冬季登山や残雪期の登山で必要になるアイゼン。ただアイゼンといっても、いろいろな種類があり、どれが自分に合うアイゼンなのか迷ってしまいますよね。ここでは、アイゼンの種類と選び方について解説します。
冬の雪山や残雪期の雪渓歩きに活躍するアイゼン
アイゼンは、雪面や凍結した斜面を歩くときに、滑り止めに使う登山用具です。アイゼンを靴底に装着し、金属製の爪で雪面をつかむことにより滑りにくくします。冬の雪山や残雪期の雪渓歩きなど、アイゼンを使用することで雪面を安全に歩けます。
登山用アイゼンのおおまかな分類
一般的にアイゼンは10~12本爪のものを指し、4~8本爪のものは軽アイゼンと呼ばれます。爪の本数が多いアイゼンほど、制動力が高くなります。アイゼンと軽アイゼンの違いは以下の通りです。
10~12本爪のアイゼン
10~12本爪のアイゼンは制動力が高く、冬の本格的な登山で活躍します。軽アイゼンとの大きな違いは前爪があること。この前爪を使い、斜面に突き刺して登っていきます。
10本爪のアイゼンは、12本爪のアイゼンと比べて爪の本数が少なく、前爪が短い傾向があります。そのため、傾斜のきつい場所での登山は、12本爪のアイゼンがおすすめです。
4~8本爪の軽アイゼン
4~8本爪のアイゼンは「軽アイゼン」と呼ばれます。また、チェーンと短い爪で構成されるチェーンスパイクは軽アイゼンの分類です。
軽アイゼンは、10~12本爪のアイゼンと比べて、軽くて持ち運びもしやすいのが特徴です。しかし、制動力が低いため、急勾配の斜面では力不足になります。そのため、軽アイゼンは比較的傾斜がゆるやかな冬季の低山ハイクや、雪量が少ない残雪期の雪渓歩きで活躍します。
アイゼンの使用シーン:冬の本格的な登山
軽アイゼンの使用シーン:冬季の低山ハイク、残雪期の雪渓歩き
登山用アイゼンは使用シーンで選ぼう
アイゼンを選ぶ際には、使用シーンを考えることが大切です。
- どの山に登るのか?
- 登山道はどれくらい傾斜があるか?
- 登山道の雪量はどれくらいか?
- 雪質は硬いか、柔らかいか?
上記の項目のように、登る山や雪の状態を考えると、どんなアイゼンが必要になるのか選択肢が絞れてきます。以下に、10~12本爪のアイゼンか軽アイゼンかを選ぶ目安について解説します。
10~12本爪アイゼンが必要なシーン
10~12本爪のアイゼンの使用シーンは、冬の本格的登山のように、高い制動力を必要とする場面です。
- 森林限界上の山で、滑落の危険性がある
- 傾斜がきつい場所がある
- 雪質が硬い
- 雪量が多く、トレース(踏み後)がない
※雪が深く、靴がまるっきり埋まるような場合はワカンやスノーシューが必要
上記の項目に当てはまるケースについては、10~12本爪のアイゼンが好ましいといえます。とくに、森林限界上の山に登る場合は滑落の危険性があるため、制動力の高いアイゼンが必要です。
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軽アイゼンが必要なシーン
軽アイゼンの使用シーンは、冬の低山ハイクのように、傾斜が比較的ゆるやかな場所です。
- 雪があり、滑りそうな道
- 樹林帯で滑落の危険性が少ない場所
- 傾斜が比較的ゆるやか
- 雪質がやわらかい
- 雪量が少ない、トレース(踏み後)がある
上記の項目のようなシーンでは、軽アイゼンの方が好ましいといえます。とくに雪渓歩きのように、登山道にところどころ雪がある場面では、持ち運びがしやすい軽アイゼンが重宝します。
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登山用アイゼンの取付方法による違い
アイゼンの取付方法によって、装着のしやすさや固定力が変わります。アイゼンを選ぶ際に、それぞれの特徴を知っておくとよいでしょう。
ワンタッチタイプ
登山靴の前後にあるコバ(細い溝)に金具をかけて固定するタイプです。そのため、コバがついていない登山靴には取付できません。ワンタッチタイプは装着が楽で固定力が高いのが特徴です。登山靴の前後を押さえることで固定力を高め、アイゼンと登山靴との一体感が得られます。
ワンタッチタイプの欠点として、登山靴との相性により外れやすくなる場合があります。登山靴とアイゼンを試着して確かめてみるとよいでしょう。
セミワンタッチタイプ
登山靴のかかと側にあるコバ(細い溝)に金具をかけ、前側はベルトを回して固定します。かかと側にコバがある登山靴のみ取付可能です。ベルトタイプよりも固定力が高く、取付しやすいのが特徴。
ベルトタイプ
ベルトでアイゼンを全体的に固定するタイプ。登山靴に比較的合わせやすく、コンパクトにまとまるのが特徴です。しかし、ベルトで上から押さえているだけなので、若干ガタつきが生じてしまうのが難点です。
