山の上は晴れ予報なのに雨が降ったり、強い風に当たって寒い思いをしたり、木や葉に付いた露に濡れたり、雪に降られるなど、様々な状況で体温を奪われる可能性があるのが登山です。最悪の場合、低体温症になる可能性を踏まえるとレインウェアは非常に重要なアイテムであることがわかります。
登山におけるレインウェアの役割を知ろう
登山においてのレインウェアは、雨だけでなく様々な気候条件から身を守るための装備として位置付ける必要があります。このように考えると雨の可能性が極端に少なくともレインウェアを持ち歩くことが重要であることがわかると思います。
登山用レインウェアは上下別になったセパレートタイプを使用します。レインコートやポンチョなどは高所登山におけるレインウェアとしては、いささか不安です。登山用品メーカーのレインウェアは、登山用に考えられた特徴を備えているので安心です。
レインウェアを着用するシーンを想像する
登山をしていてレインウェアを着用するシーンを想像することは、この後説明するレインウェアを選ぶときに役立ちます。
寒い場所で冷たい雨に叩かれる
寒い場所で冷たい雨に叩かれ、風も強い環境というのは想像しやすい環境だと思います。山の上では市街地では考えられないような強い風に叩かれる可能性が高いです。風速1mで体感温度−1度と覚えておきましょう。このようなシーンではレインウェアの下に防寒着を着用し冷たい雨から身を守ります。
風がなく暑い環境で雨に当たる
登山の多くは最初は樹林帯と呼ばれる木々が生い茂った森の中の登山道を使って山を登って行きます。風は少なく気温が高く、Tシャツ短パンで過ごしたい環境だけれども、レインウェアを着用しなければ雨に当たってびしょびしょになってしまいます。しかしレインウェアを着用すると汗によってウェアが濡れてしまいます。このようなシーンでは涼しい風を取り込むことができるレインウェアで登山を行います。
大きくはこの2種類の環境を想像しておくと良いでしょう。前者は防寒に優れたレインウェアを着用する必要があり、後者は透湿性と通気性に優れたレインウェアを着用する必要があります。
レインウェアの選び方
レインウェアを選ぶ際には、登山用レインウェアならではの機能と防水透湿素材について理解する必要があります。まず初めにレインウェアの機能について紹介します。
ピットジップ
ベンチレーションとも呼ばれる機能は、脇の部分にジッパーが備わっており、冷たい風を取り込み、レインウェア内部の蒸れを排出するのに役立ちます。
透湿性
レインウェアを選ぶときに必ず目にするキーワードです。レインウェア内にある水蒸気がレインウェア外に移動する性能の事を言います。数値が高いほど移動する量が高く、気温が高い登山や汗をかきやすい環境において快適性をもたらします。
重要なのはレインウェア内部と外部の水蒸気の量が一緒の場合は、いくら透湿性が高いレインウェアでも内部から外部へ空気は移動しません。湿度が高い蒸し暑い環境は透湿性能が低くなります。
耐水性
耐水性とは水を通過させない性能の事を言います。耐水性を数値で表す場合は耐水圧と言い、登山では雨で濡れると命に関わるため2万ミリ以上が必要と言われています。2万ミリとは嵐に対しての耐水圧レベルです。
- 20,000mm — 嵐
- 10,000mm — 大雨
- 2,000mm — 中雨
- 300mm — 小雨
▼透湿性と耐水性のスペックを生地別で比較した表
※横スクロールで表がスクロールできます。生地 | ゴアテックス | パーテックスシールド | パーテックスシールド・プロ | パーテックスシールド・エア | eVent | ネオシェル | Kamleika | ドライテック(R) | エバーブレス(R) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
透湿性(独自調べ) | 4,800 | 3,600 | 9,450 | 10,000(公表値) | 6,420 | 9,800 | 20,000(公表値) | 8,000~20,000(公表値) | -- |
耐水圧(独自調べ) | 20,000~ | 20,000(公表値) | 20,000(公表値) | 10,000以上(公表値) | 14,000 | 5,000~20,000(公表値) | 20,000(公表値) | 20,000㎜以上 | 20,000㎜以上 |
メーカー | 素材メーカー | 素材メーカー | 素材メーカー | 素材メーカー | 素材メーカー | 素材メーカー | OMM | モンベル | ファイントラック |
フード
登山用レインウェアにおけるフードの形状はとても重要です。雨が顔に当たると、顔から首へと滴りレインウェアの中のウェアを濡らしていきます。また強い雨が頭や顔周辺に当たることでレインウェア内を濡らす確率が高まります。
このような事がないように登山用レインウェアのフードはツバの形状、フィット感を出すためのドローコード形状など様々な工夫が凝らされています。
またヘルメットに対応した大きめのフードを備えたモデルとそうでないモデルがあるため購入時には注意をしましょう。
続いて防水透湿素材について説明をしていきます。
3種類の防水透湿素材の構造を理解しよう
防水透湿素材には3種類の構造があります。雨や霧などの水滴は通さず、水蒸気だけを通す無数の小さな穴が空いた多孔フィルムをメンブレンと呼びますが、このメンブレンの表と裏に生地を貼り合わせたものを3レイヤー(3層構造)と呼び、表だけに生地を貼り合わせたものを2レイヤー(2層構造)と呼びます。
この2レイヤーの裏にコーティングを施したものを2.5レイヤーと呼びます。それぞれ特徴に違いがあるので以下の表で確認してください。
※横スクロールで表がスクロールできます。構造 | 3層 | 2.5層 | 2層 |
---|---|---|---|
特徴 | 裏地があるため肌触りが良い 耐久性が最も高い 防風性が最も高い | 透湿性が高い 2層に比べて裏地の肌触りが良い | 裏地がペタつく |
重量 | △(重いものが多いが、軽いモデルが最近出始めている) | △ | 〇 |
レインウェアの選び方については以下の記事をご覧ください。
レインウェアのメンテナンス方法
レインウェアを登山で使用したら必ず洗濯をするようにしましょう。雨風に当たることで表生地に汚れが付着します。この汚れは撥水性を損ない、表生地が保水をしてレインウェアが重くなってしまいます。
この汚れを落とすだけで購入した時に近い撥水性を維持することができます。
しかし継続して使用していると汚れや摩擦によって徐々に発生性能が低下します。そんな時は洗濯をして汚れを落とした後に専用の撥水剤で撥水性能を取り戻すことができます。レインウェアの撥水剤の種類と撥水方法については以下の記事をご覧ください。