型
独自の透湿性素材を使用したマミー型のビバークサック。体温の90%以上を反射熱として循環させる特許システムにより、エマージェンシー装備としての役割を果たす。透湿性があるため結露を抑制でき、島の湿気の多い環境でも不快感が少ない。
軽量ながら単体での使用も可能で、シュラフカバーとしても活用できる。完全防水ではないが寝袋を濡れから守ってくれる。
突然のスコールが発生した際には、濡らしたくないものを片っ端から放り込んでテントに突っ込む。天候悪化や装備トラブル時のバックアップとして、島旅の安全マージンを高める重要なアイテムだ。
水筒類
CNOC ヴェクトX 2L ブラック

スペック
- 容量:2L
- 重量:92g
- 収納サイズ:17.5×5×3.75cm
- 使用サイズ:34×17.5cm
- 使用温度域:-6℃〜100℃
- 耐久性:限界点226kg
- 開口部:デュアル開口システム(28mm)
軽量でコンパクトな折りたたみ式ウォーターコンテナ。島では水の確保が重要な課題となるが、このヴェクトXは2Lという大容量でありながら92gという軽量性を実現している。デュアル開口システムにより、広い開口部からの給水と狭い口金部分からの飲用の両方が可能だ。
ソフトな素材でありながら限界点226kgという高い耐久性を持ち、ぎゅうぎゅうなパッキングや島の岩場でも安心して使用できる。使用後は小さく折りたためるため、帰路の荷物軽減にも貢献する。濾過システムとの組み合わせも可能で、島の水源利用に柔軟性を与えてくれる。
SAWYER マイクロスクィーズフィルター SP2129
スペック
- 重量:53g
- フィルター孔サイズ:0.1ミクロン
- 除去率:細菌・寄生虫99.99999%除去
- 浄水能力:38万リットル
- 素材:ホロウファイバーメンブレーン
島の水源を安全に利用するための浄水フィルター。0.1ミクロンの超高密度フィルターにより、有害な細菌やエキノコックスなどの寄生虫を99.99999%除去できる。53gという軽量性でありながら、38万リットルという驚異的な浄水能力を持つ。
ペットボトルへの直接ジョイントが可能で、CNOCヴェクトXとの組み合わせにより島での水確保システムが完成する。バックフラッシュによるメンテナンスで機能が約98%回復するため、長期間の使用が可能だ。島という限られた水源環境では、安全な飲料水の確保が生命線となる重要な装備である。
調理器具類
SOTO ウィンドマスター

スペック
- 重量:67g
- 出力:3,000kcal/h
- 点火方式:圧電点火方式
動画ではBRSを紹介していたが、大きめのクッカーを持参する場合にはこれに限る。天候に左右されることなく安定的に火力を維持してくれる。CRUXと同様に冬も夏もこれだ。
キャンピングムーン CB缶 スタンド型ガス変換アダプター Z23-CB

スペック
- 重量:196g
- サイズ:直径65mm×高さ85mm
- 接続:OD缶→CB缶変換
- 材質:アルミ合金
- 安全装置:過圧防止弁付き
なかなかの重量物である。離島での入手性の良さからOD缶→CB缶への変更アダプターを装着している。アルコールストーブやガソリンを使用するMUKAストーブ等も候補にあったが、火力の安定性や航空機による運搬、手軽さからこの三脚付きアダプターを選んだ。
正直、重くて嫌だったが団体装備で持ってゆく簡易テーブルや海岸の岩場、漂着物による即席の台の上でも安定する。
EVERNEW Ti U.L. Pot 900

スペック
- 容量:900ml
- 重量:85g
- 材質:純チタニウム
- サイズ:直径110×高さ92mm
メインの調理用のクッカーを使用している。円形のインスタントラーメンがすっぽり入る形状だ。軽量で持ち運びに便利である。
EVERNEW Backcountry Almi Pot
スペック
- 容量:600ml
- 重量:110g
- 材質:アルマイト加工アルミニウム
- サイズ:直径110×高さ65mm
焚き火台を使用した調理やお米を炊くのにはこれを使っている。ソロの島旅にちょうど良いサイズ。ベイルハンドルを外して上記のTi U.L. Pot 900にスタッキングしている。
SNOW PEAK スクー

スペック
- 重量:16g
- 材質:チタン
- サイズ:長さ163mm
スプーンとフォークの一体型だ。海道具がある分、なるべく道具の点数は減らしたい。シンプルながら実用性が高く、軽量化に貢献する。
IDEA SEKIKAWA アイデアセキカワ ライフスタイルトング