ラチェットタイプ
ラチェットタイプは取付が容易なのが特徴です。プラスチック製のギザギザベルトをバックルに通し、歯車をかませて調整します。ベルトタイプと比べるとやや重く、収納もかさばる傾向があります。
アイゼンの取付方法 | アイゼンの分類 | 利点 | 欠点 |
---|---|---|---|
ワンタッチ | アイゼン | ・取付が楽で早い ・固定力が高く、登山靴との一体感がある | ・登山靴の前後にコバがないと取付できない ・登山靴との相性や装着の仕方が悪いと外れる可能性がある |
セミワンタッチ | アイゼン | ベルトタイプより靴がガタつきにくい | ・登山靴の後ろにコバがないと取付できない ・バックルの固定が甘いと足が動いて外れてしまう可能性がある |
ベルト | アイゼン・軽アイゼン | ・登山靴に合わせやすい ・コンパクトに収納できる | ベルトで上から押さえているだけなので若干ガタつく |
ラチェット | 軽アイゼン | 取付が容易 | ベルトタイプに比べて、やや重く、収納がかさばる |
登山用アイゼンを選ぶ際の注意点
アイゼンと登山靴には相性の良し悪しがあります。相性が悪いとアイゼンが外れやすかったり、壊れてしまう可能性も。以下では、アイゼンと登山靴の相性をみるポイントを解説します。
登山靴の剛性が低いとアイゼンが壊れる可能性がある
10~12本爪のアイゼンを選ぶ際は、登山靴の剛性を確認しましょう。ソールが柔らかい登山靴だと、歩くときにアイゼンも一緒に曲がり、金具が折れてしまう危険性があります。冬用の登山靴は剛性が高いモデルがほとんどですが、とくに冬用ではない登山靴は、剛性が足りないモデルがあるので注意が必要です。
コバと金具には相性の良し悪しがある
ワンタッチ、セミワンタッチタイプのアイゼンでみるポイントは、「コバと金具の相性」です。つま先のコバの曲線と金具の曲線が合っていなかったり、後コバとバックルの固定がうまくできなかったりすると、アイゼンが外れる原因になります。そのため、アイゼンと登山靴を一度合わせてみて確認するとよいでしょう。
フィッティングを確認しよう
アイゼンにもサイズがあり、登山靴に合ったアイゼンを選ぶ必要があります。アイゼンと登山靴をフィッティングしてみて、ゆるみがないかどうかを確認しましょう。さらに、10~12本爪のアイゼンでは、つま先の爪が適切な長さぶん出ているかも確認します。
登山用アイゼンおよび軽アイゼンを一つ選ぶならコレ!
アイゼンのおおまかな分類や特徴を解説しましたが、ちょっと難しいなと感じた方もいるでしょう。そんな方のために、アイゼン・軽アイゼンをそれぞれ一つ選ぶならコレ!という商品を厳選してご紹介します。
冬の本格的登山なら【グリベルG12】シリーズ
冬の本格的登山で使用する12本爪アイゼンでおすすめなのが「グリベルG12」シリーズ。
素材がクロモリのため、丈夫で低温に強いのが特徴です。また、固定方式が3つのタイプが(ワンタッチ・セミワンタッチ・ベルト)あり、登山靴の形状に合わせて選べます。
商品名 | G12 シリーズ |
メーカー | グリベル |
爪の本数 | 12本 |
素材 | クロモリ |
ペア重量 | 約1,010~1080g |
備考 | ワンタッチタイプ:G12 オーマチックSP セミワンタッチタイプ:G12 ニューマチック ベルトタイプ:G12 ニュークラシック |
残雪期の雪渓歩きには【モンベル/スノースパイク6クイックフィット】
ラチェットタイプで手軽に装着できる、6本爪の軽アイゼンです。軽アイゼンのなかでも6本爪は制動力が高めで、汎用性があります。また、雪渓歩きでは何回もアイゼンを脱着するため、手軽に装着できるのがうれしいポイントです。
商品名 | スノースパイク6クイックフィット |
メーカー | モンベル |
爪の本数 | 6本 |
固定方式 | ラチェットタイプ |
素材 | 本体:S55C炭素鋼[板厚2mm]、バンド:エラストマー |
重量 | 520g(スタッフバック含むと580g) |
▼スノースパイク6クイックフィットのレビューはこちらから
今回の記事では、アイゼンの種類とアイゼンの選び方を解説しました。冬の本格的な登山であれば10~12本爪のアイゼン、冬季の低山ハイクや残雪期の雪渓歩きであれば軽アイゼンを選びます。また、取付方法の違いによっても利点や欠点があるので、アイゼン選びの参考にするとよいでしょう。とくにワンタッチ、セミワンタッチのタイプのアイゼンは登山靴との相性があるので、フィッティングしてみて確認するのが大切です。
▼アイゼン以外に必要な雪山装備もチェックしよう