ゴアテックスには3種類の構造があり、使用している素材の厚み、裏地の素材など様々で、この構造について理解をしていないと、どのようなレインウェアが登山に適しているか解りません。そこでゴアテックスの種類と、それぞれがもつ特徴を理解して、安全で快適な登山を楽しめるよう、ゴアテックスのレインウェアについて詳しく説明をし、最後におすすめのゴアテックス製レインウェアを紹介します。
ゴアテックスのレインウェア構造は3層・2.5層・2層の3種類がある
ゴアテックスのレインウェアを選ぶ先にまず確認すべきポイントがゴアテックス構造です。ゴアテックスのレインウェア構造は全部で3種類ありますが、登山用のレインウェアの多くは3層もしくは2.5層構造で作られています。
※横スクロールで表がスクロールできます。構造 | 3層 | 2.5層 |
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特徴 | 裏地があるため肌触りが良い 耐久性が高い 防風性が高い |
透湿性が高い しなやかである コンパクトである |
ゴアテックス3層構造のレインウェア
ゴアテックス3層構造はゴアテックスメンブレン(防水生地)に表生地と裏生地を貼り合わせて挟むように構成されています。イメージは以下の通りです。
ゴアテックスメンブレンを生地で挟むような構造のため、表生地の厚みによって耐久性、防風性に違いが生じてきます。裏地の素材はC-KNITとマイクログリッドバッカー、トリコットの3種類あり、それぞれ汗をかいた時に肌触りの良さ、透湿性の違いがあります。以下の表は裏地の3種類の素材の特徴を比較したものです。
※横スクロールで表がスクロールできます。C-KNITバッカー | ・輪っか状に編まれたことで、表面の凹凸を抑え、肌触りの良さを実現 ・トリコットと比較すると、密度が薄く、生地がしなやかで透湿性が高い |
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マイクログリッドバッカー | ・縦横で密に織られた最も耐久性が高く、更に軽量且つ透湿性に優れている |
トリコットバッカー | ・縦に編まれた凹凸により汗の拡散を促す ・汎用性に優れた素材 |
ゴアテックス2.5層構造のレインウェア
ゴアテックス2.5層構造はゴアテックスメンブレン(防水生地)に表生地を貼り合わせて裏地はコーティングを施しています。この技術を「パックライトプロダクトテクノロジー」と言います。
以下はコーティングした裏地の拡大写真です。
表生地の厚みによって耐久性、防風性に違いが生じるのは、3層構造のゴアテックスと同様です。裏地の処理がコーティングのため、しなやかで軽量なレインウェアが多いのが2.5層構造のレインウェアの特徴です。その変わり汗をかいたときの肌触りの良さは3層構造に劣ります。
パックライトには更に2種類あり、ゴアテックスメンブレンに耐摩耗加工を施し、耐久性をアップさせたものを「パックライト プラス」と言い、プラスが付いています。
季節によってゴアテックスレインウェアを使い分けよう
ゴアテックスには構造と裏地素材とテクノロジーの違いで、大きく5つに分けることができます。それぞれに適した使用シーンがあり、これを指標に自分の山行スタイルにあわせてレインウェアを使い分けるのがおすすめです。
※横スクロールで表がスクロールできます。テクノロジー名 | ゴアテックスプロ | ゴアテックスファブリクス | ゴアテックスアクティブ | ゴアテックスパックライト | シェイクドライ |
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構造 | 3層構造 | 3層構造 | 3層構造 | 2.5層構造 | 2層構造 |
裏地 | マイクログリッドバッカー | マイクログリッドバッカー/トリコットバッカー/C-KNITバッカー | 薄い素材を使用 | コーティング | フィルム |
使用シーン | 冬山登山、スキー | ALLシーズン | 夏山登山、トレイルランニング | 3シーズン登山 | トレイルランニング |