スペック
- 重量:14g
- 材質:ステンレス
- サイズ:長さ160mm
菜箸・トング・箸の1つ3役を担う。使うのに少し力がいるが、握り込んでも先端がずれにくく、把持力は良い。焼いた魚をひっくり返すトングがわりに重宝している。
焚き火関連

PAAGOWORKS Ninja Fire Stand Solo

スペック
- 重量:165g
- 材質:ステンレス(SUS304)
- サイズ:350×250×250mm
軽量な焚き火台。野営地や浜辺を汚したくないため、基本的に焚き火台を持ち運んでいる。焚き火は保温や調理だけでなく、夜の海に潜るときには真っ暗闇の海で戻る目印となる。
ベルモント U.L.HIBASAMI

スペック
- 重量:28g
- 材質:アルミニウム、ステンレス
- サイズ:長さ230mm
- 収納:2つ折り式
焚き火の際に薪の追加や海で生き物の採集や漂流物を集めるのに使用している火バサミ。軽量でコンパクトながら、実用的な長さを確保している。
ブッシュクラフト たき火ゴトク S

スペック
- 重量:90g
- 材質:チタン
- サイズ:長さ380mm
チタン中空パイプを使用しているため、非常に軽量である。そのまま魚を置いて焼いてしまうことも。薄く収納できるため、パッキング時のスペース効率も良い。
シルキー ゴム太郎

スペック
- 全長:210mm
- 刃長:130mm
- 重量:80g(軽量化後)
軽さを突き詰めた手のこ。ハンドルやカバーを外して、百均のファイルカバーをつけて軽量化している。島に流れ着く流木の処理や、薪作りに重宝する。

UNUL ハンガー

- 全長:210mm
- 重量:14g
三鷹outdoorsで購入した火吹き棒とハンガーの機能を兼ね備えている「三鷹ハンガー」海で濡れたウェットスーツや衣類の乾燥に使用している。ひもは自分好みのカラーに変更。チョッキ銛を持参する際にはその予備としてダイニーマ製のコードを使用する。
ライト類
Land port キャリーザ・サン Small Warm Light / White Belt

スペック
- 重量:57g
- サイズ:収納時88×88×12mm、使用時88×88×88mm
- 光量:最大30ルーメン(Warm Light)
- 点灯時間:約10時間(強)、約72時間(弱)
- 防水性:IPX7
軽量ソーラー式ランタン。テント内での作業や食事の際に活躍する。日中の充電で夜の活動をカバーできる持続可能性も魅力だ。
ブラックダイヤモンド スポット400

スペック
- 重量:88g(電池込み)
- 最大光量:400ルーメン
- 照射距離:80m
- 点灯時間:200時間(最小)、2時間(最大)
- 防水性:IPX8
- 電源:単4アルカリ電池×3本
夜間散策や設営に使用するヘッドライト。海でも山でも必ず必要となる装備の一つである。防水性能が高く、海の環境でも安心して使用できる。
シェルト ヘッドライトベルト

出典:SHELT
スペック
- 重量:7g(25mm幅)
- ベルト幅:20mm幅、25mm幅
- 長さ:15cm
- 材質:バンジーコード
- 特徴:ループ式エンド、軽量設計
ヘッドライト用の交換ベルト。保水しにくいゴム紐で濡れた頭でも不快感が少ない。シンプルな構造ながらしっかりとホールドしてくれ、ベルト端のループはバックパックのフックへの取り付けも可能だ。海での活動後、濡れた髪での使用でも快適性を保てる。
ペツル シェルLT E075AA ランプシェード

スペック
- 重量:25g
- 材質:ポリプロピレン
- サイズ:直径140mm
- 対応:ヘッドランプ各種
ブラックダイヤモンド スポット400を入れている。キャリーザ・サンが充電できないほどの天候不良時にはランタンシェードで代用することも。光を拡散させることで、テント内を柔らかく照らすことができる。
最後に
島は魅力的なフィールドである。海に囲まれた小さな世界は、本土では得られない特別な体験を与えてくれる。しかし、島旅における道具選びには本土の山行とは異なる視点が必要だ。船や飛行機でしか運べない荷物の制約、天候による孤立や延泊のリスク、現地での調達困難性—これらを踏まえた道具選択こそが、有意義な島旅に導く鍵となる。

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