登山口は前回と同様の折立から。東京都内からだと、新宿のバスタから夜行バスに揺られて富山駅まで行き、1時間の休憩を挟んで富山駅から折立まで更にバスに揺られていく。
富山駅までの高速バスは4,400円。富山駅から折立登山口までは3,500円と格安で都内から登山口まで行くことができる。バスの中でお酒を飲みながら移動していつの間にか寝てしまえば良いなあと考え、新宿の成城石井で変わったIPAとハブボールを手に入れてバスに乗り込むも、乗った途端に車内真っ暗、皆さん就寝されたので、静かにお酒をすすって寝静まる。
ぐっすり寝て到着のアナウンスで目が覚めると、そこはもう富山駅。1時間の空き時間で駅前のコンビニで水や食料を購入。折立登山口には飲める水はなく(水は出ているものの浄水されていない)、登山口に到着する前に水の準備が必要だ。ちなみに、富山駅から折立のバスに乗ると、途中で休憩スポットに寄ってくれる。ここで水の購入、ゴミ捨てが可能である。
バスに揺られること2時間。8時10分に登山口に到着した僕たちは、簡単な準備とトイレに立ち寄り登山を開始。「懐かしいなあ」と5年前の景色となんら変わりのない登山口の光景をみて、5年前に感じた不安と希望が思い起こされる。
折立の登山口は最初樹林帯からはじまる。1,350メートルの標高から歩くこと2時間ほどで、青淵三角点へ。ここまでくると木道がはじまり、展望がよくなる。
眺めを楽しみながら歩きやすい登山道を太郎平小屋に向かって歩く。振り返ると有峰湖が見渡せる。
これから歩いていく登山道が見渡せる景色というのが僕は好きだ。先を見ると雲で隠れる登山道。天気の悪化に一抹の不安を抱える。残り太郎平小屋まで30分というあたりで、ポツポツと雨が降り始め、そのうち強さを増してきた。
しかしながら通り雨だったようで、ほどなく雨もあがり、そそくさと薬師峠のテント場へと向かう。僕の記憶では太郎平小屋からテント場までは歩いて5分ほどだったが、20分ほど歩いて到着。人間の記憶なんて曖昧なものだ。
テント場が見渡せる場所まで来ると「やっと到着」という安堵と共に、思った以上のテントを見て、良い場所の確保を怪しんだ。しかしながら薬師平のテント場は広い。平らで寝やすい場所にテントを張ることができた。
テントを設営して、軽く腹ごしらえをして、身軽になった僕らは薬師岳へ。この時点で約1,000メートルの標高差を登ってきているものの、身体が身軽になることで、まるで登山口に戻ったような気持ちになる。薬師岳が2,926メートルなので、おおよそ600メートル登ったら到着という算段。
上空はガスっており、景色がのぞめない。それでも薬師岳へ到着する頃に晴れていることを祈りファストハイクで先を目指す。
薬師峠から早速登りが始まり、登山道はまるで川のように水が流れている。大きな岩を渡り歩き頂上を目指す。
この縦走で選んだシューズはサロモンのSENSE RIDE GORE-TEX® INVISIBLE FIT。濡れた岩場でのグリップ力と、機動性の良さには圧巻。今回の縦走でベスト3に入る装備として、パフォーマンスの素晴らしさを感じさせてくれた。
300メートルほど登ると「おおっ!」と感嘆の声が漏れるほどに薬師岳の山容は美しい。頂上はガスで見渡せないものの、その美しさにはしゃぐ僕ら。
それぞれに薬師岳をバックに記念撮影。
そして興奮した僕らはトレイルランで薬師岳頂上を目指す。
頂上を目指す途中に薬師平を通り、ケルンを目にする。ここには1963年の1月に起きた愛知大学山岳部薬師岳遭難事故を思い起こされる遭難碑がたっている。三八豪雪という想像を絶する猛吹雪に見舞われ、13名の尊い命が奪われた事故であり、様々な教訓をもたらせてくれた有名な山岳事故の1つだ。夏場といえども場所は北アルプスという標高の高い山。この先何が起こるかわからない。僕たち2人は気を引き締めあう。
ここからは薬師岳山荘までは昭文社地図上で1時間、そこから薬師岳までが更に1時間。今までの計測でいくと0.7かけぐらいのスピードで行動しているので、2時間×0.7の1時間20分で到着を目論む。戻りの時間も計算すると、まだ余裕がある。
ヒマラヤのベースキャンプにあるような旗がカッコ良い山小屋は薬師岳山荘。目論み通りの時間に到着し、山荘で販売している商品をチェック。テント場から太郎平小屋までピストンして買い出しに向かう時間もなさそうだから、帰りに薬師岳山荘でビールを買っていったほうが良さそうだ。
残り1時間の登りで憧れの薬師岳の山頂を踏むことができる。きっとあの向こうの山の尖がりが頂上だろう目星をつけて向かう。
薬師岳頂上へ到着!毎回思うんだけど、頂上に到着すると、「足よ!よく頑張ってくれた!」と褒めてあげたくなる。
ここから下りを足早に走って行きたくなるが、足元はガレており容易じゃない。初日で怪我なんてバカらしいと用心して、今歩いてきた道を折り返す。
薬師岳山荘に立ち寄り、僕はビール2本、友人はビール1本にコーラを購入。「コーラ飲みません?」と早速空けたコーラをもらい、驚きの旨さに驚愕。なんか違うものが入ってるんじゃない?と疑いたくなるも、その旨さに2人して感動した。次の日に黒部五郎小舎でも、この時の感動を忘れられずコーラを飲むことになるのだけど、全然旨さが足りなかった。なんとも人間の体は不思議なものだ。
無事にテント場に戻ってきた僕らは早速晩ごはんの準備にとりかかる。ここで富山駅で購入した「ますのすし」をツマミにビールで乾杯。また電解質をしっかり補うために、味噌汁を作る。
ここで取り入れたのが乾燥野菜。乾燥の小松菜、切り干しダイコン、麩などを投入してスティック味噌を投入。切り干しダイコンから出る旨みと甘味が味噌汁の旨さを引き立て、コーラーに負けない感動を与えてくれた。
今回の縦走でベスト3に入るもう一つの装備というか、持参して良かったのが、この乾燥野菜。いつもだったら3日あたりで栄養の偏りで唇が荒れたり、縦走終わりにパフォーマンスが落ちるんだけど、そういった影響が皆目なかった。
そして食事に野菜のシャキシャキ感が加わり、非常に豪華な山ごはんを楽しめた。
ツマミを取り出し、持ってきたウイスキーで飲み会を楽しもうと準備を開始した矢先にポツポツと雨が。
雨脚は激しくなる。僕たちは諦めてそれぞれのテントで食事をとることにした。
トランギアのメスティンでお米を炊き、選んだおかずはジャークチキンカレー。にしきやには楽しいバリエーションのカレーが豊富でレトルトということを彷彿させず本格カレーが楽しめる。毎日カレーでも飽きを感じさせない、なんだったら楽しみを感じさせてくれるバリエーションに心奪われ、幾つかの商品を今回の山ごはんに導入した。
こうしてお腹もいっぱいになり、眠気が身体を包み込んだ。明日は晴れるだろうか・・祈るような気持ちで寝に落ちた。