特徴 | 軽量性に優れている | 価格抑えめ、C-KNITバッカーの方が高価 | 透湿性に優れている | 軽量でしなやか | 表にゴアテックスメンブレン |
ゴアテックスを使用したおすすめのレインウェア
登山に適したゴアテックスを使用したおすすめのレインウェアをテクノロジー別で紹介します。ゴアテックスプロは雨ではなく降雪シーンに適しているので、紹介するレインウェアからは省いています。
登山から雪山まで汎用性に優れたレインウェア『ゴアテックスファブリクス』
ゴアテックスのレインジャケットの中でも価格を抑えつつ、耐水性と耐久性を備えた、最もスタンダードなのがゴアテックスファブリクスです。
軽量でしなやかなレインウェア『ノースフェイス クライムライトジャケット』
ゴアテックスの3層構造を採用し透湿性と軽さと強度のバランスを追求した登山に最適なレインジャケットです。登山シーンにおけるあらゆる機能性を向上し、風にバタつきづらいシルエット、ザックを背負った際の裾が上がりにくい丈感、腕の上げやすさなど特徴を持たせています。
素材 | 20D-マイクログリッドバッカー採用の3層構造 |
重量 | 約315g(Lサイズ) |
ピットジップ | ✕ |
ヘルメット対応フード | ◯ |
着用時の快適性と軽量性を兼ね備えた『アークテリクス BETA ジャケット』
ゼータ SL ジャケットに変わるモデルとして作られたベータジャケットは肌触りの良さと軽量性に優れたレインジャケットです。アークテリクスならではのスリムなパターンと動きやすさ、高い透湿性を備えたスタンダードなレインジャケットです。
素材 | 30D-C-KNITバッカー採用の3層構造 |
重量 | 300g |
ピットジップ | ✕ |
ヘルメット対応フード | ✕ |
初心者も安心な作りが魅力のレインウェア『アークテリクス BETA LTジャケット』
軽量でミニマルなデザインの中に、ピットジップとハンドポケット、ヘルメットフード対応機能を備えたレインジャケットです。視界を遮ることのない立体的なフードにより、雨の日の登山も安心して行動することができます。
素材 | 40D-トリコットバッカー採用の3層構造 |
重量 | 約395g(Lサイズ) |
ピットジップ | ◯ |
ヘルメット対応フード | ◯ |
リーズナブルな価格設定のレインウェア『モンベル レインダンサー ジャケット』
50デニールの3層構造で、ゴアテックスファブリクスを使用したモデルとしてはモンベルの中でも最もリーズナブルな価格設定のレインジャケットです。夏山登山ではレインダンサージャケット、下で紹介するストームクルーザージャケットを着用している人が非常に多く、人気の高さが伺える一方、フードをかぶっていると誰なのか見当がつかないほどです。
素材 | 20D-マイクログリッドバッカー採用の3層構造 |
重量 | 約315g(Lサイズ) |
ピットジップ | ✕ |
ヘルメット対応フード | ✕ |
軽量且つ登山者に大人気のレインウェア『モンベル ストームクルーザー ジャケット』
レインダンサージャケットとの大きな違いは20デニールの生地厚みによる軽量性と、C-KNITバッカーを採用した着心地の良さです。ストームクルーザーは夏山登山など汗をかくシーンの多いレインジャケットに適しています。
素材 | 20D-C-KNITバッカー採用の3層構造 |
重量 | 約254g |
ピットジップ | ✕ |
ヘルメット対応フード | ✕ |
汎用性と特徴あるデザインが魅力のレインウェア『ノローナ falketind Gore-Tex Jacket』
軽量性とC-KNITバッカーによる着心地の良さ、ピットジップが付き、ヘルメットに対応したフードと、様々なアクティビティ、様々なシーンで使用可能なレインジャケットに仕上がっています。30デニールの生地厚なので3シーズンの高所登山から低山登山まで幅広く使用することができます。
素材 | 30D-C-KNITバッカー採用の3層構造 |
重量 | 約410g |
ピットジップ | ◯ |
ヘルメット対応フード | ◯ |
ハードなアクティビティ用のレインウェア『ゴアテックスアクティブ』
ゴアテックスシェイクドライの耐久性を補うかのような、軽量かつしなやかさがあります。非常に薄い表地と裏地でゴアテックスメンブレンを挟んだ3層構造で、肌触りの良さも特徴です。
軽量性に優れたレインウェア『ノースフェイス パンマージャケット』
ゴアテックスアクティブを採用した着心地の良さと軽量性を併せ持った進化を感じさせてくれるレインジャケットです。軽量性を重視した作りでありながらフード対応のヘルメット、ポケットの使いやすさなど妥協しない作りと、風にバタつきづらいシルエットが美しいレインジャケットです。
素材 | 15D-C-KNITバッカー採用の3層構造 |
重量 | 約250g(Lサイズ) |
ピットジップ | ✕ |
ヘルメット対応フード | ◯ |
斬新なデザインが特徴のレインウェア『ピークパフォーマンス リミット ジャケット』
優れたデザインとカラーリングが魅力のピークパフォーマンスのレインジャケットです。ハンドポケット上部にはベンチレーションホールを備えており通気を促進します。フィット感の調整が可能な袖やフードで強い雨にも対応したレインジャケットに仕上がっています。
素材 | デニール数不明-C-KNITバッカー採用の3層構造 |
重量 | 460g |
ピットジップ | ✕ |
ヘルメット対応フード | ✕ |
3シーズン登山の装備軽量化にもおすすめのレインウェア『ゴアテックスパックライト』
パックライトプロダクトテクノロジーを採用した2.5層の構造を持っています。軽量かつしなやかで透湿性にも優れています。ゴアテックスパックライトは、軽量かつコンパクト性に優れたレインジャケットに仕上がっており、夏山登山や装備の軽量化におすすめのレインジャケットです。今回はおすすめのゴアテックスパックライトを採用した登山用レインジャケットを紹介します。
ハードな登山にも使えるレインウェア『ノースフェイス クラウドジャケット』
2.5層構造で50デニール、ゴアテックスを採用し、ヘルメット対応フードとさまざまな登山スタイルに活用することができるメインジャケットです。ややゆとりのあるシルエットでレイヤリングがしやすくハードな環境においても安心感の高いレインジャケットです。
素材 | 50D-ゴアテックスパックライト |
重量 | 約360g(Lサイズ) |
ピットジップ | ✕ |
ヘルメット対応フード | ◯ |
アルパイン登山に適したレインウェア『パタゴニア カルサイト・ジャケット』
75デニールの安心感があるゴアテックス・パックライトプラスを採用したレインジャケットです。冷たい雨にたたかれることが予想される縦走登山にも、耐候性と保温性に優れた機能の充実で安心した登山を楽しめます。
ヘルメットの着用時にも被ることができるフードなので岩稜帯の多い登山でも安心して使用でき、ベンチレーションを備えているので、体温調整も容易に行えます。
素材 | 75D-ゴアテックスパックライト |
重量 | 411g(Mサイズ) |
ピットジップ | ◯ |
ヘルメット対応フード | ◯ |
パッカブルが出来てコンパクトに持ち歩けるレインウェア『マウンテンハードウェア エクスポージャー2』
右のポケットにパッカブルできる仕様でコンパクトに持ち運ぶことができるレインジャケットす。フロントジッパーはフラップ付きで耐水性を向上させ、コールドスポットも排除した耐候性にも優れたレインジャケットに仕上がっています。
素材 | 75D-ゴアテックスパックライト |
重量 | 340g(Mサイズ) |
ピットジップ | ✕ |
ヘルメット対応フード | ✕ |
通気性に優れたレインウェア『ブラックダイヤモンド リキッドポイントシェル』
ヘルメットに対応するフードを採用しており、フードのフィット感はドローコードで調整することができます。脇にはピットジップを装備し運動量の多いアクティビティでも汗ムレを発散させる機能を備えています。
素材 | 75D-ゴアテックスパックライト |
重量 | 395g(Mサイズ) |
ピットジップ | ◯ |
ヘルメット対応フード | ◯ |
軽量且つコストパフォーマンスに優れたレインウェア『モンベル トレントフライヤー ジャケット』
紹介するゴアテックスパックライトのレインジャケットの中では最も軽量です。トレイルランニングなどのハードなアクティビティでの使用にも適した軽量性とピットジップによる体温調整が容易なレインジャケットです。縫製箇所の削減、シームテープの幅削減などによって軽量化に力をいれています。
素材 | 12D-ゴアテックスパックライト |
重量 | 194g |
ピットジップ | ◯ |
ヘルメット対応フード | ✕ |
ハイブリット構造による安心感が特徴のレインウェア『Rab Zenith Jacket』
非常に薄い素材のハイブリッド構造で軽量化に成功したレインジャケットです。ベンチレーション機能付きの両脇のポケット、ピットジップの採用、ヘルメット対応フードなど、暑い季節の登山におすすめのレインジャケットです。
素材 | 13Dと20Dのハイブリット-ゴアテックスパックライト |
重量 | 330g |
ピットジップ | ◯ |
ヘルメット対応フード | ◯ |
軽量でパッカブルが可能なレインウェア『ノローナ falketind Gore-Tex Paclite Jacket』
素材は20デニールでしなやかなで、コンパクトに収納することができます。胸ポケットはサイズの異なるジッパー式で、グローブや紙地図など入れておくことができる使いやすさに特徴があります。
素材 | 20D-ゴアテックスパックライト |
重量 | 258g |
ピットジップ | ◯ |
ヘルメット対応フード | ◯ |
トレイルランの使用に適した『ゴアテックスシェイクドライ』
ゴアテックスのメンブレンを表地として使用しています。2層構造なため軽量で、メンブレンがむき出しになっているため撥水素材を使用して表地に撥水加工する必要がありません。しかしながら耐久性に劣るため、登山用レインウェアとしては若干頼りなさを感じます。
大きなサイズが特徴のレインウェア『ノースフェイス ハイパーエアーGTXフーディ』
トレイルランニング用のザックの上から羽織ることができるように背中が広く設計されたレインジャケットです。ザックの上から背負った際にレインジャケットを着用した状態で内部にアクセスができるベンチレーション、胸部分に備え付けられたポケット、背面の腰部分に装備されたポケットなど機能的に優れたレインジャケットに仕上げています。
シェイクドライの先駆け的な存在『アークテリクス ノーバンSLフーディ』
8mmのシームテープにスリムフィットによる風のバタつきを抑え軽量に仕上げたレインジャケットです。立体的なカッティングによる動きやすさと、拳ほどの大きさに収まるコンパクト性能で、様々なシーンで活用することができるレインジャケットに仕上げています。
優れた価格設定が魅力のレインウェア『モンベル ピークドライシェル』
ゴアテックスシェイクドライを採用したレインジャケットの中でもコストパフォーマンスに優れています。フードはロールアップしてまとめておくことができ、ウィンドブレーカーのような使い方も可能です。フードと裾はドローコードで調整が可能で、袖口はベルクロでフィット感の調整が可能です。
登山での使用にも使える『GORE R7シェイクドライトレイルフーディッドジャケット』
パッカブルが可能で程よいフィットで動きやすいレインジャケットです。肩の裏地に若干の厚みがあり、ザックを背負った時にクッション性があり、荷物を背負った時の負荷を吸収した特徴のあるレインジャケットです。
ゴアテックス製レインウェアの選び方
ゴアテックスの構造、裏地、メンブレンテクノロジー。この3種類を掛け合わせてゴアテックス製レインウェアを選ぶようにしましょう。
例えば夏山登山であれば透湿性と軽量性に優れたゴアテックスパックライトやゴアテックスアクティブがおすすめです。発汗時の肌触りの良さを追求したいのであれば、パックライトよりゴアテックスアクティブやC-KNITを採用したゴアテックス製レインウェアがおすすめです。
春や秋の登山で肌寒いことが予想される高所の登山では3層構造をもったゴアテックスレインウェアを選ぶようにしましょう。ゴアテックスファブリクスやゴアテックスプロは冷たい雨を感じづらいのでこれらのテクノロジーを採用したレインウェアがおすすめです。